* ドイツのクリスマス *
- ドイツ在住中のれぽ〜と 98年12月 -

  ドイツでは、クリスマスの始まる4週間前の日曜日から
”Advent(アドベント)” が始まる。Adventとは、待降節、つまりクリスマスを迎える準備期間の事だ。
 各家庭では、4本のロウソクを立てた”Adventskranz
(アドベンツクランツ)” をリビングのテーブルの上に飾る。人によってはリースなどを窓に飾ったりする。 クリスマスツリーは24日になるまで飾らない。主婦はクッキーを焼き、かわいい箱にそれを詰め込む。
 Adventの最初の日曜日(今年は11月29日)に、Adventskranzの ロウソクを1本だけ点す。家族はその周りに座り箱に詰まっているクッキーを食べながら団らんする。2週目の日曜日は2本のロウソクを、3週目は3本を、4週目は4本全部のロウソクを点し、クリスマスがくるのを心待ちする。

 それとは別に子供達には小さな扉がついた特別なアドベンツカレンダーがプレゼン トされる。各扉には1から24までの数字が書かれている。子供達は12月1日になると、1と書かれた扉を開けることができる。その中には、動物やキリストの絵が描かれていたり、豪華なものになると、ちいさなキャンディーが入っていたりする。そして24日のクリスマスイブまで、毎日それを開けるのを楽しみに過ごす。子供にとって、一年で一番楽しい時期だろう。

 ドイツで有名な”Weihnachtsmarkt(クリスマス市)”がたつのも、Adventが 始まる11月下旬頃だ。ツリーの装飾品がメインに売られているが、アクセサリーや食器なども買うことができる。

 去年の12月6日に、友達のパトリシアに連れられてWeihnachtsmarkt(クリスマス市)に買い物に行った。
その時に、白髭をはやし赤いマントをはおったサンタクロースらしき人物が子供達にお菓子を配っている光景に出くわした。
「ねえ、パトリシア、あの赤いマントをはおった人、サンタクロース?」
「そう、ドイツでは”聖ニコラウス”っていうのよ。今日6日はニコラウスデーで ”聖ニコラウス”が子供達にお菓子をプレゼントする特別な日なの。」
「えっ、プレゼントってクリスマスの日にもらうんじゃないの?」 「クリスマスイブにもプレゼントはもらえるけど、ドイツではニコラウスデーにも小さなお菓子がもらえるのよ。前日の5日の夜に、子供達は自分の靴をぴかぴかに磨いて出窓かドアの前にそれを置くの。子供達は、自分たちが寝ている間に”聖ニコラウス”が小さなお菓子を靴の中に置いてくれると信じているのよ。 そうそう、私が小さかった頃ね、両親によくこう言われたの。『パトリシア、日頃の行いが悪い子にはお菓子はもらえないんだよ。それどころか、鞭打ちの罰に処せられるんだ
よ。だから、いい子にしてなくちゃいけないよ。』って。この言葉をずっと信 じていたから、ニコラウスデーの前はいつも不安でしょうがなかったわ。」

「じゃあ、クリスマスプレゼントは誰がくれると言い伝えられているの?」
「北ドイツでは、白髭をはやした赤い服をまとったサンタクロースがプレゼントの 入った袋を背負ってやってくると信じられているの。それから、南ドイツでは、クリストキント(キリストの子供という意味でエンジェルみたいなもの)が天から舞い降 りてきてプレゼントを配ると言われているけど、でもその姿は人間の目には見えないと言い伝えられているわ。まあ共通しているのは、プレゼントはクリスマスツリーの下に置かれるということかな。」

 つまり、ドイツには3人のサンタクロースが存在するの
だ。  
12月6日のニコラウスデーに子供達にお菓子をあげる『Nikolaus(ニコラウス)』 と、24日のクリスマスイブにプレゼントを配る北ドイツの『Weihnachtsmann(サ ンタクロース)』や、南ドイツの『Christkind(キリストの子供)』がそれにあたる。
 こうして、いよいよ楽しみにしていたクリスマスがやってくる。主婦は集まってくる家族の為にご馳走を用意する。地方や家庭によって料理がかなり違うらしいが、たいていは上質の、しかも大量の肉が振る舞われるようだ。牛肉をはじめ豚肉、鴨肉 などのかたまりをオーブンで焼くのが普通。日本では信じられないが鯉も食べるらしい。
 そして、24日のクリスマスイブになると、本物の”もみの木”に飾り付けをする。 普段の日曜日に教会に行かない人も、この時ばかりは家族そろって教会に行く。ミサが終わって家に帰ってからご馳走を食べ、プレゼントを開ける。そのあとは家族でおしゃべりをしながらのんびりと過ごす。日本の様にゲームをしたり、歌ったり、騒いだりはしない。ドイツの商店は24日の午後から26日まで、全部閉まるので街はし〜 んと静まりかえ
る。 ドイツ人は静かにそしてロマンチックにクリスマスを楽しむのだ。  

 こうして考えてみると、日本のクリスマスはまったく営利的なもので、宗教的な視 点から祝う人はほとんどいないことに気付く。クリスマスは、イエスキリストがこの世に降りてきて誕生した日で、それを祝うためのお祭りだ。表面的な華やかさだけを楽しむのではなく、その裏にある本当の意味も理解して満喫したいものだ。

なにはともあれ、メリークリスマス!

クリスマス市
Adventskranz(アドベントクランツ)
アドベンツカレンダー
聖ニコラウス
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