大晦日の出来事
515 :名無し募集中。。。 :05/01/01 02:06
(新春記念短編)
「大晦日の出来事」

下の階からは、相変わらずにぎやかな声が聞こえる。
親戚が我が家に泊まりに来てるのだ。きっと、紅白でも見ながら
皆で楽しんでるのだろう。
「あ〜あ・・・・・」
椅子の背もたれで、疲れた背中を伸ばす。
俺はと言えば、受験勉強の真っ最中だ。辛いぜ、浪人生活はさ・・・・・

試験は、もうすぐそこまで迫っている。
今年こそは・・・・・プレッシャーが嫌でも押し寄せてくる。
「やばいよなぁ・・・今年はうからないとさぁ・・・・・」
がしかし、年ももうすぐ変わるというのに、ちっとも勉強がはかどらない。

「しかたない、気分転換でもするかぁ」
何度目の気分転換なんだよ!自分でも分かってりゃせわない。
俺は、机の引き出しからDVDを取り出して、パソコンの電源を入れた。
俺の大好きなタンバ・アンのDVDだ。
受験生はストレスがたまるんだ。たまには発散しなくちゃ。
まあ、これで今日は三度目のストレス発散なわけだが・・・・・アホか俺は。

DVDが始まり、ちょうど俺の好きなシーンが始まった時、いきなり部屋のドアが
開いて、親戚のれいなが入ってきた。

516 :名無し募集中。。。 :05/01/01 02:07

「お前な、ノックをしろと何度言えば・・・・・」
「ちゃんと勉強しとるか見に来てやったたい。でも、その様子じゃさぼっとるね」
「いや、あのな・・・」
「あ!何それ!?あーっ!!!」
とっさのことで、パソコンの画面を閉じる暇も無かった。
画面では、タンバちゃんがえらいことになっていた。

「変態!アホ!スケベ!この最低男!」
れいなは、矢継ぎ早に言葉を吐き出してくる。生意気なガキだ、まったく。
あ・・・ズボンはいててよかったぁ。

「いや、これはな、その・・・・・あれだ。あははは・・・」乾いた笑いが出た。
「だから彼女もできんたい。試験も通らんたい。ほんっとに、どうしようも
ない男やね」
ひじょーに冷たい視線で俺を眺めている。
俺はパソコンの画面を閉じて、
「と、とりあえず下に行ってろよ。な?ほれ、勉強再開の邪魔だ、邪魔」
れいなを部屋から出そうとした。

517 :名無し募集中。。。 :05/01/01 02:08

「レディにその扱いはなんね!?新年のお参りに行くって伯母さんも言っとるよ。
それで、にいちゃんも呼んできてくれって」
「いいよ、俺は」
そんなやりとりをしてると、下から、もう行くわよ、という母の声が聞こえてきた。
「ほら〜、さっさと仕度するったい」

まったくなんなんだ、こいつは。
「いいから行ってこいよ。俺は忙しいんだ」
そう言って、俺はベッドに座った。
れいなは、しばらく俺を眺めていたが、突然悪戯な表情になった。

「・・・・・?」
「は?なんて?」
小声でさっぱり聞こえなかった。
すると、れいなが俺の前に来た。
「にいちゃん、ああいうことしたいと?」
「ああいうって・・・何言ってんだ?お前は」

れいなが、パソコンの方を指差した。
「あ、え?・・・あのなぁ、おまえさぁ・・・」
「にいちゃんが、どうしてもって言うなら、れいなよかよ?」
この人、何を言ってるのかしら?大丈夫なの?ねえ、どうなの?

518 :名無し募集中。。。 :05/01/01 02:09

いきなり、れいなが俺の手を掴み、自分のパーカーの中にその手を入れた。
一瞬のことで、訳が分からなかったが、ただ確かなことは、今俺の右手には
とっても柔らかい感触があたってるってことだけだ。ああ、やわらけー・・・
「アホか、お前は!」
俺は慌てて手を引っ込めた。心臓がバクバクしている。

れいなは、ふふん、と笑うと、
「どう?これで勉強集中できる?れいなからのお年玉たい」
そう言って、笑った。
俺は、ただただ呆気に取られていた。返す言葉も出ない。

「先に下に行ってるけん、はよー来るったい」
れいなはそう言って、さっさと部屋のドアのところへ行った。そして振り返り、
「にいちゃん、頑張れ!!れいなはいつでも味方たい。良い年にするたい!」
笑顔で言ってくれた。いつもは生意気な口ばかり叩いてるけど、この時は
凄く可愛かった。
「ちゃんと受かったら〜・・・続きがあるかもね。な〜んて」
そう言って、部屋の前から立ち去った。

俺は、嬉しさと、からかわれてるような感覚と、そして・・・・・
右手に残る感触とで、ボーッとしていた。そして、遠くから除夜の鐘が聞こえてきた。
勉強に戻ろうと思ったけど、今はもう少しだけ、右手の余韻に浸ってよう。
そう思った。新年早々、なんだか今年は良い年になりそうだ。そんな事を思った。

               (終)



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