「豚舎・設備のお悩み解決!」(5)体重測定

今月は、体重測定にまつわる工夫を取り上げてみました。
先月の予告で、ベンチマーキングのデータを現場でどう生かすか。
また正確な比較試験をするためにはどうするかを紹介しますと書きました。
その最大のキーポイントが体重測定です。

 

例えば飼料要求率を計算する時には、出荷時の体重と離乳時の体重が必要です。
枝肉飼料要求率ならば、出荷時の体重を測らなくとも、枝肉精算書に載ってくる枝肉重量でわかりますが、
枝肉歩留りの違いをモニターするためにも、出荷時の生体重は重要だと考えます。

というのも、枝肉歩留りは、屠場によっても差がありますし、
出荷当日と畜か翌日と畜かでも差があるからです。

屠場によって差が出る原因は、ネックや足の落とし方の差や皮の剥き厚の差によるものです。
1%違えば枝肉約1kgの差ですから、年間1万頭出荷する農場なら、約400万円の差になるわけです。

従業員1人分の給料に匹敵する額ですから、これをモニターする意義をわかって頂けるでしょう。

 

では、実際にどうやって出荷生体重を量るかです。最も簡単なのは、トラックスケールを使うことです。
母豚500頭規模以上なら、自前で農場にトラックスケールを設置するのが良いでしょう。

それ以下の規模の農場では、近隣の会社でトラックスケールを使わせてもらえるところを探し、
週1回ぐらいのペースで借用するのが良いと思います。
但し出荷の手順の差による歩留りの差が出ることも覚えておいてください。
それは、出荷デポ(中継所に一旦係留してから屠場行のトラックへ積む場合と
豚舎から直接屠場行のトラックへ津も場合です。

前者の場合はデポに糞尿を排泄するため、屠場行トラックへ乗った時点では、
豚舎を出た時点よりも軽くなっているのです。
他の農場と歩留りの比較をする時は、どの時点で体重を測っているかも加味して比較する必要があります。

 

次に出荷品揃えのための体重測定の工夫です。

最近では、目測を止めて実測して品揃えしている農場が増えているようです。
私が制作販売しているソフト、MeatMaxでは、枝肉重量別売上を集計できるようになっています。
それによると、飼養している品種に関係なく、ほとんどの農場で枝重
78kg80kgで手取金額が最大になっています。
但し
82kgまで上物扱いで取引している場合は80kg〜82kgで手取金額が最大になります。
そして、目測で品揃えしている農場と、実測で品揃えしている農場では、平均枝重が同じでも、
標準偏差が違っています。そして、平均手取り金額も違っています。

では実測効率的に行うにはどうすれば良いでしょうか。
可動式の体重計を使ってペンの入り口で測定する方法(図1)
 
と体重測定スペースへ豚を移動して測定する方法(図2)があります。
どちらが楽かというのは、ペンから豚を1頭ずつ出すことが楽に出来るかどうかにかかっています。
私の経験から言いますと、豚の動線をよく考えて作った体重測定ペンに移動して測定するのが最も効率的です。

『豚の動線をよく考えて』というところがミソなんです。

図3が中央にピットがある2列の肥育豚舎の2ペンを体重測定ペンに改造した例です。

工夫点1.測定後豚房よりも測定前豚房のほうが狭い。
工夫点2.回転式誘導板を設置している。
工夫点3.豚を左回りに動かして体重計に向かわせる。豚も人間も右回りよりも左回りの方が楽なんです。
    陸上トラックも左回りです。

 

次にステージ別体重測定です。普通、飼料要求率は肥育期間全体の増体重を用いて計算します。
しかし、改善しようとした時に、子豚期間と肥育期間のどちらに問題があるのかがわかりません。
ですから、子豚期間と肥育期間に分けて計算できる仕組みを作っておくことが改善スピードアップにつながります。

それには最低限、離乳舎から肥育舎への移動時に体重を測定する事です。
方法は2種類あります。サンプリング法と全頭測定です。


移動途中の通路に体重計を設置して、全頭測定するのがベストです。離乳舎と肥育舎が離れていて、トラックやローダーで移動するならば、トラックスケールの利用や、ローダーの籠の下にロードセルを取り付けて、籠ごと測定する方法があります。

一方サンプリング法は多少誤差が出ますが一定のルールに基づいて行うことで誤差を少なく出来ます。
それにはまず、離乳時に平均離乳体重に近い大きさの子豚を何頭か選んで(離乳頭数の5%ぐらい)耳標を取付け、
その子豚を実側する方法です。
肥育期間全体の要求率が
3.2の農場の場合は離乳から体重30kgまでの要求率は1.81.9になっているはずです。
計算式は、離乳舎FC=(餌付け〜人工乳後期までの給餌量)÷(
30kg−離乳体重)です。

人工乳は単価の高い餌ですからこの期間のFCDGを把握しておくことが重要です。
表1は、ある農場で人工乳後期の比較試験を行った結果です。飼料
Aはマッシュで単価は安いです。
飼料
Bはクランブルで単価は高いです。私が、飼料Bをお勧めしてテストして頂いた結果です。


飼料
Bの方がDGとFCが良く、体重1kg当りの増体コストも安いので、メリットがあるという結果です。
これもきちんと体重測定を行っているから導き出せる結果なのです。
飼料単価だけを見て購入を決めている経営者さんは、是非考えを改めてください。

 

この Web サイトに関するご質問やご感想などについては、お問い合わせフォームからお送りください。
Copyright (C) 2016 (株)「マックプラニング
最終更新日 : 2022/01/23