<今後の原子力発電所の設備を行方。建設と廃炉を考えると...>

現在、日本で動いている商業用の原子力発電所は52基。
今後も、政府は温暖化防止の為にも、原子力発電所の建設を進めて行く方針ですが・・・。

これからの日本では、どのくらいの原子力発電所の設備が作られて行くのでしょうか? 
また、どのくらいの設備が適正な規模なのでしょうか? 【現在の建設計画】はコチラ

今後、どのくらいの設備が必要かを考える時に、最低限考えなければならないことは以下の点です。

現実に電力供給できるシステムは何か?

理想的なシステムでも、現実に使えなければダメです。
原子力は安全性に配慮はしていますが、もし大事故が起きれば電力供給システムとしてはすぐに役立たなくなります。

どのくらいの電力が必要となるか?

今後の社会、経済を考えて、どの程度電力が必要となるか。
これまでは右肩上がりでしたが、本当に需要は伸び続けるのでしょうか?

環境負荷はどの程度か?

どの電源でも“環境負荷ゼロ”はあり得ませんが、あまり負荷が大きい物はこれからの時代には適しません。

発電コストはどのくらいか?

安い方が良いのは当然です。
経済性のみ追求は困りますが、高価なエネルギーでは誰も使えません。

安定供給が可能か?

必要な時に供給できなければダメです。

これらの事は、互いに独立していることではなく、密接に関係しています。
上記の条件を完璧に満たせる電源があれば話は簡単ですが、現在のところはありません。

期待の燃料電池などは、環境負荷は低いのですが、まだ実用化していませんし、発電コストもまだ高く、水素源の安定供給についてもメドがたっているわけではありません

風力発電などはコストも安くなってきていますし、技術的にも完成された域にあると思いますが、日本の電力を十分に賄うまでには、まだ課題があります。

一般的に、これからの日本は人口も減り、省エネ社会を目指すので、電気の使用量は減るといわれています。

しかし、一部では「人口減に対しては、外国からの移民を受け入れるべき」との主張もあり、この場合は人口減にはならず、エネルギー消費が減る要因にはなりません。

情報化がうまく進めば電気の使用量を削減できますが、一方、新たな需要を生み出し、トータルでは増えるかも知れません。

高齢化社会の視点からは、一般に、高齢者の家では電力需要は高い傾向があり、今後、高齢者が増える点では、電気の需要が伸びる可能性もあります。

そして、日本全体のエネルギー消費量が減っても、エネルギーの使い方が電気にシフトしていれば、需要が増える可能性もあります。

そして、燃料電池が実用化しすべての課題をクリアーしたとしても、これからの社会も、電気を大量に使う構造が本当に良いのかという問題提起もあり、今後のエネルギー・電気のあり方を考える明確な方向性が確立されているとは言えません。


ですから、原子力発電所の設備の適正量を考えるのはとても難しく、原子力の事だけを考えていても無意味です。

そこでまずは、現状のままで原子力計画が推進される状態で、原子力がどのようになるかを考えることは、「では、どうすれば良いのか?」というきっかけになります。

そして、原子力発電所にも寿命はあります。

寿命は確定はしていませんが、現在は最低・40年程度と考えています。
また、経済的な点を考慮せず、技術的には60年は安全性は確保されると国・政府は考えています。

実際、どの程度動かすかは、経済的要因が大きいですが、現在、動いている一番古い原子力発電所は、日本原電(株)・敦賀1号機で、1970年から発電を続けています。
(1966年に動き出した日本原電(株)・東海1号機は、既に経済的な理由で停止、廃止措置を行っています。)

<日本の原子力発電所の設備容量の推移>

これまでの実績と今後の予定から、原子力発電の規模(設備容量)の推移を見ます。

2003年までは実績値、それ以降は計画・予測値です。

予測値は2パターンです。

A:自然推移

原子炉の寿命は一律40年で、原子力発電所は停止します。

B:自然推移+再構築

原子炉の寿命は一律40年で、廃炉。30年後に廃止した原子炉に代わる新たな原子炉(寿命は一律50年)が稼働開始。
[2040年から敦賀1、美浜1の新しい原子炉が稼働]

注)2000年以降の新規の発電所は、<これからの原子力発電所建設予定>に計画されている原子炉のみ。
但し、実質的に計画が不透明な日高、日置川、久美浜、串間、芦浜等は想定していない。
廃炉後につくる新たな原子炉は、一律で130万kWで計算。但し東海1号機では新しい原子炉の建設に入れていない。

また、現在、日本では高速増殖炉路線を堅持しているが、高速増殖炉については検討せず、あくまでも軽水炉についてのみ。
更に「廃炉後30年で新たな原子炉が稼働」としているが、原子力発電所を早急に建設・稼働との合意がとれている社会環境でなければ、現実的に、30年で稼働するのは厳しいと思われる。

Aは「これまで作られた原子炉も、これから作られる原子炉(計画しているもののみ)も寿命40年で閉鎖する」場合です。
この場合、2010年代にピークを迎え、それ以降は原子力の割り合いは下降し、2050年過ぎに、原子力発電所はなくなってしまいます。

つまり、現在計画範囲の原子力発電建設計画を認め、後は自然衰退にすれば、2050年には脱原子力は可能です(代替エネルギーについては考慮する必要はあるが...)。

Bは「原子炉が停止した後、そこに新しい原子炉を再び建設し、発電を行う」場合です。
今の所、原子炉を停止した後、跡地利用について正式決定はありませんが、再び、原子力発電所を建設する方向が有力です。
上のグラフのシミュレーションは、停止後、廃止措置・新規炉建設で「30年後に再び発電する」と非常に好条件で考え、出力も一律130万kWで計算しています。
但し、実際の建設・運転開始までは、30年で可能かは不透明です。
出力は技術的に130万kW以上は可能ですが、30年以上先の時代、電力需要、経済性によってより大規模な設備が必要になるか、それとも小規模な設備が必要になるかも不透明です。

Bの場合でも、2010〜2040年にかけて、原子力の比重は落ち込んで行き、この間の電力消費が減らず、非原子力エネルギーが実用化できなければ、現行の原子力計画でもこの時期の電力供給に不安があります。 

このように、現計画以上の原子力発電所を建設しなければ、「寿命という点から、2000年代半ばにほとんどの原子炉は停止」、新たに建設するにしても、計画外の新規立地がなければ「2010〜2040年の間に、原子力の比重は落ちて行き」ます。
更にこの間、他の原子力や化石燃料の代替エネルギーの開発が進めば、自然に原子力の位置は相対的に落ちてくると思います。

既存の炉をより長く使う、長寿命化の動きはあり、上記Aの場合の原子炉寿命を50年とした場合のグラフがA’です(黄色の面は寿命40年の場合)。

当然の事ながら、10年程度原子力の供給力は維持され、2010〜20年代の供給力が安定されます。しかし。その後の供給力は低下し、2060年代に原子力はゼロになります。

いずれにしても現在計画されている原子炉が廃炉後に、再び原子炉が設置されない限りは2000年代半ばには、原子力の設備は減っていきます。

2000年代の100年間は原子力発電は必要かもしれませんが、2100年代になると、その必要性は落ちてくるでしょうし、そのような技術が開発されている方が、人類にとっても好ましいといえます。

2050年、日本の電力消費量は1.3兆kWhという予想があります。

Bケースの2050年の原子力発電の容量は「4205.8万kW」。稼働率80%で計算すると「0.2947兆kWh」供給でき、全電力の「約22.67%」と、現在に比べると比重がかなり落ち込みます。

2050年には、既設・現在計画中の原子力発電所がほぼ停止するので、現在の40%程度の原子力発電所による電力供給を維持するには、全体で135万kW級の原子力発電所が55基ほど必要となります(計画外で24基ほど必要)。

また、「原子炉の寿命を50年」と10年ほど延ばせば、古い原子炉に代わる新しい炉の稼働が遅れる分、計画外で36基ほどの原子炉が必要となります。

電力消費がここまで伸びるかは、議論があるところですが、脱原子力を進めるためには、電力消費量を減らすか、それなりの代替電源を確保しなければ、かなり難しいのも事実です。
一方、現在の計画以外に原子炉を建設するのも難しいので、省エネルギーの推進と、エネルギーの低消費社会の構築により、自然に原子力の比重は落ちていくのが一つの方向性だと思います。

 

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