DIYで電気料金の節約

8月に私が主催しました電気のセミナー『年間利益300万円の差が出る電気のプロ知識』は、大勢の方にご参加頂き大好評を得ました。その時に紹介しましたDIYで電気料金を節約した事例をいくつかご紹介します。

 まず、1番目は夏場の換気扇駆動用電力を自家発電でまかなう事例です。
これはキューピクルを設置している農場で電気の基本料金を安くする方法です。
小規模農場で低圧受電しているところでは、非常用電源確保としては使えますが、節電にはなりません。

 節電の仕組みはこうです。
キューピクル受電の場合の基本料金は、
30分単位で計測された最大需要電力(デマンド)が向こう1年間適用されます。
例えば、夏以外のデマンドが70kwで、
8月のある日にたった30分間だけ100kwのデマンドを記録したとします。
すると
8月から来年7月までの基本料金は税別1200円×100120,000円になります。

これを夏の暑い日には発電機を使ってデマンドを70kwに抑えたとすると、1200円×7084,000円ですから、毎月36,000円の節約になります。年間432千円の節約になるわけです。
ですから、
2年ぐらいで発電機の償却費を回収出来ますね。

 図1に示したものが切替え器の回路図です。
 

図1:発電機商用電源切替え器          
             
             
             
             
             
             
             
             
             
             
             
             
             
             
             
             
             
             
             
             
             


商用電源と発電機からの電源を自動で切り替える回路になります。
これを組み込まずに発電機の出力を直接換気扇等の配電盤に繋いではいけません。
商用電源と発電機の電源がバッティングする危険があるからです。
使う部品はメカニカルインターロック付きマグネットコンタクタ
1個のみです。
これをウォールボックスに組み込むか、キューピクルの中に設置すればいいのです。
発電機で農場全体の電力を全てカバーする必要はなく、停電時に電源供給が必要なブロックだけを発電機でカバーする方が、発電機の容量も小さく出来るのでコストを抑えられます。

図2はそのブロック分けの例です。換気扇の系統が複数あるならば、ウインドレス豚舎を発電機で回す系統に組み入れます。

このように接続すれば、停電時は最低限必要な機器を発電機で回せますし、夏場の日中は発電機を回すだけで節電効果が生まれます。

 

2番目の例は浄化槽の設備更新に合せた節電事例です。

この農場の汚水処理設備は、曝気槽→MF膜→RO膜という処理フローになっています。
昨年末に
MF膜がいくら洗浄しても浸透が悪くなり、膜ユニットを交換することになりました。
以前付いていた
MF膜は中空糸タイプでした。
今回私がお勧めしたのは平膜タイプです。これはメンテナンスが楽で、もし詰まったとしても
1枚ずつ交換できるので、メンテ費用が安くなるからです。
MF膜は目詰まりを抑制するために膜の下からブロワーで空気を送っています。
泡と、泡が作る水流で
MF膜表面を洗い落とす仕組みです。
このエア量も平膜の方が少なくて済むというメリットが今回の節電に繋がりました。


図3の写真は平膜に交換後の膜処理槽ブロワー配管です。
中空糸膜ユニットを使っていた時は
8本の散気ノズル配管を使っていましたが、写真では両端の2本ずつに配管が接続されており、中側の4本は空いているのがわかります。
以前は膜処理槽ブロワーモーターは
11kw型が使われていました。
これを今回の
MF膜交換後に5.5kw型に付け替えました。

図4は実際の電流計の指示を示したものです。この設備の場合は膜ブロワーの稼働時間が1日20時間なので、年間約
70万円(税込)の電気料金節約になっています。
ブロワー自体は交換せずモーターのみの交換で済んだため、モーター交換のための費用は1年間の電気代節約分以下に収まりました。

 養豚場の場合、規制の強化に伴って糞尿処理にかかる電気代が年々増えてきています。

もう一度無駄な電気を使っていないかどうかを設備点検してみてはいかがでしょうか。
過剰な出力の設備が付いてはいないか。
必要以上に稼働させてはいないか。また、自然換気の豚舎ばかりで糞尿処理にかかる電気料金が全体の6割以上を占めているならば、電気契約を『高圧季節別時間帯別電力
S』に切り替えると電気料金がさらに安くなります。
この契約は簡単に言うと夜間の電気代が安い契約です。
夏の日中(ピーク時間帯)は割高ですが1番目に紹介した自家発電を使う事でここを安く出来ます。

 

3番目はコルツヒーターの節電です。一般的にコルツヒーターには強弱の切替えが付いていて、強では200Wまたは300W。弱では100Wまたは150Wと半分になります。
ただし、気温に合せてマメに強弱切替えをしている農場はどれだけあるでしょうか。
春や秋は日中は弱または
OFF、夜は強でONにしたいものですね。これを自動でやってみましょう。

 出力の調節はインバーターでも出来ますが、汎用インバーターは3相交流出力ですので、3つの相に均等にヒーターを接続してやらないとうまく動作しません(エラーで止まる)。
そこで養豚場ではあまり一般的ではないですが『単相電力調整器』というものを使います。
これは
OMRONから出ているものが最もコンパクトで安価に手に入ります(図5)。

45アンペアタイプで¥31,900(モノタロー)これだと200V200ワットタイプを45台接続できます。
しかし元の電源が三相
200Vですから、そのうち1相だけで45A流すのはバランスが悪くなります。
20Aタイプを2台または3台に分けた方がブレーカーも小さいもので済みますし、相バランスも良くなります。

図6は60豚房の分娩舎を想定した設計例です。
電力調整器は
20AタイプのG3PW-A220EU-S\27,900)を3個使います。
電源側は三相200Vから40Aブレーカーを介してG3PW-A220EU-S3台へ1相ずつ振り分けます。豚舎側のヒーター用コンセントの配線がどうなっているかは農場ごとに異なりますがそれらを3個のG3PW-A220EU-Sへそれぞれ接続すればOKです。
温度調節器は同じくOMRONのサーマックの電流出力タイプを使います。
温度センサーは白金タイプを使い、外気温を検出します。

これで、外気温の上下に応じて分娩舎全体のコルツヒーターが出力自動調節出来るようになります。
サーマックの設定方法は、例えば目標温度を18℃、比例帯を5℃に設定、制御方法を『加温』にすると実際の動作は次の様になります。

外気温が18以下では出力100%。1823℃までは温度に反比例して出力を減少。
23℃
以上では出力がゼロになります。
目標温度や比例帯の幅は農場の立地条件によって加減してください。

 

以上、3通りご紹介しましたが、紙面の関係上、あまり詳細には書けませんでした。
もっと具体的に詳しく知りたい方は、筆者まで直接ご質問ください。
 

 

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最終更新日 : 2022/01/23