「豚舎・設備のお悩み解決!」(6)今からでもできる暑さ対策

この記事が皆さんのお手元に届く頃には東北地方も梅雨明けしている頃だと思います。暑さ対策はしたいのだが、餌代の支払いで手一杯で、なかなか設備導入まで行かない。でも暑くてたまらない。とお悩みの方へ、今回は3つの工夫をお届けします。

1.順送ファンを増やしたらインバーターが容量オーバーしてダウンした。

2.ドリップクーリングを自作する

3.屋根散水システムを自作する

4.クーリングパドの効率を上げる

 

では、まず1番目の順送ファンですが、私のクライアントさんで、繁殖豚舎の空きスペースにストールを増設し、
順送ファンも増設したところがあります。

ところが、換気扇の合計消費電力がインバーターの容量を超えてしまったのでインバーター制御ができなくなってしまいました。
インバーターをより大きなものへ交換すれば良いのですが、費用がかかるし、今までのインバーターももったいない。

こんな場合は、インバーターを通す自動運転と、手動運転(インバーターを介さない直結運転)を切り替えて使うようにします。
さらにインバーターには周波数の上限設定がありますから、負荷電流がインバ−ターの許容最大電流を超えないように上限をせっていしてやればよいのです。

 わかりやすいように、具体例を示します。
この農場の例では当初、400ワットの畜産用メーターファン(羽根径1m)を8台で合計3.2KW3.7KWインバーターで制御していました。
換気扇を3台追加して、合計消費電力が4.4kwになったため制御不能になりました。
このインバーターの許容最大電流は17A(アンペア)です。

1割ぐらいオーバーしても壊れませんから(但し換気が十分な場合に限ります)電子サーマルの設定を19Aに設定して、
周波数の上限を初期値の60ヘルツから40ヘルツに下げました。
すると電流は18Aになり、自動制御が可能になりました。

どのメーカーのインバーターでもこのような設定はできますが、ボタンやダイヤルの操作方法が違いますので、インバーターのマニュアルを読んで設定して下さい。

 実際の使い方は、気温が上がったら直結運転にして、全速で回す。気温が下がったら(夕方)自動運転に戻す。すると気温が下がれば自動で回転が落ち、豚が寒すぎる状態にならずに済みますし、節電にもなります。

 

ドリップクーリング自作部品    
品名 規格 数量 価格 販売先リンク
ホース 15×19 必要量 ¥6,960 https://www.monotaro.com/g/00347644/
減圧弁 1/2inch 複数 ¥8,175 https://www.monotaro.com/p/0709/9766/
電磁弁 1/2inch 1 ¥8,932 https://www.monotaro.com/p/0209/7164/
タイマー H3CR 1 ¥9,409 http://www.monotaro.com/p/0858/9113/
ソケット 11PIN 1 ¥634 http://www.monotaro.com/p/0631/6746/
ボックス   1 ¥683 http://www.monotaro.com/p/0738/9067/
電源コード 1.25mu 1 ¥339 https://www.monotaro.com/p/3266/3766/
圧着端子 1.25Y3.5 1 ¥746 https://www.monotaro.com/p/0688/7212/
針金   必要量    
         
屋根散水の場合は、減圧弁が不要  
ホースは、『散水チューブ』を使う   http://store.shopping.yahoo.co.jp/tackey/saka0296.html
        上記のヤフーショッピングでは、100mで6,990円

2番目のドリップクーリングを自作する。
購入する部品は、表1の通りです。通販サイト、モノタROのリンクと価格も参考までに入れておきました。

この他に塩ビソケット類やホースニップルやホースバンドが必要ですので、ホームセンターなどで必要数量を入手してください。


図1はホースの取付方です。針金で吊すなどして、母豚1頭ごとに垂れ下がるようにして下さい。
そして母豚の真上部分に針穴を空けます。

図2は配管の繋ぎ方です。減圧弁を付けるのは、水の出過ぎを防止することと、均一に滴下するためです。
ストール数が多い場合は30ストールに1個ぐらいの割合で減圧弁を増やして下さい。
電磁弁の先から分岐させて減圧弁複数個に繋ぎます。図3が電気の配線図です。

タイマーは壁などに直付けせずに、プラスチックボックスに収納して取り付けて下さい。
このタイマーは二重ダイヤルになっていて、ON時間とOFF時間を独立して設定できます。
ON
(滴下)時間は30秒〜60秒、OFF時間は5分〜10分で、床がビシャビシャにならない程度に調整するのが良いのです。
水が蒸発する時に気化熱を奪うことにより母豚の体表温度を下げる、という理論です。

 次は3番目の屋根散水を自作する、です。
使う部品は、ドリップクーリングと共通が多いです。表1の注釈を参考にして下さい。
ホースは『散水チューブ』というものを使います。

図4のように広い面積に均等に散水できるように細かい穴の空いたホースです。
こちらには減圧弁が不要です。タイマーと電磁弁の配線は同じです。
タイマーのON-OFF時間の設定は、蒸発しきれずに屋根から落ちて来る水が少なくなるように調節します。
散水する面積が多いと、水道水の水圧だけでは足りなくなる事があります。
そういう場合は動噴もタイマーと連動させて使うか、または、複数の系統に分けて交互に散水するようにします。

前者の場合は、動噴のモーターに見合ったマグネットスイッチを電磁弁と並列に繋いで取り付けます。
後者の場合は、制御が複雑になりますので、紙面の関係上、割愛させて頂きます。
筆者まで問い合わせ頂ければ個別に設計させて頂きます。

図5

では4番目のクーリングパドの効率を上げる工夫です。皆さんの農場では図5のように、クーリングパドから入った空気が天井裏を通って天井入気口から室内に入る構造になっていませんか。分娩舎や、離乳舎がこのタイプの農場が多いのではないでしょうか。クーリングパドでせっかく冷やした空気を天井裏に通すことによって暖めてしまっています。これでは冷房効率が悪いので、壁をくり抜いて図6のような入気口を取り付けます。冬はくり抜いた断熱材で蓋をすればいいのです。ストール舎でも冬は天井入気して夏はトンネルベンチレーションに切り替えて使っている豚舎では、夏に天井入気口を締め切って下さい

創意工夫で夏を乗り切り、来年の夏にたっぷり収益を上げましょう

 

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最終更新日 : 2022/01/23