事務局
〒710-1301 岡山県吉備郡真備町箭田2387
相談室 藤井
   第85号  2000年7月発行
《5月定期総会の報告》

午後からの院長を囲んでの座談会は3時間半に及ぶ熱気あるものとなりました。要旨をかいつまんで記載します。

◎17才の少年によるバスジャック事件にふれて
・簡単にあの事件のように「犯罪=狂気=病気」とはいえない。医療者はバス事件をきっかけに自己点検するべき。マスコミも精神病院への隔離収容をすすめるような論調を避けてほしい。
・町内に作業所を作ってから、その作業所にはいくなという家族がいるらしく、かえって家族の偏見を助長したのかと思うことも。バス事件などで通所者はがっくりきている。病気でも社会の一員なんだからいいじゃないって励ましている。
・悲観的な若い世代ばかりではない。近所の中学生がうちの近くの作業所に興味を持ってくれ、見学に訪れた。「TVでみるんと違う。普通の人じゃが」との感想で、見学したことを担任の教師に報告したら「おまえはその人たちのことについて取り組んでみなさい」と誉めてくれたらしく、友達をどんどんつれてきて作業所に違和感なく溶け込んでくれて感動した。学校全体でも取り組んでほしい。

・患者が病院を選ばなければいけない時代に来ている。父がよその病院に入院したところ措置入院を勧められた。1週間たっても監禁室に入れられ、挙げ句に看護者から「あなたに何がわかりますか」といわれた。家族だからわかるということもあるのに。入院案内にいっぱい書かれていて、例えば喧嘩したら即退院とか、措置入院の場合は下着をたくさん揃えろとか。半数の人が措置入院だった。
・医療費削減のあおりで病院は治療型と療養型のタイプにわかれた。患者を退院させることに力が入り、医療の質や内容も問われてくる。
・地域生活支援センターは機動力のある職員をたくさん集め、睡眠をとらないでがむしゃらにやるくらいでないとできない。また、そういう施設を作ったからといってそれで楽になれるというものでもない。
・精神分裂病という病名を変えようと学会が決議したという記事を読んだ。すこしでも世間の病気への印象が変わってほしい。
・病名から受ける印象により、その人のイメージがゆがんだものとして映りやすいが病名はあくまで分類上のもの。分類体系による診断と治療は別の問題であり、治療が必要かどうかはその人の意志とその人を支える人たちの力、および地域の受容力で決まる。異常体験をもちながらも社会生活をしている人はたくさんおられる。

・平成14年からは市町村の保健婦が精神保健福祉に携わることになる。地域の患者を守る立場の保健婦の役割も重要になってくる。
・保健婦はほとんど介護保険に振り回されている。それで保健婦に相談する変わりに役場の「なんでも相談」にいった知人がプライバシーに突っ込んだことを聞かれ閉口していた。我々家族の経験は貴重なんだから自信を持ちたいもの。
・今保健婦は自分の仕事がなんなのか悩んでいる。僻地などでがんばっていた人も事務屋にさせられている。

・病気になった人はいわば「彼岸」の人。「彼岸」にいる人にとっては彼岸の出来事に過ぎない。当事者になって初めて人の気持ちがわかる。
・私も病者の気持ちがわかっていたつもりになっていたが「本当の俺の気持ちはわかるまい」と病気の兄弟に言われがく然とした。
・少しでも患者の気持ちを知りたいと思い、薬を飲んだら起き上がることができず、しんどさがわかった。
・付き添い入院をしたことがあるが、良かったと思う。病状が落ち着く過程もみれた。付き添いは子ばなれできていないことかと思っていたが、お医者さんに、子供から自立するのに何年かかってもいいと言われほっとした。

・『アンドリューNDR114』という映画をみて気づいたこと=人間の条件は唯一無二の存在であり、有限の生を生き唯一の体験をしているわけだからこの時代を堂々と生きよう。
最後に院長より「希望を失わず、専門家任せでもなく、前進するしかないと覚悟を決めて家族自身が元気になりましょう。」とエールが送られ、長時間に及ぶ座談会を終了しました。

6月定例会は、『心の健康』や『ストレス』に関するビデオ学習を行ないました。

お知らせ
 7月定例会は17日(月)13時30分よりマインドホールにて看護を囲んで座談会を開きます。
 8月は24日(木)の病院夏祭りに参加していただく予定です。