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連載「台帳」(11) 

 

 

 

 

 

 

連載第11回:「在庫管理台帳をつくろう」

【はじめに】

皆さんの農場では豚、餌、薬品等の在庫管理はどのようにされているでしょうか。台帳やパソコンに随時記入して、リアルタイムで在庫が分かる農場もあれば、現場に行ってみないと分からない農場まで様々なようです。そして台帳の在庫が実際の在庫と合っているかどうか調べる作業が棚卸しですが、これがまた面倒な作業だと思います。今回はこの面倒な棚卸しを少しでも楽に正確に行うための棚卸台帳を紹介します。

ではまず、在庫管理や棚卸しの目的をおさらいしましょう。餌や薬品類は、注文してから届くまでに数日かかりますから、在庫が無くなる前に発注するために在庫管理が必用ですね。豚の棚卸しの目的は大きく分けて3つあります。@週齢別(体重別)在庫から出荷予測を立て、肉豚出荷(運搬、屠畜)の予約をするため。A財務状況を把握するため(豚は資産であるから在庫金額を把握する必用がある)。B飼料効率を計算し、飼料の無駄が発生していないか、発育スピードが順調かなどを把握するため。

私の知る限りでは、自農場の飼料効率まできちんと把握している人が意外に少ない様です。ここでキーポイントになるのが飼料棚卸しと在庫豚の棚卸し重量をいかに正確に把握するかにかかっています。飼料効率は次の計算式で求めます。

(購入飼料重量+期首棚卸飼料重量−期末棚卸飼料重量)÷(肉豚出荷総体重期末棚卸豚総体重期首棚卸豚総体重)

単純に飼料購入量を肉豚出荷重量で割っただけでは正確な値は出ません。(表1)

【飼料在庫調査表について】

 左半分は在庫量を記入する部分ですので、説明は要らないでしょう。右半分は私が工夫した部分です。バラ餌タンクの残量を目測させると従業員によって個人差が出ます。それを出来るだけ少なくするための工夫です。点線で示した様子はタンクの中心部分が低くなっている状態です。タンクに餌を入れたばかりで、中心が盛り上がっている場合は、+1tします。表面がほぼ水平の時は+0.5tと言うような規定に基づいて記入します。また、タンクの容量によっても異なりますので、タンクごとに目安をマーキングしておくのが良いでしょう。

 この調査を毎週一定の曜日に行って、それをもとに次週の餌オーダーを出すようにすると正確なオーダーが出来ます。それは餌の配送効率を上げ、運賃節約にもつながります。餌の品質を落とさず飼料費を下げる手段の一つにもなっています。

【豚棚卸し台帳について】

 豚の棚卸し台帳は豚舎内のレイアウトに合わせた様式にするのが良いと思います。今回掲載しました離乳舎棚卸し調査票は、12ペン×8室構成のものです。また、肥育豚棚卸し台帳は25ペン×3列構成の肥育豚舎に合わせた物です。種豚舎用、分娩舎用、離乳舎用もそれぞれの豚舎のレイアウトにあわせて作ります。そうすると視覚的にも分かり易く記入もしやすいものです。

「ロット」欄は離乳日でも生年月日でも構いません。記入例では離乳日を用いています。離乳時に子豚の群編成をする農場では離乳日を用いるのが良いと思います。右端の欄は離乳後の週齢別に在庫頭数を集計する欄です。ここは手作業で集計するのが大変ですので、パソコンの表計算ソフトで行うのが良いでしょう。豚舎ごとの棚卸し台帳が分かれていても簡単な関数で集計できます。私が作成したエクセルのシートでは、空白列に週齢を計算する式が入っています。棚卸し日から離乳日を引いて7で割り、小数を切り捨てしています。週齢別集計欄ではそれをSUMIF関数で集計しています。

 右端から2番目の1頭当り生体重ですが、記入例では出荷日令175日(21日令離乳で離乳後22週で出荷)、出荷体重115kgの標準的な発育例に従って記入したものです。農場によって出荷日令や出荷体重には違いがありますので、自分の農場に合わせた数字を使って下さい。

 【棚卸集計表について】

現場の従業員レベルでは単価及び在庫金額欄は不要かもしれませんが、財務管理には欠かせないですし、コスト意識高揚にもなりますので金額欄を含めた台帳を紹介します。中央列は前記した肥育豚棚卸しの週齢別集計欄から転記します。肥育豚の評価額については販売価格(時価)を用いる方法と原価積算方式があります。私は原価積算方式を採用しています。まず子豚が生まれた時の価格は繁殖部門の生産コストから計算します。次に週齢ごとに給与した餌の金額を積算していくという方法です。

 右側部分は薬品類の棚卸し記入欄です。農場ごとに品名は変更してご使用ください。

 【おわりに】

棚卸しは面倒な作業ですが、とても重要な仕事です。従業員へ指示する時はその重要性をきちんと理解してもらって正確に記入してもらうようにしましょう。また、実施頻度ですが最低でも毎月、大規模農場では毎週実施がお勧めです。

今回もパソコンで集計した方が良いと思うところがありました。ご紹介しました集計表の電子データをご希望の方は、筆者まで御連絡頂ければ無料で差し上げます。

いよいよ来月は連載最終回ということでパソコンソフトの利用について、市販ソフトや表計算ソフトの利用について紹介します。お楽しみに。 

ダウンロード用 飼料在庫調査表   ダウンロード用棚卸集計表

 

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最終更新日 : 2022/01/23