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| 豚舎の火事を予防しよう 1.豚舎の中にある火事の原因と対策
毎年のように畜舎の火災が発生し、尊い命と財産が失われているのは非常に悲しいことです。火災は空気が乾燥する冬に多いと言われますが、表1のように畜舎火災は1年中発生していますので、季節を問わず注意が必要です。この表は、近年発生した畜舎火災のニュースを抜粋したものです。総務省の統計によると平成22年度の出火原因でトップは放火及びその疑い、2位がコンロ、3位がたばこ、4位がたき火だそうです。畜舎火災では暖房器具と電気器具の不良や漏電が多いことが表から見て取れます。それでは火災の原因を詳しく見ていきましょう
【ガス暖房器具】 代表的なものはガスブルーダートガス温風ヒーターです。ブルーダーの場合、何らかの原因でつり下げている金具が外れて落下した場合と保温箱の材質が燃えやすいものである場合に火災が発生しやすくなります。保温箱の蓋をする場合はガスブルーダーでは無く赤外線保温ランプまたはコルツヒーターの方が安全です。
また、つり下げる高さは豚にいたずらされない高さが必要です。他の豚の背中に前足を乗せて背伸びする豚もいますので、もしいたずらされても落ちないようにしっかりとつり下げ金具を固定することが必要です。更に、古くなるとつり下げチェーンが錆びてもろくなっている場合がありますので、こちらも毎年チェックして下さい。ガス温風ヒーターでは吹き出し口近くに燃え安いものがあると危険です。特に空気取り入れ口の網がホコリまみれだった場合、点火した直後に火の粉を吹くことがあります。定期的に清掃することが必要です。
この他にガス器具全てに共通することですが、ガス管が錆びて穴が空いていたり、ガスホースが経年劣化や豚にかじられたりして、ガス漏れが発生する場合があります。ホースの引き回しに注意をするとともに、ホースが堅くなっていたりひび割れを発見したら、新しいものと交換して下さい。 【電気器具】
まず、豚房の豚が入れ替わる度(洗浄時)にヒートランプは清掃して下さい。ホコリや蜘蛛の巣やゴミが溜まっていると過熱して火災の原因となります。電球の場合はカサから外して水洗し、水分を拭き取ってから装着して下さい。
次に差込プラグやコンセントが焦げていたり被覆のゴムが堅くなったりしていませんか。
また、漏電やショートによる発火も畜産現場では起こりやすい事故です。天井裏の配線はネズミ被害が起こりやすいので、塩ビ管に電線を通す工法を採用するか、ネズミ駆除業者を定期的に入れるなどの対策が必要です。また、配電盤やコンセントボックス、ブレーカーボックス内に蜘蛛の巣やゴミが溜まっていませんか。配電盤内にネズミが巣を作って、そのゴミによる漏電が原因で発火した例があります。写真4,5のようにボックスへの電線を引き込み口は自己融着テープなどで密閉処理しておいて下さい。 【火花が飛ぶ作業】 表1にも2例ありますが、溶接の火花(火玉)は200℃以上の高温になっていますから、可燃物に飛び散ると、たちまち発火します。コンパネなどは直ぐに発火せず、作業が終わって、人が離れた後に発火することがあるので(表1の例でもそうです)溶接作業を始める時は周辺を良く注意して下さい。また、グラインダーで金属を削った火花も要注意です。この火花が壁断熱材の継ぎ目を塞ぐアルミテープに当たって発火した例もあります。 【たばこの不始末】 総務省統計の一般の火事原因では3位に入っています。農場に於いては喫煙場所と喫煙時間を指定するのが最善の策と言えます。くわえたばこのまま仕事をしている人を見かけたことがありますが、非常に危険です。また、喫煙所でも、吸い殻は水につけて火を消して、燃えるゴミとは別の不燃容器に捨てるようにして下さい。たばこの火をただもみ消してゴミ箱に捨てた事による発火が各地で報告されています。 2.火事を防ぐために農場ですべきこと 当たり前のことですが、常日頃からの火災予防に対する意識付けが肝心です。仕事が忙しいと予防意識はないがしろになりがちです。そこで有効なのが注意を喚起する張り紙を、目に付きやすい場所に何カ所にも貼っておくことです。また、暖房器具の点検や清掃は普段の作業にマニュアル化して組み込む事です。例えば分娩舎の洗浄の際はガスブルーがーの洗浄や保温ランプの掃除を必ず行う決まりにすること。溶接機や洗浄機の本体には、油性ペンなどで注意書きを書いておくこと、などです。また、それが確実に行われているかを点検するのが場長や経営者の仕事になります。各ステージ毎に毎日の仕事の中でチェックすべき項目を一覧にした管理チェック表を用いて各担当者に実行し忘れが無いように確認させることを施肥実行してみて下さい。チェック表の原案が必要な方は私のホームページから無料でダウンロードできますのでご利用下さい。アドレスはhttp://www.ne.jp/asahi/mack21/family/です。「マックプラニング」で検索しても直ぐに出てきます。 また、場内会議などで、四半期に1度ぐらいは防災について場員全員で確認し合うことも大事です。その際は是非この記事を読み合わせするなどしてご活用頂ければ幸いです。 3.万が一火災が発生した場合に備え、日頃から用意しておくべきもの まずは火災をいち早く察知するための警報システムまたは火災報知器が必要です。ウインドレス豚舎では大抵温度警報が付いています。しかし、誤作動するとうるさいからと言ってOFFにしたままになっている農場があります。是非とも誤作動しないように、調整を取り、停電と高温警報だけは最低限作動させておいて下さい。さらに、夜間は無人になる農場では、複数の管理者へ自動で通報するシステムを導入するか、または警備会社との契約をして下さい。 次に初期消火に備えて1部屋に1本以上の消火器を備え付けてください。さらに消化器には有効期限がありますので、年に1回は確認して、期限が切れたものの更新をして下さい。一定規模以上の農場では毎年、消防署の立ち入り検査があるはずです。しかし、シャワーインルールの農場では、消防署員が豚舎まで入らずに書類確認だけで済ませる場合があります。その場合は、忘れずに豚舎内の防火点検を指導の通りに実行して下さい。 最後に、不幸にも火災に遭ってしまった場合にも再起を図れるように、火災保険の加入も忘れずに確認しましょう。 |
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