養豚経営をサポートする『MeatMax(ミートマックス)』

養豚家であれば誰しも成績を上げることに心血を注ぐものですが、それが必ずしも財務の改善につながらない場合もあります。成績を上げるにはコストもアップする場合があるからです。しかし成績を集計・分析しながら財務改善を図るには手計算ではなかなかできるものではありません。パソコンを利用すればそれが可能になります。パソコン用養豚ソフトはいくつか有りますが、肥育成績を集計・分析するソフトは一般的にあまり使われていないのではないでしょうか。私が思うに正確なデータ収集が出来ていないところが多いから、集計・分析まで行かないのではないでしょうか。大まかな枝肉成績は屠場から還元される集計で間に合わせている方が多いようです。しかし、枝肉成績と飼料要求率、出荷日令を分析すると、まだまだコストダウンの余地がある農場が多いのも事実です。販売金額や飼料代など収益に直接大きく影響してきます。

 MeatMaxでは屠場から送られてくる枝肉精算書のデータを1頭ずつ入力して集計します。大手メーカーのソフトでは、繁殖成績データと連結して出荷日令やDG、事故率などの成績を計算してくれますが、MeatMaxでは、肉豚1頭当たりの売上金額、格落ち原因と格落ち金額、飼料要求率と飼料コストを計算します。これは、儲かる養豚をするためにはこちらの集計の方が役に立つからです。

MeatMaxは基本的にマイクロソフトのエクセル形式ファイルです。マクロ機能を使って入力をしやすくし、集計も自動で出来るようにしたものです。ご使用に当たってはマイクロソフトエクセル2003以上のバージョンが入っているPCが必要です。

では、使い方の手順に従って説明していきます。インストールが終わったらまず、「マスター」シートにある出荷先リストをご自身の農場の出荷先に合わせて変更します(図1)。

 


図2が枝肉明細の入力画面です。入力項目は出荷日、出荷先、明細番号、等級、枝肉重量、背脂肪、格落ち理由、性別、販売単価、上物建値です。格落ち理由は2つ登録可能です。例えば背脂肪が厚くて重量もオーバーなら、1と15を入力します。性別が分からない場合は全て去勢または雌のどちらかに統一して入力して下さい。等級や性別は番号で入力すると漢字に自動で変換してくれますので、テンキーだけで全ての入力が出来、入力時間の短縮に役立ちます。(図3,図4)


1頭分の入力が終わるとカーソルが「
OK」ボタンに移りますので「Enter」を押すと次の枝肉の入力に移ります。出荷1回分の1頭語とのデータを入れ終わったら、「控除金額等入力」をクリックします。(図5,図6)


「枝肉販売金額一覧入力」フォームが開きます。出荷日〜枝肉売上税抜きまでは、直前に明細入力したデータを引き継いで表示しています。出荷頭数、枝肉総重量、枝肉売上が精算書と合っていることを確認して、「内蔵その他売上+奨励金」と「差引手取り」を入力します。

次に集計帳票とその利用方法を解説致します。表1は「体重別販売金額集計」です。格落ち金額が一番少ない枝重(青線部分)と1頭あたり販売金額が一番多い枝重(赤線部分)が異なっているのが分かります。ここで分かることは上物率や平均格落ちとは関係なく、枝重を78〜80kgを目標に出荷すれば一番儲かるということです。運賃や手数料は1頭単位でかかりますので、枝重が大きい方が枝肉1kg当たりのコストも安くなります。

表2は、枝重別出荷成績表です。上物率や上中を合わせた割合を集計したものです。中物も上と同じ価格で販売されている農場では、上中率が良くなる枝重がどこなのかを知ることが出来ます。表3は格落ち理由別集計表です。この例では脂肪被覆が最も多く、背脂肪厚、肩厚、腰厚も含め脂肪過多がほとんどであることが分かります。また、次に多いのが重量規格外です。これでは餌代を多く掛けた上で販売価格が安くなるという無駄な部分ですから、出荷前体重測定をすることにより早急に改善を要するところです。


図7は枝重別背脂肪厚と出荷頭数グラフです。このグラフからは重量と背脂肪の相関が分かります。この例では枝重に比例して背脂肪が厚くなり、去勢では枝重78kg以上になると上の上限の2.4cmを超えてしまうことが分かります。

図8は格落ち理由グラフです。表3をグラフにしたもので、主な格落ち原因が何なのかが視覚的によく分かります。


9は枝重と背脂肪の相関分布図です。横軸に枝重、縦軸に背脂肪厚として出荷豚をプロットしたものです。赤線枠に収まるのが多いほど収益が良くなります。上物の下限重量は65kgですが、1頭あたり売上を良くするために70kg以上を適正な下限と設定しています。左側の図のように重量のバラツキが多ければ、出荷品揃え前に体重測定をすべきです。また、縦軸(背脂肪の)バラツキが大きければ、疾病の関与を調べるべきです。また、図9の両例とも背脂肪薄はほとんど無く、厚が多い場合は、飼料給与プログラムを変えるか、止め雄の品種をもう少し背脂肪の薄い品種に切り替えることが望ましいのです。脂肪の付きすぎは飼料要求率を悪くし、飼料コストが高くなるからです。

表4は、飼料購入記録と飼料要求率計算表です。飼料名柄ごとの消費数量と単価を入力することで肉豚1頭当たりの飼料コストと飼料要求率が計算されます。ここで背脂肪厚と出荷日令も加味してコストダウンの糸口を見つけます。多くのパッカーは脂肪が厚めの豚を好みます。「厚いのは削ればよいが、薄くて締まらないのはどうにも出来ない」という理由からですが、この論理によって多くの生産者が過剰な肪厚を生産するために、飼料要求率を悪くされているのです。飼料の銘柄変更や切り替えタイミングの変更、飼育環境の改善、疾病対策等その農場に合わせた方法で、販売金額アップと飼料代節約にチャレンジしていくわけです。

表5はA農場の実績と改善目標(シミュレーション)です。この農場では離乳舎の管理が良くないので肥育日数が長く、飼料要求率が悪くなっています。ここを改善することによって要求率
0.2アップを目指します(赤線部分)。すると肉豚1頭当たり飼料コストは約1300円改善する見込みです(青線部分)。

 B農場の実績では2009年前半と2010年前半の比較で、平均格落ち金額が28円から13円に、1頭当たり飼料代が約800円安くなりました。飼育環境改善のためナーセリーコンテナを入れましたので、その分のコストアップを差し引くとトータルで肉豚1頭当たり約1,200円、枝肉1kg当たりでは15.6円の収益改善となりました。飼料要求率の改善は現在も進行中ですので、来年はもっとコストダウンになるでしょう。

 

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最終更新日 : 2022/01/23