
ライブ3日前の自習練習で、スペイン人のギタリスト
に伴奏をお願いした。 ずっと踊りのイメージや内面
的なものを意識して練習してきたわけだが、それが
どの程度クリアされているかスペイン人に見てもら
いたかった。そして、自信をつけたかった。
そんな私の熱意は、ギタリストには伝わらなかった。
彼は遠慮なく私にこう言った。
「Mari、君の踊りはグアッパ(きれい)だし、テク
ニックもあるよ。でも、内面的なものがまだ足りな
いね。君の中にあるソニケーテはまだ眠っているよ。」
彼の言葉に、私はとてもショックを受けた。1年もずっ
と課題にしてきたのに、ぜんぜん変っていなかった自
分自身を惨めに感じた。帰りの電車で泣きそうになっ
てぐっとこらえた。自信をつけるどころか、自信を無
くしてしまった。それから1年間を振り返ってみて、
考えてみた。私は表現力を高める為にテクニックばか
りに気をとられてしまい、フラメンコに一番大切な心
を疎かにしていなかっただろうか?と。踊り手に一番
必要なものは何か、今頃になって悩みだした。それか
らライブまでの2日間は、精神的にかなりつらかった。
ライブ前日のリハーサルでは、気持ちを切り替えて何
とか踊った。その日の夜、東京の美香先生が電話をく
れた。美香先生はいつも辛い時に電話をくれる。何故
それが分かるのか不思議でしょうがない。
「Mariちゃん、いよいよ明日だね。ライブの調子は
どう?」と聞かれ、ギタリストに言われたことや、い
ろいろ溜っていたことを話しだしたら、今まで溜って
いたいろんな感情がぐわっとこみ上げてきて、涙がぼ
ろぼろでてきた。そんな私を美香先生は優しく励まし
てくれた。「そういう内面的なことは舞台の上で感じ
取るものなのよ。意識してればいつかきっと分かる日
がくるから、ね。」
結局、電話を切った後も一晩泣いてしまった。一番側
にいて欲しかった旦那はヨーロッパ出張でいないし、
全くもう、どうして側にいて欲しい肝心な時にいない
のかしら。
泣いても笑っても、ライブ当日は訪れた。朝起きる
のはとてもつらかった。腫れた目をアイスで冷やしな
がら、気持ちを整えてスタジオに向かった。
本番を前に、リハーサルをし、スタッフに指示をした
りドタバタと時は過ぎていった。そして、控え室で化
粧をしながら他のメンバーと雑談をしている自分自身
を、何だか不思議な気持ちになった。考えてみれば
1年前、美香先生の教室の発表会で、ちゃんとソロを
踊れるか不安でしょうがない自分とたたかっていた
なぁ。そんな私が、今じゃ自分でライブを主催するま
で成長したんだから、今までの努力は無駄ではなかっ
たんだと少し自信を取り戻した。
そして、いよいよ本番を迎えた。今までの想いと、
これからのフラメンコ人生をかけて、全身全霊で踊り
きった。自分の持っているもの全てをだせたと思う。
お客さんからハレオもかかって、反応も良かった様に
感じた。
今回も、舞台の上に潜む魔物を感じた。舞台の上では
何が起こるか分からない。そして、ありがたいことに、
今まで感じられなかった何かを舞台の上で少しだけ
感じることができた。こういう経験を積んで、少し
づつ踊り手として成長していくのかなぁ。
ライブ会場が狭い所だったので、チケットがすぐ完売
してしまい、観に来れなかった人ごめんなさい。雨が
降る寒い中、観に来てくれた人どうもありがとうござ
いました。少人数でも応援してくれる人がいる、とい
うのは何にも変えがたい喜びであり、励みになります。
このライブでまた新たな課題ができ、それをクリアに
しながら、今度はまた違うライブをしようと計画中です。
自信を無くそうが、凹もうが、ゾンビのように復活し
て頑張りま〜す(^^)。
2001.01.29.
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