<大都市に原子力発電所の立地は可能か?>

現在、日本で稼働している商業原子力発電所はすべて地方にあり、東京、大阪などの大都市には一つもありません(研究用の小規模な原子炉は、都市にもあります)。
「危険なものだから、地方に立地しているのではないか?」と言われることもありますが、これは本当の事なのでしょうか??

確かに、「100%安全」と言う事は、科学的にもありません。
ですから、原子力発電所には「危険性」はあり、万一の事を考えると、人口が少ない地方ある方が万一の場合は、その土地の人々を避難させやすいでしょうし、社会的損害も都市部より少ない、と言えなくもありません。
しかし、現実に大規模な原子力発電所災害が起こったならば、放射能の汚染範囲は広範囲に広がり、原子力反対派の方たちが作った、「汚染map」などを見ると、日本の半〜全域が汚染されるので、あまり、地方や都市部といった境は意味がありません。

都市部に原子力発電所がないのは、建設する条件を満たすのが大変であり、経済的に採算があわないからです。

原子力発電所を建設するための条件は、大きく3条件があります。

以下は、東京港岸に原子力発電所を建設した場合のシミュレーションです。
但し、厳密なものではなく、一般に手にはいる資料からの推定ですので、大ざっば計算です。


原子力発電所を設置する土地が、どの程度、必要かは建設する発電所の規模にもよります。例えば、日本原子力発電・敦賀発電所(1号機・BWR・35.7万kW、2号機・PWR・116万kW)の場合、敷地面積は約220万m2です。仮にこの程度の土地面積で考えてみまする。

土地代を約81万8000円/m2と仮定(国土庁の地価公示価格より、東京都の中央区、品川区、江東区、港区の湾岸地域を抽出して平均した値)。

∴ 2,200,000(m2)×818,000(円/m2)=1兆7996億(円)
の土地代金が必要です。
このコストだけでも、原子力発電所4・5基分(1基の建設費は約4000億円と仮定)となり、とても経済的とは言えません。

更に、原子炉は強固な岩盤に直接設置しなければなりません(新第三紀層以前の岩盤)。
東京の場合、岩盤は地下深く、数百m以上掘り下げることが必要です。このコストの推定は難しくはっきりしませんが、かなりのコストがかかります。

少なくとも今の東京港近郊に発電所を建設する工事費は、既存の発電所よりかなり高くなるのは間違いありません。

下の図は、関東地方の地下断面図です。地下にの構造については必ずしも正確に把握されているわけではありませんが、中新世層まで掘り込むに、東京湾岸では1000m近く掘ることが必要で、現実的な作業ではありません。


図は、貝塚爽平、成瀬洋、太田陽子、小池一之 著『日本の平野と海岸』(岩波書店)より>

 

このように、「原子力発電所は地方に作らなければならない」と言った事ではなく、主として経済的な面から、そして、国の安全規制の面から、建設する場所が限定されているにすぎません。

また、東京港近郊の場合を考えますと、羽田空港が近いため、絶えず航空機が飛んでいます。
それも高度が高い所での飛行ではなく、離発着の航路であり、万一の場合を考えると、その地域に原子力発電所を建設するのも考えものです。


しかし、現在の原子力発電所は本当に人がいないところに建設されているのでしょうか? 少なくとも、原子力発電所のすぐ近くに住んでいらっしゃる方はいます。

また、表に記すように、原子力発電所と近くの都市の直線距離は約60km前後のところが多く、決して無人地帯に建設しているわけではありません。都市部に原子力発電所がないのは、民間企業である電力会社にとっては、条件的に立地が見合わないにすぎないからです。

「危険だから地方にある」といった考えは間違いと言えるでしょう。

泊    〜 札幌 68km

柏崎刈羽 〜 新潟 68km

大飯   〜 京都 60km

女川   〜 仙台 58km

柏崎刈羽 〜 長岡 21km

大飯   〜 大阪 118km

福島第一 〜 郡山 60km

浜岡   〜 静岡 41km

美浜   〜 京都 80km

福島第一 〜 福島 61km

浜岡   〜 浜松 40km

伊方   〜 松山 57km

福島第二 〜 郡山 56km

志賀   〜 金沢 42km

島根   〜 松江 10km

福島第二 〜 福島 69km

志賀   〜 富山 53km

玄海   〜 福岡 54km

東海   〜 水戸 16km

原電敦賀 〜 福井 40km

玄海   〜 佐賀 53km

東海   〜 東京 120km

高浜   〜 京都 62km

川内   〜 鹿児島 48km

注)地図上より算出のため、おおよその距離であり、厳密な距離ではない。

しかし、大量の電力を消費している都市部に、まったく原子力発電所がないことに対して、疑問をもつ方もいるのも事実です。 

現実的には、都市部で消費する電力すべてを賄うための原子力発電所の立地は、技術的・コスト的に不可能です。けれど、原子力・電力の恩恵にあずかっている都市の象徴的なものとして、商業的に見合わなくても、小規模なものであっても、原子力発電所をつくることを考える必要があるかもしれません。 

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