LOVESONG
428 :LOVESONG :04/09/10 00:27
〜 プロローグ 〜

ミーンミンミンミンミーンミーンミーンミンミンミーンミーンミーン…

あちぃ…

今年の夏は本当に暑い。
タバコをくわえ、エアコンの無い6畳のアパートでひっくり返って天井を見つめる。

何もすることの無い午後。
久しぶりに聴く懐かしいCDをBGMにして、丸めた布団に体を預ける。



こんな暑い日はあの頃を思い出す。

まだ青い自分だった頃の思い出を…


ミーンミンミンミンミーンミーンミーンミンミンミーンミーンミーン…

430 :LOVESONG :04/09/10 00:28
〜 出会い 〜

ミーンミンミンミンミーンミーンミーンミンミンミーンミーンミーン…

「あ〜!新しいアルバムったい!○○くんもこのバンド好いとーと!?」

? …あ、うん。…えーっと…田中…だっけ?なに?
「れいなでよかよw れいなもこのバンド好きったい!どの曲が好き?れいなはねぇ…」

??? 何だこのテンションの高い転校生は?
イキナリ人の机の上のCD取り上げて一人で盛り上がってるよ。
確かに転校初日の自己紹介からやたらとテンション高かったもんなぁ…

「聞いてると?○○くんはどの曲が好き?」
え?あ、あぁ。このアルバムなら最後の曲かな。バラードの…

「にゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!」

!? な、なに!?
「れいなもその曲好きぃぃぃぃ!いいよねぇ!泣かすよねぇ!!にゃあぁぁぁぁぁぁぁん!!」
!? へ…へんなやつ…

431 :LOVESONG :04/09/10 00:29
ミーンミンミンミンミーンミーンミーンミンミンミーンミーンミーン…

今日もあっちぃなぁ…

…ってなんでついてくんの?
「ん?」
…授業も終わったし。今日は部活無いからもう帰るぜ?
「なんでって…○○くん聞いとらんの?」
なにが?
「れいなと○○くんは昨日からお隣さんになったとよ。」

はぁ!?

「なーんだ。聞いとらんのかぁ〜。じゃあ…」

トコトコ。
田中は二、三歩前に出て、くるんと振り向いた。

「昨日○○くんのマンションの隣に引っ越してきた田中れいなです!よろしくっ!!」
そう言って敬礼するみたいに手をおでこにかざす。

…あ、よ、よろしくオネガイシマス…。

512 :LOVESONG :04/09/11 00:16

た ・ な ・ か ・ れ ・ い ・ な …かぁ。

自分の部屋でお気に入りのCDをかけながら、覚えたてのタバコに火をつける。


顔は結構かわいかったよなぁ…

ちょっと訛ってるのもいい感じだし…

背はちょっと小さめで…

内臓入ってんのか?ってくらい細くて…

…胸は無かったけどw

513 :LOVESONG :04/09/11 00:17

「あー!!タバコ吸ってるぅ!いけないんだぁ!!」
!! …びっ…くりしたぁ。田中かぁ…

…ってオマエどこから入ってきてんだよ!?
「にひひw 窓からったい。○○くんの部屋とれいなの部屋はベランダでつながってるとよ。」
へぇ?そうなの?
「○○くん家のおばさんとれいなのお母さんがイキナリ仲良しになったみたいで、今遊びに来てるったい。」
それでうちの夕飯が何にもできてないのか…頼むよかあちゃん…。
「で、おばさんが『この間取りなら、れいなちゃんの部屋とうちのバカの部屋は隣同士になってるわね』だってw」
…ったく、ベラベラといらんことを…

514 :LOVESONG :04/09/11 00:18

「ふーん。なんか男の子って感じの部屋ばい。」

なんだそりゃw そりゃそうだろ男の部屋なんだから。
おれはなんとなくドキドキしながらタバコをもみ消す。

「タバコはやめたほうがよかよ。体に毒ったい。 …あ、この曲…」
? あ、あぁ。昼間田中が興奮しながら語ってくれた曲だな。

「…いい曲。聴いてってよかと?」
え? う、うん。あ、これ、クッション。

「ありがと…グシ…」

ええええ!?ななななんで泣いてんだよ!?

「わからん…グシ…この曲聴くと涙が止まらんとよ…グシ」

えええええええええ!?  あ、あ、と、とりあえず、ティッシュ…使う?

「グシ…ありがと…ふ…ふにゃあぁぁぁぁぁぁん!」

号泣かよっ!   あぁ…わけわかんねぇ…

515 :LOVESONG :04/09/11 00:18

それかられいなは毎晩のようにオレの部屋に遊びに来るようになった。
オレのお気に入りのクッションはれいな専用になり、
二人でCDを聴いたりDVDを見たりしながらバカ話をするのが日課になった。

「きゃははは!おもしろーい!!」
「グシ…かわいそう…ヒック…グシ」
「いい曲ったい…」
クルクル変わるれいなの表情を見てるだけで幸せな気分になる。

そう、オレにとっての「初恋」だった。

606 :LOVESONG :04/09/12 00:46

〜 初恋 〜

「アリガトウゴザイマシター」
…買っちゃった。
月々の小遣いを切り詰めて、昨日の夜からずっと並んで、人気のあのバンドのライブチケット。
もちろん…2枚。
あいつ、喜んでくれるかな…

607 :LOVESONG :04/09/12 00:46

ガラガラ…
「こんばんわーw」
お、おう。
「?○○どうしたと?なんかヘンったい。
いっつもなら『窓から入ってくんなって何度言ったらわかんだよー』とか言うくせに。」
そ、そんなことねぇよ。あ、む、麦茶持ってくる…
「変なの?」

608 :LOVESONG :04/09/12 00:47

『れいな…これ。』
『あぁ!ライブのチケットじゃない!いいの?』
『一緒に行ってくれるかい?』
『ありがとう○○!実は私前から○○のこと…』
『おぉっと、そこからはオレに言わせてくれ。愛してるぜ。』
『○○…お礼に私をア・ゲ・ル♥』

…なんて…なんてなっ!でへへへへへ♥

ゴ、ゴホン…えー、さて麦茶とチケット用意して…え?

な、無い!?チケットが無いぃぃぃ!!

…ヤバイぞ。思い出せ。いいか、落ち着いて思い出せよオレ。
まず帰ってきて、バッグから出して、机に向かって座って、チケット見ながらニヤニヤして、ポケットに入れて…

ナイ!!

入れてないぞ!ポケットに入れてないじゃないかオレ!
ってことは…

609 :LOVESONG :04/09/12 00:48

ま、ま、まさか…机の上に出しっぱなし!?
やややややややばい!!!!

どだどだどだどだ!バタンッ!!


ヒラヒラ…
「にひw 何これ。2枚あるけど?」

あぁぁぁ…

「一緒にいってあげてもよかよ?ちょうどその日は暇やき。にひひw」

あぁぁぁぁぁぁぁ…

「ん?んん?」

お、オネガイシマス…

670 :LOVESONG :04/09/12 22:03

…ザワザワザワ…
…ホンジツノコウエンハシュウリョウイタシマシタ…
…ザワザワザワ…

「あー楽しかったばーい!!」
そうだな!ライブ初めてだったけど…また来たいな!
「そうやね。また連れてきてね!約束ばい!」
う、うん。了解。 …小遣い貯めなきゃな…

…ザワザワザワ…
…ホンジツノコウエンハシュウリョウイタシマシタ…
…ザワザワザワ…

671 :LOVESONG :04/09/12 22:04

さて、帰ろう…あれ?れいなは?

「…○…○○〜ドコ〜?」

ありゃ。迷子になってるよw おーい!こっち!!

「あ、スイマセン、スイマセン…はぁっ、やっと追いついたばい。」
人多いからな…しかたない。迷子にならないためだからな?
「え?」

ぎゅ

「えええ!?手…」
ばぁか。こうしないとまた迷子になるだろ?行くぞ。
「○○…うん!」

672 :LOVESONG :04/09/12 22:05

初めてのデート…なのかな?
イキナリ手つないじゃったけど、れいなの顔…見れねぇ!だいいち今オレの顔真っ赤だよ!自分でわかるくらいだよ!
恥ずかしいぃぃぃぃ!


「○○?」

ん?

「あのー…手、痛かよ。もうそんなに人もいないけん引っ張らんでもよかばいw」
あ!ご、ごめん!!
「にひひw 緊張しとったと?」
う…そ、そんなことねzxcvbんm、
「カミカミばいw …でもホントにありがと。楽しかったばい。」

よかったぁ、おれはれいなが楽しんでくれたのが一番嬉しいよ。

「そ、そんな事言ったら…照れると。」

673 :LOVESONG :04/09/12 22:06

…。

「…。」

オレはつないでいた手を離しれいなと向かい合った。
ここで言わなきゃ…オレから言わなきゃ…


…あの、さ。おれ、れいなのこと…好き…みたいだ。

「…遅か。ずっと待っとったとよ。」


ぎゅ


れいなに抱きつかれる。
オレも震える手で抱きしめる。

674 :LOVESONG :04/09/12 22:06

…人が見てたってかまうもんか…


ゆっくりと顔を近づけていく。
オレの顔を見上げたれいなもゆっくりと目を閉じる。

コツン

「痛…」
あ、ゴ、ゴメン…歯が当たっちゃった…だ、大丈夫?
「あ、へ、平気ったい。 …ぷっ」

「にひひw○○変な顔になっとるよ。緊張しすぎばいw」
あ、ま、マジ? で、でもれいなだってあせって歯ぶつけてるじゃんw

ぷっ あ…あははw


思わず二人顔を見合わせて笑った。
ひとしきり笑った後…もう一度KISSした。


「今度は上手くいったばいw」

…ばぁか。

757 :LOVESONG :04/09/14 00:16

〜 プレゼント 〜


「最近バイトばっかでつまらんばい!」
まぁそう言うなよ…オレだっていろいろあんだから。
「全然遊んでくれんもん!」

れいなはすっかり自分の物になったクッションをポスポス叩く。

でももう大丈夫。昨日バイト代出て欲しい物買ったし、これからはそんなにバイト入れないから、さ。
「ん?ナニナニ?何買ったと?見せて〜!」
ちょっと待ってな…。

ほらこれ。れいなに。

「…え?れいなに…ってそのためにバイトしてたと?」

まぁその他にもデート代だってかかるしさ、いいから見てみ?

758 :LOVESONG :04/09/14 00:17

ガサガサ…
「あぁ!!これ…」

あの時のライブDVD。覚えてるか?

「当たり前ったい!!嬉しかぁ…ありがとー!!ねぇ見よ!これ見よ!」
今?
「うん!だってれいなDVDプレーヤー持っとらんもん。」
え!?…マジで?
「w見たいときには○○の部屋で見ればよかろ?いつでも見れるったい。」
…ゴメン。
「よかよかw気にせんで早く見るったい!」

759 :LOVESONG :04/09/14 00:17
〜♪
「思い出す〜! あっ!!今の『キャー』はれいなばい!」
違うだろw何千人お客さんがいると思ってんだ?
「ううん、絶対れいなったい!っあぁ!今○○写ったぁ!きゃあぁぁぁ!!」
…喜んでくれたみたい…だなw

〜♪
あのときのライブの思い出が鮮明によみがえる。
そしておれたちの初めてのKISSのことも…

〜♪
DVDも後半に差し掛かる。
流れているのはれいなの大好きなバラード。
今のオレのれいなへの想いと重なって、深く心に染み込んでくる。

「何回聴いてもいい曲ったい…」
れいな前からこの曲好きだもんな。
覚えてるか?初めて教室でれいなが話しかけて…
「…○○。」

ん?

「…ありがと。」

唇に柔らかい感触が当たる。

「もう歯は当たらんようになったねw」
…ばぁか。

814 :LOVESONG :04/09/14 23:09

テレビにエンドロールが流れている。


れいな…
ベッドに腰掛けているれいなをそっと抱き寄せる。
「○○…」
れいなもオレの背中に手を回す。


「…いいよ。…れいなの…初めて…○○にあげるったい…」


れいな…!



オレの腕の中に生まれたままの姿のれいながいる。

真っ白な首筋。
膨らみかけた胸。
力を入れると折れそうな腰。
…そしてまだ未発達なれいな自身。

全身にやさしく、大切にくちづけていく。

815 :LOVESONG :04/09/14 23:10

「○○…グシ…」
…あ、れ、れいな…泣いてるのか?
「…ううん。そうじゃないったい。○○と一緒になれるのが嬉しくて…」
…ありがとう。オレもれいなと会えてよかった…


いくよ…

「うん…」

「…痛!」

あ…だ、大丈夫…?

「うん…平気…好きにして…いいよ…」


れいな…!

「○○…!」

816 :LOVESONG :04/09/14 23:11

〜 夢 〜


それからオレたちはずっと一緒だった。

夏の暑い日は学校をサボって海に遊びに行った。
冬の寒い日は布団に包まってじゃれあった。

これからもずっと一緒にいられると思っていた。


…でも、別れの日は突然やってきた。

908 :LOVESONG :04/09/16 01:17

一通の青い封書。
『モーニングッ子。6期オーディション合格通知』


れいながオーディションを受けているのはもちろん知っていた。
れいなの夢だから本気で応援しようと思っていた。

でも、そこに待っていたのは、栄光への未来と残酷な別れだった…。


行ってこいよ。
「…でも…」
夢だったんだろ?
「そうだけど…」
だったら行ってこいよ。
「でも…でも○○と別れるなんて…」


そんなことはドラマの中でしかないと思っていたこと。
封筒の中の一文…

『…なお、様々なメディアが芸能人を狙っております。現在お付き合いをされている方がいらっしゃる場合は…』

910 :LOVESONG :04/09/16 01:18

「そんなことなら…オーディションなんて受けなかったらよかったとよ!」
バカな事言うな!!
「○○…」
れいなの…本当の夢だったんだろ?
オレはれいなを心から愛してる。
幸せになって欲しい。

だから…だから、な?

「…。」

日本中…世界中にお前の歌を聴かせてやれって。
で、おれは50年後くらいにテレビの前で孫に自慢するんだ。
『この人は昔おじいちゃんと付き合ってたんだぞ』ってなw

「○○…ゴメン…。」

911 :LOVESONG :04/09/16 01:19

謝るなよ。
…な?オレはれいなのファン第1号として、ずっと、応援してるから。

「…うん。わかった…わかったばい!れいな頑張る!ビッグになるったい!」

おう!頼んだぞ!オレの孫のためにも、な?w




それからほんの数週間後、れいなはブラウン管の向こう側にいた。

でも、ファン第1号のはずのオレはどうしてもテレビを見ることができなかった。

912 :LOVESONG :04/09/16 01:20

〜 エピローグ 〜


カナカナカナカナ…

…ん…少し眠ってしまっていたようだ。
さっきまでかかっていたCDも最後の曲を終え、静まり返った部屋に、開けっ放しだった窓から涼しい風が入ってくる。
腹減った…メシどうするかな…。


バタン!


「美貴様とおちゃーく!…って暑ーい!!今日も一日寝てたの?」

…休みは休むためにあるんだからいいじゃん…。

「あんたの理屈っぽいとこキライ。どうせゴハンも食べてないでしょ?買ってきたから食べよ!」

お、助かった。ありがたくいただきまーす。

913 :LOVESONG :04/09/16 01:21

〜♪
「あ、またこのCD聴いてたの?○○この曲好きだよねぇ」

まぁ…ね。青春の1ページってヤツだな。

〜♪
あ、そうだ。

「なに?」

〜♪
結婚しないか?

「!! えぇええっ!!な、何言ってんのイキナリ!?ばばばばばかじゃないの!?」


〜♪
いや、マジで。
〜♪
おれたちだったら…かわいい孫ができると思うんだ。

914 :LOVESONG :04/09/16 01:21


LOVESONG


〜 了 〜



从*Tヮ⊂)<モドル