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2019年7月 

 

 

 

 

 

 

夏季を乗り切るための豚舎環境の整備

 

昨年は6月から猛暑が続きましたが、今年の夏はどうなるでしょうか。豚にとっては冷夏になって欲しいところですが、地球温暖化の影響でしょうか近年は猛暑になることが多いように思えます。ですから豚舎環境は暑さに対しても寒さに対しても豚にストレスを与えないように備えをしておくべきと思います。国内の養豚場の豚舎形式はさまざまですので、その豚舎に応じた対策を取らなければいけません。ただ、基本的な考え方は共通しています。それは、@外からの熱を豚舎内に入れないこと。A豚舎内の換気を良くして豚の体から出る熱を排出すること。の2点に集約されます。それでは主な豚舎豚舎別に対策をまとめていきます。

【天井無しのカーテン式豚舎】

比較的温暖な地方の種豚舎や肥育舎に多い形式です。屋根が熱くなって豚舎内に輻射熱が入ってくるので、これを防ぐことが第1です。その方法は大きく分けて3つ。1つ目は現在の屋根にカバールーフと呼ばれる、断熱材付きの屋根材を上から被せて施工する方法です。スレートの屋根材の豚舎でよく採用される方式です。

図1
現在の屋根材の下地が
C形鋼(俗にCチャンと呼ぶ)の場合は図1のようにスレートを貫通させる形でC形鋼をドリルビスで固定します。
 図2
但し、豚舎が古くて
C形鋼が錆びてボロボロの場合は図2のようにC形鋼の中にタルキを差し込んで、それにビス留めします。

図3
スレートが比較的新しい場合は図3の様に、屋根裏に断熱材を張るか、または図4の様に断熱材で天井を張るのが良いです。
図4
図4
の様なモニター付き豚舎の場合は水平に天井を張るとモニターを塞いでしまいますので屋根裏に断熱材を張るのですが図4の様に屋根材との間に20〜30cmの空間を設けて張ると効果的です。
図5
それは図5のように屋根裏で暖められた空気が上昇してモニターから抜けて行く気流に釣られて室内の空気も排出されるからです。

換気の対策としては順送ファンの設置です。通常はメーターファン(順送用の羽根直径1mの換気扇)を10m間隔ぐらいに設置します。
図6
図6
のような真ん中通路で2列の肥育豚舎ならば1列ずつ配線の系統を分けます。制御はサーモでの
ON-OFFではなく、インバーターを介して速度調整を出来るようにするのが良いです。そして冬は片側を反転させて室内の空気を循環させると豚舎内の換気ムラが無くなります。片側ずつ別々のインバーターで制御すれば、インバーターの操作で簡単に回転を反転できます。

さらに、カーテンを全開にしたときに直射日光が豚に当たるようでしたら、図6の様によしずを取り付けるか、またはツル性の植物を這わせるのも良い事です。アサガオを這わせれば美観も良くなります。ヘチマやひょうたんや、カボチャでもその実の利用価値もありますね。

以上の様な対策済みでもまだ暑い豚舎では、クーリングパド設置をお薦めします。脇がカーテンの豚舎でも、カーテンの上下の壁を隙間風が入らないように補修すれば図7の様なトンネル換気のクーリングパドシステムを組むことが出来ます。
図7
7aの様に間口が狭くて長い豚舎では皆既側の壁に必要な数の換気扇を取付け出来ない場合があります。その場合はトンネル換気用の大風量ファンを使うと良いです。国産ではソーワテクニカのKH-S100JTAG型がお薦めです。これは同じ直径1mタイプでも出力950Wで風量が毎分530㎥あります。標準型は400Wで風量が毎分330㎥なので同じ台数でも換気能力が1.6倍になります。

カーテンを閉めた場合の密閉度がどうしても足りず、隙間風が多く入るようであれば、クーリングパドではなく、細霧またはミストノズルを各豚房に設置する事も有効です。動噴をタイマー運転にして、例えば3分間運転して15分休むなどの繰り返し運転をする事です。サーモとも連動させ、一定温度以下の場合は運転休止になるようにすべきです。この設備は冬場の乾燥時期に加湿装置としても活用できます。このような制御盤はツインタイマー、デジタルサーモ、マグネットスイッチの部品だけで簡単に組むことが出来ます。私は今年、あるクライアント様へ製作して差し上げたところです。

 

【天井ありのカーテンまたはガラス窓豚舎】

このタイプの豚舎でもまず第1は断熱材の増強や補修をすることです。天井や壁断熱材がネズミの穴だらけで、断熱効率がガタ落ち状態の豚舎を見かけることがあります。こういう豚舎では、断熱材の張り替えが必須です。どうせ張り替えるならば同じものではなく、ネズミにかじられない材質のものを選んで下さい。それには断熱材の両面にプラスチックパネルを張ったものがお薦めです(写真)。かつては両面ガルバ(ガルバリウム鋼板)やZAM鋼板張りが良いと言われましたが、最近ではプラスチックパネル張りの方が軽くて長持ちすると私は評価しています。商品は複数メーカーから出ていますので、お取引の養豚資材販売会社へ問い合わせて頂ければと思います。片面がプラスチックで、反対側がアルミ箔張りの断熱材もあります。これは両面プラスチックのものよりも価格が安いですが、これを天井材に使う場合は注意すべき点があります。

図8
のように水道やガスなどの配管をサドルバンドを使って天井から吊り下げる場合はネズミにかじられて断熱材がはげてしまいます。配管を天井直付けにするか、又は豚柵から支柱を立ち上げて支持し、天井と配管の間を25cm以上間隔を空けるとネズミにかじられません。

次は換気の改善ですが、順送ファンや、クーリングパド、細霧・ミスト設備が主な選択しになります、それぞれの設備の導入法方については天井無しのカーテン式豚舎の章を参照して下さい。

 

【ウインドレス豚舎】

最近立てたウインドレス豚舎ならば断熱材はしっかり入っていることと思います。ただ、良くあることは、後付けでクーリングパドや脱臭設備を取り付けた場合に換気量が少なくなって思うような効果が出ていない場合です。これは、クーリングパドや脱臭設備により、空気抵抗が増えるので換気量が落ちるからです。その場合は換気扇を増設する必要があります。増設するスペースが無い場合は、前述の大風量換気扇に交換することで解決します。但し、制御盤も消費電力が増えた分をまかなえるだけの設備に改造する必要があります。

ただ、換気扇を増設すれば電気代もアップします。ですから、クーリングパドや脱臭設備の面積も再検討すべきです。空気が通る面積が大きくなれば、換気1立米当りの空気抵抗も減りますので、換気量は増加します。その他に換気量を低下させる要因としては、換気扇の羽根やシャッターに付いたホコリです。豚舎を洗浄する度に羽根やシャッターも洗浄してホコリを落としましょう。また、換気扇のシャッターが風圧式ならば、電動シャッターに交換することで空気抵抗を減らして換気量を増加させることが出来ます。

また、クーリングパド設置豚舎では、パド以外の部分から隙間風が入る場所が無いかどうかを再チェックしましょう。隙間風が多いほど冷房効果が落ちます。意外な落とし穴は換気扇のシャッターが一部欠けていたりゆがんでいたりして、止まっている換気扇から外気が逆流していることがあります。換気扇のシャッターの閉まり具合も良くチェックしましょう。

また、クーリングパド設置済みの豚舎に新たに脱臭設備を追加する場合はクーリングパドを外してしまい、代わりにミスト設備を設置することも、電気代節約と換気量アップを両立させる方法として選択枝の一つとなります。

 

【豚舎形式共通の対策】

(1)  通路の洗浄消毒
豚舎内の通路にこぼれた餌や、豚房からはみ出した糞を高圧洗浄機で毎日洗い流すことは、暑さ対策と衛生対策、悪臭発生低減の1石3鳥の効果が期待できます。ただ、高圧洗浄機を移動して歩くのは面倒です。洗浄機はサービスルーム等に固定しておき、豚舎内に高圧配管をして、何カ所かにストップバルブとワンタッチカップリングを取り付けます(図9)。

ケルヒャーなどの高圧洗浄機のホースはねじ込み式ですが、ワンタッチカップリングにするアダプターも売られています。このようにすれば、ホース付き洗浄ガンだけを持って移動することが出来て便利です。ただ、洗浄機メーカー純正品のワンタッチカップリングは高価です。近所に高圧ホースを加工する工販店があるのでしたら、そこで洗浄ホースに直接ワンタッチカップリングを取付加工して貰った方が安くて軽くて使いやすいです。

(2)  自家使用型太陽光発電の設置
豚舎の屋根にソーラーパネルを設置して、発電した電気を自家使用する事で、屋根の温度上昇低減と電気代節約の1石二鳥の効果が期待できます。天井がある豚舎でも、天井裏からの輻射熱が減少します。現在は太陽光発電の売電単価が18円と安くなりましたので、売電では利益が望めません。しかし、電気の契約を日中の単価が高く、夜間が安いタイプに変更すれば電気料金節約効果が望めます。日中は1720円(季節と時間帯で変動)、夜間は1112円ですから、単価の高い日中分の一部を太陽光発電で賄う訳です。デマンド値(30分ごとの最大使用量)も低くなりますので、基本料金も安くなります。

(3)  働き方改革
夏の暑い日は仕事をしたくないですよね。昼休みに涼しい事務所で過ごしていたら、午後の仕事で豚舎に行くのがうんざりするものです。だったら夏は昼休みを長く取る勤務態勢にしてはどうでしょうか。例えば、出勤が7時、昼休みは12時から15時、退勤が18時にするのです。私も現役時代にこのようなシフトを実施していました。昼休みが3時間ありますので外出自由にしておくのです。また、早番、遅番のシフトも試したことがあります。早番は5時〜14時。遅番は13時〜21時です。種付や分娩舎の給餌は早朝と日が暮れてからの涼しい時間にする事で繁殖成績もアップします。このようにシフトを変更する場合は従業員の意見や希望も聞きながら協議しましょう。人手不足の時代ですから、経営側から一方的に押しつけては従業員が定着しなくなりますので。

 

 

 

 

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最終更新日 : 2022/01/23