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2016年8月 

 

 

 

 

 

 

「省エネ」で図る経営改善

近年、養豚場の生産経費に占める光熱費の割合が年々高まっており、いかに省エネに取り組んでコスト削減するかが経営改善の重要事項になっています。豚舎が古くなってくるとエネルギー効率が悪くなり、気づかないうちに光熱費がかさんでしまうものです。また、新しい豚舎でも使い方が間違っていたせいで、光熱費の無駄が発生している場合もあります。そこで今回の特集では省エネを実践する上で大切なポイントや省エネに関するノウハウをいくつかご紹介していきます。

 

 【注目すべきポイント】

@    ハウジング(断熱材)隙間
一番重要なことは豚舎の断熱です。つまり、夏は外からの熱を進入させないこと。冬は室内の熱を逃がさないことです。まず抑えておきたいのが屋根断熱。屋根板の下にどれくらいの断熱材が入っているでしょうか。また、入っていてもネズミにかじられてほとんどの部分が薄くなっていては断熱効果がなくなってしまいます。断熱材を追加する方法としては、カバールーフと言って現在の屋根の上に断熱材付きの屋根板を被せて施工する方法と、断熱材で天井を張ることです。どちらを選択するかは、現在の豚舎構造に依って異なりますので、工事業者とよく相談の上で決めて下さい。
次に壁断熱です。ウインドレス豚舎なら壁や天井の断熱材、開放豚舎ならカーテンとそれ以外の部分の壁断熱材に破損やネズミの食害が無いかどうかです。ネズミ穴の補修には発泡ウレタンフォームを充填するのが最も簡単です。
(写真1)
通販のモノタローでは
12本入り1箱単位の販売もありますのでお得です。予算が許すのであれば、片面がガルバリウム鋼板の断熱材に張り替えるのがベストです。
カバールーフや片面ガルバの断熱材を施工する場合は『生産性向上設備投資促進税制』の適用を受けて、50%の即時償却または投資額の4%を税額控除出来ます。

A    冷房と暖房のバランス
ウインドレス豚舎の分娩舎や離乳舎で良くあることが、暖かい日中でもガスブルーダーの火力が強のままで、換気扇がフル回転しているケースです。これではガス代と電気代のダブルで損をしています。朝夕にブルーダーの火力調整を行うようにして下さい。ブルーダーに火力調整器が付いていないのであれば、火力調整バルブを購入して取り付けて下さい。あるいは、春から秋にはガスブルーダーの代わりにコルツヒーターまたば床暖パネルを使うのも一つの方法です。コルツヒーターや電気式床暖パネルは出力の調整がガスに比べて簡単にできます。さらに1部屋のコルツヒーターや床暖パネルを一斉に無段階調整で出力をコントロールすることがベストです。これを実現するには暖房器具用コンセントと、その配電盤ブレーカーの中間にヒーター出力調整器を追加することです。

図1がその概略設計図です。電気工事店または制御盤制作会社へ依頼すれば作ってくれます。相談先が見つからない場合は筆者までご相談下さい。受注生産販売を始めました。

B    設備や機械のメンテナンスや運用時間の工夫
夏に多くなる電気料金のほとんどは換気扇によるものです。換気扇の羽根やシャッターにはホコリが付着しやすいものです。今すぐに換気扇を1台ずつ止めて清掃してみて下さい。そうすれば換気量も増えて豚舎が快適になりますし、空気抵抗が減る分消費電力も減ります。季節を問わず回っている換気扇は2か月に一度、夏場だけ使う換気扇は毎年春に清掃するように作業スケジュールを組んでおくことが大切です。
また、ウインドレス豚舎の換気制御盤が壊れたまま修理せず、手動ON-OFFで運用している農場も見かけます。これでは過換気になったり換気不足になったりの繰り返しで、なかなかちょうど良い換気状態は保てないものです。過換気になればAで説明したように暖房費と電気代のダブルの損失に加えて、発育停滞や浮腫病の誘発もあります。一方換気不足でも、発育停滞や肺炎の誘発などがおこり、思わぬ損失を招くことになりやすいのです。ですから換気制御盤が壊れた場合は放置せずに速やかに修理して下さい。
販売点やメーカーで既に取扱を終了してしまった場合でも大丈夫です。海外製の単相電圧制御式コントローラーなら、別メーカーのもので代用することが出来ます。ただし、配線替えには回路設計を少し理解できる電気工事店へ依頼する必要があります。またインバーター式ならば、制御盤制作会社へ依頼して同等品を作ってもらうことも出来ます。こちらも相談先が見つからない場合は筆者までご相談下さい。
運用時間の工夫ですが、回分式浄化槽(複合ラグーンやオキシデーションディッチなど)を使っている農場では、一般的に夜間に放流していると思いますが、これを日中に沈殿行程と放流行程を行うように設定を変えるのです。そうすれば夏の日中の消費電力を抑えられるので、デマンドが下がり、電気の基本料金が安くなります。更に電気の契約を季節別時間帯別契約にすれば、電気料金の安い夜間に曝気行程を行うのでの電気料金が安くなります。

 

 【取組事例】

@    カバールーフ

写真2は私のクライアント農場さんで、離乳舎の屋根にカバールーフを施工した例です。豚舎は築30年ぐらい経っていて、屋根はスレート1枚だけで断熱材はありませんでした。冬の室内温度が以前よりも3℃〜5℃高く保てるようになったそうです。

A    離乳舎保温箱

写真3と写真4は離乳舎に保温箱を設置した例です。以前はガスブルーダ−やガス温風ヒーターで暖房をしていましたが、ガス代が高く付くので、保温箱を設置して部屋の温度は以前よりも3度低く設定するようにしたのです。保温箱は既製品では合うサイズが無かったので大工さんに作ってもらいました。写真4には写っていませんが保温箱の下にはゴムマットを敷いて使っています。これで発育停滞はだいぶ解消されました。

B    コルツヒーター出力調整器の製作

写真5は私のクライアント様が、図1の設計図と別途の結線詳細図にしたがって自作した出力調整器です。室内温度に応じて離乳舎内のコルツヒーター全部を一斉に0%〜100%出力まで制御できますので、手間いらずで電気代の節約になっています。

C    膜槽ブロワーの交換
私のクライアント様農場で昨年、浄化槽のMF膜が老朽化したので交換しました。古いものは中空糸膜でしたが、新しい物は平膜タイプなので、膜洗浄用の送風量が少なくて済むのです。それで、ブロワーモーターを11kwから5,5kwへ交換しました。

写真6は交換後の電流計指示です。交換前は写真左側のものと同じでしたから、消費電流が約半分になったのがわかると思います。


【『生産性向上設備投資促進税制』の適用】

今回の記事でご紹介した設備や機材は全て『生産性向上設備投資促進税制』の適用を受けて、50%の即時償却または投資額の4%を税額控除出来ます。ただしメーカーが事前に経済産業省の認可を受けている規格品以外は、施主が個別に生産性の向上をシミュレーションする書類を作成し、税理士さんの承認を受けた上で経済産業省へ届出をする必要があります。これは来年3月末までに購入した物に限りますから、今がラストチャンスです。この税制の適用を受ける場合は施工前に税理士さんの認定を受けて経済産業省への届出が必要です。詳しくは経済産業省のホームページをご覧ください。経済効果が大きいですので是非挑戦してみて下さい。

 

【今後期待される技術】

曝気槽の消費電力を少なくできる可能性を秘めたマイクロバブル発生のズルというものがあります。微細な気泡を発生できるので同じ送風量でも微生物への酸素供給量が増えるのです。結果としてブロワーが小さいもので間に合うようになるからです。汚水処理以外での利用は進んでいますので、今後の汚水処理分野での普及に期待したいです。

 

 

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最終更新日 : 2022/01/23