パーシャルデポピュレーション成功の秘訣

 私は今、クライアント様に農場の豚総入れ替え(デポピュレーション・リポピュレーション)を勧めているところがあります。低豚価&飼料価格高騰の状況では、病気を抱えたまま利益を出していくことが困難だからです。しかしこういう提案をすると必ずといってよいほど、次のような疑問をぶつけられます。

「本当に病気が全部抜けるの?」、「一度綺麗になっても、また病気が入ってしまったら何にもならないよ」という類いです。でも私は「大丈夫、任せてください。」と返します。

 その根拠は、いままでいくつかの農場で実戦して頂いて成功した経験があるからです。そのなかでも一番の大仕事は、以前勤務していた農場でパーシャルデポピュレーションの手法でPRRSを撲滅したことです。もう10年以上前ですから、おそらくオールアウトせずPRRSを撲滅した日本で最初の事例だと思います。ただ、当時の農場や取引先企業さまの事情で、一般には発表しませんでしたから、そのことを知る人はほとんどいないと思います。

 一回のトライで成功して、再侵入を許さなかったカギは、管理獣医さんが作成したプランが緻密だったことが第一です。また、それを場長が毎日厳格に運用した事も大きかったと思います。獣医さんは1ヶ月または2ヶ月に1度しか農場へは来ません。しかし、農場の現場では、時々予期せぬトラブルが発生するものです。その時に陣頭指揮を執るのは場長の役目ですから、防疫ルール優先で対応を考える必要に迫られるわけです。

 例えば、屠場まで行く肉豚出荷トラックは農場内へ入れずに、農場敷津境界線あたりに中継所を儲けて移し替えるルールがあるとします。出荷時間直前になって場内輸送トラックが故障して動かなくなりました。さあ、あなたならどうしますか。ルールを曲げて出荷トラックを豚舎の出荷台へ着けますか。

 私はこんな経験が2度ありました。どちらの時もまず、屠場へ搬入時刻が遅れる旨を連絡してから、1度目はリース会社からトラックを借りてそれにコンパネで囲いを取り付けて使いました。2度目はリースから借りることができなかったために、バケットローダーとたい肥運搬用のあおりの高いダンプを使いました。ピストン輸送はルール違反なので、ダンプの使用は1回のみ。あとは1頭ずつバケットに乗せて運んだので時間はたくさんかかりました。もちろんバケットローダーでもピストン輸送はダメですが、中継所の柵にバケットを接触させないで、柵越しに豚を中継所へ落とすことによってしのぎました。

 さて、防疫ルールを作るときは農場敷地内をいくつかのゾーンに分けてルールを作成します。パーシャルデポピュレーションを遂行していく中では、既存豚がいるダーティーエリアと、病気を抜いた豚がいるクリーンエリアが時間とともに変化していきます。これを農場員全員に100%守ってもらうためには、ルールのビジュアル化をするとうまくいきます。そして何のためにこんな面倒なことをやっているのかを全員に理解してもらうことが必要です。

 当時私は、全員が出社する曜日に朝礼を行い、「これに成功すれば年間○○百万円の収益改善になる。しかし、失敗すれば●●千万円の損失になる。それが皆さんのボーナスに直結するのですよ。」と毎回言ってきました。そして【今週のエリア分け】という図面をつくって説明し、農場のあちこちに貼っていました。特に注意が必要な、エリアの境界には、図1〜3のような張り紙をしていました。ミーティングでしゃべっただけでは徹底しないものです。このように目に見える形でルール違反を防ぐ仕掛けが有効なのです。

 テキスト ボックス: ○月△日よりドア封鎖
肥育舎へは東側入り口
から入ること

 

図1

 

 

 テキスト ボックス: ここから先ダーティーエリア
行きはヨイヨイ
帰りは怖い

 

図2

 

 

 図3(図2の紙の裏側はこうなっています)

テキスト ボックス: ここから先はクリーンエリア
事務所に戻って
着替えてから入ること

 

 

 

 

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最終更新日 : 2022/01/23