「おかえり」
- 27 :名無し募集中。。。 :04/04/10 00:11
- 出会いは近所の公園だった。
「にゃあ」
・・・子猫だ。
首輪は無い。捨て?野良?
「にゃあ」
コイツなんで足元にすりついてくるんだ?
「ごめんな。アパートだからつれてけないんだよ。」
「・・・にゃあ〜ん」
・・・そんな声で鳴くなよ。可愛いじゃないか。
- 28 :名無し募集中。。。 :04/04/10 00:11
- 「おかえり〜!」
「あ、た、ただいま。」
妹の愛の声だ。夕飯の仕度でもしているのか、キッチンからいい匂いが漂っている。
「にゃっ!」
「あ!ばかっ!」
トコトコ・・・
「きゃあっ!なんか足舐めよった!」
ガチャーン!!
・・・遅かったか。
- 29 :名無し募集中。。。 :04/04/10 00:12
- 「説明してもらいましょう」
えー・・・子猫です。それよりなんで正座なんでしょう。
「わかってるよ!何で拾ってきたのって聞いてるんやよ!」
いや、だって、ねぇ?
かわいいでしょ?
「そりゃわかるけど・・・ここはペット禁止でしょ?どうするのよ?」
どうしようか?
「こっちが聞いてるの!」
「・・・にゃあ」
ナイス!そのまま愛を見つめてろよ!
「・・・」
な?かわいいだろ?これは連れてきちゃうよね?
「・・・もぉ、仕方ないわね。だれか飼い主が見つかるまでだからね?」
・・・ありがと。さすが我が妹。
- 33 :15 :04/04/10 00:47
- 「じゃあ名前決めなきゃね♪うーんなんにしよっかな〜」
・・・結構ノリノリじゃないですか。
「たま?みけ?みぃ?うーんありきたりだなぁ。」
愛に任せるよ。
しゃがんで子猫を見つめる妹と正座の俺。
・・・そろそろ足崩していいかな?
「ダメ。うーん・・・エリザベス?ミキティ?違うなぁ」
「・・・れいな。」
!!
れ、れいな・・・って!
「・・・れいなみたいに可愛いから・・・ダメかな?」
- 36 :もういいや15でつ :04/04/10 01:05
- 「あの子が帰ってきたみたいな気がして・・・」
・・・でも・・・いいのか?
俺は正座のままギュッとこぶしを握る。
「うん・・・。うんっ!いいの!この子はれいな!」
「にゃーん」
「ほら、返事したよ?いいでしょ?」
・・・いいよ。愛が決めたんだから。
「よぉし!君は今日かられいなです!そうと決まればゴハンゴハン!おなか空いちゃった〜ミルクあったかな?」
パタパタ・・・
れいな・・・
子猫を抱き上げて台所に走っていく愛の背中を見つめつぶやく。
- 39 :もういいや15でつ :04/04/10 01:59
- 「ゴロゴロ・・・」
ミルクでお腹一杯になったれいなが俺の膝の上でのどを鳴らす。
「片付け終わったやよ〜」
お疲れ。れいなもおなかいっぱいみたいだよ。
「ホントだ。おなか空いてたんだね〜。よちよち♪」
「ゴロゴロ♪」
- 41 :もういいや15でつ :04/04/10 02:13
- 「れいな」は愛の双子の妹の名前。
気まぐれで、甘えんぼで、寂しがり屋で・・・
・・・でも、もう二度と会うことのできない、俺たちの妹の名前。
「おにいちゃん?」
あ、な、何?
「何ボーっとしてるの?」
いや、ちょっと・・・れいなのことを思い出してたんだ。
「・・・」
・・・
「・・・もう5年になるんだね。」
れいなのノドをなでながら愛が呟いた。
- 42 :もういいや15でつ :04/04/10 02:47
- 5年・・・かぁ。
5年前、夏風邪をこじらせた愛と看病していた俺を残して、れいなは逝ってしまった。
『ゴハン食べられないときは果物たいっ!買ってくるけんね!』
と言って出て行ったまま、居眠り運転の車に・・・
「ほんとにれいなが帰ってきたのかもね。」
愛の目に涙がにじんでいる。
「にゃーん・・・」
ほら、れいなが心配してるよ。元気出せって。
「・・・うん。ごめんなさい。・・・あ、お風呂用意してくるね!今日はれいなと一緒に入ろっと♪」
パタパタ・・・
・・・帰ってきてくれたのかな・・・
「おかえり・・・」
俺は膝の上で眠るれいなを見つめて呟いた。
- 44 :もういいや15でつ :04/04/10 03:18
- 「こら!あばれないの!キレイキレイしますからね〜♪」
楽しげな声が風呂場から聞こえてくる。
れいながいるだけでずいぶんにぎやかになった気がするから不思議なものだ。
「はいおしまい・・・ってコラ!まだダメ!待ってってば!」
バタンッ!
!?
「きゃあああああ!!えっちいいいい!!!!」
ばちぃぃぃん!!!
「・・・ごめんね。」
・・・なんで勝手に裸で飛び出してきておいて、俺がひっぱたかれなきゃならんのだ?
「だって・・・ねぇ?れいなが濡れたまま出ようとしたから・・・ごめんね?」
(まぁいいもの見れたからいいけどさ・・・)
「?なんか言った?」
!いや?なんでもないよ。さーて俺も風呂入ろうかなっと・・・
- 45 :もういいや15でつ :04/04/10 03:35
-
川o・-・)ノ
コンコン
「・・・お兄ちゃん、起きてる?」
・・・なんだ?
起きてるよ。こんな夜中にどうした?
「・・・いっしょに寝てもいい?」
!?
「れいなが帰ってきてくれたから・・・久しぶりに兄妹みんなで寝たいなって・・・ダメ?」
いいよ。おいで。
・・・だからそんな泣きそうな声出すんじゃないよ。
「・・・ありがと」
- 46 :もういいや15でつ :04/04/10 03:47
- 愛は枕元にれいなをそっと寝かせて布団にもぐりこんできた。
「おにーちゃん臭い布団だね。」
・・・うるさいな。この年になるとノネナールだって出るんだよ。
「・・・でも安心する。」
・・・
この5年間、愛はずっと自分を責めてきたんだろう。
自分が風邪を引かなければ・・・
果物が食べたいなんて言わなければ・・・
一生懸命気丈に振舞っているが、その心の中は癒されることのない大きな傷を負っていたんだろう。
愛は布団を頭からかぶり、小さな声で泣き出した。
その涙は、泣きつかれて眠ってしまうまで止まることは無かった。
- 49 :名無し募集中。。。 :04/04/10 04:17
- 『・・・ちゃん。・・・おにいちゃん。』
?
『おにいちゃん。久しぶりたい。』
!?れいな!?
ゆ、夢か?夢だよな?うん。
昨日の夜は愛と猫のれいなといっしょに寝て・・・
泣いてる愛の頭を撫でながら・・・そのまま寝たんだよな。うん。これは夢だ。夢だよ。
『うん。夢たい。』
・・・混乱しまくりだ。夢に出てきた妹が『夢だ』って。
『拾ってくれてありがとう。』
・・・少し落ち着いてきた。やっぱりあの子猫はお前だったのか?
『おにいちゃんは気づかんかったと?愛はすぐにわかったとよ。』
まさかそんなことがあるなんて思わないからな。さすが双子の絆だよ。
- 50 :名無し募集中。。。 :04/04/10 05:00
- 『もぉおにいちゃんは薄情たい。』
・・・ごめんな。
『まぁ許してあげる。その代わりお願いがあるんだ。愛を・・・愛を頼むたい。』
・・・ん。
『あの日スーパーからの帰り道、近所の神社にお守りを買いに行ったんだ。愛は昔からあんまり体が丈夫じゃなかったでしょ?』
『その帰りに道路に飛び出しちゃったのは、あたしがおっちょこちょいだから。愛が気にすることじゃない。』
『あの子のことだから、絶対に自分を責めてると思うんだ。でもそれじゃダメ。あたしの分まで笑って生きてくれなきゃね。』
『そのためにお兄ちゃんがそばにいて守ってあげて欲しい。』
『・・・時間が来ちゃった。この可愛い鈴付きのお守り置いていくったい。猫のれいなを大事にするんだぞっ。』
・・・れいな!どこいくんだよ!戻ってこいよれいなっ!!・・・
- 51 :だから15ですってば :04/04/10 05:04
- ・・・っ!!
俺は布団を蹴飛ばして飛び起きた。
・・・?布団?隣に愛も寝てるし、枕元には猫のれいなもいる。
・・・なんだ夢か・・・。それにしてもリアルかつシュールな夢だったなぁ・・・
「にゃぁ・・・」
ん?ごめんごめん。れいな起こしちゃったかな・・・
ちりん・・・
!!
こ、これは・・・お守り?なんでれいなの首に?首輪だってつけてなかったのに・・・
・・・そうか。やっぱりお前だったんだな。
わかったよ。
愛の心の傷は簡単には埋まらないかもしれない。
でも、いつかきっとれいなの分まで・・・心から笑える日が来るまで・・・俺が守っていく。
この「お守り」に誓うよ。
・・・でも「学業成就」は意味が違うよれいな・・・。
完
./\__,ヘ,
| ノノハヾヽ
从*´ ヮ`)<モドルにゃー