雨に誓って 〜SAINT RAIN〜
866 :雨に誓って :04/10/04 17:41

どうしようもない毎日だった。

大学は相変わらず成績も上がらないし、バイトもちっとも時給が上がらない。
おまけに、女の子に振られた。
いい事なんか一つもない、俺はそんなダメダメな大学生活を送っていた。
そんなある日。

大雨の日だった。俺はその日も講義を受けて家に帰った。相変わらず、何の変化もない。
「はぁ…」
自然と溜め息の数もそして吸っているJPSの本数も増える。全く、楽しい事なんかありゃしない。
家に帰ってもそれは同じ事だ。

「かったりーな」

そう思いながらテレビをつけるとニュースをやっていた。相変わらず暗いニュースばかりだ。
全く、テレビつけてまで暗い話ばかりとはいい加減嫌になってくる。
「何かいい事ねぇかな…まあ、あるわきゃねーか。あったら今頃とっくに来てるよな」
そんな事を思いながら俺は晩飯のぺヤングソース焼きそばを食べようとした…その時。

「ドンドン!ドンドン!」
こんな雨の日にやってくるとは…間違いなく知り合いではない。となれば新聞の集金くらいか。
しかし、こんな雨の日に来るか?
めんどくさいし出るのやめようかと思ったが、

「ドンドン!ドンドン!」

また叩いてくる。
「誰だよ一体…」
俺はそう思いながらドアを開けた。と、そこには…

「入れて欲しいたい」

俺の目の前にいたのは、華奢な体格の女の子だった。少なくとも、俺と面識は全くない。
「…どなた?」
俺は目が点になっていた。
「いいから入れて。上がるばい」

そういうとびしょ濡れになったその女の子はずかずかと俺の家に上がりこんだ。
「今日からしばらく面倒見て欲しいと」
「は?っていうか…あなたは…誰?」

俺はまだこの後俺に待ち受ける運命のいたずらを知らない…

871 :雨に誓って :04/10/04 17:59

俺は目の前の光景が理解できなかった。
俺の目の前には今から食べるはずのぺヤングソース焼きそば、そして…その場に明らかに不釣合いな女の子。
「あの…我が家に何の御用で?」

俺はまさか座敷わらしが来たんじゃないだろうなと思いながら、恐る恐る尋ねた。 するとその女の子は
「今日からしばらくここに置いて欲しいたい」
と言った。

いや、置いて欲しいって言われましても…困るんですけど。
「あの…お名前は?おいくつ?」

どう見ても俺より年下の人間に何で敬語使わにゃならんのかと思いながら俺は訊いた…すると
「レディーに歳を聞くとは失礼たい!」
と言われてしまった。一体なんなんだこいつは、貧乏神か?

俺は今すぐ追い出そうかと思ったが、そう入っても外はすごい雨、しかも雷まで鳴っている。
これでむざむざ追い返すのも忍びないし、何よりどこへ追い返せばいいのか分からない。
「仕方ないか…」

俺は腹をくくった。
「じゃあ今日だけ置いてやるよ。ビッショビショになってるし、とりあえず着替えなよ」
「だったら出て行って欲しいたい」
「いやこの家俺の家だし…隣にもう一部屋あるし…」
「いいから出て行くたい!」

はぁ…なんなんだこいつは…かくして俺は雨の中、しばらく外で立たされる羽目になった。

881 :雨に誓って :04/10/04 21:08
「もう入ってもいいたい」

俺はようやく入る事を許された…って、ここは俺の家なんだけど。
まったく、一体こいつは何者なんだ?
そう思いながら扉を開けると、さっきの女の子が着替えて座っていた…が、その服も結構濡れている。

「まあ飲みなよ」
俺はそう言いながら冷蔵庫からファンタを出した。彼女は何も言わずそれを飲み始めた。

「で、名前は?」
「…れいな」
「は?」
「れいな!」

れいなと名乗った女の子はそれだけ言うとまたファンタを飲みだした。
この調子じゃ相当大変なことになりそうだ。

「で、れいなはどこから来たんだ?」
「…」
「どこから来たんだ?こんな雨の日に」
「…言えんたい」
「えっ?何で?」
「もしここに誰かから電話かかってきても…うちがおる事は言わんで欲しいたい」
「どうして…」
「どうしてもたい!」

れいなはそう言うと下を向いてしまった。どうやら何かしらの事情があるみたいだ。
その事情も聞かなきゃ…
俺は途方に暮れかけていた。

882 :雨に誓って :04/10/04 21:08

とりあえず、れいなの居られる場所を用意しないといけない。
俺は部屋を片付けてスペースを作った。
押入れから古ぼけた布団も引っ張り出した。

「んで、洗濯するから何かある?」
俺がそう言うとれいなは無言で鞄を差し出した。開けてみると中はかなり濡れている。
どうやらこいつ自体洗濯しなきゃいけないようだ。
中からは着替えに混じって、一冊の雑誌が出て来た。
不思議な事にこの本だけはちょっと濡れていたが読めるレベルだ。

「何だ?この本」
俺が取り出そうとすると
「あっ!それだけは読むなたい!」
れいながそう言ってその本を取り上げた。
表紙から察するに、FLAMEあたりの本のようだ。
まあ、俺にはよくわかんないけどな。

「とりあえず、何か食べるか?大した物ないけど…」
「天麩羅が食べたいと」
「は?何言ってんだお前?」
「いいから天麩羅が食べたいっちゃ!」

俺は別に気は短くないと自分で思っているが…さすがにキレそうになった。
そんなもん、我が家にある訳ないだろうが…。
しかし…まあ一回くらいならと思い、俺は出前をとることにした。
もちろん金がある訳ではないので、ホカ弁の出前である。

それを待つ間に、俺はれいなにもう少し話を聞く事にした。
「どうして…ここへ来たんだい?俺と…どこかで会ったっけ?」
れいなは首を横に振った。
では一体なぜこんなところへ来たんだろう…俺は訳が分からなくなった。

902 :雨に誓って :04/10/05 09:16

訳が分かってない俺はれいなにもう一度尋ねた。
「他に行くとこなかったの?何でわざわざ知らない人の家に来たの?」
「…何にもないたい」
「どうして?」
「それは…言えんたい」

れいなはそう言うとまた黙り込んだ。
ひょっとしてこいつ、何かトラウマでも抱えてるんじゃないのか?
そう思いながら俺はこれから一体どうするか考えていた。その時…

「ドンドン!ドンドン!」
弁当屋が来たらしい。金のない大学生には痛い出費だが仕方がない。
まったく、銭金に出られるくらいのビンボー人の俺が天麩羅なぞ食べるなんて…この二年くらい記憶にない。
「どうも雨の中すいませんでした」
弁当屋さんを送り出した俺はれいなに言った。
「ほら、天麩羅弁当、買って来たぞ」
「…ありがとう」

れいなはそれだけしか言わなかった。相変わらず暗い。
「さ、温かいうちに食べようぜ。お腹空いてんだろ?」
「うん」

俺は(自分でも分かっていたが)明るく振る舞いながられいなに促した。
そしてようやくれいなも
「…いただきます」
そう言って弁当を食べ始めた。

903 :雨に誓って :04/10/05 09:16

すっかり冷めてしまったペヤングソース焼きそばを俺は食べている。
タイミングを外すと、こんなにまずいものになるのかと思いながら。

目の前のれいなは相変わらず暗い表情のまま俺の頼んだ天麩羅弁当を食べている。
しかしこいつ、笑わないのかな…何かすごく暗いんだが…
「うまい?それ」
「…うん」
「ごめんな、俺ほらビンボーだからさ、いいもん食ってないんだよ、ハハハ…」
「…いいたい。お兄さん、やさしい人たい」

初めてれいながそう言ってくれた。何だ、まともな子じゃないか…
「それ食べたら風呂入りなよ。沸かしとくからさ」
「…うん」

また元に戻っちまった。はぁ…これじゃ意味がない。
しかし、そう嘆いてばかりもいられない。
事情はともあれ、しばらくはれいなと俺の二人暮らしになるんだから…仲悪くならないようにしなきゃ。

まずい焼きそばを食べ終えた俺は風呂を掃除してお湯を沸かした。
ったく、昨日までとは全く別の生活になってしまっているのが自分でも分かる。
「風呂、沸いたから」
「うん…」
れいなは相変わらずだ。
一瞬心を開いてくれたかと思ったけど、どうやら俺の勘違いのようだ。
はぁ…これじゃ前途多難だよ。
「何とかならねぇかな…」
部屋でJPSを吸いながら俺は呟く。

風呂場からシャワーの音が聞こえて来た。
「女の子、か」
そりゃいつかは同棲とかしてみたいとは思ってたけど、どう見ても中学生、
下手すりゃ小学生にも見える女の子と一緒になるとは…
俺の苦悩の日々は、まだまだ始まったばかりだった…

918 :雨に誓って :04/10/05 21:18

れいなが隣の部屋で眠っている。
幼女に興味のあるやつなら嬉しくて仕方ないかもしれないが、あいにく俺にそういう趣味はない。
って言うか、こいつがいる以上、俺の部屋で友人連中と徹夜マージャンや徹夜プレステをする事もできない。
ん?徹夜でプレステ?…朝帰りしてそんな言い訳してたアイドルがいたっけ。まあ、俺には関係ない話だ。

「あーあ、こりゃ寝れねーぞ」
そう思いながら俺は大学の課題をこなしていた。

夜は更けていく。
聞こえてくるのはどこかのバカのあげる公園からの奇声と、時たま通る車の音だけだ。
「あぁ、やっと終わった…」
時計を見ると午前2時を過ぎていた。
さて、寝ようか…そう思って布団を持ってこようとした時…
「…うっ…うっ…」
声にならない声が聞こえる。隣の部屋だ。入ってみると…

「…ひどい…やめて…うぅ…もういやたい…」

れいなが泣いていた。どうやら、うなされている様だ。
「おい、どうした?大丈夫か?」
俺はれいなの枕元に駆け寄るとれいなの体を揺すった。
「うう…あっ…」

れいなが目を覚ました。目は涙で真っ赤である。
「どうしたんだよ…」
「…怖い、怖いたい…」
れいなは何かに怯えている。寒くもないのに体が震えている。
「何が怖いんだ?言ってごらん、ここは大丈夫だから…」

俺がそう言ってもれいなは首を横に振り続けるだけで何も言わない。
恐怖に何も言えないのかもしれない。
「大丈夫だから、な?落ち着いてごらん」
れいなを何とか落ち着かせようと俺は必死になった。
しかし…れいなは相変わらずだ。俺は覚悟を決めた。

919 :雨に誓って :04/10/05 21:18

「俺が一緒にいるから、な?」
「…うん」

俺がいる事くらいでれいなが落ち着くとは思えないが、できる事は(自分のためにも)してあげたかった。
「よかったら、一緒に寝る?」
「…うん」
れいなは小さく頷いた。その目には涙の跡がまだ残っている。
俺はその姿を見て、何ともやるせない気持ちになった。
でも…どうしたら悲しみを取り除いてやれるかわからない。

再び布団に入ったれいなは黙って俺に手を差し出した。その手はとても小さくて冷たかった。
俺はその手を温めてやろうと握り締めた。
「…あったかいたい」
れいなはそう言うと目を閉じた。その寝顔はとてもかわいい。
「一体何があったんだ…」
れいなの小さな胸に秘められた過去。そして華奢な体を覆い尽くすほどの悲しみ。
一体彼女はどこから来たんだ、そして彼女の身に何があったのか?
「こいつとは長い付き合いになるかもしれないな…」

涙に暮れた夜はやがて新しい朝になった。
結局、俺は一睡もできないまま朝を迎えた。そして俺は重大な問題に気づいた。
「こいつ、学校どうするんだ?」

行かない訳には行かないだろう。でも勉強道具なんてないし…どうしたらいいんだ?

920 :雨に誓って :04/10/05 21:18

俺も家にいる訳にはいかない。何せ今日も講義があるのだ。
そして今日はバイトもある。
ただ、れいなを一人にする訳にもいかない。
まだ信用できないし(当たり前だ)、俺のいない間に誰かが連れ戻しに来られたりしても困る。

となれば、家にいるしかない。
でも講義はともかく、バイトは休めないよなぁ…。
そしたられいなをマジで一人にしないといけない。それはマズい…
「今日どうするんだ?」
「…ここにいるたい」

れいなはそう言った。まあそう言うだろうな、とは思ったが。
「でも…俺今日講義あるし」
「よか…うちが留守番するたい」
いや、そういう問題じゃないんだけど…ていうか留守番されてもな…

「いいや、講義はサボるよ。今日はお前と一緒にいる」
「…いいんか?」
「ああ、いいよ」
仕方がないか、と思うことにして俺は朝ごはんを用意した。
パンにピーナツクリームを塗っただけのものだが。
「ほら、食べなよ」
れいなはそれを食べ始めた。その姿を俺は眺めていた。
「…どうしたと?」
 視線に気づいたれいなが俺に尋ねた。
「何でもないよ」

俺はどうしたられいながここに来た理由を聞き出せるかを考えていた。
それが分かればそこで何が起こっていて、なぜ彼女が何かに怯えているのか分かると思ったからだ。
既に俺のない頭で考えていた事…恐らくれいなは自分の家で何かしらの虐待でも受けたのだろう
(ただ、その割には体に変化がないのが気になるが…)
それが嫌になって家出したが、行くところがなかった…それでなぜか俺の家に転がり込んだ…

「こいつを何とかしてやらなきゃ」
俺は決心していた…昼間までは。

955 :雨に誓って :04/10/06 16:13

昼だ。昼ご飯を作らなきゃいけないが材料がない。仕方ない、買いに行くか。
「なあ、昼飯買いに行くぞ。行くか?」
「…うん」
俺は初めてれいなと出かけた。

しかし、この時間帯はオバちゃんとかも多い。怪しい奴と思われないようにしなきゃ。
スーパーに着くと、幸い人はあまりいない。急いで買い物を済ませよう。
「昼、ラーメンでいいか?」
「…うん」
れいなは相変わらずほとんど言葉を発しない。
ただの人見知りじゃねーな、これは。ひょっとして、対人恐怖症?
まあ、今までのれいなを見てるとそうなるのも無理ないか、とは思うけど。

「さっ、とりあえず買い物もしたから帰るか」
もし長期滞在になった時の事も考えて買い物をしたら、結構な量になってしまった。
そして家に帰ってラーメンを作った…のだが、れいなは食べようとしない。
「どうした?ラーメンだぞ」
「…食えんばい」
「何で?」
「…とんこつじゃないものは食えんたい!」
「はあ…」

喋り方からして田舎の出身なんだろうなとは思ったが、とんこつ以外食えないとはこいつ、博多の人間か…
じゃあやっぱ宗りんの大ファンだったり、アビスパのJ1復帰を待ち望んだりしてるんだろうか…?
ってゆーか、だったら俺がラーメン買う時に先に言ってくれよ…
「でもこれしかないぞ、嫌なら我慢しな」
「…それは嫌たい」
「じゃあ、それ食べな」
「…」

れいなは仕方ない、と意を決したように食べ始めた。
それを見てホッとした俺はテレビをつけた…そこで俺はとんでもないものを見た…

26 :雨に誓って :04/10/07 00:44

「中学生の少女が昨日から行方不明になっています」
何?まさか…
「この少女は和歌山県新宮市の…」

何だ、人違いか…ホッとする俺。
だが、一難去ってまた一難。今度は俺の携帯が鳴り始めた。なぜか恐る恐る電話に出る俺。
「もしもし…」
「ああ、俺だ」

サークルの先輩だった。またホッとする俺。
「すいません、今日体調悪くなって…」
「ああ、それはいいんだけどな、シンセどうした?」

あ、そういえば先輩にシンセを借りたんだったっけ、早く返さなきゃ。
「まだ俺持ってます、すいません借りっぱなしでしたね」
「今日必要になっちゃってさー、後で取りに行きたいんだけど…」
「えっ?今日ですか…?」
「うん、後で家行くわ」
「いや…それは…」
「何かあるの?」

うーむ、ここでどうするべきか俺は考えた。
家に呼んだられいなの存在に確実に気づかれる、かといって俺が家を出る訳にも行かない。
「明日じゃダメですか?明日持って行きますんで…」
「うーん、でも今日使うんだよね…」
「そこを何とか!」
「…まあじゃあ明日でもいいけど、何かあったのか?そんなに嫌がって…」
「いえ…何でも」

電話を切っても俺は不安だった。いつこの生活が他人にばれるか…怖くて仕方がなかった…

27 :雨に誓って :04/10/07 00:45

何とか先輩が来るのは避けられたが、俺はまだまだ不安でいっぱいだった。
今からバイトがあるし明日からは講義に出なきゃいけないし、そもそもれいなも学校に行かなきゃまずいだろ。
無断欠席が続けば、みんな心配するだろーし。
「どうしたものかな…」

ぬるいコーヒーを飲みながら俺は考え込んだ。
「何しとーと?」

れいなは何も知らないといった感じで俺に尋ねてきた。
「お前、明日から学校行けよ」
「…えっ?なして?」
「なしても何もないよ。学校行かなきゃ。休んでばっかだったら心配されるぞ」
「…いや、嫌たい!」
「どうして?」
「…怖いたい、みんな…みんな怖いたい!」

れいなはそう言うと泣き始めた。マズい…これじゃ昨夜の焼き直しだ。何とかしなきゃ。
「れいな、れいな…落ち着けよ。な?ここは学校でも実家でもないから…な?安心してごらん」

我ながらとても大学生とは思えない慰め方だったが…れいなを何とかして安心させたかった。
しかし…こいつは相当辛い目に遭ってきたようだ。家も学校も嫌だなんて…よく生きてこれたな。

「ヒック、ヒック…」
俺は焦っていた。今からバイトだ。どうしよう…しかし、れいなを一人にできそうもない…
「れいな…俺が一緒にいるから、な?大丈夫だから」
「…ホントか?」
「ああ、ホントだ。ここにはお前をいじめる奴もいないよ。だから…泣かないでな?」

れいなはようやく泣き止んだ。
俺はそれを見届けてバイト先に休みの電話を入れた。俺も違う意味で泣きたくなった…

28 :雨に誓って :04/10/07 00:45

俺はれいなの頭を膝に乗っけて膝枕をしている。
そばにいてやる事しかできないが、それで十分のようだ。
れいなはさっきとは別人のように落ち着いている。
「…お兄ちゃんは、人生楽しいと?」

れいながいきなり尋ねてきた。
一体何だと思ったが、それより驚いたのは、れいなが俺の事を「お兄ちゃん」と呼んだ事だ。
「…楽しいかどうかは微妙だな。でも、どうしてそんな事聞くの?」
「れいなは…楽しい事なんてなかったたい」

れいなが遂に自分のことをしゃべり始めた。俺は全神経を集中させた。
「…今まで、辛い事ばっかりで、毎日嫌だったたい。だから、そんな毎日が嫌になって、家出しようと思ったと」
「…それで、俺の家に来たの?」
「家を出てしばらくしたら、雨が降ってきたと。傘持ってなかったけん、びしょ濡れになったたい。誰かのところに行こうと思ったと…」
「で?何で知り合いでもない俺の家に?」
「知り合いの家は、どこも留守だったと。そのうちに大雨になって、どこにも行くところがなくなって…」
「俺の家に来たんだ?」

れいなは小さく頷いた。
その瞳は、また涙でいっぱいになっていた。
「れいな、もう大丈夫だ。心細かったろう、俺は…お前を傷つけたりしないから…」
「おって、ええんか?」
「いいよ、好きなだけいていい…」
「ありがとう…お兄ちゃん」

俺はれいなを力いっぱい抱きしめた。
れいなの心の痛みをすべて消してやりたいと思った。
れいなはたった二日で、俺にとってそれほど愛しい存在にまでになっていたのだ。
「もう辛い思いはさせない…」

俺は決心した。そして…この瞬間、俺とれいなの新しい生活が始まった。

この先待ち受ける悲劇を、知る由もなかった。

128 :雨に誓って :04/10/08 18:25

3日目の朝だ。
俺は布団から抜け出すと、隣で寝ているれいなを見つめた。
「さて、どうしようか…」

さすがに今日は大学に行かなくちゃ。
先輩にシンセ返さなきゃいけないし。バイトは明日か…行かなきゃマズいよなぁ…
「おい、れいな。もう朝だぞ」
「ぅん?ぁあ…もう朝と?」

れいなは大きく伸びをしてから布団を出た。
俺はそれを見ながら朝ごはんの用意をした。
「さ、今日は俺大学行くから、留守番しとけよ」
「…うん」

やっぱり乗り気じゃないようだ。まあ、しょうがないか。
「ほら、できたぞ」
お詫びという訳でもないんだが、今日は目玉焼きを作った。
一人暮らしで自炊をしていれば、これくらいは作れる。ただ…
人に作った事はないので、味の保障はできないが。

「おいしいたい!」
れいなはそう言って笑った。
初めて見せてくれた笑顔。俺はたまらなく嬉しかった。
「ホントか?ありがとう」

ちょっとずつかも知れないけど、れいなは確実に俺に心を開いてくれている。それがとても嬉しい。
「今日はいつ帰ってくると?」
「夕方までには…帰ってこれると思うよ」

れいなを一人にするのは不安だったが仕方ない。
まあれいなも幼稚園児じゃないんだし、一通りの事くらいはできるだろう。
「誰か来ても絶対開けるなよ。昼飯はその辺のもの、適当に食べて」
「…うん」

れいなを残して、俺は大学に向かった…

129 :雨に誓って :04/10/08 18:25

大学の講義は長い。興味のないものになるとホントに退屈だ。
俺はれいなのことを気にかけながらどこか落ち着かなかった。
「どうしたの?落ち着きないじゃん」

そう言ったのは俺と同じ軽音のサークルの柴田さんだ。
俺と同級だが、一浪したとかで年上である。
「いや、ちょっとね…」
「ふーん、ひょっとして、彼女でもできた?」
「何でそうなるんだよ。俺にそんな事ある訳ないじゃん」
「ま、そりゃそっか」
そう言って柴田さんは笑った。彼女は笑うと八重歯がチラッと見える。

「そういう風に言われるの嫌だな…」
そう言いながら内心俺はちょっと嬉しかった。
れいなのことがバレたら、洒落にならない。
「あーあ、まだ終わんないのかよ…」

俺は内心「長い!」を連呼しながら講義が終わるのを待ち続けた。
そして…やっと全講義が終わった。夕方の4時。
「さあ、早く帰ろう」

昼にシンセを先輩に返したのでもう用はない。
後は帰るだけだ…と思ったら。
「よっ!」
誰かと思ったら、柴田さんだった。
「ね、今日飲みに行かない?」
「え?どうしたんスかいきなり」
「いや、ちょっとどうかなと思ってさ」

うーむ。柴田さんから誘われるのは内心すごく嬉しいし行きたいのは山々だが家にれいなを残している…
何かあったらマズいし…でも断るの悪いなぁ…
「すいません、俺今日予定入ってて…」
「あっ、そうなんだ。じゃあまたね」

柴田さんに悪いなと思いながら俺は家路を急いだ。
家に帰るとれいなが待っている…

130 :雨に誓って :04/10/08 18:26

「ただいま〜」
「…おかえりたい」

れいなは俺の部屋でテレビを見ていた。特に変化はないようだ。
「今日はコロッケ買って来たからコロッケな」
「…うん」

れいなの様子も変わらない。
心を開いてくれてるんなら、もうちょっと明るくてもいいような気がするな…仕方ないのか…

「れいな、今度の週末、よかったらどこかに行かないか」
夕飯の支度をしながら俺は尋ねた。
「…どこに行くと?」
「どこでもいいよ、れいなの行きたい所に連れてってやる」
「…ホント?」

れいなの弱い声が背中越しに聞こえた。
「ああ、約束するよ。どこがいい?」
「じゃあ…遊園地に行きたいと」
「遊園地か…分かった、じゃあそうしよう」

俺は金がない。でも…れいなを元気付けるためには何でもしてやりたかった。
「じゃあ、今週の週末にな」
「うん」

れいなと約束をして、俺たちは夕食を食べ始めた。
そしてテレビをつけた…そこで俺は目と耳を疑った。
「神奈川県横浜市の中学3年生、山崎れいなさんが3日前から行方が分からなくなっています。警察は公開捜査に踏み切りました…」


139 :雨に誓って :04/10/08 20:34

「嘘だろ…」
俺は言葉を失った。隣のれいなはうつむいて何も言わない。
その場の空気を嘲笑うかのように、ニュースは続く。
「山崎さんは3日前、自宅を出たきり行方が分からなくなっています。
今のところ目撃情報はないという事で警察では聞き込み等情報収集に当たっています」

「…」
二人とも何も言えなかった。
俺は犯罪者になってしまうんだろうか…そしてれいなは一体どうなるんだ?
「…なあ、れいな。本当の事を…言ってくれ。お前は一体どうして家を出たんだ?」
「…」
「れいな!」
「ごめん…うちが悪かったと」
れいなは泣いていた。俺はテレビを消した。
「家におるんが、嫌になったばい」
「どうして?」
「…いじめられとった、けん」
「親に?」

れいなは無言で頷いた。やはり…
「…それ以上は、もう思い出したくないたい…」

れいなはそう言うとまたうつむいてしまった。
彼女にとってのトラウマなのだろう。
「分かった。それ以上は訊かない。でも…親もお前を捜してるんだから、帰らない訳にはいかないよ…」

れいなは答えない。やはり、帰りたくないんだろう。
しかし、決断を下さなければいけない。
「れいな、やっぱり電話しよう。俺が責任取るから、大丈夫だ」
「嫌、いやだ…ここにおりたい!」
「…でも、連絡しないと…」
「お願い、それだけは嫌と!」

れいなはそう言って聞かない。はぁ…俺はどうすればいいんだ…

140 :雨に誓って :04/10/08 20:35

俺は今、大げさに言えば人生の岐路に立たされている。
れいなは何とかあの後落ち着かせた。そして…何とか眠ったようだ。

連絡するにしても、いつ?
早いほうがいいに決まっている。
しかし、れいなを家に帰すとなれば、相当抵抗されるだろう。
れいなを傷つけて帰すのか…

考えても完璧な答えなど出やしなかった。でも…答えは出さなければいけない。
「決めた…」

俺はそう呟くと、受話器を取った。
電話帳で番号を探し、電話をかけた。
「もしもし、山崎さんのお宅ですか…」

恐らく警察がいるのだろう。ざわめきが聞こえる。
俺はそのことを無視して一気に話した。
れいなが雨の日に我が家にいきなりやって来た事、それを帰せなかった事、今では俺もれいなの事を大切に思っている事…

「捕まるな、俺」
覚悟を決めていた。しかし…答えは違った。
「そうでしたか…それは失礼いたしました。今からそちらにお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「…はい」

意外な展開だった。
俺は首をひねりながら山崎氏の到着を待った。そして…

「ドンドン、ドンドン」
れいなの両親が、やって来た…

145 :雨に誓って :04/10/08 23:49

「失礼します、山崎です」
俺の目の前に現れた山崎さんは思ったより若かった。
ま、中学生の親でも30台中盤とかザラらしいから、普通かもしれないけど。
「れいなは…」
「隣の部屋にいます」
「そうですか、では早速…」
「ちょっと、待ってもらえますか」
「何か?」

そう言ったのはれいなの母親だった。
俺はれいなと週末に遊園地に行く約束をしていた事、そして、れいなが俺と一緒にいたがっている事を告げた。
「…それはできません、れいなはうちの娘ですから」
「それはわかってます。でも彼女が望んでるんです。私がすぐに連絡しなかったことは謝ります。
しかし…もう少しだけ、時間をくれませんか」
「…失礼ですが、なぜそこまでれいなの事を?」
「…れいなは家に帰りたがらないのです。
失礼かもしれませんが、普通、家出したってそんなに長く帰らない事はないでしょ?ってことは…」
「ちょっと待て、あなた、一体どういうつもりなんだ」

山崎さんが俺に詰め寄った。
ま、そうなるかなと思っていた俺はまだ冷静だった。
「れいなは明らかにこちらにいることを望んでいるんです。嘘だと思ったら、本人に聞いてみたらどうですか」

その時、隣の部屋のふすまが開いた。
中から、れいなが目を擦りながら出て来た…

146 :雨に誓って :04/10/09 00:41

「何…何で…」
れいなは言葉を失った。目の前の状況を信じられないようだ。

「何で…おると?」
「れいな、さあ帰ろう。もう、ここにいちゃダメだ」
山崎さんはそう言ってれいなを連れて帰ろうとした…ところが。
「嫌だ!れいなはまだここにおりたい!」

れいなは必死に抵抗する…と、その瞬間。
「ばか者!」
山崎さんはれいなの顔を思いっきり張った。
崩れ落ちるれいな。そして…泣き出した。
「あなた!いくらなんでもそれは…」
「バカ!だから俺はこいつを貰いたくなかったんだ。俺には娘がいるのに…俺は帰る!勝手にしろ!全く…人の恩を仇で返しやがって…」

山崎さんはそう言って帰っていった。
奥さんも後を追った。そして…俺とれいなが残された…

「…ウェ〜ン!」
れいなは大声を上げて泣いた。
そして、俺に抱きついた。
俺は何も言わず、れいなを受け止めた。俺も泣いていた。
そこかられいなが泣き止むまでは、さらに十数分の時間を要した。

ようやく泣き止んだれいなが、俺に尋ねた。
「れいな…いらんって言われてしまったと」
「…」
何も言えなかった。俺にできることは一つしかない…
「兄ちゃんは、れいなの事…好きでいてくれると?」
「…好きだ。大好きだ…れいなの事」

それは俺の本心だった。
ただ、恋愛感情ではない。守ってやりたい、その気持ちからだった。
「俺がそばにいるから…な?」
「ありがと…」

俺とれいなはそのまま辛い夜を過ごした…

151 :雨に誓って :04/10/09 02:56

俺はそこから2日間必死だった。
れいなに気づかれないようにホテルを押さえ、レンタカーも借りた。
もちろん普通に講義に出たし、バイトもした。
肉体的にも精神的にも金銭的にも大変だったが、れいなの笑顔が見られるなら、と俺は頑張った。
そして…週末がやって来た。

「ぉあよぅ…」
「お兄ちゃん、さ、早く行くたい!」
ああ…もう朝か。
れいなは朝から行く気満々のようだ。
まあ、楽しみにしてたんだから当然か。
眠い目を擦りながら俺は布団から抜け出す。
外は今までと打って変わって快晴だった。

着替えながら俺は考えた。
れいなをこれからも面倒見るとして、俺は一体何をするべきなのか…
学校にも行かせなきゃいけない、買わなきゃいけないものも沢山あるだろう。
大体、俺の経済力で養えるのか?課題は山積みだった…
「お兄ちゃん、まだと?」
「ああ、もう行くから待ってて」

れいなに急かされるように俺は家を出た。
外には昨日借りたレンタカーがある。
「お兄ちゃん、この車どげんしたと?」
「れいなと出かけるんだ、そのために借りたんだよ」
「…いいんか?」
「いいよ、せっかくだもん」
「ありがと…うわぁ、広いばい!」

れいなは俺の借りた2リッターのミニバンを気に入ったようだ。俺もホッとした。
「じゃ、行こうか…」
「うん」

俺はミニバンに乗り込んだ。
そして、俺とれいなの1泊2日の旅が始まる…

152 :雨に誓って :04/10/09 02:57

俺とれいなは遊園地に向かった。
天気のいい週末と言う事もあってか、車の量が多い。
「なあ、れいな」
「ん?」
「今夜、ホテル取ったから」
「えっ?」
「今夜は…二人で泊まろう」
「そんな…悪いたい」
「いいんだ、もう予約取ったし」

俺はれいなに少しでもいい思いをさせてやりたかった。
れいなの心にある悲しみ。
それは(愛されていなかったとはいえ)父親からの拒絶でこれ以上ないくらいになっていたはず。
それを救ってやるには、ありったけの愛情を注いでやるのが一番近道だと思ったのだ。
「…兄ちゃん、一つ訊いてもよかと?」
「ん?何だ?」
「どうして…うちにそんなにやさしくしてくれると?」
「…れいなの事が、好きだからだよ」
「?うちの事が…」
「そう。れいなは今まで誰かの事好きになったことある?」
「…分からん。そんな事、今まで分からずに生きてきたばい」
「そっか…」

俺は愛に飢えたれいなが可哀相で仕方なかった。
だから、決めていた。
俺のやり方で、ありったけの愛をれいなに注いでやろう。
れいなをこれ以上、悲しい表情にさせたくない。
それが、俺にできる一番いい事だと、俺は感じていた…

「あ、れいな。そろそろ着くぞ」
「ホント?楽しみっちゃ」
そして、車は駐車場に辿り着いた。
「ドリームランド」へ、俺とれいなは(初めて)手をつなぎながら向かった。

311 :雨に誓って :04/10/12 04:00

俺とれいなは園内に入った。今日は一日パスポートを買った。
「うわぁ〜、メリーゴーランドたい!」
れいなは嬉しそうだ。
まあ遊園地に行った事がない訳じゃないだろうが、恐らく久しく行ってなかったんだろう。
「兄ちゃん、乗ろ、乗ろ!」
「ああ、乗ろう」
この歳になって(大の大人とか言われる歳じゃないけど)メリーゴーランド乗るのは正直ちょっと恥ずかしい。
でも…あくまで今日はれいなの為に来てるんだ。
そう言い聞かせて俺はメリーゴーランドに乗り込んだ。

「チャンチャラチャンチャラ…」
チープな音楽が流れてゆっくりとメリーゴーランドが回りだした。
れいなはとても楽しそうだ。俺はちょっと恥ずかしさを隠しながら回り続けた。

しばらくして、メリーゴーランドはゆっくりと止まった。
れいなは少し寂しそうにそこから降りた。
その表情の理由はただメリーゴーランドが終わったからだと思っていたが…(本当の理由は後で分かる事になる)。

「次どこ行こうか?」
「あれに乗りたいと」
れいなが指差した先には、悲鳴とともにスイングするアトラクションがあった。
「あれ…乗んのか?」
「もしかして兄ちゃん、怖かと?」

図星だった。
俺は何を隠そう絶叫マシーン系が大の苦手だったのだ。
マズい、乗りたくない…でもれいなにバレたら嫌だし…
「まあ、いっか」

俺は決心してれいなと一緒にそのマシーンに乗った。
「パイレーツ」って書いてある。
てっきり巨乳だったお笑いコンビから取ったのかと思ったが、そうじゃないらしい。
ま、今そんな事考えてもしょうがないか。

「さ、乗るたい、乗るたい!」
大はしゃぎのれいなとテンションの上がらない俺。
二つの気持ちを乗せて、パイレーツは揺れ始めた…

312 :雨に誓って :04/10/12 04:01

俺は乗って数秒で乗ったことを後悔した。
予想以上のスピードでスイングするパイレーツは俺に凄まじい吐き気をプレゼントしてくれた。
うぅ…気分悪い…

「兄ちゃん、大丈夫と?」
何とかもどさずに済み、ようやく解放された俺はれいなの気遣いにも答えられずにへたり込んでしまった。
我ながら恥ずかしい。
「どうしよ…」
れいなの表情が曇っている。
ま、そりゃそうか。まったく、見栄なんて張らなきゃよかったよ…。

「大丈夫だから、な?」
れいなにそう言う事は言ったが、俺はとてもじゃないが大丈夫じゃない。
でもまだお昼である。
「な、昼ごはんにしようよ。それなら大丈夫だから」
全くもって訳の分からない論理だが、とりあえずれいなは納得したらしい。
「じゃあ一緒に食べにいくっちゃ!」

そして二人はレストランに向かった。そこで昼飯を取る。
「なあ、さっきはごめんな」
俺は一応、さっきパイレーツを降りたときに吐きそうになった事を謝った。
「気にしてないたい。で、昼はどこに行くと?」
俺は手元の園内図を見ながら言った。
「じゃあ、おばけ屋敷とか行ってみるか?」
「嫌、れいなお化け苦手たい!」

何だ、れいなも怖いものあるんじゃん。
「じゃ、これにする?『ジャングル探検』ってやつ」
れいながその手のものに興味あるかどうか分からなかったが目玉アトラクションらしいし、一応訊いてみた。
「じゃあ、それに乗るたい」
れいなはあっさりと?俺の提案を受け入れた。
そして…俺たちはジャングル探検に向かった。

313 :雨に誓って :04/10/12 04:01

ジャングル探検は船に乗ってジャングル(もどき)のセットの中を探検するアトラクションらしい。
既に船の乗り場には沢山の子供連れがいた。

「これに乗ると?」
「そうみたいだな」
俺とれいなはその船に乗り込んだ。
そして…船が動き出した。中からは子供たちの歓声が上がる。
俺はまあ、さすがに歓声上げるほどではないけど。

「面白い?」
れいなの反応が気になる俺。
「面白いっちゃ」
れいなはニコニコしている。
考えてみれば、たった数日前には想像もできなかった事態である。
「そっか、じゃあ良かった」

俺はれいなの事が自分の中で大きなウェートを占めている事を、もう隠すつもりはなかった。
どんな事情にせよ、今れいなは俺だけを頼ってくれている。それがとても嬉しかった。
いつまでこんな生活が続くかは分からないが俺はれいなの事を誰よりも愛してやる、
それこそ俺がれいなにできる最高のプレゼントだと思っていた―

「兄ちゃん、どうしたと?もう着いたばい」
れいなにそう言われて俺は我に帰った。
全く、真昼間から何考えてたんだろう俺。
おかげでジャングル探検をろくに見られなかった…やっちまったな。

「次はゴーストハンターズに乗るたい!」
「次はあの大海賊に乗るたい!」
俺は次から次へとアトラクションを選ぶれいなについて行くのがやっとになった。
そして…いつしか時間も過ぎて夕方になった。だんだんと人も減ってきた。

「そろそろ…最後にしようか」
俺がそう言うとれいなは
「じゃあ…あれに乗りたいと」
そう言って彼女が指差した先には、大きな観覧車があった…

314 :雨に誓って :04/10/12 04:01

俺とれいなは観覧車に乗り込んだ。
俺たちは何も言わず、暮れていく夕日に染まる街並みを眺めていた。

「今日は…ありがとうたい」
れいなはそう言うと、俺の隣に座った。
その目は…涙で真っ赤になっている。
「まだ泣かないで。これからも…ずっと俺たちは…」
「その事…なんやけど」
「?」
「うち、家に戻る事にしたと」
「えっ…」

自分を捨てた家に、今更戻るというのか、一体何のために…
「この間から、ずっと考えとったたい。兄ちゃんは優しくしてくれたし、何も不満ないと。でも…」
「でも?」
「うち、自分のために戻るって決めたたい。だから…兄ちゃんのせいとかじゃないけん、分かって欲しいたい」

俺は何も言えなかった。
れいなは一体なぜわざわざ歓迎されないところへ戻っていくのだろう?
その理由は分からなかった。
「いつ…戻るんだ?」
「…明日か明後日」

もう時間がなかった。
気がつけばゆっくりと観覧車が下がり始めた。
永遠に感じられた時間は…もう残りわずかしかない。

「れいな…愛してる。誰よりも…誰よりも」
俺はれいなを抱き締めた。俺も泣いていた。
「ありがとう…うちも兄ちゃんの事大好きたい」

残された時間は、一気に少なくなった。
俺はなけなしの金をはたいて、れいなに大きなぬいぐるみを買ってやった。
「これ?貰ってええんと?」
「いいよ、記念だからな」
俺は答えながら辛い思いと必死に戦っていた。
もう少ししか、れいなとは一緒にいられないのか…そう思うと辛くて仕方なかったのだ。

「さあ、行こう」
辛い気持ちを振り払うように俺は言った。
車は俺が予約した高級ホテルへと向かった…

315 :雨に誓って :04/10/12 04:02

車の中は重苦しい空気だった。
俺は何も言えなかった。いや、言わなきゃいけないのはわかっていたけど。
「…兄ちゃん…ごめん。言わん方がよかったと?」
「いや…いいんだ。ごめんな」

俺は無理やりにでも明るく振舞った。
そして何とか喋って気を紛らわした。
「今日はさ、いい部屋取ったからさ、楽しみにしとけよ」
「うん…」

俺が無理やり明るくしているのをれいなも分かっているのだろう、声はやや暗い。
「大丈夫だって、な?俺気にしてないからさ」
気にしてないならそんな事言うなよ。
全くもって苦しい状況だったが、何とか俺は車内の空気を元にもどそうと必死だった。
「ホント?ならいいけど…兄ちゃんには迷惑ばっかり掛けたたい」
「いいよ…迷惑だなんて思ってないよ」
俺はそう言った。それは今となっては俺の本心だった。

「れいな…」
「ん?」
「…いや、何でもない」
「どうしたと?」
俺は何かを言おうとしてやめた。
それは後でも言える事だったからだ…
でも実際問題、もうしばらくすると目の前にいる女の子は俺の前から姿を消すのだ…

「たった数日しかいなかったのに何でなんだろう?」
自分の気持ちがまだ整理しきれていない俺は必死に頭の中で言葉を探していた。
今何を言えばいい、今何を言うべきでない…考えれば考えるほど深みにはまっていく。

「あ、あのホテルと?」
れいなの声で俺は我に返った。
目の前には俺が貯金をはたいて予約した高級ホテル。
「そうだよ」
「うわぁ…ありがとうたい」

俺とれいなの最後の夜が、もうすぐやって来る…

316 :雨に誓って :04/10/12 04:02

俺のような貧乏人が来るには場違いなホテルだと思った。
鍵を渡されて部屋に入ると物凄く綺麗な部屋だった。

「うわー広い、広いたい!」
れいなは無邪気にはしゃいでいる。
まあそりゃそうだ。四畳半二間の俺の家に比べたらよっぽどいいというものだ。

「さて…」
時計を見たらもうすぐ7時になるところだった。
「れいな…腹減ってないか?」
「え…ちょっと減っとるたい」
「じゃあ晩飯食おうぜ」

俺はれいなを天麩羅屋に連れて行った。
考えてみれば、最初の食事も天麩羅だった。
まあ、二つの間には越えられない壁があるけど。

「好きなもの頼んでいいよ」
俺がそう言うと、れいなは嬉しそうに
「じゃあ何でも食べるたい!」
と言って、天麩羅の盛り合わせを頼んだ。

「兄ちゃんは何食べると?」
「俺は…そうだな、れいなと同じものでいいや」
「それじゃダメたい!」
「どうして?」
「兄ちゃんと同じもんだったら…れいながつまみ食いできんたい!」
…おいおい、何だそれ。
ま、そこまで言うなら…そう思って俺はえびの天ぷらが三匹入った盛り合わせを頼んだ。

目の前にカレー粉と塩が置いてある。
「これ、何に使うと?」
「それは天麩羅につけて食べるんだよ」
俺が教えてやるとれいなは早速つけて食べ始めた。
とてもおいしそうだ。

「やれやれ…」
俺は心のどこかで寂しさを感じながら、夕飯を取った…きっともう二度と来れないだろう店で。
「お腹いっぱいになったたい」
「そっか、うまかったな」
「うん!」
れいなはそう言って笑った。
初めて会った時からは想像もできなかったほどのまぶしい笑顔だった。
そして…部屋に戻ると、れいながとんでもない事を言ってきた…

317 :雨に誓って :04/10/12 04:08

「兄ちゃん、風呂入る?」
「ああ、入るよ。早めに入ろうと思うし」
俺はテレビを見ながら答えた。
「一緒に入らんと?」
「…はっ?お前何言ってんだ?」

俺はれいなの言葉に耳を疑った。
少なくとも、年頃の女の子が言う言葉ではない。
「せっかくだから…」
「おいおい、そりゃいいよ。一人で入れるだろ?」
俺がそう言うと、れいなは返事をしなかった。
気になって振り向くと、れいなの姿はない。

「あれ?」
俺が立ち上がろうとしたところで、風呂場から水の音が聞こえてきた。
どうやら風呂に入ったようだ。
「なんだ…」
再びテレビを見ていると、れいながやって来た。
バスローブ姿だ。しかし、全然似合ってない。
「似合うと?似合うと?」
れいなは似合うと言って欲しくて仕方ないようだが、残念ながらお世辞にも言えない。
大体、サイズが大きすぎて手先まで隠れている。

「ああ…まあ、いいんじゃないか」
俺は適当に誉めると風呂に向かった。ふうーっ、でかい風呂だ。

318 :雨に誓って :04/10/12 04:08

「あーあ、くたびれた」
確かにれいなと一緒にいる時間は大切な時間だけど、体はさすがに疲れた。
風呂に入ってリフレッシュしなきゃ…

「兄ちゃん、まだと?」
湯船に浸かってしばらくしているとれいなの声がした。
ヤバ…ついウトウトしちゃってた。よっぽど疲れてるんだな俺。
「あ、ああもうすぐ出るよ」

そう言った俺はしばらくして風呂を出た。
そしてさっきホテルの中で買ったカクテルを飲む。
「兄ちゃん、それ何と?」
「え?酒だよ」
毎日酒を飲んでいるわけじゃないが、たまに飲むとすごく旨く感じるのは何故なんだろう?
そんなことを考えながらカクテルを飲む。れいなはそれがうらやましくて仕方ないらしい。

「うちも飲みたいっと」
「ダメ。子供の飲むもんじゃないぞ」
俺がそう言うとれいなはムキになった。
「うちも飲むっちゃ!」
そして俺の手からビンを取ると一気に飲んでしまった。
「おい!…やめとけよ」
「うわーっ、マズいたい…」
れいなはそう言って苦い顔をした。
当たり前だ、チューハイならいざ知らず、大人のカクテルだ。

「眠たくなったたい」
そう言ってれいなはベッドに寝転がった。
俺はそのままテレビを見続けていたが…
「兄ちゃん、ちょっと来て。話があるたい…」
れいなは少し顔が赤くなっていた。
俺はテレビを消してベッドに向かった。

319 :雨に誓って :04/10/12 04:08

「兄ちゃんに…話さなきゃいけない事あったたい」
「何だ?」
「うちが…家でどんな目に遭ってたか」
「嫌なら…言わなくてもいいんだぞ」

俺はそう言ったが、れいなは首を横に振った。
「話すたい。兄ちゃんには…知ってて欲しいと…」
そう話すれいなの目は真剣だった。俺も頷いた。

そして…れいなは語り始めた。
自分の父親はれいなが幼い頃に亡くなった事、
次の父親とは当初仲良くしていたが、父に連れられて来た姉と仲が悪くなるに連れて父親と仲が悪くなっていった事、
そして虐待を加えられるようになった事…

「生きているのが辛かったたい。もう死のうか、って何度も思ったたい」
そう言うとれいなはうつむいた。
俺はもう続きを話さなくてもいいと思ったが、れいなは続きを話した。
学校へ次第に行けなくなり、その結果学校でもいじめに遭った事。
居場所がなくなって絶望のあまり拒食症になった事。そして…

「これ」
そう言ってれいなが俺に見せた手首には明らかにわざとつけたと思われる切り傷があった。
「れいな…お前…」
「助けて欲しかったたい。でも…誰も味方になってくれんかったと」
俺は何も答えられなかった。
一人で戦い続けたれいなの小さな体に秘められた力に、俺は尊敬すら覚えていた。

「でもいつまで経っても何も変わらんし、もうダメかもと思って…家出したと」
「それで俺の家に…でも怖くなかったか?知らない人の家に来たんだぞ?」
「ホントの事言うと、すっごく怖かったたい…でも…兄ちゃん、優しくしてくれたたい。すっごく嬉しかったたい…」
「じゃあ、何でわざわざ戻るんだ?俺のところにずっといていいんだぞ?」

前ならお世辞だったが、今はこれが俺の本音だ。でも…
「…兄ちゃんのところにずっといたいと思った事もあったたい。
でも…世の中にうちの事をこんなに大事にしてくれる人がいてくれる…それだけで幸せたい」
「…」
「だから、また戻るたい。辛い事あってもこれからは笑って生きていけるたい!」

そう言い切ったれいなの目は潤んでいたが笑っていた。
心からの笑顔だった。
そしてれいなは俺に言った。
「兄ちゃん、最後にお願いがあるたい」
「何?」
「れいな…一生忘れない思い出が欲しいたい…」

320 :雨に誓って :04/10/12 04:09

「れいな、お前…」
れいなは何も言わず俺に抱きついた。
それを半ば驚きながら受け止める俺。
そして…二人の交わす初めてのキス。

「ん…」
しばらくして唇を離す。
今ここにあるのは二人だけの甘い時間…
「兄ちゃん、何か言ってくれんと恥ずかしいたい」
そう言いながられいなは俺のバスロープの紐を解いた。
俺の(鍛えてない)腹が露になる。

「れいな…」
れいなは俺に向かって少し視線を向けると下を向いた。
そして自分のバスロープの紐を解いた。
「兄ちゃん脱がせて。自分で脱ぐのは恥ずかしいたい…」

俺はもう何も考えられなかった。
れいなのバスロープを脱がすと、小さな乳房が現れた。
「恥ずかしいたい…ジロジロ見ないでほしいっちゃ」
小さいといっても10代半ば、それなりに発育している。
俺は片手でそっとれいなの体を抱き締め、もう片手でれいなの乳房に触れる。

「あっ…」
れいなが小さく声を漏らす。
しかしその声は決して嫌がった声ではない。
「れいな…大好きだよ」
そう言いながら俺は少しずつ頭を下げてれいなの胸に頭を持っていく。
そして、舌を出して舐めてやる。

「あっ…あっ…」
「ん?どうしたの?気持ちいい?」
「…くすぐったいと」
「そっか…じゃあこれは?」
俺はそう言いながられいなの乳首を指でいじる。
「あっ…気持ちいい…」
れいなはそう言って目を閉じた。
体重を俺に預けて、気持ち良さそうだ。

「れいな…こっちおいで…」
俺の言葉にれいなは体を俺のほうに寄せた。
俺はれいなの下半身を隠している布をそっと引き降ろした。

321 :雨に誓って :04/10/12 04:09

「あっ…恥ずかしい…」
そう言うれいなの下半身はほとんど無毛に近かった。
この年になっておかしいなとは思ったが…そんなことを訊く余裕は俺にはなかった。

その中心にある花芯に俺はそっと指を近づけた。
そして指をそっと侵入させる。
「ああっ…」
れいなの声が少し大きくなる。
俺はある事に気づいた。

「れいな…初めてじゃないのか?」
中の抵抗は思いのほか少なかった。
初めてじゃないのか…じゃあ相手は…まさか?
そう思うと俺は何だか辛くなってきた…それに気がついたのかれいなが言った。
「初めては…もう取られたたい。ホントは好きな人がよかとだけど…」

俺はそれですべてを悟った。
なら、尚更れいなを幸せにしてやりたい…
「大丈夫だよ。俺に任せて…」
「うん…兄ちゃんとなら怖くないよ…」
れいなはそう言って、俺に微笑んだ…そしてれいなは俺のそのものを口に含んだ。

「これやると、みんな気持ちいいって言うけんね…」
そう言ってれいなの清らかな口内は俺のものを包んでいく…俺が長時間耐えられる訳はなかった。
「ああ…もうダメだ…」
そして白いものが、れいなの口内に溢れていった…れいなはそれを嫌な顔もせずに飲み込んでくれた…

322 :雨に誓って :04/10/12 04:09

「れいな、ごめんな…苦かったろう」
「いい。兄ちゃんが気持ちよくなってくれたんなら…それでいいたい」
「…」

もう迷う事はない。
れいなの花芯も大洪水になっている。
「れいな、行くよ?」
「…いいよ」

………

俺はれいなを全力で愛した。
れいなも幼い体で快感の波を受け止めた…そして俺たちは朝になるまで愛し合った。
何度か分からないくらい絶頂を迎えながら。


朝になった。
愛し合った後の気だるさにさいなまれ、目を覚ますとれいなはまだ眠っていた。
「もう終わりなのか…」
俺はれいなと過ごした一週間がとても長く感じられたり短く感じられたり…訳のわかんない気持ちだった。

「ああ…もう朝と?」
れいなが目を覚ましたようだ。
今気がついたが、外は昨日と打って変わって雨だ。

「もう9時だね…」
そろそろチェックアウトしなければいけない時間だ。
夢の終わりは、いつもあっけない。
「そろそろ行かなきゃ」
「うん…じゃあ着替えると。恥ずかしいから兄ちゃん向こう行って欲しいたい」

れいなにそう言われ、俺は風呂場で着替えた。
戻ってくると、着替え終わったれいながいた。
「行こうか…」
「うん…」
部屋の鍵を返した時、俺は何故かとても悲しい気持ちになった…

323 :雨に誓って :04/10/12 04:10

俺はれいなと共に一旦自宅へ戻った。
外はまだ雨だ。
「もう帰らんといけんたい」
家出しといてその台詞はないだろうと思ったが、俺は何も言えなかった。

「家どこだ?そこまで送ってやるよ」
「悪いからいいたい」
「いいよ、どうせ車返さなきゃいけないし」
「なら…お願いするっちゃ」
そう言ってれいなは笑った。

車に乗って再び俺たちは走り出した。
きっと…最後のドライブ。
「あ、あの角を曲がったところたい!」
「…」
「ここでいいたい」

車は公園の前で止まった。
この近くにれいなの家があるらしい。
「じゃあ、家に帰ると…」
「なあ、れいな。最後に教えてくれ。どうして…わざわざ危ないところへ…」
「うちは一人じゃないって…分かったから。兄ちゃんに優しくしてもらって…分かったから…」
そう答えるれいなの目は涙でいっぱいだった。

「分かった。じゃあ、またな。何かあったら、いつでも帰って来い」
「ありがとう…これ」
そこにはれいなの携帯の番号とアドレスが書いてあった。
「…ありがとう」
俺はそう答えるとれいなをもう一度抱き締め、キスをした。

「さよなら…」
俺は一度クラクションを鳴らすと車を走らせた。
れいなは俺の車が見えなくなるまで手を振ってくれた。
帰り道、俺は一人、涙が止まらなかった…

324 :雨に誓って :04/10/12 04:10

翌日からまた、れいなのいない日々が始まった。
ただ元の暮らしに戻っただけなのにこんなに悲しいのは何故なんだろう…

しばらくはれいなとのやり取りもあった。
だがそれもだんだん減っていき、いつしか途絶えてしまった。
そして季節は変わり、年月は過ぎていった。
俺は大学を卒業し、地元に帰った。

さらにそこから時は過ぎ、俺はれいなの事を忘れかけていた。
そんなある日、何気なくテレビを見ていた俺は驚いた。

そこに映し出されていた一人のアイドル。
顔は多少大人っぽくなったが、そこにいたのは紛れもなく…
「れいな!!」

あの日、俺の元にやって来た女の子であった。
彼女は「田中れいな」と名前を変えて、新人アイドルになっていた。
テレビで見せるれいなの笑顔はあの日、俺に見せてくれた笑顔と一緒だった。

「れいな…」
芸能界の世界に飛び込んだれいなと、田舎で平凡な毎日を選んだ俺。
その間にはもう、飛び越えられないほどの壁ができていた。

翌日、俺は本屋に向かった。
本屋に並ぶ雑誌の中に、れいなが表紙になっているものを見つけた。
それを買って帰る。
家に帰って読むと、れいなのインタビューが載っていた。
その中の一文。

「私が前すっごく落ち込んでたときあって、その時家出しちゃったんですね(笑)。
で、その時すごい雨だったんですけど、その時私にすごい優しくしてくれた人がいて…あの時の事は今となってはいい思い出ですね (笑)

明らかに、俺の事だった。
俺の事を覚えてくれていたれいなは、今や俺とは違う世界にいる…俺は複雑な気持ちになった。

外はこの日も、雨が降り続いていた…

(雨に誓って 〜SAINT RAIN〜 完)

(´ -`*从<モドル