|
|
母豚のボディコンディションと泌乳量の関係 【はじめに】 肉豚の増体率をあげるには、まず哺乳時にどれほど母乳を飲めるかが重要です。斉一性のある肉豚をつくるために、まずは母豚の管理の見直しをする必要があります。体重1.5kgで生まれた子豚11頭を21日で6kgにするわけですから、合計49.5kg増体させることになります。これに必要な母乳をほ乳期間中に食べる餌からのみ作ることは不可能で、母豚は自分の皮下脂肪を削って乳を出します。ですから分娩前までの皮下脂肪の蓄積と、ほ乳中の食下量をいかに多くするかが管理のポイントとなります。 【ボディースコアの管理】 では、分娩前の母豚の皮下脂肪は多いほど良いかというとそうではなく、多すぎると難産になったり、ほ乳期間中の食下量がのびなかったり、次産の産子数が減少したりという弊害が出てきます。皮下脂肪の量を測定する方法として現在ではポータブルリーンメーターが普及してきていますが、簡易的に見分ける方法として従来からボディースコアが用いられております。母豚のボディースコアの目安は下記の通りです。
分娩前(分娩舎受け入れ時)・・・3.5〜4.0
離乳時・・・・・・・・・・・・2.5〜3.0 ただ、ボディースコアの判断は見る人の個人差が出やすいものですから、成績向上を目指すなら、是非とも背脂肪厚の測定又は体重の測定をお勧めします。 では、最適な背脂肪厚はと言うと、産歴や品種によっても異なります。母豚の背脂肪厚を調べたデータが少ないので、ここでは体重管理の例を紹介します。図1は、白系大型種における理想の体重変遷です。これは、哺育成績(SPI値)上位30%の母豚の産歴別体重を平均したものです。バークシャーや中ヨーク種などはもっと少ない体重になります。理想的な背脂肪厚の変遷もグラフにすると同じ形になります。リーンメーターで管理していく場合は、まず各産歴ごとの理想的なボディースコアの豚を測定して自農場の理想値グラフを作成すると良いでしょう。 【ボディースコアの調整】 次にボディースコアが目標より外れた母豚の修正方法です。一般に太りすぎは分娩舎受け入れ時に、痩せすぎは離乳時に発見することが多いでしょう。ここで極端に餌を増やしたり減らしたりすると繁殖成績を下げてしまいますので、1サイクルかけて徐々に回復させます。 まず、痩せた母豚に対しては、ボディースコアが2以下なら発情を1回飛ばした方が次産の産子数が上がることが多いようです。交配後30日までは通常と同じ給餌量にしておき、その後標準より1〜2割増量すると良いです。交配直後から増やすと受精卵の着床が悪くなるからです。 太りすぎた母豚は、ほ乳中から減らしてかまいません。分娩後7日間は、子豚も小さいですから、標準給餌量の7割〜半分にしてかまいません。(図2参照)しかし後半は標準近くまで戻してやらないと子豚の離乳体重が小さくなってしまいますので、注意が必要です。 【里子技術】 産子数の多い母豚は1腹子豚の大きさにばらつきが出やすいものです。そこは、里子の出し入れにより1腹の子豚の大きさを揃えてやることが大事です。ポイントを列記します。 @ 入れ替えする子豚の日令差は+−1日以内にする A 里子に出す豚は大きい子豚を優先にし、小さい子豚はなるべく生みの親に付けておく B 初産豚や前回ほ乳成績の悪い豚には子数を少なくする。 【授乳期の管理給餌技術】 母豚がボディコンディションを崩す機会が最も多いのが授乳中です。ポイントは大きく分けて2つ。分娩看護と給餌量です。まず、分娩後7日間は次のことを励行しましょう。 @ 餌残しが無いかどうか確認し、あったら必ず体温を測定する。 A オリモノが出てないかチェックする。 B 乳房を触ってみて堅くないかチェックする。 C 異常があったらすぐ治療し、必ず直ちに治療記録を付ける。 記録を付けないと、原因究明ができないばかりではなく、トレーサビリティーの問題やポジティブリスト上の問題にまで発展しかねません。 次に食下量です。繁殖能力の高い母豚へはできるだけエネルギーとタンパク質含量の高い餌を与える必要があります。特に初産豚は、まだ胃袋が小さいので、経産豚に比べ食下量が劣ってしまいます。飼料費が高騰している昨今でも、授乳期用飼料はランクを落とさない方が得策かと思います。 また、食下量を上げるためには給水も重要です。給水器の吐水量のチェックや、水質のチェックは定期的に行いましょう。餌に水をかけてやりウェット給餌にすることでも食下量の改善につながります。水についての詳細は、本誌今年6月号の筆者の記事を参考にして頂ければ幸いです。 【まとめ】 改善を図るには何をどのように替えたかその結果どうなったか。という記録が無くてはなりません。さらに記録は多ければよいというものではなく見やすいように必要最低限に絞り、視覚に訴えるような工夫が必要です。そしてあれもこれもと欲張らず、テーマと期間を絞って分析していくことが肝要かと思います。 余談になりますが、病気がある農場では条件を変えても思うような結果が得られないことが多いものです。防疫ルールとピッグフローの改善(AI/AO等)が何よりも優先事項ではないでしょうか。 最後に今回ご紹介した給餌カードや各種記録台帳を筆者のwebページより無料でダウンロードできますので、ご利用下さい。アドレスはhttp://www.ne.jp/asahi/mack21/family/です。 |
この Web サイトに関するご質問やご感想などについては、お問い合わせフォームからお送りください。
|