「豚舎・設備のお悩み解決!」(1)豚の移動

今月から6ヶ月間、豚舎での一工夫の数々を紹介していきます。既に実施している方々にととっては、当たり前のことかも知れませんが、困っている方にとっては良いアイディアになると思います。

今月は豚の移動にまつわる一工夫の巻です。ほとんどの農場では、豚舎が複数棟あり、豚舎間の豚移動が必ず発生します。まず、交配妊娠豚舎から分娩豚舎への母豚移動はみなさんどのようにされていますか。

連絡通路でつながっていれば簡単ですが、豚舎が離れている場合は、地面を歩かせるか、ホイールローダーに取り付けた籠に乗せて移動しているのではないでしょうか。あるいはトラックを使っているところもあるでしょう。

私は、作業効率と豚の足の事故軽減の立場から、できるだけ通路を歩かせる方法をおすすめします。

豚舎間の距離が20m位までならば通路を作ってしまった方が良いです。豚舎間に高低差がある場合は、斜面に対して斜めに通路を作り、勾配を軽減してください。

おおむね1/5勾配(5m進んで1m上下する)までなら豚は平気で上り下りできます。ただ、やはり勾配はできる限り緩い方がよいです。寒い地方では勾配があると冬に凍結して危険になりますから、滑り止めを撒くなりの対策が必要です。

写真1は、場内通路をまたぐ形で作った通路の例です。普段は場内車輌やバルク車が通るので開放しておき、豚移動の時は両側の通路内に格納した車輪付き柵をスライドさせて通路にします。

通路の床はコンクリートですが図1のような構造にすると、より衛生的な管理ができます。通路床面を地面より約10cm高く作り、車輌のタイヤが通る部分を低く作ります。豚を通す時にはこの部分に蓋又は渡し板を置きます。

また、豚舎の床が地面よりも高い豚舎では、図2のようにかちどき橋型に作るのも良い方法です。端を跳ね上げるには相当の力が必要ですからウインチを使ってロープを巻き上げる方式が良いです。

次に離乳子豚の移動です。分娩舎から離乳舎まで通路続きの場合は、歩かせるのが最も効率的です。しかし、防疫上の理由で、離乳舎が分娩舎と離れた場所にある農場が多いと思います。

子豚専用車両がある農場では問題ありませんが、肉豚車輌で運ぶ場合はコンテナを使うと効率が上がり足のケガも少なくできるケースがあります。

写真2は、コンテナの一例です。これは三甲株式会社のジャンボックス#200です。これの下にキャスターを4個取り付けると取り扱いが楽になります。これに離乳子豚を入れたまま通路を転がし、トラックやローダーの籠に積んで移動します。

 

次は肉豚の移動です。肉豚の体重測定や肉豚出荷は、養豚作業の中で12位を争う重労働ではないでしょうか。これをいかに短時間で労力を少なくこなすかで、従業員のモチベーションや収益にまで影響するものです。

皆さんの農場では豚房から豚を出す時に誘導版を使っているでしょうか。プラスチック製の「豚追い板」は市販されています。これは通路の豚を追って行くのには便利ですが、豚房から豚を追い出す時には小さすぎると思いませんか。

私がお勧めするのは、図3のような改造コンパネです。

そして、図4のように置いて使います。この方法なら豚房の出口で豚が向きを変えて戻る事ができません。

コンパネは、持ち歩くのに少々重いですが、作業効率はそれ以上にアップします。但しこの方法は豚房の仕切が柵ではなくパネルの豚舎では、2人がかりでコンパネを持つ必要があります。

 

次に豚舎の中で豚移動する時に、豚房の扉が片開きで不便を感じる場面があると思います。左右どちらにも開けることができたら便利ですよね。そこで、片開きドアを両開きに改造する手法が図5です。

ピンの抜き差しを楽にするために次の様な寸法にします。(A)の上部ピンは輪金具の下に1cm位貫通させる。(C)の下部ピンは支柱側輪金具の下端から出ない様な長さにする。

そして、ピンを引き上げた時に下部ピンは抜けるが上部ピンは支柱側輪金具から抜けない位置(B)にストッパーを溶接する。

 

最後に交配ペンに出入りしやすくするための工夫です。

図6のように、人は通り抜けられるが、豚は通り抜けできないような間隔でポールを立てるのです。

ポールは鉄製の太さ15cm、高さ120cmのものを使います。間隔は内寸で25cmにします。

この間隔なら種豚は通れません。但し人間も太った人は出入りできないかも知れません。

 

以上、豚の移動にまつわる一工夫でした。他にもいろんな工夫をされている農場があると思います。ひらめいたらまずは試してみてください。

 

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最終更新日 : 2022/01/23