【男女共同参画基本計画に関する各政党の要望書;自由民主党男女共同参画新人議員勉強会】

 自由民主党男女共同参画新人議員勉強会は、12月12日、猪口大臣に対して提言書を手渡しています。

MSN/mainichi INTERACTIVE ニュース(毎日新聞 2005年12月22日 東京朝刊);
「男女共同参画計画:見直し 「ジェンダー」表記めぐり議論、定義明確にし決着へ」

平成17年12月14日



男女共同参画基本計画改定に関する提言(案)


自由民主党男女共同参画新人議員勉強会
会 長  萩 原 誠 司
広 津 素 子




I 総論

―本会の設立と審議経過―

 本年9月の衆議院議員選挙において、わが党では数多くの女性議員と男女共同参画に理解のある多くの男性議員が当選した。また、その中から猪口邦子少子化・男女共同参画担当大臣が誕生した。
 おりしも、男女共同参画基本計画の改定作業が政府において行われており、男女共同参画施策を強力に推進するため、新人議員有志で男女共同参画についての勉強会を立ち上げたところである。
 本会はこれまで5回にわたり会議を開催した。その間、関連する団体(国際婦人年連絡会、全国地域婦人団体連絡協議会、全国司法書士女性会)から基本計画の改定に関する要望・提言についてヒアリングを行うとともに、有識者として鹿嶋敬実践女子大学教授からヒアリングを実施した。
 本会においては、基本的スタンスとして、党の政権公約及び新理念に基づいて男女共同参画を実質的に前進させることを確認した。特に、党の新理念では冒頭に「一、わが党は、すべての人々の人格の尊厳と基本的人権を尊重する、真の自由主義・民主主義の政党である」と掲げており、本理念を基本として議論をすることが重要との認識で一致した。
 また本会では、男女共同参画の推進が、
個人や家庭の主体的な判断に基づく男女の社会的役割についての選択の自由を確保するものであること、
少子高齢化の進展する中で、男女がともに喜びも責任も分かち合いつつ個性と能力を発揮し、社会の活力を生み出すものであること、
を、確認した。
 以上のような基本的認識の下に、本会における新人有志議員の声をまとめたのがこの「提言」である。今後、本「提言」の内容が、男女共同参画基本計画の改定に反映されることを強く要請する。


II 各論

 男女共同参画基本計画改定に当たっての関連施策に関する具体の意見は、次の通りである。

1.男女共同参画社会の理念及び「ジェンダー」概念についての正しい理解を徹底

・ 男女共同参画社会基本法を遵守し、正しい男女共同参画社会の理念を確立する。

・ 我々は、「ジェンダーの視点」とは、男女の社会における役割について固定的に決めつけるものの見方について問題意識を持っていこうとすることであることを確認し、国際的にも重要な視点であると認識した。基本計画においては「ジェンダー」概念について定義を示して、正しい理解を求めるべきであり、これらの正しい理解を通じてジェンダー平等の理念を確立する。

・「過激な性教育」や男女同室着替え等の事例については、男女共同参画の趣旨に反し、教育現場でこのような事例が起こらないよう徹底して是正すべきである。また、こうした問題が、「ジェンダー」概念の正しい理解を妨げることのないよう求める。


2.職場での男女共同参画

・ 職場における男女間の昇進格差等、ジェンダーに基づく男女差別をなくすための施策を推進する必要がある。このため、役員、管理職、人事担当者を含め幅広く研修、啓発などの施策を充実する。また、企業における公正・公平な人事評価を促す。

・ 子育て等で仕事を中断した女性が元の職場に再就職できるための研修制度の充実など、再就職のための支援が重要である。このため、年内に策定予定の「女性の再チャレンジ支援プラン」による諸施策を踏まえ、取組の充実を図る。

・ パートタイム労働者等の非正規労働者については、社会保障を充実するとともに、正社員との格差、税制等の問題を検討する必要がある。

・ 男女がそれぞれ少ない分野への参画を積極的に促進することも重要である。例えば、男性保育士や女性消防士などの参画を促進する。


3.子育てを大切にしながら働くことのできる社会の実現

・ 待機児童ゼロを実現し、保育所入所を確保することが必要である。

・ 学童保育については、必要な子どもが利用できるように充実する。

・ 中小企業等に対する育児休業関連制度、助成金制度等について利用が促進されるよう、企業等への広報を進め、育児休業が取得しやすい環境を整える。
 育児休業期間中に企業から情報提供を行う体制作りなど、子育て期間中のキャリアの維持方策について研究する必要がある。
 若い世代が子育て・介護等を体験することは重要であり、ボランティア活動や体験学習の機会の充実を図る。

・ 子育てに父母のみでなく祖父母が参加できるよう、住環境等の環境づくりを進めることが重要である。また、地域全体で子育てにかかわり、女性の社会進出を支援することができるよう、地域における子育て支援環境を整備する。

・ 職場において、女性が妊娠中であっても安心して働き、かつ、必要な休暇をとることができるよう、母性健康管理対策を推進する。

・ 父子家庭では母子家庭と比べて制度的に不利な面があり、改善について検討を進める必要がある。

・ 母子健康手帳を、父親も対象とする親子手帳とすることができるようにするとともに、父親の育児参加についての記載の充実を図る。また、母子保護法について、父親の育児参加を重視する改正を検討すべきである。


4.個人や家庭が主体的に判断し、選択ができる社会制度の構築

・ 税制や年金制度については、女性の社会進出や男性の家庭参画を進める観点から検討をすべきである。配偶者控除・第3号被保険者制度による女性の勤労意欲の抑制、及び自営業の配偶者への支払いを経費と認めない所得税法について、見直しが必要であるとの意見があった。

・ 男性中心社会の中で必ずしも社会的に高い評価を得ていなかった家事、育児等の無償労働について、適正な評価をしていくことが必要である。

・ 夫婦別氏制度について国民の理解が深まるよう積極的に検討を進めるべきである。その際、子どもの氏の選択など子どもへの影響について配慮する観点が必要である。

・ 男女の婚姻年齢の統一、女性の再婚禁止期間の短縮、嫡出推定期間の撤廃又は短縮に向けての民法上の婚姻制度の見直しについて、国民の理解を深めることが必要である。

・ 調停委員、保護司、民生委員、児童委員、人権擁護委員等公的部門に携わる者に対する男女共同参画に関する研修・啓発が必要である。


5.男女が力を合わせた地域づくり

・ 個性ある地域づくりを男女共同参画で進めるべきである。

・ 農業委員、農業協同組合の役員等への女性登用を、数値目標を定める等の方法で進めることが重要である。

・ 消防団員について女性の参画を進めるなど、防災対策に男女共同参画の視点を持つことが重要である。


6.女性に対する暴力の根絶

・ 青少年、女性に対する暴力や性における人権侵害の原因ともなる有害図書・ソフト対策を推進する。

・ 配偶者暴力防止法に基づき、配偶者暴力被害者の十分な自立支援プログラム及び民間シェルターへの総合的支援を進める。また、同法の改正の必要性について検討する必要がある。


以上