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2020年1月 

 

 

 

 

 

 

緊急時を乗り切る!発電機活用のいろは

今や養豚場は電気なくしては運営できません。
ですから私は農場にそなえておくべきものの一つに発電機を挙げておりました。
8年前の東日本大震災の時も、昨年の北海道胆振地震と、今回の台風15号、19号で1日以上の停電が発生しました。
日本中どこの地域でも他人事ではない時代です。
では、発電機を備えるうえでどのような準備が必要なのかを、配電盤や配線なども含めて解説致します。
すでに発電機がある農場でも、必要な機器が動かせる配線になっているかどうかの確認方法もあわせて解説いたします。
 
  まず、すでに発電機が備わっている農場では、停電時に自動スタートするタイプなのか、人間が始動して切り替えをするタイプなのかを確認してください。
わからない場合は、電気保安協会などの電気設備の定期点検を依頼している会社へ問い合わせてください。
実際に点検に来ていただいたときに立ち会って、農場全体のメインブレーカーを切り、
発電機でどの設備が動いてどこが動かないのかを調べておくことが、一番わかりやすくて確実な確認方法です。
ここでもし、給水ポンプや給餌ラインが動かなくて困る。という場合は以下で述べます改善対策を実施してください。
 
 まず最初に、発電機で動かしたい電気設備のモーターの容量を確認してその合計を計算します。
ここでは、私が今年9月に千葉県のお客様(成毛様)農場で実際に対応させていただいた例を出して説明しますので、
読者の皆さんも自分の農場の場合に置き換えてシミュレーションしてみて下さい。
 
@  井戸ポンプ・・・15kw×2台=3kw
A  ウインドレス分娩舎の換気扇・・・075kw×8台=6kw
B  全豚舎の給餌ライン・・・04kw×12台=4.8kw
C  スクレーパー・・・04kw×6台=2.4kw
D  汚水ポンプや送糞スクリュー合計・・・約2.2kw
E  曝気ブロワー・・・37kw+75kw
 
以上の合計が29.6kwでした。次にこの場合の合計電流を計算します。
キロワットをワットに直すために1000倍して200Vで割算すると概算値が出ます(正確にはルート3と力率も掛け算する)。
この場合の最大電流は29.6×1000÷200148A(アンペア)
これを全部動かせる発電機は電流容量を1.2倍の余裕を見て178A以上のものを備えてください。
 
この農場の場合はすでに購入していた発電機の容量が60KVA3200Vの許容電流が最大144Aのものでした。
全部同時に動かさなければ、ぎりぎり間に合う計算です。
しかし、ギリギリでは危険なので、曝気ブロワーは3.7kw1台だけ回すことにしました。
これで最低限、曝気槽が嫌気状態になるのを防ぐことができました。
 
次に発電機から豚舎の配電盤への配線方法と切替方法です。
図1が一般的な配線の略図です。
 
図2が今回のお客様の例です。
キューピクルから直接豚舎に行っている配線とメイン分電盤を経由して豚舎へ行っている配線がありました。
皆さんの農場でも各豚舎への電源供給がどうなっているのか、メインブレーカーはどこにあるのかを把握しておいて下さい。
増改築を繰り返した農場ではキューピクルが2箇所あったり、豚舎の子ブレーカーから隣の豚舎のメインブレーカーに繋がっていたりと、複雑になっていることが多いものです。
自分で把握できない場合は、電気工事店へ依頼しましょう。
 
さて発電機からの電線を接続する配電盤が決まりましたら、そこに切替え器を取り付けます。
ここで注意しなければいけないのがメインブレーカーです。
3をご覧下さい。これは切替え器取り付け前のメインブレーカーの配線図です。
もし、直接メインブレーカーに発電機を繋いで運転中に停電が復旧すると、
電力会社からの電気と発電機からの電気が干渉して、電柱にある電力会社のブレーカーが落ちてしまいます。
近隣の住宅まで最低電になる「波及事故」になる恐れがあるからです。
図4が切替え器の接続方法です。取り付け工事が終わったら試運転をしてください。
発電機を起動する前に全ての豚舎の分電盤のブレーカーを全てOFFにします。
そして、発電機を起動したら、回したい設備のブレーカーを一つずつ上げていきます。
数カ所ONにする度に発電機の電流計を確認して電流値に余裕があることを確認しながら必要な設備のブレーカーをONにしていきます。
皆さんの農場でも発電機を借りてきて仮設配線をするときは、この記事を参考にして下さい。
そして恒久的な配線は電気工事店に依頼して、図4のように切替え器を取り付けて配線して下さい。
図5が切替え器(CKSとも言う)の写真です。
 
 さて、発電機を備えておいても、いざ停電時に動かないのでは話になりません。
最低でも1ヶ月に1度30分ぐらい運転して下さい。
成毛さんは図6のように、ウインドレス分娩舎の洗浄機は発電機で動かす配線にしています。
切替え器を介さずに発電機直結の配線になっていますので、商用(電力会社の)電源との切替えの煩わしさを排除しています。
ですから、毎週発電機を運転していますので、停電時も問題なく動きました。
 
今の時代は毎年日本のどこかに災害が訪れます。
ですからこの機会に発電機をまだ備えていない農場では是非とも購入して下さい。
単相100/200Vと三相200Vを同時出力できるタイプがお薦めです。
母豚200頭一貫以下なら30KVAタイプの新ダイワDGN450MK(モノタロー税抜価格\1,789,000
母豚400500頭一貫なら60KVAタイプの新ダイワDGN600MKP(モノタロー税抜価格\2,339,000)がお薦めです。
母豚500頭規模以上の農場では複数台の発電機でカバーする方が効率的です。
 
 ウインドレス豚舎がある農場では、発電機を必ず備えて下さい。
換気扇は全部発電機に繋ぐ必要はありません。
例えば、換気扇の回路が2系統以上になっている制御盤ならば、半分が回れば豚は死にません。
それから、糞尿処理の方ですが、堆肥盤があるのでしたらコンポストは動かさなくても対応できると思います。
しかし、汚水処理は環境問題に発展しかねませんので、発電機で動かせるようにしておくのが賢明です。
 
 最後に、発電機導入手順を再度まとめます。
@  停電時に動かしたい設備の場所と消費電力(消費電流)をリストアップ
A  消費電流の合計から必要な発電機を決める。(必要電流の1.2倍以上の容量を持つ発電機を選定して下さい。余裕が大事)
B  メインブレーカーと各豚舎の配電盤の位置と接続経路を確認する。
C  発電機の配線と切替え器の工事を依頼する。

 

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最終更新日 : 2022/01/23