温かい気持ち
34 :名無し募集中。。。 :05/01/27 23:16
   (祝!新スレ祝い短編)
     「温かい気持ち」

昨夜から続いた雪が、すっかり街を白く染めていた。
慌ててテレビをつけてみたが、幸い交通網はマヒしていなかった。
助かった〜・・・・・自然と声が出た。

両親に励ましの声をかけられ、俺は家を出た。
この一年、この日の為に努力をしてきた。もう失敗は許されない。
今年こそ結果を出す!ただそれだけだ。
俺は、駅に向かう歩調を速めた。

駅に着くと、電車が十分ほど遅れているというアナウンスが流れていた。
温かい缶コーヒーを飲みながら、壁にもたれて参考書に目を通す。
不意に、コートの袖を引っ張られた。
「あっ・・・・・」
親戚のれいなが制服姿で立っていた。
「お前、学校は?何やってんだ、こんなとこで」
「何やってんだとは失礼やねぇ。激励に来てやったたい」

れいなは、鞄から何やら取り出した。
「はい、これ」
小さな包みだった。
「落ちたら許さないから。覚悟して受けてくるっちゃ」
そう言うと、さっさと改札の方に走っていってしまった。

35 :名無し募集中。。。 :05/01/27 23:17

「なんだ、あいつは・・・・・」
俺は、受け取った包みを開いた。
「あ・・・・・」
中には、手袋、お守り、そして小さな手紙が入っていた。
手紙を開いてみた。

にいちゃんへ
あれだけ頑張ったんだから、絶対合格!!!!!
れいなは信じてるよ
それに、れいなが編んだ手袋をしてれば手が冷えることもないから
合格したら、焼肉でお祝いね〜(勿論、兄ちゃんの奢りで!)

「なんなんだか・・・」
自然と笑みがこぼれてしまった。
手袋は、左手の方は指部分が六本あり、右手はサイズが小さすぎた。
しかも丁寧にイチゴの模様が編みこんである。イチゴってお前さ・・・・・
そういやあいつにイチゴが好物だって言ったっけ。
とどめにお守りは交通安全のお守りだった。あのなぁ・・・・・

だけど、変な緊張が一気にうまくほぐれた気がした。
それに、なんかよく分からないけど、みような自信が出てきた感じだ。
「ま、これだけ強い味方がいれば安心だよな」
その時、ホームに電車が入ってきた。俺は、しっかりした足取りで乗り込んだ。

36 :名無し募集中。。。 :05/01/27 23:18

れいなは、駅から少し離れた場所で、電車が駅を出発するのを眺めていた。
学校をさぼったのが、今頃問題になっているだろうか?
でも、今日だけはかまわなかった。
「あ〜あ、兄ちゃん手袋してくれたかなぁ・・・・・」

電車の最後尾が段々と小さくなっていく。
思いっきり息を吸い込んだ。
「がんばれ〜っ!!!!!」
思いっきり叫んでみた。吐いた息が白かった。
体は寒かったけど、心の奥は何故かとても暖かかった。

れいなは、ゆっくりと歩き始めた。
ゆっくりと雪が降ってきた。
れいなは一度空を見上げ、鼻歌混じりに軽快に歩き始めた。

(おわり)



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