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連載「台帳」(10) 

 

 

 

 

 

 

連載第10回:「豚舎ごとの引き継ぎ帳について」

【はじめに】

今回は、従業員の意志疎通などに役立つ豚舎ごとの引き継ぎ帳について、というテーマに基づいた帳票を紹介します。ステージ間の連絡、例えば離乳舎から肥育舎の場合はペンカードをそのまま次のステージに持って行くことで可能になります。

また、養豚場は年中無休ですから、従業員は交代で休みを取ることになります。ですからステージのメイン担当者が休みの時に別の担当者がそのステージの管理をすることになります。今回はこの引き継ぎをうまく行うための帳票を紹介します。形式としては日報のようなものです。日報は通常1日分を1頁に書き、事務所に保管することが多いのではないでしょうか。担当者が変わった時は前日の日報を読んでから作業に入ることで引き継ぎができますが、記録された日報の全てを記憶することはかなり難しいことです。私は1頁に1週間分を記録する様式にして、それを豚舎に持参して記録したり参照したりするようにしていました。帳票をステージごとに分けてA4版1枚に収まるように工夫しました。

【豚舎チェック表の項目について】

 記録する内容の中で、環境の記録(温度や湿度など)に多くのスペースを割いています。これは、豚が順調に発育するためには、環境コントロールが重要であるとの考えに基づくものです。疾病予防の観点からも、清掃消毒やワクチネーションと同じくらい重要なことです。このような記録を付けていれば、例えば健康不良豚が急増した時に環境変化のストレスが無かったかどうかを振り返ることが出来ます。そしてそれを今後の管理に生かすことが出来ます。では、項目ごとに詳しく説明していきます。

 まず、離乳舎チェック表ですが、最近はウインドレスで部屋単位のオールインオールアウト方式を採用しているところが多いと思いますので、それを前提とした帳票となっています。通常、換気コントローラーは温度による制御を行っております。しかし、湿度も豚の健康管理には重要なファクターであり、発育成績にも大きな影響を及ぼします。では何故換気コントローラーには湿度センサーが付いていないのかというと、湿度センサーはホコリの影響を受けやすく、大きな誤差を生みやすいからです。上手に湿度をコントロールするには、以下のようにします。まず、各部屋には温湿度計を1個ずつ下げておきます。最近は小型デジタル温湿度計が安く手に入りますので、これが最適です。それとは別に精度の高い(23万円ぐらいの)温湿度計を用意し、ホコリのかからない場所に保管しておきます。部屋をオールアウト洗浄後、高精度の温湿度計をその部屋備え付けの温湿度計と並べておき、誤差を補正します。

 最適な湿度範囲は、本誌200812月号の換気についての記事に詳しく載っておりますのでご参照下さい。ただ、私の経験値ではそれより少し低く、5575%が最適と思っています。これは豚だけでなく機材や餌の状態等も含めた総合的な判断による最適値です。但し気候や地方によって少し異なるのかもしれません。

  次に、最高気温と最低気温。豚の発育には日較差が5℃以下であることがベストで、肥育舎や種豚舎でも最低限10℃以内に収まるように管理しなければなりません。最高最低温度も小型デジタル温湿度計で計測できます。

 その他の項目はごく一般的なチェック項目です。異常があった場合にその内容を簡単に記録したり、次の日に引き継ぐ管理などを記入します。

 分娩舎チェック表では母豚の健康状態を記録するスペースを多く取っています。子豚が下痢をしていた時など、子豚の治療にばかり気を取られがちですが、母豚の体調不良が原因の場合が多く見られます。ですから母豚の健康チェックの項目を多くして、母豚管理に手落ちがないよう導こうとしているものです。

【農場に合わせたアレンジ】

 今回のチェック表は私の原稿をそのまま使える農場が少ないのではないかと思います。と言うのは農場ごとに豚舎の形式や部屋数構成などが異なるからです。あくまでも記録項目や記録の仕方、基本的考え方を参考にして頂き、自分の農場に合わせた様式を作って記録することをお勧めします。台帳やカードを活用して成績を上げるには実際に使う人が書きやすく、分かり易い様式にしないと効果が上がりません。記入例もあくまで参考例として、どのようなことを書いて欲しいかは、経営者または場長のアイディアで工夫してみて下さい。

 今回掲載した離乳舎チェック表は、11室、全8室ある農場のものです。換気コントローラーは11台なので、このような構成になっています。また、分娩舎チェック表は2室構成の農場なので、A室B室の記録構成になっています。3頁目のチェック表は肥育豚舎を想定した構成になっています。

 また、一度作った様式を固定する必用はなく、試行期間を設けて運用し、場内会議等で意見交換しながら、よりよい形式に仕上げていくのが良いと思います。

 【おわりに】

このようなチェック表を保管しておくと従業員教育にも役立ちます。新入社員が入った時や、担当者を異動した場合などに、以前の記録を見せて管理のポイントや注意しなければならないポイントなどの具体例を示すことが出来ます。また、今回は紙面の都合で省略しますが、場内自動車類(ホイルローダー、場内運搬トラック等)の定期点検一覧表などもトラブル防止に役立ちます。 

今回も、ご紹介しました集計表の電子データをご希望の方は、筆者まで御連絡頂ければ無料で差し上げます。

チェック表記入例↓   ダウンロード用豚舎チェック表(PDF)   ダウンロード用車輌点検表(PDF)

 

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最終更新日 : 2022/01/23