〜 終わらない夏 〜

441 :〜 終わらない夏 〜 :05/08/05 01:12 ID:ZgBIqnc50
シーン 1


しゅわわわわ…
「うわぁキレイったい!○兄ぃ!ほら!」
アブね!こっちむけんなって!熱っ!
「にひひひw ほーれほーれ!」
やめれって!あちぃっ!


しゅぱーん!ばちばちばち…
「た〜まや〜!」
そんなたいしたもんじゃないけどな…っと、ほれ、もういっちょ行くぞ!
しゅぱーん!ぱちぱちぱち…

442 :〜 終わらない夏 〜 :05/08/05 01:14 ID:ZgBIqnc50

オレの名前は○○。さえない大学に通うさえない大学2年生。
で、花火を持っておおはしゃぎなのはれいな。オレの幼なじみ。

れいなはいつもイキナリだ。

443 :〜 終わらない夏 〜 :05/08/05 01:16 ID:ZgBIqnc50

オレが小学4年生の時にイキナリ隣に引っ越してきて以来(と言ってもそれはれいなのせいではないのだが…)
初対面から○兄ぃと呼び始めるし、どこに行くのもくっついてくるし、家庭教師代わりに宿題をやらせたり、
最近初めて出来た彼氏の寺田君の愚痴を朝まで泣きながら話したり、
でも結局ノロケ話になっていることに気付いてなかったり、
東で腹が立つ出来事があれば俺に文句をつけ、
西に面白いことがあればつれてけと騒ぎ、
晴れの日は暑いと言い、
雨の日はヒマだと言い、
食べたい物はオレのおごりでたらふく食べ、


ソウイウモノニ、ワタシハナリタイ。


…あ、いや、そうじゃなくて、まぁとりあえずわがままいっぱいのやんちゃな妹みたいなもんだ。

444 :〜 終わらない夏 〜 :05/08/05 01:18 ID:ZgBIqnc50

今日も朝からイキナリオレの部屋に飛び込んできて、おはようも無しに騒ぎ出した。

「花火やろう!花火!」
あー…うるさい…大学生は忙しいんだよ…って大体今何時だよ?まだ昼にもなってねぇぞ…
「花火!はなび!」
うっせ…昨日遅かったんだからもうちょい寝かせろ、な?
「はなび!はーなーびー!!」
あーもーわかった!花火な?夜になったら買いに行って…
「何言うとや?花火って言ったら海ったい!そしたらもう出ないと間に合わないっちゃ!」

445 :〜 終わらない夏 〜 :05/08/05 01:19 ID:ZgBIqnc50

え?

「うーみー!!はなびー!!スイカわりー!!!」

…れいな増えてるよれいな…

453 :〜 終わらない夏 〜 :05/08/06 01:07 ID:NIzWYqDk0

「え〜!?花火もう無いとぉ!?」
もうってずいぶんやったぞ? えーっと…あ、まだあった。
「あ!線香花火!忘れてたぁ〜これやらないと終われないっちゃ。ほら!」
わ〜かってるよ。勝負、だろ?
「そのとーり!いくよ!」


ぱちぱちぱち…

「…○兄ぃ?」
ん?
「こうして○兄ぃと花火するの久しぶりじゃない?」
あ、そういえばそうだな。昔はよくやってたけどな。
「○兄ぃん家の庭で大騒ぎして『うるさいっ!』って怒られたりw」
それ覚えてる!れいな『ゴメ゙ン゙ナ゙ザーイ゙』とかベソかいてさw
「え〜?そうだっけ?」
あははw

ぱちぱちぱち…

454 :〜 終わらない夏 〜 :05/08/06 01:08 ID:NIzWYqDk0

ぱちぱちぱち…

そういえば今日なんでオレ誘ったんだ?彼氏の…寺田くんだっけ?と来りゃよかったのに…
「…ホントはその予定だったっちゃけど…ま、まぁよか!誘ってあげたんだから素直に喜ばんね!」
ん?ドタキャンか?
「もう寺田くんの話はよかよ!」
そ、そんな怒るなよ…

ぱちぱちぱち…

455 :〜 終わらない夏 〜 :05/08/06 01:10 ID:NIzWYqDk0
ぱち…ぱち…

…れいなのほうが落ちそうだな…
「…○兄ぃのほうが先ったい…」

ぱちっ…

「「あ、」」

456 :〜 終わらない夏 〜 :05/08/06 01:13 ID:NIzWYqDk0

…同時?
「○兄ぃのほうが早かったっちゃ!」
いやいやいや明らかに同時だったって!
「うーるーさーいー!罰ゲーム!」
え?あ、ちょ、あぶ、危な…

ザバーン!!

ええええええ?
おま、ちょ、オレさっき着替えたばっかだっつーの!
Tシャツもパンツもびしょびしょじゃねー…ってええええええ!?れれれいな!?

ザバーン!!

「ぷはっ 気持ちよか〜w」
オマエも飛び込んでどうすんだよ!帰りの車…
「大丈夫!男が細かいこと言ったらいかんったい!にひひw」
あ〜ぁ…もう知らね…

471 :〜 終わらない夏 〜 :05/08/08 01:07 ID:8f2khwk40

シーン2


ざざ…ん…

びしょ濡れのTシャツのまま、波打ち際を二人で歩く。
果てしなく真っ暗な海と夜空に、満天の星と灯台のピンスポットライト。
それは何秒かに一度、二人に長い影を作ってはまた去っていく。

472 :〜 終わらない夏 〜 :05/08/08 01:09 ID:8f2khwk40

「夜の海もキレイっちゃね…星もキレイだし…最高ったい」
あぁ、ちょっと恐いくらいだな。波打ち際から向こうには行くなよ?
「大丈夫!子供じゃないっちゃ!」
ガキが何を言ってんだかなぁ…
「ガキじゃなかと!水着姿もセクシーッダイナマイッ!だったでしょお〜?」
ずいぶんぺったんこなダイナマイッ!じゃんw
「ぺぺぺぺぺったんこおおおお!?ま、待てぇ!!ウミノモクズにしてやるっちゃ!!!」
あははははw 海に突き落としたお返しだよ〜w

ざざ…ん…

473 :〜 終わらない夏 〜 :05/08/08 01:11 ID:8f2khwk40

「もぉ!○兄ぃだいっきらいっちゃ!」
まぁまぁそう言うなってw
しかしせっかくこんなキレイな景色なのに寺田くんじゃなくて悪かったな。
「え?…」
今度はオレじゃなくてちゃんとつれてきてもらえよ?
「…もう…今日は寺田君の話はせんといて!」
あ、ゴメン…

「…」


474 :〜 終わらない夏 〜 :05/08/08 01:14 ID:8f2khwk40

「…○兄ぃ?」
ん?
「どーん!!」

ざぱぁん!!
うぉおお!?お、おま、な、何すんだ!
せっかく乾きかけたパンツがまた…

475 :〜 終わらない夏 〜 :05/08/08 01:16 ID:8f2khwk40

しりもちをついたオレの頬をれいなのちっちゃな手が包む。
塩辛い唇に柔らかい感触が当たる。


ちゅっ


…え?れ、れい…

「…今日つれてきてくれたお礼ったい!さ、帰ろ!いつまで座り込んでるっちゃ!」
…ええ??
「早く!風邪ひくぞぉ〜w」
…えええ???

いやホントれいなはいつもイキナリだ…

482 :〜 終わらない夏 〜 :05/08/09 00:19 ID:72MkHsNJ0

シーン3


ざぁぁぁぁぁ…ごろごろごろ…

夏の夕立はとにかくタチが悪い。
ちょっと本屋で立ち読みしてただけなのに、どこかのスイッチが壊れたかのような雨。
びしょびしょになりながら商店街の軒先で雨宿り。
雷の音に内心ビビリつつ、早く止まないかと空を見上げている。

483 :〜 終わらない夏 〜 :05/08/09 00:21 ID:72MkHsNJ0
ざぁぁぁぁぁ…

…なんか止まなさそうな雰囲気だな…

ざぁぁぁぁぁ…

…ついてないなぁ…天気予報見てくりゃよかった…

ざぁぁぁぁぁ…

…あららみんなびしょびしょで雨宿りしにきてるねぇ…

ざぁぁぁぁぁ…

484 :〜 終わらない夏 〜 :05/08/09 00:24 ID:72MkHsNJ0

ざぁぁぁぁぁ…


…ん? あ、あいつれいなの彼氏じゃないか? なにギャアギャア騒いでんだ?

「ったくなんやねんこの雨は!」
「まぁまぁそうキレないでくださいよ」
「腹立つやないか!今日誘った女全員用事があるとか言いおってからに!」
「寺田さん彼女多すぎだからw よくバレないっスね」
「お前らとはレベルが違うっちゅうねんw」
「でもマジで今日誰もいないんスか?そーいやあの子ヒマそうじゃないっすか」
「あ?誰かおったか?」
「あの、この前学校でコクってきた子っスよ…あの1年の…えー…田中れいな!」

485 :〜 終わらない夏 〜 :05/08/09 00:25 ID:72MkHsNJ0


「おう!おった!そんなやつおったなw なんか優しくしたったらえらい感動しとった子やなw でもなぁ…」
「なんスか?」
   ガキ
「あの処女 や ら せ て くれへんねん!」

「そうなんスか!?」
「そうや!『先輩…まだ…そんなの早いですば〜い』とかなんとか言いやがってな」
「何弁っスか?w 訛りすぎでしょw」
「『れいなまだしたことなかばって〜ん』」
「ぎゃははは!!ありえねぇ!!」
「な?ありえへんやろ?そんなんもうエエかなとか思うやん?
この前も『花火しに行きたいですば〜い』とか言い出しよってなぁ」
「行ったんスか?」
「行くわけないやないか!ってか前日までれいなと約束しとったの忘れててな、別のおねぇちゃんと遊びに行く約束してもうたんや」
「マジっスか!?」

486 :〜 終わらない夏 〜 :05/08/09 00:27 ID:72MkHsNJ0

・・・ ?

487 :〜 終わらない夏 〜 :05/08/09 00:28 ID:72MkHsNJ0

「そっちのほうが間違えなくヤレる子やったからなぁ…そらそっち行くやろ!」
「うわ〜 相変わらず鬼っスねぇw」

488 :〜 終わらない夏 〜 :05/08/09 00:29 ID:72MkHsNJ0

・・・ な に ?

489 :〜 終わらない夏 〜 :05/08/09 00:32 ID:72MkHsNJ0

「おっぱい無いガキンチョのクセにヤラしてくれへんなんてなぁ」
「最悪っスね〜w」

490 :〜 終わらない夏 〜 :05/08/09 00:33 ID:72MkHsNJ0

・・・ な ん だ と ?

491 :〜 終わらない夏 〜 :05/08/09 00:35 ID:72MkHsNJ0

ざぁぁぁぁぁ…ごろごろごろ…


…て、てめぇ!!
「な、なんや!?誰やオマエ!?」
うるせぇ!!ぶっ飛ばす!!
グシャッ!
「寺田さんに何すんだゴルァ!!」
ゴガッ!!バシャーン!!
ブホッ…ゲフォッ…こ、このガキ…
ドガッ!!
「ゴフォッ…い、痛いやないか!なんやねん!」
許さねぇ…

オマエは  絶  対  に  許  さ  ね  ぇ  !!!


ざぁぁぁぁぁ…

501 :〜 終わらない夏 〜 :05/08/11 01:26 ID:loIUEdZR0

シーン4


…痛ってぇ…
ボロキレのようになった体を引きずりながら、ずぶ濡れのままベッドに倒れこむ。
…いくらなんでも二人相手じゃキビシイってな…
自嘲気味に笑うオレ。ズキッ…切れた口の端が痛む。
口の中に広がる鉄の味。腹、胸、いろんなところがズキズキと疼く。
…まぁあのバカ男は何とかしてやっつけてやったからな。もう懲りてれいなには手を出さないだろう…
何年ぶりの本気のケンカ。絶対に負けられない、負けるわけにはいかないケンカだった。
…なんで…なんでオレがれいなのためにこんな目にあってんだろ…

502 :〜 終わらない夏 〜 :05/08/11 01:28 ID:loIUEdZR0

がちゃ
いきおい良く開くドア。

ノックも無いってことはもちろんれいながイキナリ飛び込んでくる。
「おーい!○兄ぃ!遊ぼ…って、き、きゃああああ!!」

…タイミングいいんだか悪いんだか、だな…

503 :〜 終わらない夏 〜 :05/08/11 01:29 ID:loIUEdZR0

「○、○兄ぃ!?ど、どうしたと!?」
な、なんでもねぇよ…痛っ!
「なんでもねぇって酷い怪我してるとよ!?」
なんでもねぇって!帰れ!
「で、でも…」
平気だっ…っ痛ぅ…へ、平気だって言ってるだろ!帰れって!
「…人が心配してるのに…ホントに平気?そんなに言うなら帰るっちゃけど…」

あ、れ、れいな、ちょっと待て!
帰ろうとするれいなの手を掴む。

「もぉなに?帰れって言ったり待てって言ったり…今日の○兄ぃなんか変っちゃよ?」
怒った顔で振り向くれいな。

504 :〜 終わらない夏 〜 :05/08/11 01:31 ID:loIUEdZR0

あ、あの…
「何!?」


…彼氏と…寺田ってやつと…別れろ。

505 :〜 終わらない夏 〜 :05/08/11 01:32 ID:loIUEdZR0

「はぁ!?な、何?なに言うとると!?頭でもぶつけたとや!?」
いや…別れろ!な?そうしろって!!
「い…意味わからんっ!○兄ぃのあほ!ケガでも何でもしてればよか!!だいっきらい!!」
バタン!!
れいなはオレの手を振り解いてドアを思い切り閉める。

…れ、れいな!ちょっと待…ぁぐっ!…い、痛ぇ…


はぁ…だ、だめかぁ…チキショウ…なんて言えばいいんだよ…

511 :〜 終わらない夏 〜 :05/08/12 05:53 ID:JsFpTMOU0

シーン5


みーんみんみんみんみん…

あれから一週間、毎日のように入り浸っていたれいながぴったりとオレの部屋に来なくなった。
毎日うるさいほどメールの受信音を鳴らし続けた携帯も沈黙を守ったまま。

…まぁ夏は静かなほうがいいよ。
うるさいのがいても暑苦しいだけだし…

512 :〜 終わらない夏 〜 :05/08/12 05:54 ID:JsFpTMOU0

みーんみんみんみんみん…

…あいつがいないだけでオレってこんなにヒマになっちまうのか?
…まさかアイツまだあのバカと…それどころかあのバカに…
…いや、あそこまでやったんだ。それはないと思うけど…
…。

みーんみんみんみんみん…

513 :〜 終わらない夏 〜 :05/08/12 05:56 ID:JsFpTMOU0

…コンコン

ん?オフクロ?開いてるよ。

…コンコン

開いてるって…うるさいなぁ。よっ…
がちゃ

れ、れいな…

514 :〜 終わらない夏 〜 :05/08/12 05:57 ID:JsFpTMOU0

「…。」
…まぁ、なんだ、その、あ、は、入れば?

イキナリの訪問者に力いっぱい動揺しながられいなを部屋に招きいれる。
もちろんれいなはいつも通りオレのベッドの上に座り、オレのクッションを抱きしめる。
ただ、いつもと違うのは、ひまわりみたいな笑顔ではなく、下を向いて黙ったままの暗い表情。

みーんみんみんみんみん…

515 :〜 終わらない夏 〜 :05/08/12 06:05 ID:nZxei5uz0

…。
「…。」

…気まずい沈黙。
何か言わなければならないような、何も言ってはいけないような、そんな空気。

…。
「…。」

みーんみんみんみんみん…

516 :〜 終わらない夏 〜 :05/08/12 06:06 ID:nZxei5uz0

「「ご、ゴメン!」」

「え?」
あ、いや、何?
「あ、○兄ぃこそ…何?」

みーんみんみんみんみん…

517 :〜 終わらない夏 〜 :05/08/12 06:07 ID:nZxei5uz0

「実は…れい、○兄ぃに謝らんといけん…」
え…?

「この前、○兄ぃ言ってくれたよね?『寺田くんと別れろ』って…」
あ、あぁ…。
「その時はムカついたとよ?何でそんなこと言うん?って…でも、○兄ぃ知ってたっちゃね。れいが…」

「…れいが、寺田くんに、遊ばれとったこと。」




みーんみんみんみんみん…

518 :〜 終わらない夏 〜 :05/08/12 06:08 ID:nZxei5uz0

れ、れいな…
「この前寺田くんに言われたっちゃ。『なんやこのガキ!顔も見たくねぇ!帰れ!』って…」
!! あ、あの野郎、まだ…
「あ、いいの!だって…その時ピーンと来たと…寺田くんもケガしてるし、○兄ぃもケガしてる。
あの時○兄ぃが言ってくれた『別れろ』って意味はそういう意味だったって…」
…ま、まぁ、な。
「○兄ぃ、遊ばれてるれいのために戦ってくれたんだって…そのときやっとわかったと。 …ホント、ゴメンナサイ…」

愛嬌のあるちょっと垂れた目からポロポロと涙が溢れ出す。

「れいのせいで…○兄ぃすっごい痛かったとやろ?それなのに『あほ!』とか言って…グシ…なんて謝ったらいいのかわかんなくて…グシ」

519 :〜 終わらない夏 〜 :05/08/12 06:09 ID:nZxei5uz0

ぽん。

れいなの頭に手を乗せる。
…いいんだよ。わかってくれれば。

「○…○兄ぃ…ゴ、ゴメ…ヴェエエエン!!」

な、泣くなって!な?

胸に飛び込んできたれいながオレのTシャツを涙で濡らしていく。
傾きかけた太陽が二人の影を写す。
オレはれいなの背中に手を回し、ポンポンと叩きながら、変な安堵感のような、甘いような、それでいてむずがゆいような何かを感じていた。


みーんみんみんみんみん…

525 :〜 終わらない夏 〜 :05/08/12 22:57 ID:nZxei5uz0

シーン6


ようやくれいなが落ち着いて泣き止んだ時には、すっかり日も落ち、窓から少し涼しい風が入ってくる夜になっていた。

526 :〜 終わらない夏 〜 :05/08/12 22:58 ID:nZxei5uz0

れいながオレに抱きついて泣くなんて…ちっちゃい頃花火で怒られて以来だなw
「…ウルサイッチャ」
あははw 『ゴメ゙ン゙ナ゙ザーイ゙』だっけ?
「もう!知らん!」
れいなはオレのTシャツを握り締めたままの小さなゲンコツでオレの胸をポカポカ叩く。
…痛っ!
「あ、ご、ゴメン!まだ痛かったと!?」
うっそーw
「…。」
ポカポカポカポカ
いてててて! 参ったってばw このやろぉ!

527 :〜 終わらない夏 〜 :05/08/12 23:00 ID:nZxei5uz0

ぎゅ

背中に回したままだった手に少しだけ力を入れてれいなを抱きしめる。
それはいつもの、冗談のつもり、だった。

528 :〜 終わらない夏 〜 :05/08/12 23:01 ID:nZxei5uz0

「…○兄ぃ」
ん?
「…れい、なんで寺田くんに告白したか知っとぉ?」
は?て、寺田って…知らねぇよ!
「あ、怒ってる。ジェラシーっちゃね?w 実は…」
何だジェラシーって…で?何?

529 :〜 終わらない夏 〜 :05/08/12 23:03 ID:nZxei5uz0

「…○兄ぃに目が似てたから」

…え?

「○兄ぃはれいのお兄ちゃんみたいなで人で、お兄ちゃんだから好きになっちゃいけなくて、
それに○兄ぃもきっとれいのこと妹みたいにしか思っておらんのやろなって…ずっと思ってた。」

…。

「れいは○兄ぃが…○兄ぃのことが…でも、それは言葉にしちゃいけないと思ってて…
そんな時に目が似てた先輩を見つけて、きっと…きっと○兄ぃのこと忘れられると思って告白したと…」

れいな…。

「でも…でも忘れられんかった。れいは…○兄ぃのことが…ス…」

530 :〜 終わらない夏 〜 :05/08/12 23:07 ID:nZxei5uz0

あ、ど、ドコが似てるんだよ、ほれ。
オレのほうが100万倍カッコいいだろ?ほれほれw

なんとなくオレはその『言葉』を遮るように顔を近づける。
思わず茶化してしまったのは、オレの中で生まれた、今までれいなに対して感じたことのない感情のため。
それと、その感情に気付いてしまった以上、その言葉は、オレから言わなければならない気がしたからだった。

531 :〜 終わらない夏 〜 :05/08/12 23:08 ID:nZxei5uz0

「…○兄ぃのほうがタレてるw」

…うっせ。

「…。」

れいな…。

「ん?」


…好きだよ。

532 :〜 終わらない夏 〜 :05/08/12 23:10 ID:nZxei5uz0

「にひひw照れるっちゃ…」
胸に顔をうずめ、耳まで真っ赤にしてつぶやく。
茶化すなよ…おれもこんな気持ちだったなんて気が付かなかったんだから。
「あ、そんな勇気のある○兄ぃに、れいからも告白するっちゃ」
れいなはTシャツを握り締めていた手を解き、伸び上がって俺の首に回し、耳元でそっと囁いた。


「あんときのキス…れいの初めてだったと」

…?

「初めては…ちょっとしょっぱかったとよw」

れいな…!

533 :〜 終わらない夏 〜 :05/08/12 23:11 ID:nZxei5uz0

れいなの背中に回していた手にもう一度力を込めて、しっかりと抱きしめる。
れいなもオレの首に回した手にもう一度力を込めて、しっかりと抱きしめる。
「○兄ぃ…好き。大好き!」

そして、ゆっくりと顔を近づける、二人。
それはイキナリ、じゃなく、二人の想いを重ねるように、二人の気持ちを確かめるように。
そっと、そっと、口づけを交わす。


…二人の重なり合う影が、ベッドの上に倒れこむ。

534 :〜 終わらない夏 〜 :05/08/12 23:13 ID:nZxei5uz0

ひゅるるるる…ドーン! パラパラ…


「「!」」

あ、き、今日花火大会だったっけ?
「え、えーっと…あ、確かそうだった、かな?」

(ち…ちっきしょう!イイトコダッタノニ!!)
(何!?もぉ!れいの初めてを○兄ぃにあげようと思ッタノニ!!)

え?
「あ、ううん?○、○兄ぃこそ?」
あ、いや、あははははw
「に、にひひひw」

535 :〜 終わらない夏 〜 :05/08/12 23:15 ID:nZxei5uz0

ひゅるるるる…ドーン! パラパラ…


「あ、そ、そうだ!花火!花火見にいこ!!はーなーびー!!」
えええ!?またいつものイキナリかよ…この前もつれてってやったじゃねぇか…ったく。 …ま、いいけどさw
あ、ただ…

「ん?」

今日は手をつないでいこう、な?

「ううん?『今日は』じゃなかとよ?」

え?


ひゅるるるる…ドーン! パラパラ…

536 :〜 終わらない夏 〜 :05/08/12 23:16 ID:nZxei5uz0



「『今日から、これからもずっと』っちゃ!」

537 :〜 終わらない夏 〜 :05/08/12 23:18 ID:nZxei5uz0

〜 終わらない夏 〜






BGM:エンドレスサマーヌード(THE真心ブラザーズ)

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