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浄化槽を増やさずに飼養頭数を倍増する。
読者の皆さんは、このタイトルを見て一見非常識な事と思いましたか。 飼養頭数が倍増すれば、汚水処理施設も堆肥発酵施設も倍増させなければいけないのが常識です。私の以前の勤務先農場では、母豚400頭から700頭に、私のクライアント先では、母豚100頭から180頭に増やしましたが、浄化槽は増設していません。排水量は大幅に増えているのにです。 その秘密は汚水の前処理にあります。優秀な前処理施設を追加することで、浄化槽へ流入するSSとBODの総量を増加させなければ良いわけです。但し、もともと浄化槽の容量が不足気味の農場では水量の増加で、浄化槽の滞留時間が十分取れなければ容量アップも必要です。 また、『家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律』が本格運用されてから8年が経過しましたので、その時導入した汚水処理施設が処理能力低下して困っている農場も有ると思います。その場合もこの前処理システムが有効活用できます。 私がお勧めしているのは『リセルバー式脱水設備』と言います。これは、特許を取得している製法で作られた植物性繊維質を汚水に添加して、そこに高分子凝集剤を添加して脱水機に掛ける方式です。この「リセルバー」という粉は、古紙や籾殻などが原料で、綿を細かく砕いたような形状に特殊加工したものです。繊維質が核となり凝集剤が糊となって1〜２ｃｍの大きなフロックを形成します。絞るときは繊維質が水路となって高い脱水率が得られます。ですから高分子凝集剤だけを使う、通常の脱水設備よりもSS除去率、BOD除去率ともに飛躍的に向上します。特にＳＳ除去率は９９％にも達するものです。特許を持っているメーカーは宮城県内の中小企業ですが、大手企業と提携した販売をしていないので、全国的には知名度が低いのが非常にもったいないことです。 私は自分のクライアント先4件に紹介して入れて頂いたのですが、どの農場でも大変喜ばれています。その概要の一部を紹介したいと思います。 山形県内の母豚300頭一貫経営農場では数年前に複合ラグーンを設置したのですが、豚舎の老朽化に伴って糞尿分離が悪くなり、ラグーンが泡だらけのパンク状態になっていました。この農場では、振動篩とスクリュープレスで前処理を行っていましたが、振動篩を取り払い、その代わりにリセルバー添加装置を導入しました。その後約4ヶ月で複合ラグーンは正常な状態に戻りました。 岩手県内の母豚180頭一貫経営の農場では、母豚を１２０頭から１８０頭に増頭時にコンテナ離乳舎を8台導入しました。それ以前は離乳子豚は、離乳後約1ヶ月間分娩舎に置き、その後、子豚舎→肥育舎というフローで、いずれも糞尿分離豚舎でした。コンテナ離乳舎は糞尿混合豚舎ですから、浄化槽がパンクするのは火を見るよりも明らかな状況でした。 この農場の既存施設は前処理が振動スクリーンのみで、第1沈殿槽と最終沈殿槽の汚泥のみを高分子凝集剤を添加して多重円盤式脱水機にかけていました。ここへリセルバー添加装置を導入して、原水を全量脱水するシステムに改造しました。 この農場の件では特定施設の変更届けを提出するお手伝いもさせて頂いたのですが、保健所の担当者もはじめて見聞きする脱水設備なので、なぜこんなに除去率が高いのかを説明してほしいとか、リセルバーの成分は何かとか、添加率の根拠は何かとか、大量の質問を頂きまして、非常にやりがいのある仕事をさせて頂きました。この設備は畜産環境整備機構のリース対象機器にも認定されていますので、補助付リースも受けられます。 通常、増頭すれば浄化槽も増設が必要ですから、建設コストも莫大な金額になりますし、それに伴いブロワーの増設も必要ですから、消費電力も倍増します。しかしリセルバー式脱水設備にすれば既存方式に比較して、建設コストも消費電力も半分以下で済みます。この大きな節電効果も昨今の電力事情に大いに貢献するものです。もちろん、魔法の施設ではありませんので、浄化槽のｐH、DO、MLSSなどの管理は通常と同じように必要で、過負荷になる場合は容量アップは当然必要になります。この母豚180頭に増頭した農場の例で見ますとブロワーは11ｋｗが２台で22ｋｗですが、既存方式で浄化槽を２倍にすればブロワーだけで22ｋｗ増加します。しかし今回増加した電気設備はリセルバー添加装置と混和槽攪拌機の合計0.6ｋｗだけです。2.2ｋｗの脱水機の稼働時間が1日1時間から8時間に増えましたので、合計で1日20.2kwhの増です。既存方式ですと1日約440kwhの増になります。 最後に、この脱水設備のもう一つの利点ですが、脱水ケーキ（脱水機から出てくる固形分）の水分含有率が７０％台まで落ちるので、このまま堆積しているだけで発酵するのです。ですから堆肥発酵施設へ投入しても負荷の増加にならないことです。 |
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