成績改善とそれによる財務改善の事例

 

 養豚であれば誰しも成績を上げることに心血を注ぐものですが、それが必ずしも財務の改善につながらない場合もあります。成績を上げるにはコストもアップする場合があるからです。ここでは私の実践事例を繁殖部門と肥育部門に分けて紹介させて頂きます。

 まず繁殖部門です。全体の成績を上げるために、成績の良い母豚は残し、悪い母豚を廃豚にするわけですが、この廃豚基準をどのように決めているかがポイントです。母豚の産歴カードを見て判断しても有る程度はいけるでしょうが改善の精度を上げるには、一定の基準に基づいて母豚に点数を付け、それで判断することも必要と思います。PigMaxでは、次のような計算式で産歴ごとの点数(SPI)を付けています。

     サイクル日数とは前産離乳日から今回離乳日までの日数。

初産豚は初回交配日から離乳日までの日数+5日として計算

この式から分かるように離乳体重つまり哺育能力に重点を置き、母豚回転率も加味しています。図1は母豚の産歴構成グラフです。稼ぎ頭は3〜4産目なので、平均産歴が3〜4になるよう、産歴も加味して廃豚を決めます。

 また、定時定量出荷をするためには候補豚導入計画の精度を上げることも重要です。事故等で計画外の廃豚も発生しますし、発情再起不良などで毎週の交配頭数にバラツキが出てしまいます。これを修正するには単位の交配頭数チャートを付け、次回種付け時期に必要な候補豚を事前に準備することが重要です。PigMaxの交配チャートでは次回種付けに必要な候補豚頭数とその導入時期を自動で計算する仕様になっています。

 私のコンサルテーションでは、極力コストアップを抑えるために、交配技術と分娩舎管理技術のレベルアップに重点を置いています。看護分娩、分割授乳や里子、分割離乳などの技術をマスターして頂いたA農場では1腹離乳頭数が2008年の8.7頭から2010年前半では10.0頭までアップしました。

 次に肥育部門です。肥育成績を集計・分析するソフトは一般的にあまり使われていないのではないでしょうか。私が思うに正確なデータ収集が出来ていないところが多いから、集計・分析まで行かないのではないでしょうか。大まかな枝肉成績は屠場から還元される集計で間に合わせている方が多いようです。しかし、枝肉成績と飼料要求率、出荷日令を分析すると、まだまだコストダウンの余地がある農場が多いのも事実です。販売金額や飼料代など収益に直接大きく影響してきます。

 MeatMaxでは屠場から送られてくる枝肉精算書のデータを1頭ずつ入力して集計します。まず、体重別売上金額が分かりますので、出荷品揃え技術の検証が出来ます。次に各飼料名柄ごとの消費数量と単価を入力することで肉豚1頭当たりの飼料コストが計算されます。ここで背脂肪厚と出荷日令も加味してコストダウンの糸口を見つけます。多くのパッカーは脂肪が厚めの豚を好みます。「厚いのは削ればよいが、薄くて締まらないのはどうにも出来ない」という理由からですが、この論理によって多くの生産者が過剰な肪厚を生産するために、飼料要求率を悪くされているのです。飼料の銘柄変更や切り替えタイミングの変更、飼育環境の改善、疾病対策等その農場に合わせた方法で、販売金額アップと飼料代節約にチャレンジしていくわけです。図2は改善前後の枝重と背脂肪厚の分布図です

 A農場の実績では2009年前半と2010年前半の比較で、平均格落ち金額が28円から13円に、1頭当たり飼料代が約800円安くなりました。飼育環境改善のためナーセリーコンテナを入れましたので、その分のコストアップを差し引くとトータルで肉豚1頭当たり約1,200円の収益改善となりました。飼料要求率の改善は現在も進行中ですので、来年はもっとコストダウンになるでしょう。

参考資料・・・・交配チャート活用方法(PDF)

 

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最終更新日 : 2022/01/23