【 はじめに 】

 養豚経営費用の大半を占めるのが飼料費で、これは古今東西変わり有りません。バイプロ飼料を積極的に取り入れている農場に於いても、コストの筆頭は飼料費なのではないでしょうか。かといって、ただ単価の安さだけを追求しても発育低下や、飼料効率の低下をまねき、結果的にコストアップとなりかねません。それが何故起こるのかは後述致します。また、子豚が離乳後出荷までの間、4〜6種類の飼料を順次切り替えて給与されるのが一般的ですが、その切り替えタイミングによっても発育スピード、肉質、コストに多大な差が出てきてしまいます。この切り替え技術の差が養豚経営の根底を揺るがす差となって現れてしまいます。それがどのようにして起こるのかと、自分の農場に於ける飼料切り替えのベストタイミングを求める方法をご紹介していきます。

【 栄養要求量と、給与量の関係 】

 豚の発育速度に最も重要な影響を及ぼす栄養素はタンパク質です。豚が腹一杯餌を食べても、飼料中のタンパク質含量によって1日に摂取できるタンパク質の量が左右されるからです。タンパク質を構成するアミノ酸のなかでも最も制限因子となりやすいのがリジンの含量です。タンパク質の含量は一般的にCPとして飼料成分表に表示されていますが、リジン含量は企業秘密にしている飼料メーカーが多いようです。豚の発育を最大に引き出すために必要なリジン摂取量は、豚の体重が多くなるに連れて少なくなっていきます。また、品種(発育能力の差)によっても差があります。

図1〜図3は豚のリジン要求量とリジン摂取量の関係をグラフにしたものです。図1は3例の中では最も効率の良い切り替えタイミングとなっています。というのは飼料中のリジン含量が要求量よりも不足している時期と、過剰になっている時期がほぼ半々となっているからです。図2では餌の切り替えタイミングが早すぎて摂取量不足の時期が多くなっています。結果として十分な発育ができない状態です。図3では逆に切り替え時期が遅すぎる例です。発育を速くしようという思いから前の段階の餌を長く引っ張る例がこれにあたります。豚にとっては必要以上のリジンが含まれた餌を与えられると、必要以上には食べなかったり(食下量の落ち込み)、軟便になったり、食べこぼしが多くなったりという現象が現れ、やはり効率が低下します。

 このグラフでは横軸に離乳後週齢を用いましたが正確に言うと日数ではなく体重によってリジン要求量が決定づけられます。ですから同じ日令の子豚でも体重の小さい豚の方がリジン含量の多い飼料を与える必要があります。逆に体重の大きい豚は小さい豚よりも早く次の段階の餌に切り替えてやるのがよいのです。ですから、離乳時の子豚グルーピングは体重別に分けて、餌の切り替えは日令基準ではなく体重基準とするのがベターです

 また、図1の例でも餌の種類がもっと多ければ、要求量と摂取量の過不足をもっと少なくできるわけです。これを実現する方法として、餌の切り替え時は急に切り替えるのではなく、35日間は混ぜ餌を給餌してやり、リジン含量の急激な変動を緩和してやることが効果を発揮します。

 

【 増体量、飼料効率とコストの測定方法 】

 さて理屈はこれで理解できたとしても、ではいったいベストの切り替えタイミングはどうやって求めればよいのか?という疑問にぶつかると思います。これを解決するには、サンプルによるモニタリングをすることがベストであると思います。つまり、離乳時と、肥育舎への移動時と出荷時に体重を測る。そしてそれぞれの期間に給与した飼料の銘柄別重量を記録する。そしてそれを元に飼料効率と飼料費を計算し、両数値ともに最低になる給餌方法を採用することです。

 ではその具体的測定方法を紹介します。まず体重を測定する豚を決めます。1ロット(1週分の離乳子豚群)の中で平均的な大きさの1ペンの内、大きい2割と小さい2割を除いた豚がよいです。例えば201ペンなら大4頭と小頭を除いた12頭を測定します。

 次に、標準となる給餌体系を決めるために、現在使用中の餌のリジン含量を調べて下さい。飼料会社との信頼関係ができていれば教えてくれるはずです。また、お使いの品種の体重別リジン要求量を種豚供給元から聞いて下さい。顧客のコストダウンのことまで考えている種豚会社なら教えてくれるはずです。この2つのデータから図1の様なグラフを書き、餌の切り替え時期を決めます。

 次に体重測定対象ペンについて各段階の飼料の1頭あたり給餌量を求めます。紙袋の餌は手給餌になるので、その量を記録します。給餌ラインで給与しているところも手給餌で記録するのは大変なので、次の計算式で求めます。

1ヶ月の使用量÷1ヶ月の出荷頭数÷30×給与日数=1頭あたりの給餌量

このようにして求めたデータを表にしたものが【表1】です

【 最良の切り替えタイミングの求め方 】

 表1には3ロット分の試験データ例を載せてあります。ロットAでは早めに餌の切り替えをしていった結果、肥育期間が延びて飼料効率、トータル飼料費とも良くありません。一方ロットCでは前段階の餌を長く引っ張る形で切り替えタイミングを遅くした例です。肥育期間は最も短いですが、トータル飼料費はロットBよりも多くなっています。結論としてロットBの給餌体系が最もコストパフォーマンスが優れていると言えます。

 しかし、最終的には枝肉売上金額も計算に入れなければなりません。給餌体系の差で脂肪の付き具合も変わってきますので、格落ち金額も含めた手取金額の多い給餌体系を選択しなければなりません。また、できればこのモニタリングを離乳舎と肥育舎に分けて集計したほうがより効果的です。離乳舎では発育スピードと飼料コストを重点項目とし、肥育舎では餌の切り替え時期が背脂肪厚に影響するので、枝肉の手取金額に重点を置くのが良いと思います。

【 農場飼料効率を求める計算式 】

 最後に、飼料効率を求める計算式を幾つか紹介しますので、自社農場に合った方法を採用して下さい。

 

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最終更新日 : 2022/01/23