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2020年1月 

 

 

 

 

 

 

豚舎の照明を整えて経済効果アップ

 

【はじめに】

豚舎の照明には、母豚の発情と受胎に対する影響と作業の能率や仕上がり具合に対する影響の2つの役割があります。まず発情と受胎に対する影響ですが、豚はイノシシを家畜化したものと言われていますが、イノシシは秋には子供を産みません。冬の子育ては寒くて大変だからです。豚にもその名残があって、夏至を過ぎ日が短くなると、発情が来にくくなり、また、交配しても自然に流産が多くなると言うことです。それを防止するために、交配妊娠豚舎では、11516時間、照明を点灯することが推奨されています。そして、その明るさも重要で、母豚の顔の辺りで200ルクス必要と言われています。これは、楽に本を読めるくらいの明るさだそうです。

一方、作業の能率や仕上がり具合に対する影響としては、豚の健康観察のし易さや、洗浄作業で、汚れが完全に落ちたかどうかの判断を左右することになります。特に、離乳舎や肥育舎が暗い農場が多いです。ですから、暗い豚舎では汚れの洗い残しが多く見受けられます。ちなみに、JIS照度基準表によりますと、豚舎の基準はありませんが「作業を伴う倉庫」の基準は200ルクスです。

LEDランプの構造と特徴】

図1が
LEDランプの代表的な構造です。LEDは別名発光ダイオードと言い、直流電流で動作します。ですから、家庭や農場の電源である100Vや200Vの交流電源では直接動作しません。それでLEDランプの中には交流を直流に変える電源ユニットが入っています。また、LEDチップ1個の発光量は少ないので、何十個というLEDチップを並べた構造になっています。最近の信号機もLED化されていますからそれを見ると小さな発光体が何十個も合わさっていることがわかります。

 LED照明には次のような特徴が有ります。

1.長寿命。
寿命が4万〜5万時間と、蛍光灯の4倍ぐらいです。4万時間と言われてもピンと来ないと思いますが、1日10時間点灯で11年です。

2.低消費電力
同じ明るさの蛍光灯に比べると約半分、白熱電灯の1/7です。

3.環境に優しい
省エネ効果でCO2排出量削減につながる。また、人体に有害な水銀を使用していない。

4.防虫効果
紫外線や赤外線を出さないので、虫が寄ってこない。

5.低発熱
LED
自体はほとんど熱を出しませんが、電源ユニットから発熱します。
後述しますが、低発熱だと思って誤った使用法をすると思わぬトラブルに巻き込まれますので、注意して下さい。

6.粗悪品はちらつきが多い
安い粗悪品では電源ユニット分弱な場合があります。交流を直流に変換すると1秒間に100回又は120回の電圧変動があります。粗悪品ではこの変動が大きくてちらつきの原因になります。

【照明の種類によるコスト】

表1は、白熱電球、蛍光灯と
LEDランプのコスト比較です。これはランプ1個あたりの、1年間当りのコストです。1日の点灯時間は10時間で計算しています。

表1では、同じ明るさを得るため設備を比較したものです。直管形は豚舎での使用を前提にして、防水型1灯用で器具とランプ一体で取り替える前提で比較しました。蛍光灯用の照明器具(グローランプ型や、ラピッドスタート型)は、ほとんどが製造中止になっています。一応比較のために以前に調べた価格を参考価格として入れてみました。これから豚舎を建てる場合や、器具ごと交換する場合はLED照明のみが選択枝になります。
←写真1

写真
1がトラフ形(天井直取付型)防水LED照明器具です。
←写真2

写真
2は吊り下げ型防水LED照明器具です。これは防水コンセント付きなので、後から増設するのに便利なタイプです。
←写真3

写真
3はパイプ型防水LED照明器具を天井取り付けした施工例です。表1から解るように寿命や年間コストを比較してもLEDが有利なことは明かですし、LEDは蛍光灯のように有害な水銀を使用しないために、環境にもやさしいと言えます。

1右側は白熱電球とLED電球の比較です。
←写真4

写真
4が全方向型LED電球です。こちらも買換え時の電球価格は高いものの、年間総コストを比較すればLEDが最も優れていることは明かです。電球型蛍光ランプの方がLEDよりも購入価格は安いですが、寿命が5倍違います。交換する手間を考えたらやはりLEDがお薦めです。

 

【豚舎への導入ポイント】

繁殖豚舎が暗くて良い発情が来なかったり、他の豚舎でも暗くて作業性が悪い農場では、既存の蛍光灯の他にLEDランプの増設工事をお勧めします(写真2)このタイプではメス型防水コンセントとオス型の防水プラグがついていますので、連結してストールの上に吊り下げて使えます。豚舎には最適品です。既存の照明と連結する場合は既存配線の許容電流を超えない様に注意して下さい。
 

また、繁殖成績の上がらない農場では節電と言って、人が作業している時以外は消灯しているところがあります。しかし、母豚には1日16時間光を当てるのが良いとされています。照度不足も問題です。そんな農場では是非、LED照明と24時間タイマーを追加して、1日16時間点灯を実施して下さい。

【導入時の注意点】

1.電球型の場合

LED電球には光の当たる方向が正面だけのものと、広角タイプと全方向タイプがあります。豚舎の場合は白熱電球と同じように全方向に光を発するタイプを選びましょう。
←写真5

また、写真5のように器具が密閉型の場合(ねじ込み式のカバーが付いていて、電球が密閉されるタイプ)は、
LED電球をお勧めできません。電球型蛍光ランプをお勧めします。

 なぜかというと、LEDは半導体なので熱に弱く、高温状態では劣化が早くなります。密閉された電球カバー内では電源基板からの放熱が悪くなり、最悪電源基板が焦げてしまうことがあります。もし、カバーを外して使いたいという場合は、洗浄や消毒の時に水をかけないように注意して下さい。

また、配光が下方向タイプでは電球が向いている方向は明るいですが横方向は暗いので、白熱電球と同じ明るさをうたっているLED球に変えると以前よりも暗くなった感じがします。この場合は値段は少し高いですが写真4のような全方向タイプを使って下さい。例えばI社の60型(広配光)の配光角は220度、消費電力7.3W、価格は770円ですが、同じくI社の60型(全方向)の配光角は290度、消費電力は同じで7.3W、価格は1,310円です。

また、LED電球は白熱電球よりも重いですから、取り付ける器具がぐらつかないかも良く注意して下さい。

2.蛍光灯の場合

現在豚舎で使われている蛍光灯のほとんどが、ラピッドスタート型です。安いLEDランプを買って、ランプの交換だけで済ませると危険です。安定器のバイパス工事が必要です。中には、「ラピッド型器具にも工事無しで取り付け可能」と書いてあるものがあります。しかし細かな字で「長く安定して使うには、安定器のバイパス工事をお勧めします」というようなことが書いてあります。実際に蛍光ランプが発火したり、安定器から煙が出たりするトラブルが消費者センターに寄せられていますので、ここは重要なポイントです。ラピッドスタート型蛍光灯は点灯時に200300ボルトの電圧を発生させます。LED蛍光ランプの規格を見ると、入力電圧100240Vと書いてあるものが多いです。だから限界を超える場合があるのです。

現在使用中の器具がインバーター型(調光式)の場合は、インバーターのバイパス工事が必須です。このバイパス工事は電気工事師の資格が無いとできません。LEDランプのメーカーによって給電方式が異なります。蛍光灯は両側に2ピンずつ、合計4ピンありますが、どのピンから電源を取っているかが違うのです。


(図2参照)工事を間違えると、
LEDランプを破損したり、発火して火事になったりする危険があります。これには工事費が掛かりますが、器具をまるごと交換するよりは安く済みます。ただし、バイパス工事実施後は蛍光ランプが使えなくなります。また、LEDランプであっても給電方式の異なるものは使えなくなります。

次に現在使用中の器具の使用年数(何年使っているか)です。蛍光器具の寿命は約15年と言われています。農場では使用環境によって劣化具合に雲泥の差が出ますので、一概には言えません。コストのことも考えると一応10年を目安にして下さい。10年以上経過している器具では、器具ごと交換して下さい。ランプだけLEDに交換してもランプの寿命より先に器具が壊れて使えなくなる可能性が高いからです。

また、同じ直管40W型と書いてあっても安物には照度の暗いものがあります。直管型も取付面側(天井側)は暗いので、良く確認して明るいものを購入してください。明るさは単位「ルーメン」(LM)で表示されています。試しに2〜3本買ってみて現場で様子を見てから本格導入するのが最も安全と言えます。

【まとめ】

このように、LED照明には利点も多いですが導入時の注意点もありますので、くれぐれも事故の無いよう、注意点を守ってコストダウンに応用して下さい。

 

 

 

 

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最終更新日 : 2022/01/23