事務局
〒710-1301 岡山県吉備郡真備町箭田2387
相談室 藤井
   第93号  2001年11月発行
《9月定例会の報告》
 9月は「退院した人の話を聞こう」というテーマで、現在車椅子で単身生活をしている通院中の男性(20代)Aさんとその介護者の方に話をうかがうことになり、30名以上の参加がありました。
 −Aさんは家族の顔すら知らず、生活保護受給、身体障害1級で幻聴や幻視のため現在も闘病生活を余儀なくされていますがこれらのハンディを抱えながらも、ボランティアの介護者や公的ホームヘルパーによって在宅生活を営んでいます。▼生い立ち
 出生後、両親が自分を捨てた理由は分からないがすぐに施設へ入所となり、参観に父母が来ていなかったのが寂しかった。施設長が実質の保護者だったので「歩けるようになるから」といわれ施設長の承諾により、小学校の時から人体実験のように計9回も足の手術を強いられ、結局中学の時には歩けなくなってしまった。
 施設の生活が管理が厳しく連帯責任となるので行動が遅い子は早朝から起こされていたり、職員の顔色を見て判断するということが身に付いてしまった。
 高校生の時に親のことを徹底的に調べたところ、自分が胎児のうちに両親が離婚、両家の交流も断絶、祖父らには自分の出生すら知られていないことがわかった。
▼自立生活を始めて
 施設では夕食が5時ですぐお腹が空くため水を飲んでしのいでいた。自立生活をしようと考えたのはカップラーメンを食べたことがなく、自分で作ってみたいという単純な動機から。自分が言いたいことが言えるということが自分らしさだと思っていたし、自由がほしかった。自分をじゃまもの扱いした奴を見返してやろうと思った。
 しかし実際に生活を始めると様々な困難をともなった。アパートを探すのも「出火しないか」と警戒されたり、介護者も最初のうちは3日に一回しか見つからず、学校などを自分で回って募った。介護者に泊まってもらい、食事・排泄・入浴その他を援助してもらうのだが、見つからないときは不安が強くなりそれで発病したように思う。在宅生活をして12年、発病して11年が経過した。試行錯誤の中で今の生活を作った。やめようかと思ったこともあった。
 毎日介護者を電話で探していて在宅生活を維持させるのは正直しんどいが、それでも2割が楽しい。その2割のために自分を引き受けている。自分の役割はあえてこういう生き方をしている人間もいるんだということを伝えること。施設は仲間がいるという点では楽しいが、親がいなくとも生活はできる。
▼将来の願い
 いろんな障害を持った人が集まれる場づくりをしていきたい。病院はあくまで治療をするところであって生活をする場ではないので病院には期待していない。
 病気が治らなくていいのかなと思うようになったのは自分を自分で引き受けれるようになったからかも。
▼質疑応答
Q:将来の不安は何か?
A:介護者の高齢化です(笑)。介護もいればいいというのではなく質の問題。
Q:子供が一人暮しをしたいと言い出した。させるとしたら早いほうが良いのか
A:決して自分が強くて自立できているわけではない。どういう自立生活をするのかというイメージによって異なる。自立は楽ではないことを親が教えるべき。また、いつするかは本人が決めるべき。
Q: 人にしてほしいこと 頼りにしている人 楽しかったことを教えて
A: 介護者に自分の気持ちを汲んでほしい、病気のことを理解してほしい、もっと料理が上手になってほしい(笑) (介護者をさして)この人です(笑) いろんな人と出会えること
Q:感想ですが、人に迷惑をかけることがすべていけないわけではないと思いました。
Q:(介護者の方へ)介護をする上で何か資格というのがあるんでしょうか?
A:資格は特にありません。また介護は資格でするものでもないでしょう。自分ができることをすればいいと思う。介護をしていて障害者が元気であれば、こっちもうれしいし、楽しい。

10月定例会の施設見学の報告は紙面の都合で次回掲載します。


  11月の定例会は各種研修会への自主参加とします。
 岡山県精神保健福祉大会が11月28日(水)13時〜16時から岡山衛生会館三木記念ホールにて開催されます。大会テーマは「自分の気持ちを伝えよう、地域に、社会に」で「生きる力の火種を!」という演題で大阪人間科学大学教授・精神科医の服部祥子氏の講演があります。問い合わせ先は岡山県立病院内県精神保健福祉協会(086)225−3821へ。