ケータイ
405 :ケータイ :04/12/28 05:01

あぁ〜今日も何も無かったな・・・」
ため息と共に漏れる言葉
そしていつもの様に一人で歩く東京の街
特に目的地も無くただただ歩くだけ

「ホンっトにヒマだな・・・
何か良い事でもないものか?」
そう言いながら交差点を歩いていると一人の女の子ぶつかった
ドンッという音と共にその女の子が小さな「キャ!」という悲鳴をあげる

「あっ、すいません」
条件反射か俺は謝っていた
「ちょっとどこ見て歩いてると?
ちゃんと周り見てもらわんと困るっちゃね!」
その女の子はそう言うと足早に去って行った

「何なんだよったく俺がなにした?
それよりあの喋り方どっかで聞いた事あるような・・・」
意識は怒られた事よりその喋り方の方に行っていた

406 :ケータイ :04/12/28 05:26

コツっと足に何かが当たる感触がした
どうやら道の上に落ちたケータイが当たったようだった
とりあえずケータイを拾った
落とした奴に目星はついてたが相当足早に去ってった為居ないのはもう判っていた

「そうだ!
中見〜ちゃおっと」
理不尽に怒られた腹いせにケータイを見てやった
カチカチと見ていると俺の脳に一つの憶測が沸いてきた
このケータイの持ち主が我が憧れのマドンナ田中れいな嬢であるという

「おいおいどうすんだよ!
芸能人しかも憧れの人のケータイ拾っちゃったよ!」
そう小声で言い一人ではしゃいで居た
周りから見れば完璧オカシイ奴だろうが知ったこっちゃなかった
一人ハイテンション状態になってた時に・・・

「ピッピピピピーピピピピピピーピピピピッピッピッピピー♪」
と着信音が鳴った
ビクッっとして一瞬ケータイを落としそうになったがなんとか持ち直し着信音を消した
どうやらメールらしいな
宛名は・・・「さゆ」?
さゆだと?
オイ母ちゃん赤飯炊いて来い!
俺の心では相当な祭りが起こってた
なんせ本物のアイドルのケータイを拾っちまったのだから

432 :ケータイ :04/12/29 04:21

「ピッピッピピピッピピーピーピ♪」
公衆電話から通話があった
どうやらやっと、我がマドンナは、ケータイを落とした事に気付いたらしい
とりあえず、通話ボタンを押し出てみる

「もしもし、このケータイ落とした方ですか?」
「あっ、出た!
ハイそうです。今どこらへんに居ますか?」
「貴方がケータイを落とした、交差点に居ますよ」
「じゃあ、取りに行くんで、そこ動かないで下さい」
「ハイ、判りました」
「じゃ、お願いします」

こういった会話をした後、通話を切った
やはり、俺のハイテンション状態は収まる気配は無く、逆に拍車がかかっていた
標準語ではあったが、本物の田中れいなと会話をしたのだから
こんな事を思っている時、俺の心に住む悪魔が、語りかけてきたがった

433 :ケータイ :04/12/29 04:33

『メアドと番号、登録しちゃえよ』
またとんでもない事を、言い出してきやがった
自分のケータイ、れいなのケータイ
それぞれを開き、二つのケータイとにらめっこをしていた

「いや、こればっかりは犯罪だ。
それに、こんな事人間のする事じゃない!」
そう自己催眠をかけ、ケータイを二つ共閉じた
自分のケータイをポケットにしまい、その代わりに財布を出した

「まさか、コレを使う時が来るとは・・・」
そう言い、財布の中から一枚の小さな紙を取り出した
細長い紙
それを、れいなのケータイの中に入れた

「これできっと・・・グヘヘ・・・」
俺は、相当不気味な笑いを浮かべた
その笑いをなんとか止め、れいなの到着を待つ事にした
ほどなく、小走りでれいなは俺の前に現れた

434 :ケータイ :04/12/29 05:12

「すいません!
待ちましたか?って、あっ!」
れいなは、俺を見た瞬間、相当驚いた表情を浮かべた
なんせ数分前に肩をぶつけた奴が、自分のケータイを持っているのだ
驚くのも無理は無い

「アンタがなんで、れいなのケータイ持っとると!?」
「そりゃ、ケータイ拾ったからですよ」
「アンタ・・・れいなのケータイ番号知るためにぶつかったと?
許さんたい!」
オイオイ、いきなり何を言いだすんだ
しかも大声で

「いきなり何だよ?
俺はアンタのケータイ拾ってあげたのよ
言わば、恩人よ!」
「絶っっっ対、嘘っちゃね!
見え見えばい」
「あぁ〜もう!
なんとでも言いなされ!
とりあえず、ケータイ」
俺はそう言って、ケータイを差し出した
すると、プロボクサーのジャブ並の速さで、れいなはケータイを奪い取った

435 :ケータイ :04/12/29 05:12

「アンタ・・・何も見てない?」
そんな、あからさまに疑ってる目で見るなよ!
「安心しろ、何も見てないから」
まぁ嘘なんだが・・・
「まぁ・・・ケータイはありがと・・・・・
でも、ほんっとに何も見てないっちゃね?
見てたら、絶対許さんけんね・・・」
意外に素直なんだな、ちゃんと礼も言ってるし、関心関心♪
でも、最後の目は恐ろしいが・・・

れいなはそう言うと、また足早に去って行った
帽子のせいで顔はよく見えなかったが、肌は白くて、とても綺麗だった
それより、俺が入れたアノ紙に、気付いてくれるのか?
神よ!我の願いを叶えてくれっ!

453 :ケータイ :04/12/30 04:46

「はぁ〜・・・
やはり着てないか・・・」
落胆と共に、ケータイを閉じる
俺が、れいなのケータイの中に、入れた紙は俺のアドレスを書いた紙
今頃は、ゴミ箱の中か道端に落ちてるだろうさ

「やっぱり、無理な事だったのだろうか・・・」
そう言い、時計を見る
現在時刻は、9時
あのケータイを渡してから、もう5時間は経っただろうか
流石にケータイは、開けてるだろう
やはり、存在を知って、捨てたのか?
時間だけが空しく、進んでく気がした

「はぁ〜・・・
また、センター問い合わせてるし・・・」
もう今まで何回、問い合わせただろう
すっかり、癖になっていた

「来てるはず無いのに・・・
一通来てるぞ!?」
自然とテンションは、上がって行った
そして、中を見てみると・・・

454 :ケータイ :04/12/30 05:07

『イェ〜イ!
元気にしてるか?』
シンちゃんかよっ!
ああ、期待したさ!
でも、神よこんな裏切り方は、あんまりじゃないか!?
シンちゃんて・・・orz
シンちゃんとは、俺の史上最大のダチである

「こんなオチは無いよ・・・」
返信など、せずにケータイを閉じる
やはり、無理な話だったのか?
俺は、また落胆した

「ピッピピーピピピピーピッピピピッピッピピー♪」
部屋中に、俺のケータイの着信音が鳴り響く
「また、シンちゃんか!」
俺は、半分怒りながら、ケータイを開いた
すると、意外な文が目に入った

『アンタもしかして、れいなのケータイ拾った人?
ケータイの中にアドレス入れるなんて、かぁ〜!ウザイ人っちゃね!!』
キ、キ、キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!
俺は、凄まじい速さでメールを返した

『メール送ってくれるなんて、アンタ良い人だぁ〜!
ウザイだの、なんだのかんだの言われ様とも、俺はアンタを応援するよ!』
返信をし、すかさず登録を済ました
あぁ〜神よ、俺はアンタを疑ってしまったよ
どうか、許してくれ!アンタは偉大だ!
神への懺悔を済ませた後、れいなからの返信を待つ事にした

455 :ケータイ :04/12/30 05:35

何回かメールをしていく内に、れいなと意気投合した
今ではすっかり、普通にメールをしあう仲になった
すると、ある日れいなからメールがあった

『ねぇ、今度会えない?
一緒に行きたい所が、あるんやけど・・・』
ん?
もしや、これはデートの誘いというヤツで、ございましょうか?
すかさず俺は、OKメールを送った

456 :ケータイ :04/12/30 05:35

『良いですよ、良いですよ!
こんな俺で良ければ、どうぞお好きな所へ連れてって下さい!』
『イキナリ敬語になるなんて、おかしいったい(笑)
それと、やっぱり・・・嬉しい?』
『おかしくなんか、ありませんよ。全く!
そりゃ、嬉しいに決まってるじゃないですか!』
『嬉しいって言ってくれて、ありがとう(照)
じゃあ、明日の12時に駅前で
○○、遅れたりしたら、どうなるか分かってると?(笑)
れいなはもう寝るけん、○○も早く寝るよーに!
じゃ、オヤスミ』
『ありがとうだなんて、恐れ多い!
遅れたりなどしませんから、ご安心を(笑)
それじゃ、オヤスミナサイ』

「デートの約束まで、しちゃったよ・・・
どうしよう、俺・・・」
今の俺の心臓の鼓動は、この地球上にある全ての物よりか、早いだろう
最悪このまま、発作でポックリ逝くんじゃいか?
ヤバイな・・・
ってか、今日寝れねぇ〜!!

471 :ケータイ :04/12/31 04:43

「はぁ〜・・・
結局、寝れなかった・・・」
何回も布団の中に入って寝ようとしたが、動悸が治まらず、寝れなかった
れいなとデートをするんだから、寝れなくて当たり前ちゃ当たり前だが
クマ、ヤバイだろうなぁ・・・

「寝癖良し!
鼻毛良し!
眉毛良し!
クマは・・・見なかった事にしよ」
鏡の前で最終チェックをし、腕時計に目をやる
現在、時間は10時
家から歩いていけば、12時には充分、間に合うだろう

靴を履き、ドアを開け、外に出る
冬のせいもあってか、外は異様に寒い
天気予報では晴れと言っていたが、雪が降るかもしれない
ってか、雪降ってくれ!

そうこうしながら歩いて行き、無事に駅に辿りつく
時刻は、11時40分を指していた
まずまずだろう
あたりをキョロキョロしてみたが、れいならしき人影はまだ無かった
俺はひとまず、ホッとした

そのまま、れいなを待つ事にした
れいなは、俺に気付くだろうか?
やっぱりメールで、服装とか教えときゃ良かったかな?
と、悩んでいるうちに、れいなが来た

472 :ケータイ :04/12/31 05:06

「よっ!
待った?」
れいなは、ちょこんと左手を出して、挨拶した
帽子かぶってるけど、やっぱり、可愛いなぁ〜・・・
「いや、全然
俺もさっき来たとこだし」
とりあえず、型どうりに返事をした

飯に誘ってみようと思い、食ったのか聞いてみる
「昼飯、食べてきた?」
「いや、まだっちゃ
○○は、食べてきたと?」
「俺もまだなのよ・・・
どっか、食べ行く?」
「うん!
どこ行く?」
「まぁ、どこ行くっつっても、俺が奢れるのハンバーガーぐらいだしなぁ・・・」
「じゃあ、ハンバーガーで良いっちゃ
早く行こ!れいなもう、お腹空きすぎたい・・・」
まさか、こうも上手く行くとは・・・
神に祈りを捧げ続けたお陰かな?

道中、れいなと他愛も無い話をした
話はしていたが、俺は全くれいなの目が見れなかった
もし目なんて見たら、一発ノックアウト必須だもん、見れるはず無いじゃん・・・
そんな事を思いながら、話をしていた
すると、大手チェーンのハンバーガー店を見つけた

473 :ケータイ :04/12/31 05:37
「いらっしゃいませ〜
ご注文は、何になさいますか?」
店員の営業スマイルが、ここまで霞んで見えるのは、初めてだな
「貴女、先決めて
俺は後で良いから」
THE レディーファースト!
ああ、俺ってジェントルマン・・・
「じゃあ、ハンバーガー二個とコーラで」
マジですか!?
金有るかな・・・
「俺は、ハンバーガー一個と水で」
「ご注文、承りました
お持ち帰りですか?それとも、こちらで頂きますか?」
「ここで食べます!
それで良いっちゃね?」
「どっちでも良いよ
どうぞ、お好きな方に」
俺って完璧、れいなのペースにはめられてるな・・・
まっいっか!

会計も終わり、後は商品を待つのみとなった
「先に座って、席取ってて
俺運んでくるから」
「イヤっちゃ
一人で待ってって、変な人が来たらどうすると?」
「判ったよ
一緒に行きゃ良いんだろ?」
「そーゆー事♪」
なんか、れいなが浮かれてる気がするのは、気のせいか?
そんな事を思ってると、早くも商品が来た

474 :ケータイ :04/12/31 05:58

商品を運びながら、席を探す
席を見つけ、商品を置き、座る
すると、れいなが俺の前に座るではありませんか!
まぁ、当たり前か・・・

ハンバーガーを食べながら、れいなの方を向いていると、突然れいなが話しかけてきた

「ねぇ、さっきも思ったんだけど、なんで目見て話ししないと?
そーゆーの、失礼ばい!」
そりゃ貴女が、可愛過ぎるからですよ
なんて、絶対言えないな・・・
「そうだった?
見てた気するんだが・・・」
俺は内心を悟られない様に、嘘を言った
「そうっちゃ!
今度からは、ちゃんと目を見て話しするよーに!
分かった?」
「ハイハイ、判りましたよ」
俺は、気の無い返事をすると、ハンバーガーを一気に頬張った
ドキドキしすぎて、ハンバーガーの味なんてよく判らなかった
こういうのが、恋煩いって奴なのかな・・・

ん、恋?

俺はれいなに、恋してるのか?
まさか、まさか・・・

475 :ケータイ :04/12/31 06:19

「はぁ〜、もうお腹いっぱい!
ありがとね」
そう言うと、れいなは自分のお腹をポンポンと、二回叩いた
その姿が堪らなく可愛かった
「イエイエ、礼を言われる様な事はしてないよ
それよりこの後、どこ行く?」
「別にどこでも良いけん
○○は、どっか行きたい所無いの?」
「俺は特に無い・・・かな?」
「じゃあ、時間潰しにそこらへんブラブラする?」
「ああ、それで良いよ」
俺はそう言って、れいなと共に店から出た

途中、ハロショによって強制的にれいなの写真を買わされた
まぁ、その後、本人直筆のサインをしてもらったから良いけど
一生の宝物だなこりゃ
そんな事してるうちに、胸の鼓動は収まる気配は無く、それどころかより酷くなっていった

「そういや、行きたい所あるって言ってなかった?」
俺は、ふと思い出しその事を口にした
「そうだった!
じゃ、今から行くったい、ついてきて」
「どこ行くのよ?」
「それは行ってからの、ヒ・ミ・ツ♪」
俺は、何がどうだが判らなかった

476 :ケータイ :04/12/31 06:34

そう言われるがまま、電車に乗った
電車に揺られながらも考えたが、結局答えは出なかった

「もう、降りるけん
早く!」
れいなにせかせれた降りた先は、海だった
「ここが連れて来たい場所?」
「そう!
冬の海は綺麗ばい・・・」
「海って夏行くもんじゃないの?」
「夏に行く海も良いけど、冬に行く海は人も居ないから騒ぎ声も聞こえないし、
海自体が楽しめるから、れいなは冬に行く海の方が、好きっちゃ・・・」
俺はそう言うれいなの横顔を見て、自分の気持ちに確信した
れいなの事を本気で好きなんだと・・・

477 :ケータイ :04/12/31 06:40

「れいな、ちょっと話しがあるんだけど・・・」
「何?」

「俺、れいなの事が好きだ!」

今度ははっきり、ちゃんと目を見て言った
流石に、れいなもビックリした顔をしたけど、すぐに笑って返事をしてくれた
「れいなも、○○の事が好きったい・・・」
俺は信じきれなかった
なんせ、スーパーアイドル田中れいなが、俺の事好きだなんて思うはず無いだろ?

「なぁ、それ本気?」
「失礼っちゃね!
本気に決まっとろうもん!」
「ハハハ、なんか信じられないな」
「どうして?」
「だって、実感沸かないじゃん」
「じゃあ・・・れいなが実感沸かせてあげる」

そう言うとれいなは、俺の唇にキスをした

「ふふ、これで実感沸いたと?」
はにかみながら、れいなはそう言った
俺はどうしていいか判らず、返答に困った

「こういう時、男はどうすりゃ良いの?」
我ながらバカみたいな質問だ
すると、意外な答えが返ってきた
「もう一回キスすれば、良いったい
今度は○○から」
すると、れいなは目を閉じた
俺はれいなに言われたとうり、キスをした
甘くとろける様なキスを・・・
いつまでも、いつまでも・・・

〜終〜


从*´ ヮ`)<モドル