「豚舎・設備のお悩み解決!」(3)電気設備のメンテナンス

今日の養豚は設備産業です。機械や設備の中でも電気を使う設備が大半を占めています。
そして、電気設備が原因の火災や、いたましい人身事故も毎年のように発生しています。
そこで今月は、電気設備を安全に使うためのメンテナンスポイントや、節電の工夫についてご紹介します。

【プラグの修理】

まず、漏電や、ショート、断線などのトラブルは現場では時々起こっていることと思います。
大抵は電気工事屋さんを呼んで修理してもらうことでしょう。

しかし、シャワーインを義務づけている農場などでは電気屋さんに敬遠されがちではないでしょうか。
以前私が勤務していた原種豚場もそうでした。
ですから、簡単な修理やメンテナンスは自分たちでできるようにしておくことがコストダウンにもつながります。

基本的に建物に密着している配線や配電盤の中の工作は電気工事師の資格がないとできません。
資格無しでできるのは、コンセントから先の電気器具までの部分になります。
この部分の素人修理が火災や事故の原因になっていることが多いのも事実です。

ちなみに私は、第二種電気工事師の資格を持っています。
ですから電気関連の記事を時々書いているわけです。

余談はさておき、写真1が三相200V防水プラグです。

農場では洗浄機や溶接機に使用されています。
中心のゴムが堅くなっていたり、焦げて変色していたら、交換時期です。
内部の端子や電線の被覆も同じように焦げている可能性が高いからです。
こんな状態で使い続けるとプラグの内部でショートして発火する危険があります。

写真2はプラグの内部です。
この例では電線の被覆は焦げてはいませんが被覆の端が破れて芯線が露出しています。
これぐらいの段階でも交換した方が安全です。

プラグを交換する時は電線側も痛んでいる部分を切断して、新しく圧着端子を取り付けてから接続して下さい。
電線のすり抜け防止のために圧着端子は丸形(
R型)を使います。
また、圧着工具は裸圧着端子専用のものを使って下さい。(写真3〜5)。

電線の太さと同じサイズの圧着端子を使い、工具の同じサイズの圧着溝でプレスします。
電線より大きなサイズを使うとプレス圧が不足して、電線が抜けたり過熱の原因になります。
電線の色と端子の位置を間違えないようにしっかりとネジを締め、
カバーの締め付けネジ(写真6)も必ず締めてください。

電工ペンチには写真8のようなタイプも市販されていますが、圧着圧不足になりやすいですから、100Vや200Vの電源線には必ずラチェットタイプ(握るとカチカチ音がして最後まで握ると開く)の工具を使ってください。

【電線の修理】

次は破損した電線や断線箇所の修理です。豚舎では電線をネズミや豚にかじられて破損することがよくあります。
この場合は、破損した部分を切って捨てから結線するわけですが、線同士を手で撚り合わせてテープで巻く、なんてことは絶対しないでください。


コードの場合は写真9のような突き合わせスリーブを使います。

写真10の専用圧着工具を使い、写真11のように繋ぎます。

その上からビニールテープで巻きます。
スリーブを指で持って巻き始め、電線を裂いたところまで巻いたら折り返して反対方向へ。
そしてまた電線を裂いたところまで巻いたら折り返して、真ん中まで巻いたら完成です。

【現場で侵しがちな過ち】

つぎは、「こんなことをすると危険ですよ」という事例です。
@『モーターブレーカーのヒューズが切れた時、買い置きが無いから導線で繋いでおいた。』
しかしそのまま忘れ去られている。

これではヒューズの役目が果たせずモーターの焼損事故につながります。
最近はノーヒューズタイプになっていますが、一昔前までは写真14のような、中にヒューズが入っているタイプが使われていました。

現在でもこのタイプが設置されたままのところがあります。
現在ではホームセンターではこのタイプのヒューズはほとんど売っていないようです。
写真15のノーヒューズタイプに交換することをお勧めします。


A『マグネットスイッチのサーマルリレーがしょっちゅう飛び出してモーターが止まるので、ダイヤルを最大値まで回しておいた。』
サーマルが働いて止まった時はモーターに過大な負荷がかかったためですから、まずはその原因を取り除く必要があります。
さらにこの状態で『マグネットスイッチの中心を指で押して強制運転させる』ことも危険ですからやってはいけません。
モーターが焼損したり、制御盤内の部品が発火する事もあります。


B豚舎内の壁や空間に張ってある電線に物を引っ掛けて(ぶら下げておく)行為。
これは電線の劣化や断線、ショートによる火災などに発展する恐れがあります。


C配電盤や制御盤の扉を開けっ放しにしない。
配電盤や制御盤の中に書類や道具などを入れない。
保管庫ではありませんので、余計な物を入れておくと火災の原因になります。

また、開けっ放しではなくとも、ネズミや小動物が入る隙間があると、小動物の感電による停電の原因になります。
先日東電福島第一原発でも仮設配電盤にネズミが入り込んで、燃料棒の冷却システムが長時間停止するトラブルがありましたね。
キューピクル内に蛇が侵入して感電し、農場が全停電した事例もあります。
キューピクルに錆による穴やゆがみによる隙間が無いかも、定期的にチェックしましょう。


D電気設備トラブルの復旧作業作業は、必ず当該設備のブレーカーを切ってから行うこと。そして、そのブレーカーには『修理中』または『トラブル中』と書いたメモ書きを貼り付けてください。同じブレーカーにつながっている別の設備を使用中の担当者が、作業中を知らずに不意にブレーカーを上げた事による事故も発生しています。

【節電の工夫】

キューピクルで受電している農場の場合の基本料金はデマンド(最大需要電力)で決まります。
ですから消費電力が大きい設備を沢山持っていても、同時に使わなければ基本料金は高くなりません。
デマンドは30分単位で計測され、電力メーターに記憶されます。
そして
1ヶ月の中での最大デマンド値が翌月から向こう1年間の契約電力(基本料金の算出データ)となります


例えば
200kw契約の農場で、ある日ある時250kwの電力を40分間使ってしまったとします。
すると翌月から向こう
12ヶ月間は250kw契約になり、高い基本料金を1年間払い続けなければならなくなります。
過去
1年間の電力使用量を調べれば、自分の農場が何月に使用が多いかがわかります。
夏場の換気扇の消費が多いのであれば、その部分だけ自家発電で賄うのが有効です。

また、いつ運転しても構わない設備は、なるべく夜間運転するように設定して、電力契約を、季節別時間帯別契約にすることで、電気料金を安くできる農場が多いのです。

また、警報付きのデマンドメーターを設置すると、デマンドの管理をしやすくなります。

【電気保安管理料金を安くする】

キューピクル受電をしている場合、保安管理を委託契約する必要があります。
多くは電気保安協会にお願いしているのではないでしょうか。
保安協会とは別に、電気管理技術者協会という組織が有り、そこへ登録している個人または法人へお願いすると料金が安くなる場合があります。
但し、点検箇所が少なくなる場合が多いですから、自社で自主点検が必要です。

シャワーインの豚舎では、シャワー不要エリアだけ管理技術者にお願いして、豚舎の中は、自主点検にすると合理的です。
自主点検項目は管理技術者の方に教えて頂きましょう。

【まとめ】

電気設備は作業を便利にしてくれる反面、管理を怠ると思わぬ大事故につながります。
朝礼や社内会議等で啓蒙し、点検表を現場に貼り付けてぬかりのない管理を心がけましょう。

 

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最終更新日 : 2022/01/23