「豚舎・設備のお悩み解決!」(2)換気の工夫

今月は、換気の工夫をご紹介します。養豚は設備産業ですから、設備が良いほど良い成績を出しやすくなるものです。かといっても、飼料価格高騰の時節柄、設備にかける資金が無い。という農場が多いことも事実です。そこで、少ない予算で換気を改良する様々な工夫が不可欠になってきます。

まず、換気の目的をおさらいしておきましょう。
@、豚舎内温度のコントロール
A、豚の呼吸によって生じた湿気や二酸化炭素の排出
B、豚舎内に溜まった糞尿から発生するアンモニアなどの有毒ガスの排出

おもな目的は以上です。これらが何に影響を及ぼすかというと
@、出荷日令(1日増体重)
A、肥育事故率
B、飼料要求率(飼料効率)

@とAの悪化の結果としてBの飼料要求率が悪化するわけです。ですから、飼料費が高止まりしている現状の養豚環境では、換気の改善がコストダウンにもつながってきます。

さて、換気設備が無いカーテン式自然換気豚舎を改良しようとする時に豚舎のレイアウトや大きさ、天井の有無や高さなど、一様ではありません。どういう風に改良すれば良いかを考える時には次の基本事項を念頭に置いて下さい。
@夏場は豚に直接風を当てて良いが、冬はNG
A豚舎全体の空気をゆっくりと動かし、空気の淀みを無くす
B冬は隙間風が豚に当たらないようにする。
C寒冷地方では、冬には外気を直接入れずに、天井裏を通して暖まった空気を入れる。

まずは両サイドカーテンの肥育豚舎の例です。

図1は天井がある豚舎の場合です。順送ファンを付けて空気の流れを作り、臭気の淀みをなくします。それから、天井入気ファンを取り付けて天井裏から室内に空気を流し込むようにします。外気を天井裏に取り込む取り入れ口が無い場合は、妻側にガラリを取り付けて下さい。小さい豚舎や、分娩舎、子豚舎など、最低換気量が少ない豚舎の場合は、家庭用25cmファン(台所用)を使うと、安上がりです。図2のように導風板を取り付けて、冷たい風が真下に落ちるのを防いで下さい

また、大きな肥育豚舎などでは、図3の様に既製品の入気口の裏に換気扇を取り付けて使うのが良いです。この場合、インバーターで風量を調節できるようにしておくと便利です。

表1に最低限必要な換気量を示しました。これを参考にして換気扇を選んで下さい。

例えば肥育豚500頭収容の豚舎では、最低換気量は0.2㎥×500頭=250/分です。

図3の入気口はサイズが787mm×787mmで、風量が93.8/分です。これに見合う換気扇は畜産用50cmファンです。その1つ三菱電機のHG-50DTCN-50101/分で3相200V200Wです。このセットを3台取り付ければ良いことになります。この換気扇は重量が16.6kgありますから、天井に取り付ける際はこの重量を支えられるような補強が必要です。

 次に天井が無い豚舎の場合は、図4のようにダクトファンを使うのが良いでしょう。夏は風穴を下に向けて使いますが、冬は横を向けて使います。そしてダクトファンをインバーターを通して配線し、風量を調節して使います。また、図5のようにダクトファンを壁から少し離して設置し、開口部をコンパネなどのスライド板で外気の取り入れ量を制限すると温度調節に役立ちます。

 次にインバーターの選び方と配線方法です。前述した換気扇の追加の場合もそうですが、既存の換気システムが壊れて、同じものが手に入らない場合も役立ちます。インバーターの容量(出力)は、換気扇の出力の合計よりも大きいものを選んで下さい。

例えば出力0.75kwのメーターファン(羽根直径1mの換気扇)が8台設置されている回路では、0.75×86kwです。図6のようにインバーターには決まった規格が有り、ちょうど6kwのものはありませんから、7.5kwタイプを選べば良いことになります。既存のインバーターが壊れた場合は、同じ出力のものであればメーカーが異なっても使えます。

 インバーターの配線は、電気工事店へ依頼するのが普通ですが、出力調節を手動で行うだけでしたら、自分でもできます。電源側の線を端子Rには赤線を、端子Sには白線を、端子Tには黒線を繋ぎます。負荷側(換気扇側)の線を端子Uには赤線を、端子Vには白線を、端子Wには黒線を繋ぎます。

ウインドレス豚舎で、既存の換気扇では風量不足の場合に換気扇を増設するケースがあると思います。その時は、インバーターや、ブレーカーの容量も間に合うかどうかを計算して、くれぐれも容量オーバーにならないように注意して下さい。

 開放豚舎でも、ウインドレスでも、順送ファンは付けた方が良い環境になります。取付方は図7のように豚舎内の空気が陸上トラックのようにぐるっと回る配置にして下さい。

順送目的のみでしたら30cmぐらいの小さい換気扇でも十分です。夏にたくさん風を動かしたい場合はもっと大きな換気扇を取付、インバーターで風量調節して下さい。冬場の順送ファンの調節は、人の肌では風を感じないが、蜘蛛に糸などがかすかに揺れる程度の風量が最適です。もっとも、掃除を徹底している豚舎には蜘蛛の巣なんかあるはずは無いですので、平たいビニールひもを換気扇の前に垂らしておけば目安となります。

 最後に輸入品の換気システムの場合の注意点を挙げておきます。多くの製品が単相100Vまたは単相200Vの仕様です。このモーターはインバーター制御には不向きですので、コントローラーが壊れた時は、修理または同じものを購入することになります。

また、最近は、ネット通販でも換気扇を安く購入できますので、換気扇の購入と取り付け工事は自前で行って、配線工事のみ電気店へ依頼するのが安く上げるコツです。

 

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最終更新日 : 2022/01/23