SOUND OF MY HEART
- 615 :SOUND OF MY HEART :05/10/09 16:04 ID:EzQg2GtBO
10月にしてはちょっと暑い連休初日、田中れいなはウキウキ気分で出かける準備をしていた
「今度の土曜日さ、一緒に八幡山公園に遊び行かないか」とクラスメートの○○から誘われたからだ
○○とは今年の夏から付き合い始めた恋人同士で、まだキスだけの間柄。
(デートなんて久しぶりやね…いつも一緒に下校するだけだもん。あっ、ちゃんとお口も綺麗にしてかなきゃ♥)
気合いは充分、準備は万端なれいなであった。
- 616 :SOUND OF MY HEART :05/10/09 16:05 ID:EzQg2GtBO
住宅街の中にある最寄り駅(南稲沢駅)に行くと例の如く○○が先に待っていた。
「待ったと?」
「いやさっき着いたとこ。じゃあ行こうか」
そして電車に揺られて十数分。八幡山のふもとにある八幡山公園駅に到着。
山といっても街中にぽっこりと鎮座する丘陵地帯と言った感じの代物で
頂上にある八幡神社(やはたじんじゃ)は文化財としても有名。
同時に中村市の展望スポットとして市民や観光客からも人気があるのだ。
- 617 :SOUND OF MY HEART :05/10/09 16:07 ID:EzQg2GtBO
「参道と遊歩道どっち行く?俺は遊歩道行きたいんだけど」
「えー、れいな参道行きたか!」
「あのさ、お前それマジで行ってんの?」
「当ったり前ばい!神社に来たらお参りするのが神様に対する礼儀ばい!」
「意外と信心深いんだなお前。うーんじゃあいいよ、参道行こう」
「にひひwやったね」
本当は、あるジンクスを友達かられいなは聞いていたから。
八幡神社でデートするとき参道の石段を登ってお参りしないとそのカップルはクリスマス前に別れるはめになるって。
確かに参道を登るのはかったるいし疲れること確実だけど
それよりも大好きな○○と別れることはもっとつらいことだから。
○○は知らないみたいだけど、迷信かよとか言われそうだし黙っとこ。
そう思いながられいなは石段を登り始めた。
- 618 :SOUND OF MY HEART :05/10/09 16:13 ID:EzQg2GtBO
5分後。
「れいな大丈夫か?」
「だいじょうぶ、へっちゃらたい!」
「ほれタオル」
「あっ。ありがと♪」
曇り空とはいえなぜか暖かいので二人とも額に汗を浮かべていた。
さすがにぶっ通しで登り続けてきたのでちょっと休憩。
「まだ歩けるか?おんぶするか?俺としてはその方が少し嬉しい」
「あははw何言っとると!スケベ」
「おいおい心外だな、でもまったくその通りであります!」
「やだもうw」
そう言いながらも嬉しそうなれいなであった。
結局、おんぶするほどの道のりでもないので
○○はれいなの手を引いて参道を登って行くことにした。
○○の大きな手はれいなには頼もしく感じられた。
- 619 :SOUND OF MY HEART :05/10/09 16:14 ID:EzQg2GtBO
「着いたー!」
造りは古いがおそらく神主や氏子によって清掃されてるのだろう、
伝統と格式を感じさせる社殿に到着した。
暖かい中を登ってきたのでれいなはもう上着を脱いでいた。
黄色いタンクトップに浮かび上がる成長途中の胸の膨らみと
ヒップラインにぴったりフィットしたジーンズ姿は、
いつになく女を感じさせて○○はちょっとドキッとした。
- 620 :SOUND OF MY HEART :05/10/09 16:53 ID:EzQg2GtBO
まず手洗い場で手を洗い口をすすいで清めたあと、社殿に参拝。
二人とも正式なお参りの仕方は知らないから、
鈴を鳴らして柏手を打ち、手を合わせて祈った。
「ねえ、何お祈りしたと?」
「え、いやまあみんな幸せに生活出来ますようにって」
「れいなのことも?」
「そりゃそうですな」
「みんなとれいなでどっちが上?」
「どっちも大事だけど…あえて言うなら、俺」
「えー何それひどーい、○○の馬鹿ー!」
「あははははwジョークジョーク。今まではそうだったけど今はれいなが一番大事さ」
「よろしい、許すばいw」
HDD内に保存されてる画像やらデータが大事とは口が裂けても言えない○○だった。
- 621 :SOUND OF MY HEART :05/10/09 16:57 ID:EzQg2GtBO
「ところでれいなは何をお参りしたのさ」
「にひひw秘密♥」
「あっそ。じゃあ聞かね」
「えー!そんなこと言わず聞いてよ!」
「いや聞かずともわかる。お前のことだからもっとナイスバデーになりたか〜とか」
「何言うとや!」
「すみません冗談です、てゆうか充分ナイスバデーです」
「わかればよか」
最近は胸と一緒に他の部分も肉ついてきたねとは口が裂けても言えない○○だった。
- 622 :SOUND OF MY HEART :05/10/09 16:59 ID:EzQg2GtBO
「あのね、このままずっと○○のこと好きでいさせてくださいって、お願いしたとよ」
「そうか…ありがとうな。俺もしっかり生きてれいなと楽しく過ごしたいよ」
「うん♥○○、大好き」
「おう♪」
- 623 :SOUND OF MY HEART :05/10/09 17:16 ID:EzQg2GtBO
神社を出てからそんなことを話しながら
林の中の遊歩道を歩いていたら二人とも小腹が空いてきた。
「そろそろなんか食べようか」
「お弁当、○○が全部持ってくるからっていうからお菓子しか持ってこなかったけど…」
「まあまずは座る場所探そう。あそこいいんじゃね?」
○○が指差す先には屋根つきのベンチとテーブルがあった。
曇ってるせいか公園内にいる人はまばらで、ベンチには誰もいなかった。
「じゃあ作りますか」
そう言って○○は持参したトートバッグからなんとコンロを取り出した。
それからタッパーに入ったキャベツやら肉やらたくさんの食材が
目を丸くして呆気に取られるれいなの前に展開されていった。
そして○○はコンロに着火すると、手早く焼きそばを作り始めたのだった。
- 624 :SOUND OF MY HEART :05/10/09 17:26 ID:EzQg2GtBO
「はい完成」
「すげー…てゆうか!どうやってあんなにいっぱい入れてたと!?」
「俺のバッグは四次元ポケットなのさぁ♪そんなことより温かいうちに食おうや」
○○の作ってくれた焼きそばはとても美味しかった。
あるいは市内を眺望出来るこのロケーションのせいかもしれない。
いずれにせよ、れいなは大満足だった。
「外で食べるのってなんだかいつもの食事より美味しいねッ」
「ここは見晴らしいいしな。おっ、学校が見えるぞ」
「ホントだ。わぁあんなに小さかー」
「ここからだと足一歩踏み出せばすぐ行けそうだな」
「なんか不思議ばい」
- 625 :SOUND OF MY HEART :05/10/09 17:46 ID:EzQg2GtBO
食事も終わって後片付けを済ますと、
二人はベンチに寄り添って座り再び街を眺めていた。
「なんか眠くなってきたと…」
「ひざ枕しよっか?」
「うん…お願い」
そうしてベンチに横になるとれいなはうたた寝を始めた。
そんな寝顔を見て○○はれいなが愛おしくてたまらなくなった。
音が聞こえる。
なんだろう?れいなの心臓の音?
ドキドキしてるんじゃない。なんだか安らぐ音。
○○にも聞こえてるのかな?れいなのハートの音色。
「おはよ」
目覚めると、そこには愛しい○○の顔があった。
「なんか夢見たと。癒される夢」
「俺もなんかれいなの寝顔見てたら癒されたなあ」
「ねえ、よだれたらしたりしてないよね?」
「よだれはたらしてないが…神様はよだれを垂らしたようだ」
- 626 :SOUND OF MY HEART :05/10/09 18:01 ID:EzQg2GtBO
ふと見ると小雨が降り出してきていた。
「どうしよう。れいな傘持ってきとらん」
「俺持ってきてあるよ。でかいから二人入れる。でも携帯で天気見たら一回止むみたいだけど…」
「じゃあもうちょっと一緒にここにいたか」
「それじゃ少し雨宿りしてから帰りますか」
そして二人はれいなが寄り掛かる格好で並んで座って、秋雨に濡れる景色を眺めていた。
(あ…○○の心臓の音が聞こえてる)
それは夢の中で聞いたハートの音と同様に安らげるリズムを刻んでいた。
「ねぇ」
そう言ってれいなは○○を見つめた。
○○もれいなの顔を見つめるとそっと顔を近づけてきた。
れいなは目を閉じて○○の口づけてくるのを感じた。
- 627 :SOUND OF MY HEART :05/10/09 19:36 ID:EzQg2GtBO
(あ、○○ドキドキしとる…○○にもれいなのドキドキ、伝わってるかな)
そんなことを考えているうちに長いような短いようなキスが終わった。
お互いしばらく無言だったが、○○がまず口火を切った。
「帰ろっか。晴れ間も見えてきたし」
「うん」
帰りは遊歩道を下って行くことにした。
幸い途中で雨が降り出すこともなかった。
「あっ、れいなちょっとこれ見てちょ」
「きれいな花だねー」
「記念に撮ってくゎ。れいなちょっと花の側にいて」
「こう?」
「そうそう、はいポチッとな」
ピロリーン♪とシャッター音を鳴らして携帯で花とれいなを撮った。
「これなんて花かな?」
「わかんね。帰ったら調べてみるね」
「よろしく♪」
- 628 :SOUND OF MY HEART :05/10/09 19:46 ID:EzQg2GtBO
そして麓に着くとちょうど駅のホームに電車が入る直前だった。
車両に乗り込むと同時に再び雨が降り出してきた。
「神様また怒っちゃったかな?」
「いや違うよ。俺らが山を下りるまで待っててくれたんだよw」
「ニヒヒwそうかもね」
そんな感じで雨の中を突き進む列車の中はとても暖かだった。
暖房のせいだよとかいうのはナシでよろ。
駅に到着し、電車を降りて改札を通り抜けると、まず○○が口を開いた。
「まだ雨降ってるけどどうする?」
「それじゃあ…送って欲しかばい」
駅かられいなの家までは歩いて5、6分。
まだ4時前だし普通だったら送ってもらうこともないだろう。
でも今のれいなは1分でも1秒でも1ナノセカンドでも長く○○と一緒にいたかった。
- 629 :SOUND OF MY HEART :05/10/09 19:57 ID:EzQg2GtBO
駅からの帰路は二人とも無言だった。
でも手はしっかり握って相合い傘でれいなが濡れないように○○は気を使っていた。
それがれいなにはまた嬉しくてたまらないのだった。
楽しい時間はあっという間に過ぎてしまった。
玄関の前でれいなは名残惜しそうに振り向く。
「そんな寂しそうな顔するなって。また学校でも会えるんだし、帰ったらいっぱいメールするからさ」
「…うん。○○、今日はとっても楽しかったとよ。ありがとう」
「おぅ。またどっか遊びに行こうね。それじゃ」
「あっ、ちょっと待って」
「何?」
- 630 :SOUND OF MY HEART :05/10/09 19:58 ID:EzQg2GtBO
Chu♥
振り向いたところにれいなが○○のほっぺにキスをした。
れいなも、○○も、帰り道で見つけた花のように真っ赤になっていた。
そうして、○○が見えなくなるまでれいなは手を振って見送っていた。
今まで以上に○○のことが好きになったれいなのハートは幸せの鼓動を刻んでいた。
れいなの家からの帰りの電車の中。
ベンチでひざ枕してるときにやっぱりれいなのおっぱい触っておけばよかった、
とは口が裂けても言えない○○だった。
从*´ ヮ`)<Fin.
BGM:SOUND OF MY HEART / DAVE HAMMOND
(words&music:Laurent Gelmetti)
Written by M.アンノ ◆QYNbG4tFeQ
从*´ ヮ`)<モドル