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連載「台帳」(8) 

 

 

 

 

 

 

連載第8回:「カード・台帳の集計」

【はじめに】

 前回までは各ステージで使うカードや台帳について紹介しました。今回はそれを集計して、繁殖成績や肥育成績を把握する手法を紹介します。今回は紙面の都合上、繁殖成績集計表と肥育成績集計表に分けてありますが、A3用紙に両方を並べて記入しても良いでしょう。これを見て集計項目数が多いと感じられる方もいると思いますが、成績改善・経営改善のためには把握しておかなければならない事項です。この集計から自分の農場の長所や短所も見えてきます。そして経営改善のためには何処から手を打っていくかを判断するための集計表です。母豚規模200頭以下であれば月単位の集計で良いと思います。それ以上の規模では週単位の集計にした方が良いです。

他の農場の成績と比較する場合は集計基準を統一しなければ比較になりません。ここでは一般的に普及している養豚ソフトの計算基準に準じて説明致します。但し養豚ソフトによって若干計算方法が異なる部分もありますので、そのようなところは筆者の判断基準に基づいて説明致します。

【繁殖成績集計表】

 まず母豚雄豚の飼養頭数ですが、養豚ソフトでは毎日の在庫頭数の平均を計算しています。しかし手計算でこれをするのは大変ですので、月末棚卸しの数字又は毎週末の在庫頭数の平均を使います。前者を用いるよりは、後者の方が誤差が少なくなります。また、候補豚を母豚へ繰り入れカウントするのは交配時とします。分娩するまで候補豚扱いしている農場もありますが、実態よりも繁殖成績が良い数字となって現れますので、好ましくありません。

 母豚更新率は、廃豚頭数や候補豚導入頭数で計算するよりも、候補豚から母豚に繰り入れた頭数を基準にするのが実態に合っています。廃豚数基準ですと規模拡大実行中は実態と合わなくなります。

 空胎発見頭数には、妊娠鑑定で不受胎が確定したものと、分娩直前に発見した空胎豚の合計を書きます。種付け分娩率が同じでも空胎が多いと母豚回転率が悪くなります。母豚回転率は、分娩母豚数を基準とするよりも離乳母豚数を基準にするのがベターです。というのは、分娩後に死亡する母豚がいたり、具合が悪くなって子豚を全頭里子に出してしまう等の理由で離乳腹数の方が若干少なくなります。成績は良い方が誰しも嬉しいですが、このように厳しい集計方法を採用しないと本当の実力が見えなくなってしまいます。

 哺育率の計算はこの集計表の離乳子豚頭数を分娩子豚数で割り算すると、月ごとのばらつきがでますので、離乳台帳で集計した数字をこの表に転記する方が良いです。

 繁殖成績の善し悪しは1母豚当たり年間離乳頭数で判断することが多いです。しかし、経営的判断は離乳子豚総頭数を重視します。例えば毎週100頭ずつ受入可能な離乳舎がある場合、離乳子豚総頭数がそれ以下では豚舎の稼働率が下がります。そんな時はまず母豚数を増やして、離乳舎肥育舎をフル稼働させることが重要です。

 【肥育成績集計表】

 母豚飼養頭数の下に10ヶ月前母豚頭数という項目があります。1母豚当たり年間出荷頭数を出来るだけ正確に計算するために、出荷された肉豚が種付けされた時期まで遡った母豚頭数で割り算するためです。

 肥育事故率の計算方法は2通りありますが、規模拡大時や縮小時も実態に沿った数値が得られるのは、死亡淘汰頭数を出荷頭数と死亡淘汰頭数の合計で割り算する方法です。また、子豚出荷や、子豚導入も併用している農場では、離乳頭数で割り算する方法は使えません。

 出荷時の生体重を量っていない農場では、枝重を歩留りで割り算して生体重を求めて下さい。その場合は自分の農場と同じ品種で同じ屠場を利用している農場の歩留りを参考にして下さい。出来れば自農場の豚をサンプル測定して、その数字を使う方が良いです。出荷時生体重は飼料効率(FC)計算のために必用です。飼料価格が高騰していますので、この辺はシビアに管理することをお勧めします。FCをより正確に計算するには肉豚と飼料の棚卸しが必用です。その方法については連載10回目で紹介する予定です。

 項目「m」に年間総枝肉生産重量とありますが、あまり聞き慣れない方もいらっしゃるでしょう。連載1回目で養豚経営はかけ算であると言いました。日本では枝肉流通が主流ですから、年間何キログラムの枝肉を生産できるかが生産技術成績の最終形なのです。後はそれをいくら高く売れるかが販売技術であると言えます。

 【おわりに】

 今回も、ご紹介しました集計表の電子データをご希望の方は、筆者まで御連絡頂ければ無料で差し上げます。

ダウンロード用繁殖・肥育成績集計表(PDF)

 

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最終更新日 : 2022/01/23