AO-10のビーコンはキャリアになってしまいましたが、ビーコンを観測することでAO-10の状態を知ることができます。
AO-10は、スピンを掛けて姿勢を安定化させています。ビーコンのQSB周期を観測することでスピンの速さがわかります。下のグラフと表は、AO-10のビーコンをFFTDSPを使って観測し、スピン周期とスピンレートを求めたものです(表中の日付をクリックするとFFTDSPの画像が表示されます)。
これからわかるように、AO-10のスピン速度は、速くなったり遅くなったりしており、現在は速度が落ちてきています。何故スピン速度が速くなったり遅くなったりするのか、今のところ解っていません。また、今後、スピン速度が速くなるかどうかも解っていません。
4月18日にはビーコンの音程は約50Hzの範囲で変動していましたが、4月24日には変動が無くなりフラットになりました。AO-10は休眠状態から抜け、完全に復調したと言えます。ただし、QSBによる信号強度の差は約20dBあり、QSBの谷間ではダウンリンクの信号が聞こえなくなります。
| 年月日 | スピン周期 [sec] | スピンレート [rpm] | 備考 |
| Sep 14, 98 | 84 | 0.714 | by WL7BQM |
| Sep 26, 98 | 79 | 0.759 | by WL7BQM |
| Oct 04, 98 | 75 | 0.800 | |
| Oct 07, 98 | 74 | 0.811 | by WL7BQM |
| Oct 11, 98 | 73 | 0.822 | |
| Oct 13, 98 | 72 | 0.833 | by WL7BQM |
| Nov 21, 98 | 63 | 0.952 | |
| Feb 08, 99 | 81 | 0.741 | by WL7BQM |
| Feb 16, 99 | 82 | 0.732 | |
| Mar 07, 99 | 89 | 0.674 | |
| Mar 21, 99 | 95 | 0.632 | |
| Mar 27, 99 | 99 | 0.606 | |
| Apr 03, 99 | 104 | 0.577 | |
| Apr 10, 99 | 109 | 0.550 | |
| Apr 18, 99 | 115 | 0.522 | |
| Apr 24, 99 | 124 | 0.484 | |
| May 02, 99 | 135 | 0.444 | |
| May 07, 99 | 144 | 0.417 | |
| May 09, 99 | 149 | 0.403 | |
| May 15, 99 | 163 | 0.368 | |
| May 18, 99 | 172 | 0.349 | |
| May 22, 99 | 186 | 0.323 |
スピン周期:一回転する時間、スピンレート:1分間の回転数
休眠状態ではビーコン信号は、FM掛かって聞こえることがあります。休眠状態でのビーコンは、通常はきれいな三拍子のパターンですが、FM掛かるとパターンが大きく乱れます。
下の日付をクリックするとFM掛かったビーコンのFFTDSP画像が表示されます。スピンを観測したFFTDSP画像と比べると違いが良くわかります。
AO-10は、バッテリーに障害が起きバッテリに電力を貯えることができなくなっています。従って、太陽電池に太陽光が当たっている時のみ動作します。地球や月の影に入る「食」の期間には太陽光が当たらなくなるのでビーコンやトランスポンダは停止します。
次の図は、食に入った時と食から抜けた時のビーコンの様子です。食に入るとビーコンはスゥーと消え、食から抜けるとスゥーと現れます。
JN1GKZ 新井 jn1gkz@jamsat.or.jp