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連載「台帳」(2) 

 

 

 

 

 

 

連載第2回:まず母豚・雄豚カードを作ろう

【はじめに】

 今回は母豚カード、繁殖豚台帳の説明をします。はじめに、カードと台帳の定義をしておきます。カードは主に豚舎で記録し、豚舎で利用します。台帳は、主に豚舎で記録し、事務所に持ち帰って集計や保存用に用います。この考え方は次月から紹介します、種付け〜肥育各ステージのカードや台帳にも共通するものです。

こうすることによって記録の手間は2重になりますが、現場でも事務所でも個々の母豚成績が把握できます。また、カードを外して事務所に持って行ってパソコンに入力した場合、豚舎に持ち帰った時に別の母豚に付けてしまう恐れがあります。母豚カードは母豚導入時、あるいは初交配時に作成し、その母豚が淘汰されるまでずっと母豚の移動と一緒に移動していきます。 

 【母豚カードの目的】

 図1が母豚カードの一例です。(コピーして使えるように空欄にしておきます)図2はその記入例です。項目はこれが標準的なものですが、農場によっては不要な項目や不足な項目があると思います。母豚カードを見るとその母豚の過去の成績が一目で分かるようになっています。分娩担当者はこれを見て、哺育開始頭数を何頭にするか(里子を出し入れするかどうか)の判断をしなければなりません。例えば、初産だから10頭までにしておくとか、前産12頭離乳しているから今回も12頭付けるかなどです。また、助産歴や白子が多い母豚には分娩誘発ホルモンを使って、日中に看護分娩させるという判断も出来ます。

 交配担当者はこれを見て発情再起の要注意豚をマークし、重点管理をします。例えばボディースコアが分娩前後で1.5以上開きがある場合は、授乳中の消耗が激しかった訳ですから、発情再起が長くなることが予想されます。また発情が来ても種が付かない可能性も高くなります。このような場合は候補豚が潤沢にあるなら廃豚にした方が良いかもしれません。候補豚が足りなければ交配に回しますが、発情を1回飛ばして交配した方が産子数が多くなることも視野に入れなければいけません。

 場長または経営者は、母豚カードの履歴と実際の豚の具合を見て廃豚の判断に用います。

 【項目について】

分娩時事故頭数には、子豚の処置前に圧死したもの、奇形や未熟子等の生きてはいるが離乳まで生き延びる確率が著しく低いものをカウントします。これらをほ乳開始頭数に算入するかしないかは意見の分かれるところですが、私がかつて使用していた養豚ソフトではほ乳開始頭数へは算入していませんでした。ここのカウント方法の違いで哺育率が変わってきますので、他の農場と成績を比較する時は注意が必要です。

離乳子豚体重欄を1腹総体重と1頭平均の2段にしているのは訳があります。母豚の哺育能力を判断するには総体重を用い、離乳子豚のロット内でのばらつきを判断するには1頭平均を用いますので、それを一目で分かるようにしています。

また、私が場長時代は、分娩舎出入り時に母豚体重を測定していましたので、ボディースコアの欄は母豚体重にしていました。背脂肪厚でも同様の判断が出来ます。

 【書きやすい工夫、見やすい工夫】

毎日記録し毎日見るものですから、書きやすく見やすく工夫をした方が成績アップにつながります。タッグ番号等は遠くからでも見分けられるように、欄を大きく取り太字のフェルトペンで書くようにします。カードの裏面にもフェルトペンでタッグ番号を書いておくと便利です。それは以下のような理由からです。母豚カードの掲示場所はストールの前にしている農場とストールの後にしている農場があります。満足のいく繁殖成績ならあえて変更する必要はありませんが、私は後の方がベターだと思います。来月紹介する交配カードと一緒にカードケースに入れ、ストールの後扉の上に張った針金に、洗濯ばさみで止めておきます。こうすると、再発チェックや妊娠鑑定時はカードをすぐに参照できます。採血や豚移動の時は、母豚カードの裏面に大きく書いたタッグ番号が見えますので、問題ありません。

また、自分にしか読めないような字で書いている従業員をたまに見かけます。記録というのは管理担当者だけでなく、場長や経営者も見るわけですから、誰でも読める字体で書くようにしましょう。

 【母豚台帳】

 次に図3が母豚台帳ですが、種豚導入台帳と呼んでいるところもあります。パソコンで養豚ソフトを活用しているところではあまり必要性は無いかもしれません。母豚の導入先が1カ所のみでしたなら、そちらの出荷明細書をファイルして代用も出来ます。外部導入と自家更新を併用している農場では、母豚の更新状況をきちんと把握するために母豚台帳は必要です。

 四半期または半年ごとに集計し、母豚の更新率や廃豚理由の分析をします。

 【カードの制作】

 まず材質ですが、普通紙にコピーしたりプリンターで印刷したりする方法が最も手軽ですが、私はあまりお勧めしません。母豚カードは、風に飛ばされたり、豚による振動で落ちたり、水濡れなどのアクシデントが付きものです。このような時でも破れたり読めなくなったりしないように作ることが良いと思います。印刷業者へオーダーしてハガキぐらいの厚紙に印刷するのが、大量に作る場合はベストです。しかし、個人経営の農場であれば、厚紙にレーザープリンターで印刷するのが良いでしょう。また、コピー機でも手差し口から厚紙を給紙すれば手軽に作れるでしょう。書きやすさと、フェルトペンで書いた時の裏面への浸透、カードケースへの出し入れのし易さを勘案すると普通のコピー用紙よりは厚紙の方がベターです。インクジェットプリンターで印刷すると、水濡れによりインクがにじんでしまうのが弱点です。

 私がお勧めする用紙は、「ジッタ ケント紙 こな雪 A4厚口」です。ちなみにアスクルでは1パック(250枚入り)が2,980円です。

 【終わりに】

今回ご紹介しました帳票をpdfファイルにしたものを私のホームページからダウンロード出来ますのでご利用下さい。また、エクセルファイルご希望の方は筆者まで御連絡下さい。メール添付であれば無償で差し上げます。

母豚カード記入例↓  ダウンロード用母豚カード(PDF)  ダウンロード用母豚台帳(PDF)

 

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最終更新日 : 2022/01/23