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2017年7月 

 

 

 

 

 

 

豚舎構造と換気

 1.換気管理の重要性
 前の章で各先生方が触れられた様に、換気不良が様々な疾病の引き金となります。
特に冬の間は気温を保つことを優先し、換気がないがしろにされがちです。

換気の必要性は【図1】に示したように、発生した二酸化炭素・水蒸気・臭気を排出することにあります。
たとえ温度が適温であっても、湿度が高すぎれば豚も不快に感じて食欲が落ちますし、
カビの発生も多くなり、カビ毒中毒の危険度が高くなります。

また、夏に夕方まで暑いからと言って夜通し順送ファンなどをフル回転させておくと、豚も体調を崩してしまいます。
人間でもエアコンを付けたまま寝ると風邪を引くのと同じです。
また、冬場の換気不足で豚舎内に臭気がこもってしまえば、呼吸器疾病が増えたり、肉の臭みが強くなることもあります。
PEDが一段落した今、衛生管理のみならず、温度・湿度・換気などの環境コントロールに再度注目してみる良い機会ではないでしょうか。
環境コントロールが悪ければ疾病の発生も増えますので、広い意味では環境コントロールが衛生管理の一貫とも言えます。
環境コントロールの大部分は換気コントロールにかかっています。

2.換気管理のポイント
 換気量は少なすぎても多すぎてもいけません。
適正換気量は、最低換気と最大換気に分けて考えます。
最低換気とは、豚の生命を維持するために必用な最低限の換気量のことです。
これは豚の呼吸量と考えれば分かり易いでしょう。

【表1】に示したのが最低換気量及び豚を順調に発育させるために管理すべき温度や湿度です。
これはウインドレス豚舎でも開放豚舎でも共通の数字です。
換気扇のないカーテン式豚舎で、寒い時期にカーテンを閉め切ってしまえば換気不足になることは明白です。
どんな形式の豚舎であっても最低換気を行う換気扇は必用です。
最低換気をおこなった上で、温度が不足していればヒーター等で補うという管理が基本となります。

 では、最低換気量をいくつかの例を挙げて説明します。
例として母豚
500頭一貫経営豚舎で、交配舎の在庫頭数400頭、分娩舎は125頭のAI/AO
離乳舎は
1250頭のAI/AO、肥育舎は1500頭のAI/AOとします。

1から、ストール舎は1頭0.34/分×400頭=136/分となります。
同じく分娩舎は0.34/分×25頭=8.5/
離乳舎(920s)では0.057/分×25014/
肥育舎(100kg)では0.28/分×25070/分となります。

これから最低換気のファンを増設する場合は、この換気量に見合った換気扇を探します。
例えば、この例のストール舎にはフルタの
MG62050Hz135/分なので適合します。
離乳舎ではマルチファンの
4E3020/分なのでこれをコントローラーで減速して使う事になります。
肥育舎ではフルタの
VPZ404203が適合します。

分娩舎では、台所用の
20cm換気扇が810/分なのでちょうどです。
カーテン豚舎では隙間風があるので、最低換気用排気ファンと順送ファンの併用が必要です。

 一方、最大換気量は豚舎の立地条件や構造、断熱度合いによって変わってきますので、一概に数値で示すことはできません。
これはハウジングメーカーのノウハウによるところが大きいのです。

 では換気量の調節は何を基準とすべきでしょうか。
もう一度【図1】を見て下さい。
密閉された部屋では、呼吸により湿度は増加の一途を辿ります。
しかし室温は(豚の体熱
± 外気温の影響)で変化します。
ですから、温度と湿度両方でコントロールするのがベストなのです。
しかし現状は温度のみで調節されているところがほとんどではないでしょうか。
それは精度の高い湿度センサーが高価でありメンテナンスも難しいからです。

では安価に湿度をコントロールする方法をご紹介します。
まずデジタル温湿度計を各豚舎に設置します。

湿度センサーはホコリに弱いですから、写真1のようにペットボトルを半分に切ったカバーをするとよいです。
毎日、朝昼晩と湿度計をチェックして、湿度が80%を超えていたら換気扇の回転を少し強くするというような微調整を加えます。

3.順送ファンの設置方法
順送ファンの目的は、直接豚に風を当てることではなく、豚舎内の空気の淀みや、温度のムラをなくすことです。

ですから、【図2】のような風向きに配置します。
Fanを設置する間隔は、一般的なメーターファンでは10〜15mです。
Fanの後方には吸い込みによる風は起こりません。
ですから【図2】のような複列の豚舎では設置位置を左右(図では上下)対称位置ではなく、風上の方にずらす必要があるのです。

 夏場は【図3】のように外気を取り入れ、全体を一方方向に流したほうが涼しくなります。換気扇を反転する方法は2通りあります。CKSという反転切替え器を取り付ける方法と、インバーターを片側ずつ2台設置し、片側をインバーターで反転運転する方法です。換気扇の台数が少ない場合はCKS、多い場合は後者の方法が良いでしょう。

4.豚舎タイプ別換気制御術
@ウインドレス
 換気量の全てを換気扇の回転率を制御することによってコントロールする方式です。
主に分娩舎や離乳舎で採用している農場が多い。
天候や季節に関係なく豚舎内の環境を一定に保つには最も適している換気方法です。

一方、初期投資額と、ランニングコストは最も高くなります。
それで
1頭当たりのコストを抑えるために離乳舎のみをウインドレスにする農場が多いわけです。
しかし、自動コントロールを過信すると、思わぬトラブルに見舞われます。

 ウインドレスにも陽圧式と陰圧式の2方式があります。

(【図4】参照)陰圧式は換気扇で排気を行い、入気は天井又は天井と壁の角に設けた入気口から行います。
風圧で入気口が自動開閉するタイプでは、入気スピードが一定になるため、冷たい空気が豚に直接当たることが無く、
最も効率よく、ムラ無く換気できる方式と言えます。
しかし陰圧式の欠点は、建築後数年すると壁や扉に隙間ができた場合に隙間風が入ったり、
ネズミに開けられた穴から入気されたりすることです。

 また、バッフル板を手動開閉して入気する方式の豚舎では、開閉の調節がまずいと換気不足を起こしたり、
冷たい空気が豚に直接当たったりして豚の健康を害します。
この方式の豚舎では、風圧開閉式の入気口へ取り替えることをお勧めします。

 陽圧式のメリットは、建物に多少の隙間があっても、そこから排気されるだけであって、
豚に直接冷たい風が当たることはありません。
また、通常はピット下から排気させる方式が多いので、
ピットから冷たい風が上がったり、ガスが上がったりしないのも利点です。
一方デメリットとしては、冬に入気スピードが落ちてしまうのを防ぐためミキシングファンの回転は落とせません。
その分、陰圧式よりは電力消費が多い傾向にあります。

 次に換気扇の制御盤の調整方法です。
目標温度は表1を参照に設定してください。離乳舎は離乳後1週間ごとに1℃ずつ下げていくのが理想です。
また、目標温度以下になった時でも最低換気量の換気ができるように、コントローラーの最低制限を調整するか、

2
章で説明した最低換気Fanが回る状態にしておきます。

A開放豚舎
 これは温度に応じて豚舎側面のカーテンや窓を開閉して換気量をコントロールする方式です。
春先や秋口は昼夜の温度差が大きいので、夕方にどれ程度開け手おくかがカギです。
毎日天気予報をチェックして開閉度合いを加減してください。
この調整を楽にするには、温度センサー付き自動開閉カーテンがお勧めです。
温度制御が付いていない電動カーテンにも温度制御を追加することも可能です。
改造したい方は筆者までご相談ください。

また、順送ファンの調整ですが、四季を通して有効活用するためには、温度制御付きのインバーター制御にしてください。
暑いからと言って
24時間回していると、朝方に冷え込んだ時などに病気や尾かじりが発生する危険があります。
冬の順送ファンの回転率は、インバーター制御なら
1015ヘルツが良いでしょう。
肌では風は感じられないが蜘蛛の糸が揺れる程度に空気が動いているのがベストです。
AI/AO豚舎で蜘蛛の巣が無いところでは、20cmぐらいに切った薄いセロファン紐の一端を天井に貼り付けてください。
これで空気の動きがわかります。

Bトンネルベンチレーション
 豚舎の片方の妻側にクーリングパドを設置し、もう一方の妻側に排気ファンを設置する方式です

(【図5】参照)。
壁はウインドレスの場合とカーテンの場合があります。

制御の方式は、換気扇を複数のグループに分けて制御します。
例えば換気扇が6台付いているとすれば、2台はインバーター制御、一定温度が上がるごとに2台ずつ
ONしていく様な制御です。
トンネルベンチレーションは夏場に有効ですが、冬場はこの換気方式では入気側と排気側の温度差が大きくなりすぎます。
冬場は天井入気方式に切り替えて、クーリングパドは巻き上げカーテンやビニールシートで塞いで使うのがベストです。

5.
まとめ
 環境コントロールのコツは機械を過信せず、人間の五感をフルに使って判断することです。
目標温度が25℃で、センサーの表示も25℃だから
OKとはいきません。
豚が重なり合って寝ていれば寒い証拠ですし、体が汚れていれば高温か多湿であるわけです。
豚舎を巡回見回りしていて、部分によって暑かったり寒かったり、
あるいは臭いのきついところがあったりした場合は、換気のムラがある証拠です。
いつもと違う音が聞こえたら、設備のどこかに異常を来しているかもしれないと考え、すぐに確認して下さい。

 環境コントロールの善し悪しの結果が収益の差に表れるまでは多少のタイムラグがあります。
それゆえに、ないがしろになってはいないでしょうか。
効果は豚の発育だけにとどまらず、事故率改善、飼料効率改善、枝肉品質改善へとつながってゆきます。
この記事が貴社の豚舎環境コントロールにお役に立てて、事故率や発育の改善に寄与できることを期待しております。

 

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最終更新日 : 2022/01/23