農場の無駄を省こう・・・「動きやすい動線、作業しやすい環境づくりを」

 「無駄」と呼ばれるものの中には生産資材のムダや投資のムダ等ありますが、今回の特集では作業効率のムダを考えてみます。作業効率のムダとは時間の無駄を意味しますから、それは労務費のムダと言うことになります。昨今の低豚価に対応していくために何処から効率化していったらよいかを考えてみましょう。

 経営者サイドから見れば、同じ結果が得られるならば人件費は少しでも抑えたい。残業代もコストアップになるから、残業にならないように仕事配分を考えたい。というのが通常です。一方従業員からすれば、仕事はつらいよりも楽な方が良いが、給料は下がると困る、というのが通常です。残業に関しては個人差があり、「給料が増えるから積極的にやりたい」人もいれば、「余暇や家庭を大事にしたいから残業はできるだけ少ない方がよい」人もいます。一見、立場の違いで考え方が逆のように思えますが、ここで労使共通のメリットを見つけないと作業の効率化は進みません。

 図1を見て下さい。これが良い循環を生む作業効率化の考え方の一例です。

今までの作業を見直し、効率化することによって時間の余裕が生まれます。その空いた時間で売上アップに結びつく、またはコストダウンに結びつく新たな作業をプラスします。その結果として収益アップになれば、労使共にハッピーになる構図が出来上がります。

 では次にどのように効率化するポイントを見つけるかに移ります。以下の3つの切り口で見ていきましょう

@     省略しても良い作業はないか(省いても農場成績や収益が変わらないこと)

A     同じ事をするにももっと短時間でできる方法はないかを探る

B     ムダな動きはないか。(作業の重複や迷い、間違ったことの手直しなど)

まず、Bを無くしていく方法から述べていきます。ムダな動きを作らないためには農場で働く人ひとりひとりが、今日自分がすべき仕事の順序や段取りをしっかりと把握していることが最低条件です。ここで役に立つものがスケジュール表と作業マニュアルです。これらが整備されていれば新人教育にも役立ちます。作業スケジュールは1週間単位のローテーションで行っている農場が多いと思いますが、豚舎の回転の都合で5日や10日単位でローテーションを作成している農場もあります。図2、図3が週間作業スケジュール表と作業マニュアルの一例です。

 

 

また、私は従業員全員にメモ帳とペンを常時携行するよう指導してきました。これは管理の記録や、豚の状態のメモを取りながら作業させることで正確な記録を取る事が目的の一つです。もう一つの目的は、朝一番で仕事の段取りを自分で考えて書き出し、それに基づいて作業を進めると効率が良くなるからです。ことわざで「段取り八部」と言われているとおりです。具体的に申しますと、朝一番の約10分ぐらいで次の様にします。

(1).今日やるべき事を箇条書きにする。

(2).優先順位を付けて、優先順に書き直す。

(3).必ず今日やるべき事と明日に回しても大丈夫なことの間に線を引く

このようにしてスタートしても急に頼まれる仕事が入ってくることがあります。その時はこの優先順位リストの何処に入るかを判断して該当する行に追加記入します。そしてやり終えた項目は線を引いて消していきます。これを毎日実行していくと時間の使い方が上手になります。

 次にAの「同じ事をするにももっと短時間でできる方法はないかを探る」について解説致します。企業養豚では大抵ステージごとに担当者が決まっており、単独で作業を進めることが多いのではないでしょうか。しかし、作業によっては複数人数でやった方が大いにはかどる事があります。豚の移動や出荷、去勢、離乳作業、ワクチン接種などが挙げられます。このような作業を従業員同士の自主的な協力に任せておいては、なかなかうまくいかない場合があります。このような時には、全員で協議する場を設けたり、場長や経営者がチーム編成や作業スケジュールを決めてやらなければなりません。図2のスケジュール例にもそのような分担も書かれています。但し従業員同士の相性の問題もありますので、チーム編成を作成するに当たっては従業員から個別に意見を聞いてから考えるのがベターです。

 また、農場レイアウトと作業動線によっても効率は変わってきます。例えば、交配豚舎と精液保管庫の場所関係や、各豚舎と薬品保管庫の位置関係、出荷台の位置や高さなどです。豚は後ろ足よりも前足が短いので、登り坂は得意ですが下り坂は苦手です。豚移動や出荷の経路の高さ関係が悪ければ修正する必要があります。また、豚は時計回りよりも反時計回りのほうが豚房から出しやすい(図4)、通路のコーナーに人が立つといやがって動かない等の習性がありますから、この様なことも考え合わせて動線のレイアウトを作ると作業がはかどります。

 但し、ここで注意が必要なのは、衛生管理や防疫のことも考えることです。効率だけを追求すると、衛生的に逆効果になる場合が多々あります。効率化プランを考案したら、実行する前に必ず管理獣医さんに相談するようにして下さい。

 最後に@の「省略しても良い作業はないか」について解説致します。これには作業ひとつひとつについて、その目的と効果を洗い出すことから始めます。それから、その作業を省略した場合に予想されるデメリットを明確にします。これは言うのは簡単ですが実際にやるとなると判断が難しいことだと思います。そこで、分かり易い1例を紹介します。ウェット給餌器を使用している肥育舎でのことです。夏場に残し餌があるとすぐに腐敗するので、ある従業員は毎日濡れた残し餌を掻き出して捨てていました。この作業は本当に必用でしょうか。確かに放置しておくと腐敗したりウジ虫が発生し、豚の食下量は落ちてしまいます。しかし餌を捨てることで、飼料効率は下がっているはずです。この場合はホッパーから食べ口へ餌が落ちる量を制限してやることで解決するのが本筋ではないでしょうか。これで餌のムダと作業時間の無駄が節約できます。この例のように普段作業している人は当たり前のことと思い、気づかないことが多い傾向にあります。いろんな農場を見ているコンサルの先生方によく見てもらうことで気づくことが多いと思います。

 要するに作業効率の改善は「目線を変えてみる」ことがキーポイントではないでしょうか。

 

 

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最終更新日 : 2022/01/23