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2020年10月 

 

 

 

 

 

 

環境調整資材を使いこなす

【はじめに】

これから暖冷房機器の正しい使い方やメンテナンスの工夫、
そして今すぐ取り組める節約方法をご説明するわけですが、前提条件があります。

それは、豚舎の断熱性です。
屋根や壁に断熱材があるか、天井があるか、またそれらに破損やネズミに囓られた被害があるかないかです。
同じ暖冷房器具を使っても、豚舎の断熱性が悪いと暖冷房効果が少なくなるばかりか、
ランニングコストも多くなってしまいます。

特に屋根材や天井材は修理や交換が難しいものですから
長持ちする素材を選んで張り替えや追加施工をお勧めします。

そのほうが長い目で見れば低コストになると思うからです。
銀行借り入れの金利も安い時代なので、借り入れを増やしてでも良い素材を選んで屋根や壁、
天井の断熱を強化した方が得策です。

例えばひと昔前までは壁や天井の断熱材と言えばウレタンフォームを張っただけのものが主流でした。
しかし、これだけではネズミに囓られて、すぐにボロボロになってしまいます。
近年は断熱材の両面に金属板やプラスチックパネルを貼付けた構造のパネルが主流になっています。

 

【暖房器具】

 分娩舎で使われるものとしてはガスブルーダーとコルツヒーターが主流でした。
ガスブルーダーは最も火力が強いので断熱性の低い豚舎で多く使われています。

しかし、保温箱のパネルが焦げたり、溜った埃が焦げたり、
落下して床が焦げたりなど、火災の原因になることがあります。

吊り下げる位置を子豚が届かない位置に調整することと、
吊り下げ金具が損傷していないかの点検を怠らないらないようにしましょう。

 コルツヒーターはガスブルーダーに比べて熱量は少ないですが、
ガスに比べて火災のリスクが少なく、点灯消灯が簡単なため、採用が多くなっています。

また、ガスブルーダーは上から見ただけでは点火しているか消えているかが分かりませんが、
コルツヒーターなら、見た目で分かります。

また、子豚にとって背中よりも腹が冷えることが問題ですから、
床暖房を併用することが哺育成績アップに繋がります。

 
写真1                              写真2


写真1は電気式床暖パネルとコルツヒーターの併用例、写真2は温湯式床暖房とコルツヒーターの併用例です。

運用上の注意点は、まず、コルツヒーターの電線が垂れ下がらないように洗濯ばさみ等で止めることです。
写真2では止めてありますが、写真1では電線が垂れ下がっていますので、子豚に囓られて漏電や断線の危険があります。

写真3では電気式床暖パネルの電線を止めていた洗濯ばさみが外れて線が垂れ下がっている状態です。
電気式床暖パネルを使う場合は、電線の出口を保温箱の通路側を向けて、電線は保温箱の外側を這わせた方が良いです。

もう一つの注意点は床暖房の温度管理です。
豚がいないときの表面温度が20℃〜25℃が適温です。低すぎるのではと思われるかもしれませんが、
豚が寝るとパネルからの放熱が少なくなりますからパネルの温度が上昇します。

豚の体温以上になってしまうとかえって不快になります。
素手を1分ぐらい床暖房パネルに押し当てていればわかります。
熱く感じたら温度が高すぎです。

時系列的な使い方では、分娩直後は床暖とコルツヒーターの併用。
子豚が大きくなるにつれ、コルツは夜だけ→常に消灯という具合にします。
判断基準は、子豚が保温箱に入って寝ていれば適温の証拠で、他の場所で寝ていたら保温スペースが熱すぎです。

 

離乳舎でもガスブルーダー、コルツヒーターが使われますので、注意点については同じです。
ウインドレス離乳舎ではガス温風ヒーターが使われることが多かったですが、最近では離乳舎でも床暖房を採用するところが多くなりました。

昔はコンクリート床に温湯を流すパイプを埋め込んだ床暖房もありましたが、子豚がスノコ上に糞をせず、床暖土間に糞尿をして床が汚れる事が多いです。

最近採用されている離乳舎の床暖は、分娩舎のものと基本的に同じ構造です。
全面プラスチックスノコの一部を床暖パネルに置換えた構造です(写真4)。

 
  写真4                                       写真5

写真5は離乳舎の保温スペース全体像です。跳ね上げ式パネルを取り付けて保温箱的なスペースを作っています。
上からの暖房は写真の例ではデルタパイプという温湯を通す物を採用しています。

跳ね上げパネルに穴を空けてそこにコルツヒーターを吊り下げている例もあります。
保温が不用になったらパネルを壁側に跳ね上げておきます。
 

次にガスブルーダーを使っている豚舎での注意点です。
まず、ガスの配管はゴム管では無くジャバラタイプの金属管のほうがガス漏れのリスク低減になります。
温度センサーは豚にイタズラされないようにと高い位置に取り付けてあることが多いですが、床から30cmの位置と180cmの位置では温度が2℃ぐらい異なる場合が多いですから、それを加味した上で温度設定をして下さい。

また、室内にはデジタル温湿度計を下げておき、毎日温度と湿度を確認して冷暖房器具の温度設定が正しいかどうかをチェックして下さい。

 

【冷房器具】

 豚舎の冷房施設としては換気扇、ドリップクーリング、細霧やミスト、クーリングパドなどがあります。
後者ほど効果が高いですがコストも高くなります。

換気扇については別の先生の記事に委ねて割愛させて頂きます。
ドリップクーリングは豚の首筋に水滴を滴下して、その水分が蒸発するときに豚から気化熱を奪うことで涼しく感じさせる物です。
ですからむやみに多量の水を出しても水が無駄になるだけで、効果は変わらないので注意して下さい。

細霧システムやミストは噴霧ノズルを取り付けた配管に動噴などのポンプで水を圧送して豚舎に噴霧するシステムです。
こちらも空気中に噴霧された水分が蒸発する齋野気化熱で気温を下げるものですから、むやみに量を多くするのは無駄になります。

換気も併用しませんと室内の湿度が上がってミストが蒸発しなくなります。
一般的にミストよりも細霧の方が噴霧される水の粒子が小さいものを差します。
噴霧ノズルの位置や向き(下向きか横向きか)は、豚舎のレイアウトに応じて変わります。

図7は肥育豚舎の細霧システム設置図の一例です。
この例ではサイドカーテンで床は全面コンクリートスノコです。
順送ファンで室内の空気を攪拌するので、細霧のズルは横向き(水平方向に噴霧)です。

細霧やミストの利点は、冬場に加湿装置としても活用できることです。
また、消毒剤を混ぜれば定期的な消毒になりますし、生菌剤や木酢液などを混ぜて消臭効果を持たせることも可能です。

 クーリングパドは、水で冷やした空気を豚舎の壁面から導入して、換気扇で排気するシステムです。
豚舎の妻側にクーリングパドを設置して反対側の妻側から排気する方式がトンネル換気方式とよばれるものです(写真8)。

カーテン式豚舎でも夏場のみカーテンを閉めてトンネル換気にしている豚舎もあります。
しかし新築するならウインドレスにした方が断熱効果が高いです。

クーリングパドの効果はウインドレスの場合は外気温より5℃ぐらい下がりますが、カーテン豚舎の場合は入気側では5℃ぐらい下がっても排気側では効果が薄くなります。

 また、新築の場合は啓から換気量の計算をして作りますが、後付けでクーリングパドを設置する場合はパドの面積を排気ファンの面積(円形部分)合計の3倍以上確保する事をお薦めします。
写真8の例では
3.7倍にしています。
パドの面積が狭いと空気抵抗が大きくなり、換気量も減りますし、外気がパドを通過する時間が短くなるので冷却効果も落ちます。

【応用編】

 ドリップクーリングや細霧システムは自作も可能です。

9はドリップクーリングの自作模式図です。
ビニールホースの母豚上に
0.5ミリほどの針穴を空けて母豚ごとにたるみをつけて設置します。
減圧弁と電磁弁を取付け、電磁弁を制御盤に繋ぎます。

制御盤の結線図は図10の通りです。
私が作成した結線図にしたがって、お客様が作成した物が写真
11です。

この制御盤はミスが出る時間と休む時間を別々に設定できるので、クーリンクパドだけではなく、細霧システムや、屋根散水、換気扇制御などにも使えます。

 

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最終更新日 : 2022/01/23