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今月から連載枠を頂きまして、主に豚舎での仕事の一工夫を書かせて頂きます。 初回の今月は豚舎でとは限らないのですが、管理者が一番悩むところの人間関係。 人の心のつかみ方やうまく動かすコツなどを紹介します。 農場によってはなかなか従業員が定着せずに入れ替わりが激しくて困っている。という話しを耳にします。辞めた社員に理由を聞くと、その多くが社内の人間関係だそうです。それは上下関係だったり社員同士だったりもします。ですから、経営者や場長にとっては社員の心をつかんで良い社内人間関係を作ることが、仕事の能率アップにも結びつきます。 【相手を理解するため、良く話を聞く】 ではどうやって人の心をつかんでいくかの本題に入ります。 あなたは社員の話を最後まで聞いていますか。途中まで聞いたところで、 「いや、そうじゃないんだ。・・・だよ。」といった具合に遮ったりしていませんか。 たとえ相手が自分の考えと違う主張をしてきたとしても、 「なるほど、君は・・・と思うんだね。」というふうにまずは返します。これはカウンセリング用語で『受容』といいます。相手が言ったことを要約して繰り返すのです。否定も肯定もしないところがポイントです。この一言で話し相手は自分のことを受け入れてもらえたと安心の感情が湧いてきます。そしてこちらの話しを聞き入れる心の準備ができるのです。そして次に 「○○は□□だから△△だと思わないかい?」と誘導質問をしていくのです。 また、話題が変わったら受容を繰り返していきます。これが基本です。 ところが、忙しい時にそんなまどろっこしい話しをしていられないよ。とおっしゃる声がが聞こえてきそうですね。しかしよく考えてみて下さい。10分や20分多く、じっくりと話しを聞いてあげることで、その人の作業の能率がアップすれば十分元が取れると思いませんか。管理者は作業の時間を削ってでも社員の話を良く聞く時間を作るべきなのです。 ただ、人の性格は様々で、相性の合う合わないが多少なりともあるものです。
この図は私が、あるカウンセリングスクールで学んだ性格分類です。内向的な人は場内会議などでも意見を出すことはほとんど無く、こちらから聞く努力をしなければなりません。外向的な人ははっきり自己主張をしますから、ややもすると少数意見であってもそのひとの主張に流されてしまいがちになります。感情的な人は、考えるよりも感じたままに行動を起こしがちなタイプです。思考的な人は何をするにもよく考えてから行動する反面、考えすぎてなかなか行動に移せないこともあります。 この4分類を用いて自分や社員はどのタイプか考えてみて下さい。同じタイプ同士はぶつかり合うことが多いです。特に『外向感情』同士ではすぐにけんかになってしまいがちですから気をつけて下さい。そんな時は第3者をはさんで話し合うのも一手段です。個別に話しをしたい時に、例えば会議や朝礼の後に「○○さん、ちょっと残ってくれ」と言って引き留める方法は良くありません。それよりも、管理者自らが話をしたい担当者の仕事現場に赴いて話しをするのがベターです。これは他の社員に対する配慮です。 また、内向的な人の要望や不満を引き出すには酒の席を設けるのも有効な手段です。私は場長時代に、2ヶ月に1度で宴席を設けていました。そこでは酔った勢いでみんながいろんな愚痴をこぼすものです。私は宴会が終わると直ぐに、その中の重要なことをメモしておいたものです。ある意味、管理者は役者になる必要があると思います。酔ってバカ騒ぎしているふりをしていても、重要な会話はしっかりと記憶に残すというふうに。 【良く働いて結果を出してもらうには】 さて、次はどうやって社員に意欲的に働いてもらうかです。感情タイプの人は給料ややりがいなどの欲求を満たされる方向を示されると意慾が出るものです。一方、思考的な人にはその仕事をなぜこのような手順でやらなければいけないのかという、理由付けも必要です。例えば、『出荷する肉豚を選ぶ時は目測だけでは無く、体重計に豚を乗せて実測しなさい。』と指示をした場合、面倒でたいへんな仕事は誰でも手を抜きたくなります。そこに『枝重75kg〜80kgの間に揃えて出すことにより、肉豚1頭当りの売上が多くなる。そうすれば農場が儲かり、それが皆さんのボーナスにも反映されるんだよ。』と付け加えることにより、体重実測の重要性を納得して真剣に仕事をしてくれるようになります。 また、社員が一丸となって成績を上げていくためには、経営者が目標や行動指針をはっきりと示す必要があります。皆さんの会社では社是を作っていますか。または『今年の目標』でもいいです。私は勤務していた農場を退職して6年になりますが、今でもその会社の社是を暗唱できます。社是や、今年の目標を事務所に掲げ、朝礼や場内会議の時に全員で朗読するようにお勧めします。養豚場は3Kの職場とも言われますが、それを解消すべく労働環境を改善することも必要ですが、会社がどの方向に向かっているのかを社是などによりはっきり示すことで、「多少つらくても、みんなで頑張っていこう」という前向きな力が湧いてくるものです。 次に日々の作業指示について考えてみましょう。管理者が毎日、事細かに作業指示を出して優秀な成績を上げている農場を見たことがあります。しかし私はそういう指示体系に賛成できません。というのは、その管理者が病気やケガで休んだりすれば、たちまち機能不全になってしまうからです。日常の定型的な作業はマニュアル化し、有能な社員には細かな指示はしないで任せる。結果を出せばそれで良しとすることです。そして週間作業スケジュール表を作っておき、各作業ステージ毎に何曜日は何の作業をやるかを明確にしておきます。さらに、種付手順や発情確認、助産、分割授乳、病豚治療、離乳子豚移動、ワクチン作業、肉豚出荷、など、各ステージの作業一つ一つに作業マニュアルを作っておきます。はじめはマニュアル一式をを整備するのに膨大な手間がかかりますが、社員が入れ替わった時や担当替えした時の教育がやりやすくなります。
この表は作業マニュアルの一例です。 そして、イレギュラーな仕事などはその都度指示を出すことになりますが、ここでも一工夫あると能率がアップします。大抵の管理者さんは口頭での説明で済ませているのではないでしょうか。説明した後にその担当者が理解したかどうか、復唱させてみて下さい。正確に復唱できない時は、紙に書いて渡すのが一番です。それでもうまく説明できないようなケースでは、現場でやって見せ、その上でメモ書きを渡すのが効果的です。 【管理者でも心が萎える時があります。そんな時は】 このように、人をうまく動かすには面倒なことが多いですね。管理者自身もやるべき作業を抱えていると、どうしてもそちらを優先してしまい、対人関係の仕事を疎かにしてしまいがちになるものです。部下から上がってくる問題が多くなると心が萎えることもあるでしょう。そんな時には、元気をもらう源(メンター)が必要です。自分が師と仰ぐ人の書いた書籍を読んだり、講演の録音音声を聞いたりすることが良薬となります。 最後に私がお勧めする心の薬をいくつか紹介します。 ・子育ての勘所 田中信夫 著 ¥407(子育てのみならず、人を育てる参考書) ・元気の出る話 田中信夫牧師の講演動画(YouTube) http://www.youtube.com/watch?v=bwTtsZmAf6g ・成功研究会CDブック ジェームス スキナー 著 ダイレクト出版 刊 ・7つの習慣DVDビデオ講座 ジェームス スキナー 著 ダイレクト出版 刊 ダイレクト出版の商品一覧ページ http://d-publishing-cs.jp/lineup/
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