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連載「台帳」(1) 

 

 

 

 

 

 

【はじめに】

 今月から12回連載の予定で台帳の活用方法をお送りさせて頂きます。台帳のサンプルやパソコンの活用方法も盛り込んでいきますので、宜しくおつきあい下さい。

 大規模な企業養豚では様々な台帳を活用されていることでしょう。小規模農家養豚の方や農場に勤務を始めたばかりの方々にとっては、数多くの台帳を利用するのは面倒に思えるかもしれません。しかし台帳を付け集計や分析をかけることにより、確実に経営の一助になるものと思います。これから規模拡大を考えておられる方にとっては、台帳の活用は必須条件と言っても過言ではないでしょう

 【何のための台帳か】

 養豚仲間が集まると自然に繁殖成績や肥育成績の話になりますね。この話に入るにはやはり台帳を付けて集計をかけなければ分かりません。相手より成績が良くて優越感に浸ったり、逆に悪くてがっかりしたり、一喜一憂している人も時々見かけます。しかし台帳は成績を比較するのが目的ではありません。というのは誰しもが趣味で養豚をしているわけではなく、営利活動として行っている訳ですから利益を上げることが目的となります。

 例えば、自分の農場で離乳頭数が1腹当り0.1頭アップすると年間いくらの収益アップになるのか。またそれにより枝肉1kg当たりの生産コストはいくら下がるのか。即答出来ますでしょうか。即答は出来ないにしても、すぐに電卓を叩いて計算できれば合格です。それと同時に、離乳頭数を1腹当り0.1頭アップさせるためにどれくらいのコストがかかるかも計算できないと行けません。営利活動として行っている以上、何をするにも費用対コストを考えて行動するべきです。種々の台帳を付けることは、とりもなおさず前述したような事を計算するための基礎データ作りなのです。

 また、収益や成績を改善したい時に何処から手を付ければよいかを判断するための材料ともなります。人間の記憶というものは得てして印象に左右されるものです。例えば1腹離乳頭数が12頭以上の豚が目立つと、つい繁殖成績が上がったと思いこんでしまいがちです。しかし、母豚回転率が落ちていれば繁殖成績が逆に下がっているかもしれません。

 【収益の構造】

農場の売上は主に掛け算で成り立っています。

売上金額=1頭売上×出荷頭数

出荷頭数=種付け頭数×種付け分娩率×正常産子数×哺育率×(1−肥育事故率)

1頭売上=出荷体重×枝肉歩留り×枝肉販売単価

一方費用の方は固定費用+変動費用(出荷頭数により変動する費用)

主な変動費である飼料費=出荷頭数×出荷生体重×飼料効率×飼料単価

このことは何を意味するかと言いますと、どの項目の成績が悪くなっても収益に大きな影響が出るし、また、どの項目も手抜きが出来ないと言うことです。

 図1のコストシミュレーション表は私が普段から分析に使っているものです(数値データはサンプルです)。図2に記入した数式は、表計算ソフトに入力する計算式です。セルに名前を付けてわかりやすい計算式にしてあります。パソコンが無い方は電卓で計算式通りに計算した結果を記入すればよいと思います。但し「年間収益への影響度」欄の計算式は印刷に出ない部分に入れてあります。

 【分析方法】

 このシートを使うと前記した「自分の農場で離乳頭数が1腹当り0.1頭アップすると年間いくらの収益アップになるのか」がすぐに分かります。このような分析が初めての方にとっては、たぶん「年間収益への影響度」が予想とは異なった数字になっているのではないでしょうか。この値は農場の規模や成績によって若干異なってきます。

 このシートは収益、原価と成績の相関関係を1枚で簡潔に表していますので、経営改善には最適の分析ツールではないかと思います。「総原価計」行の「枝コスト」欄が損益分岐点を表します(サンプルでは409.4円)。但しこの数字は相場と直接比較は出来ません。平均格落ち金額と屠場経費等をプラスして比較しなければなりません。

 このシートの下半分は技術成績欄になっています。このデータを求めるために毎日やることが「台帳に記録する」なのです。次回からは具体的に台帳の様式紹介、記録のの仕方や集計の仕方等を連載していきます。また、個々の技術成績の意味や計算方法も分からないが今さら聞きづらい。と言う方のために箇条書きしておきます。

     種付け分娩率 = 年間分娩母豚頭数 ÷ 年間種付け母豚頭数

     肥育事故率 = 離乳後死亡頭数 ÷( 離乳後死亡頭数 + 肉豚出荷頭数

     枝肉歩留り = 枝肉重量 ÷ 出荷時生体重

     農場飼料要求率 = 飼料消費量 ÷ 出荷時生体重

出荷生体重を測定していない農場の場合は、同じ品種の平均的な枝肉歩留りを用いて枝肉重量から換算します。

・出荷時生体重 = 枝肉重量 ÷ 枝肉歩留り(65%の時は0.65で割る)

 【あとがき】

 オリジナルのエクセルファイルには使いやすい工夫とエラー処理を施してあり、筆者のノウハウが詰まっておりますので、不特定多数の方に配布することは控えさせて頂きます。ご希望の方は筆者まで御連絡下さい。メール添付であれば無償で差し上げます。

 

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最終更新日 : 2022/01/23