がドイツ転勤と聞いたとき、私のドイツ語の知識はゼロだった。それからすぐに、ドイツ語を独習し、さらに大阪にあるゲーテ・インスティテュート(独語学校)の短期集中講座を1ヶ月ほど受けたので、後はまあなんとかなるだろうと、 お気楽な気持ちで渡独した。  

しかし、現地の生活を十分楽しもうと思ったら、片言のドイツ語と英語ではダメ だということを身体で感じた。  

そして、フランクフルトにある語学学校に通い始めたのである。 私を含め多くの日本人は、本を読んだり問題を解くのは良くできるのに、しゃべっ たり、聞き取りが外国人に比べて非常に苦手である。ヒヤリングなしの文法中心完璧主義的日本の英語教育に、今さら腹を立ててもどうにもならないので、私は独自の勉強方法をみつけてこの苦手な”聞き取り”を克服する必要があった。
その方法を紹介しよう。

1.  簡単な会話集とその内容が録音されたテープを用意する

2. テキストを見ないでテープを聞き、その内容を速記する

3. 自分の速記したものと、テキストを照らし合わせてみる

4. テープと一緒に何度も発音してみる。

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 テキストの内容がごく簡単なものでも、テキストなしで聞いてみると、意外と聞 き取れていないことが多い。この方法は、”聞き取り””書き取り””スピーキング”の3つを一度にマスターできる一石三鳥の勉強方法だ。 私はこの方法で毎日勉強したら、数カ月後にはヒヤリング能力がぐっと伸びた。 「ただテープを聞くだけで英語がしゃべれるようになれる」という通信教育もあるが、私は10年かかっても、この方法だけではしゃべれるようにはならないと感じている 。

 一つ心配なのは、上記の勉強方法をしていると、一字一句もらさず理解しないと 気が済まないという完璧主義が身についてしまう恐れがある。これは、あくまでもヒヤリング能力を上げる勉強方法なので、人と話すときは、完璧に聞き取ろうとがんばらず、話のすじをとらえればいいや、ぐらいの気楽さでやって欲しい。完璧に理解しようとこだわっていると、上達するどころか、イヤになって投げ出してしまうからだ。  
ドイツ人の英語を聞いていると、流暢にしゃべってはいるものの、文法はけっこういい加減だったりする。語学学校にドイツ語を習いに来ている外国人も、不思議 なくらいペラペラドイツ語をしゃべるが、これまた文法はかなりいい加減だ。 しかし、文法が間違っていても自信を持ってしゃべる姿には、時には感銘さえ受ける。自分のアイデンティティーがしっかりしていたら、コミュニケーションの手段である外国語は完璧でなくてもいいのだ。悲しいかな、日本人は自分の意見を主張 して討論するという教育を受けていないので、ここでも新たな壁が待ち受けている のである。

なんだか偉そうに書いてしまったが、そういう私のドイツ語も、文法や社会的に必要な会話(敬語など)など、まだまだ不十分だ。語学というものは、これで終わりということはないので、本当に奥深いものだなぁと実感している。頑張りすぎると疲れて休みたくなるし、怠けていると先に全然進まない、まるでゴールのないマラソンみたいだ。
これから外国語をマスターしようとしているあなた、語学は ”慣れ(日々の努力)”と”度胸(自信を持ってしゃべること)”です。

幸運を祈る!!!!