主宰者プロフィール
中村 敦孔(なかむら あつこ) |
1985年、東京女子大学短期大学部英語科卒業。同年結婚。87年、夫とともに米国留学。89年、カリフォルニア州立カニャーダ・カレッジ卒業。大手英会話スクール講師を経て、愛娘二人を出産。現在、乳幼児からの英語教室LUNOA
English Room主宰。94年、英語検定1級取得、及びTOEIC880点の実績有り。趣味、英語教材研究。辰年。 |
「もう絶対に、児童英語の世界には踏み入らない」そう誓って、私は大手有名英語教室をやめた。
わたしは、以前ある歴史のある有名な大手英語学校で、英語を教えていた。対象は、小学生と中学生にいわゆる英会話、中学生から成人には英検3級から準1級まで。英検の授業は、比較的楽であった。わたしが今まで日本で英語を習ってきたとおりに文法や、英作文、長文読解などの講義をえらそうにすすめて、英検に沿った対策で実際に問題を解いていく。視聴テープを作ってのディクテーション、シャドウイングなどで訓練したりする。英検は、実際に合格不合格が結果として出てくるため、かなりやりがいはあった。
子供はわがままで、言うことを聞かないし、騒ぐし、「言いましょう」といっても必ず従うわけではない。子供たちはかわいいが、毎回のレッスンは苦痛だった。自分でもできるだけ努力はしてみた。テキストの絵をコピーして色を塗ってカード化したり、子供の英語ゲームなどの本を買ったりして実際授業で試してみる。大型書店に行って、レッスンで使えそうなものを購入したり、また、8万円近くかけて児童英語養成講座の通信教育も受けたり、児童英語講座の講習会にも積極的に出席した。それらで得た知識をフル動員し、プランを念入りに立て、ゲームも用意して、レッスンに望む。ようやく子供たちは喜んでくれた。よし、これだ、とばかり、毎回レッスンに相当の準備をして望む。そして、半年が過ぎたころ、ある種の疑問が湧いてきた。子供の英語能力が、わたしが期待している以上に全く伸びない。しかも、用意に相当な時間がかかり、労力の割に報われないばかりか、英検講座よりも給料が安い。そして、なんとなくやり過ごすレッスンになっていった。毎回のレッスン時間をどの様に使うか考えるのに苦痛になり、色塗りと、工作で20分はつぶせる、といった消極的な考え方になっていった。そして、第一子の妊娠を好機とばかりその英語教室を退職した。
ところが、である。「他人の子供に英語は絶対教えない」と誓っても、自分の子供だけはあきらめられない。どうしても、英語を話させたい、学ばせたい、でもどうやって?わたしは、ネイティブではないので制限がありすぎる。一応、アメリカのカレッジも成績よく卒業したし、英検1級と、とりあえずTOEIC880点を取得したが、いまだにあまり自信はない。いまでも、英語で話していると、とんちんかんなことを言ったり、間違えたり、うまく伝えられなかったり、電話で話すとドキドキしたり、まだまだ自分の英語力に満足していない。それなのに、どうやって自分の子供に英語を話させることができるようになるのか?
長女が生まれてから、早期英語教育の本を読みあさり、通信教育なども試してみた。そして、できる限りの方法で、英語を教えることを開始した。まず、テープ付き絵本を繰り返し見せる。1歳を過ぎた頃のある日、テープだけを流していると、自分でテープどおりの絵本を持ってきて開いているのを見てびっくりした。さらにテープ付き絵本を見せること2年、ついに絵本を暗唱し、テープとそっくりの発音で話し始めたのである。今や、自分の娘の話す英語は、わたしの英語と比べはるかにネイティブ発音に近い。それだけではなく、英語を英語のまま理解しているようだ。驚きと喜びで、テープ付き絵本こそ早期英語教育の要と確信した。子供ならではの能力を引き出しつつ英語を身につけさせるという、自分なりの児童英語教育メソッドを確立していった。「自分の子供にどうしても英語を話させたい」という思いが、他人の子供を教える英語教室を主宰してしまうまでになるとは夢にも思わなかった。