ホーム 上へ

2021年3月 

 

 

 

 

 

 

肥育豚の棚卸しの重要性と実践方法

【はじめに】

昨年、養豚場から豚が盗まれるという事件があったことは記憶に新しいと思います。
犯人達は、1豚房から1頭や
2頭抜いていったので、農場側では気づくのが遅れたとのことでした。
確かに1豚房に20頭以上入っている豚房の豚を毎日数えている農場はほとんど無いでしょうから、1頭や
2頭減ってもすぐには気づかないのも仕方の無いことでしょう。私が養豚を始めた頃は1豚房に1腹の離乳子豚を入れ、毎朝晩手給餌でしたので、1頭でも減ればすぐに分かりました。
しかし現在は1農場での飼育頭数が多くなりましたので、1豚房30頭以上収容するところも多くなりました。
ましてや、オートソーティング利用の豚房では400〜500頭が一群ですから、正確に数えることは困難です。

では、なぜ豚の棚卸しが必要なのでしょうか。
まず第1に肉豚出荷頭数の予測を立ててそれに合せた出荷予約(屠場枠の確保)をより正確にする事です。
養豚では定時定量出荷がベストですが、どうしても5月、6月の出荷が少なく、10月11月の出荷が多くなる傾向にありますから、
そこをいかにして分散させるかの正確な元データが必要になってきます。
第2は、どのステージでどの豚舎での事故が多いのかを把握することで、原因と対策を絞り込んで肥育成績の改善を図ることです。

【棚卸しのタイミング】

まず出荷予測を立てるためには、肥育豚の日令ごとの頭数が必要です。
そのための前提条件として、離乳舎や肥育舎では、豚房ごとに生まれた日または離乳日を記入したペン(豚房)カードを設置する事が必要です。


図1が肥育ペンカードの例です。一般的には週1回または2回離乳することが多いので、離乳日を記入することをお薦めします。
部屋ごとオールインオールアウトを実践している農場では、豚房ごとのカードを使わずに
1部屋ごとの離乳日(またはロット番号)と在庫頭数と死亡記録のみでも構いません。

棚卸し(頭数を数える)のタイミングとしては豚房への受入時と毎月末とするのが一般的です。
1回の棚卸しは、1豚房ごとに頭数を目測して台帳に記入していきますが、1豚房の収容頭数が30頭以上の所では、
豚が豚房内で動いている状態で目測するのは困難です。
この場合は豚房に受入れたときに正確に数えて、その後は死亡や病豚を引き抜いたときにカードに記入して減算していくことが現実的です。
月末とは言っても毎月末日に行うよりも、最終金曜日とか最終土曜日とか、曜日を決めて行うようにして下さい。
理由は毎週同じ曜日に離乳している農場では、棚卸しの曜日が異なると日令の計算がズレてくるからです。

【月末棚卸しの具体的手法】

月に1度の仕事といえども、農場内全ての豚を数えて記録することは大変面倒な作業です。
棚卸しの重要性が分かっている経営者や管理者ならば、面倒でも時間をかけてでも正確にやるでしょう。
しかし、従業員に任せる場合は、少しでも楽に作業が出来て、記入ミスが起こらないように段取りする工夫が必要です。
それには、棚卸し台帳を豚舎のレイアウト通りに作ることです。

     【図2】                        【図3】
図2〜図3はその例です。実際に豚舎内を歩きながら順番に書いていったときに、台帳と豚舎のレイアウトが同じであれば記入ミスが少なくなります。
図2〜図3は台帳に記入したものをパソコンに入力した状態のものです。
実際に記入に使う台帳は、数字を入力する前の表を印刷しておきます。
台帳は
Excelなどの表計算ソフトで作ることをお薦めします。理由は集計が楽だからです。

【集計を楽にする手法】

さて、記入が終わった棚卸し台帳を日令ごとに集計するには、電卓で足し算をしていては大変な作業です。
計算ミスも起こりやすいです。
これを解決するには、
Excelのピボットテーブル機能を使います。
 


図4が集計表の例です。ピボットテーブルで集計するためには、同じ項目のデータが縦1列に並んでいる必要があります。
台帳を豚舎のレイアウト通りに作ると、離乳日の列や頭数の列が複数になります。
また、豚舎ごとにシートを分ける必要があるため、このままではピボット集計が出来ません。
そこで、「集計表」というシートを作り、各豚舎のシートからリンク貼付けしておきます。
今回の例では図4の右端の列に全ての豚舎の頭数がそれぞれの豚舎のシートからリンクされています。
同様に図4の右から2番目の列は離乳日がリンクされて1列に並んでいます。
右から4番目の列がペン(豚房)番号です。右から3番目は、離乳日から計算した週令を表示しています。
週令の計算式は、(棚卸し日−離乳日
+離乳日令)÷7を小数点以下切り捨てにしたものです。
なぜ週令を計算するかと言いますと、離乳日1週間分を1ロットとして集計するために、1週間の内でも離乳日が異なるもの(例えば水曜離乳分と金曜離乳分など)を同じ週令としてまとめて集計するためです。
ピボットテーブルを作成するときは、図4の右3列を2行目(タイトル列)からデータの最終列まで選択して下さい。
図4では実際のピボットテーブルは「離乳後週令」と「在庫頭数」の2列だけです。
その両隣の列は集計表を見やすくするために計算式を入力して作成してあります。
現在日令の列は、週令×7+離乳日令で計算。離乳週は
VLOOKUP関数を使って右端の各豚舎データの週令に対応する離乳日を参照して表示しています。

【おわりに】

最後にこの集計表の見方を説明します。
図4の例では、在庫豚の最高日令は196日が38頭残っていることが分かります。
そして前月の棚卸し集計表と並べてにて、在庫が少なくなっているロット(同じ離乳日で比較する)が出荷または死亡した頭数になります。
図4の例では
161日令のロットから出荷が始まっていることが分かります。
175日令の在庫が多いのは、175日令以上の豚は開放豚舎の古い肥育舎にいる豚。
154
日令〜168日令のロットが新しいウインドレス肥育舎にいる豚で、こちらの方が発育が速いからなのです。

通常は同じ日令の豚の出荷始りから出荷修了までの期間は35週間です。
この集計を毎月続けていると、平均出荷日令も分かりますし、出荷日令が伸びているか縮んでいるかも分かりますので、肥育成績の把握にも繋がります。
なお、
Excelで作った棚卸し台帳ファイルは、ファイル名に棚卸し日を咥えて保存して下さい。
次の月に使うときは前月のファイルを開いてから、「名前を付けて保存」をしてから当月のデータを入力してください。

こうすることでピボットテーブルを新たに作る手間が省けます。
ピボットテーブル内をクリックするとリボンに「データの更新」をいうメニューが表示されますのでそれをクリックすると一瞬で集計が更新されます。

 

ホーム ] 上へ ]

この Web サイトに関するご質問やご感想などについては、お問い合わせフォームからお送りください。
Copyright (C) 2016 (株)「マックプラニング
最終更新日 : 2022/01/23