2008年12月5日

              国籍法改正に関する声明

 本日、参議院本会議で国籍法改正案が可決、成立しました。
 今回の国籍法改正案は、婚姻関係のない日本人の男性と外国人女性から生まれた子どもの日本国籍の取得を認めていない国籍法の規定を憲法違反と判断した今年6月4日の最高裁判決を受けたもので、婚姻要件を削除した改正は当然のことと受けとめています。
 多くの国が父親の認知だけで国籍を付与していることを見ても、日本も遅ればせながら国籍法における婚外子差別を撤廃したことは歓迎します。

 しかしながら、衆・参の法務委員会での質疑をみると、偽装認知の防止策に集中したことは誠に残念でなりません。最高裁判決の内容、改正の趣旨が理解されないまま、外国人への差別を助長するような内容に終始したことに、唯一の立法機関である国会の議論としては大変お粗末であると受け止めています。
   衆議院法務委員会では、「改正により偽装認知が増えるのではないか」「DNA鑑定の導入を検討するべき」「立法府への司法の介入ではないか」との意見も出されました。この意見については、最高裁判決文や参議院法務委員会での参考人からも明確に反論されています。特にDNA鑑定は、究極の個人情報であり、人権侵害の恐れがあること、違憲審査が認められている以上立法権を侵害したことにならないなど、当然の主張がなされました。

   ところが、参議院での附帯決議を見ると、最高裁判決や参考人質疑を踏まえないものとなっています。また、届出人の意思を尊重する民法の考え方にも反するもので、社会防衛論的な色彩の濃い内容です。衆議院の附帯決議よりさらに後退し、認知した父親に虚偽でないかを確認する調査内容が具体的に盛り込まれています。
   実際、子どもを設けておきながら日本人男性が認知をせず逃げてしまうケースが数多くあります。認知されないために不利益を被る子どもたちも国内外に少なくありません。附帯決議が実行されることにより、これまで認知されていたケースでも(犯罪者扱いされることを恐れて)認知されなくなるのではないかと大変危惧します。
 日本人の子どもでありながら、認知されないまま無国籍となっている子どもたちが一日も早く救済されることを望みます。
                                    以上

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