大人計画「エロスの果て」観劇レポート

2001.4.8 近鉄小劇場にて


作・演出 松尾スズキ
出演:ダイゴ 阿部サダヲ、小山田 宮藤官九郎、峰子 伊勢志麻、ハル 宍戸美和公、アズミ 猫背椿、蝉丸 村杉蝉之助、ジュン 田村たがめ、サヤカ 池津祥子、角川春樹 荒川良々、イマヲ 近藤公園、ムネ 平岩紙、スパイダー 皆川猿時、ナツコ 秋山菜津子、ピーチ 宮崎吐夢、臼田 松尾スズキ、ドーン・ダベンポート ドロレス・ヘンダーソン、醍醐 顔田顔彦

大人計画の舞台は初見です。松尾スズキさんに関しては去年野田MAPの「農業少女」で拝見しているんですが、松尾さんはその脚本・演出で高く評価されている(去年はキレイで演劇関係の各賞を数多く受賞されております)ので、大人計画の舞台を見るのが凄く楽しみでした。ただ、タイトルに一抹の不安は抱いておりましたが...(笑)一言、言葉のセンスがものすごい。あふれ出る言葉の数々がリズムよく、そしてセンスがあるんですよね。ただ、私が見に行った日は千秋楽だったために、かなりアドリブが炸裂していたみたいです。だって、舞台に立っている俳優さん達が笑いをかみ殺すのに苦労していたり&リアクションにちょっと間があったりしたので、多分そういう時はアドリブだろうと思うんですよね。

ストーリーとしては1度で全てを理解するのははっきりいって難しいと思います。そのパワーや言葉の嵐、そしてテーマの重さに圧倒されて、なんとかついていくのに必死状態なんですもの。それに笑うのに忙しいし...(笑)主人公は幼馴染3人組。その核は20世紀最後にいきずりの男を身ごもったイメクラ嬢が産み落とし、そのまま捨てていなくなったために、同僚のイメクラ嬢3人に育てられたサイゴ。このサイゴの名前のゆえんはノストラダムスの予言による地球最期の日がやってくるから。そしてもう1人はサイゴの育ての親の1人を母親に、今や父親に持つ小山田、そして幼少の頃から天才と呼ばれている角川君。そして小山田とサイゴは同居しており、勝負で主従、ご主人様と下僕を決めているんだけど、いつも小山田君はその勝負に負けてしまうんだな。そしてそんな3人は、子供は人工授精で作られ、そのために優良な精子を奪って売買するというビジネスが横行し、人は恋愛感情もないままセックスをし、そしてセックスの意味が失われている時代に生きていた。角川君は幼少の頃に家を爆破され、両親を無くしてしまっている。そしてその爆破の時に、サイゴは石のような何かを拾う。そしてその石を探す怪しげな女。その女が近づくと石は光るようになっている。

そしてその後、サイゴの育ての親の2人は、転がり込んできたエロカメラマンを同時に愛してしまい、そのカメラマンに付いて出て行ったまま、消息がわからなくなっていた。また、その優秀性から、精子売買の地下組織から狙われている角川君なのであった。3人はある大きな野望を果たす為に、角川君は自分の性器を切り落としてしまうのであった。

大きな野望を果たす為に、なぜかしら印刷会社の面接を受けに行こうとしているサイゴと小山田。そこにお弁当を持ってやってきた、小山田の母(現在は父親に転換中)と昨日からイメクラに入った田舎から上京してきたジュン。このジュンが立ち振る舞い可愛いし、声も通ってポイントが高いです。なぜかしら、社会体験をさせるためにジュンもその面接についていき、面接の際にサイゴと小山田のどちらが自分たちが決めた課題に対してどちらが高いポイントをあげるかをジャッジすることに。もちろん、負けたら下僕。

一方、謎の女は軍隊(?)の医師で、しかも爆発により体にキズが残り、セックスをしても感じることが出来ない体になってしまっていた。そして彼女も角川君を探し求めているのであった。その医師の名前はナツコ、しかも精子強奪地下組織とも通じており、精子を高くさばいては、そのお金を東京原発のために注いでいるという謎多き女。

印刷会社の面接にのぞむサイゴと小山田。どうやら新しい社員が入ると、その会社では社員1人が心太方式に押し出されることになっているのであった。そして2人のターゲットはその印刷会社の会長。彼こそが育ての親2人と出て行ったエロカメラマン。2人の正体がばれて、自分の体が新種のAIDSウィルス、プラダウィルス(このウィルスの発疹の形状がプラダに似ているため)を面接官臼田に注入すると脅し、会長室に入る2人とジュン。そこには車椅子に乗ったエロカメラマン。捜し求めた養母はエロカメラマンの愛を求め、2人が1人になるため自己をなくすようにさせられ、自我を共有し、最後には2人1体のバケモノになってしまうのであった。そしてそんな2人(1人)は身ごもっており、生まれた子供は誰に育てられるわけでもなく、穴の中で食べ物だけを与えられ、どのように育つかという実験をさせられているのであった。でもそんな子供でも、誰に教わるわけでもなく、本能のむくままセックスだけは勝手に覚えてするのであった。と、ここまでストーリーを書くとエログロの世界で重いなぁと思われるかと思いますが、それをカバーしているのが松尾スズキが書くセリフなんですのよね。最終的には怪物となってしまった養母の願いで、体を切り離すけども、時は既に遅し状態で、バケモノがいるということで軍隊の攻撃を受けることに。あと半年の命の小山田、地下組織から逃れてきた角川君(だって、〇〇が無い状態では精子は取れないもんね。そして彼が瓶に持っていた〇〇はサイゴのもんだったし)、サイゴの育ての母2人はその場にとどまって、死を選ぶのであった。

そして謎の女ナツコはやっと、角川の〇〇が実はサイゴについていると知ったナツコはサイゴを襲おうとするのであったが、そこで入るちょっと待ったぁーーコール。それは小山田の父。ナツコは実はサイゴを産み捨てた母親なのであった。彼女はリュウに乗って世界に乗ってエロスの果てに行くために、それを実現してくれる頭の持ち主角川君を捜し求めていたのであった。そしてサイゴが拾った石こそがナツコが探し求めていた彼女のエクスタシーのツボ(でいいのか?)。彼女がエクスタシーを感じると強大なエネルギーがその石から発せられ、東京原発に落ちるという仕組みに。そしてそれを仕組んだのは角川君。自転車を漕ぎ、エクスタシーエネルギーをナツコに与えるサイゴ、父、ジュン。そしてナツコは官能の海の中に...助かった子供(エロカメラマンと母2人の子供)は自然とキスをするのであった。それが本当の愛の形なのであった。

ああ、書いていて難しいよねぇ。凄く哲学的というか、テーマが大きすぎて...もっと、セリフを拾いたかったので戯曲集を買えば良かったです。会場は立ち見がずらーーーっと出る大盛況、しかも客層が私がいつも見に行くお芝居よりもかなり若い。お芝居のお値段としては4300円なので、かなり見やすいので一見の価値はあると思います。ただ、好き嫌いに関してはきれに好みが分れるような気はしますが...しかし、かなりショッキングというか革命的な舞台でした。