NODA MAP 「贋作・桜の森の満開の下」観劇レポート

2001.6.1 新国立中劇場


作・演出:野田秀樹 出演:堤真一(耳男)、古田新太(マナコ)、入江雅人(オオアマ)、深津絵里(夜長姫)、京野ことみ(早寝姫)、野田秀樹(ヒダの王)、大倉孝ニ(エンマ)、犬山犬子(ハンニャ)、荒川良々(赤名人)、平沢智(青名人)等々

ストーリー(あらすじ)
原作として坂口安吾の「桜の森の満開の下」があるので、ざっとあらすじを紹介します。
ヒダの匠の弟子・耳男(堤真一)はヒダの王の元へ向かう森の中で師匠を殺してしまうが、その直後にヒダの王家に匠と間違われて城へ連れて行かれる。また、同じく森の中で懐目当てて名人の匠を殺したマナコ(古田新太)もヒダの王家に匠と間違われて城へ連れてこられる。そして素性を語らない名人のオオアマ(入江雅人)も城へやって来るのであった。耳男の特徴はその大きな耳。そしてその耳には桜の森の中で囁くような声が聞こえるのであった。この森には人には見えない鬼がおり、人の心を狂わせるそうな。
ヒダの王からの命は3年の後に王家の夜長姫(深津絵里)と早寝姫(京野ことみ)の身を護るミホトケの仏像を彫ることであった。そして褒美は双子の奴隷。でもそんなものは欲しくないのに欲しいと思われたらどうしよう?いやとここから続く耳男の言葉遊びの数々。そしてそれに怒った奴隷は耳男の片方の耳を落としてしまうのであった。でもどうやらそれをそそのかしたのは夜長姫のようで...
しかし、仏像などを彫ったことのない耳男とマナコはそんなこともできるはずはなく、中々仕事に取り掛からず、もう1人のオオアマは仕事よりも早寝姫との恋愛を楽しんでいる有様。そんなオオアマは何かを企んで早寝姫に近づいているようで...実はオオアマは国の転覆を計画しているオオアマの皇子で、ヒダの国を倒して新しい国を作るために必要な本を探すために早寝姫に近づいていたのであった。そしてそんなオオアマの策略に気付いた早寝姫は桜の森で首をくくってしまうのであった。そんな中、夜長姫への怒りのために蛇を殺して小屋に吊ってはその生き血を仏像にかけながら仏像を彫る耳男。そして金の為に鬼と手を結んで国の転覆に加担しようとするマナコ。建国のためにヒダの王の魂を盗むべく早寝姫の魂を仏像に入れて彫り上げるオオアマ。
そして夜長姫の16の正月がやってくるのであった。既に完成したオオアマとマナコ。そして除夜の鐘が鳴り終わるのと同時に完成した耳男のミホトケ。オオアマのミホトケを見て気に入ってしまうヒダの王。かたやマナコのミホトケには武器が...そして耳男のミホトケは鬼の形相というひどいもの。しかし夜長姫が気に入ったのは耳男のミホトケ。このミホトケによって鬼を呼び寄せることができる門が開くことができるからなのであった。そしてとうとう門は開かれ、ヒダの国は滅びオオアマが新しい国を建てるのであった。そしてオオアマの妃には夜長姫。しかし建国しても不満そうなオオアマ。それは方位を決められないため。その方位を決めるためにはその方位を記す人間の死なのであった。そしてその人間とは今ではオオアマに逆らったためにお尋ね者になっているマナコやヒダの国王、そして一番重要な門を開ける方位の人間とは耳男その人なのであった。そんな耳男はオオアマから大仏の顔に夜長姫をと言われるも、中々仕事が進まないのであった。そしてそんな耳男を殺そうと画策するオオアマ。耳男ピーンチにやってきたのはなんとお尋ね者のマナコ。オニではなく、カニの国から追い払われナニとなったマナコ。しかし無念にも殺されてしまうのであった。大仏の顔を彫るためにはまた蛇の生き血をかけようと言う夜長姫。そして朝早くに蛇を捕まえに桜の森にやってくるのであった。そこで繰り広げられる悲劇。自分が自由になるためには父であるヒダの国王や妹の早寝姫を殺す事もいとわない夜長姫。そして夜長姫は耳男を殺そうとするが、反対に耳男に殺されてしまうのであった。そして舞い落ちる桜の花びら。


感想
一言で表すとすると、凄い役者、シンプルでいながら美しい舞台装置、舞台にあったすばらしいBGM、そしてよく練られたセリフ。2度3度と見ることによって色んな面が見えてくるんだろうな。
とにかく言葉の使い方がやっぱり凄い。凡人の私としては1回では消化しきれないほどの言葉の遊び。耳男の大きな耳にかけての「目をつぶって、何かを叫んで、逃げたくなるけど目は潰れても耳は潰れない。まぶたはあるけど、耳ぶたはないから。耳たぶはあるけど、耳ぶたがないから、それで桜の粉と一緒に耳から何かが入ってくる。」そして国作りをするためには缶を蹴らなければならない。それにかけて「私の幸福がかんを蹴ってやる。...あれっ?かんがない。私の幸福感がない。幸福な王の時代は去ったのですね。」byヒダの王。ああ、レイ・チャールズは出てくるしで、一言も聞き漏らすまいとかなり神経使います。(笑)

とにかく切れた、ちょっといっちゃってる悪女なんだけど可愛い夜長姫が凄い。深津絵里恐るべし!!しかし、ノドが強いのね深津ちゃん。そして堤真一は細かい芝居までがうまい。もしかしてコメディ系もすんごくイケテイルのではないかと思う程。それにやっぱり身のこなしが軽いし。屋根に登って行くシーンでは本当に恐る恐る登っていってるかのように見えるし、落ちる時はちゃんとお尻がバウンドしているし...凄いよな。そして今回の芝居が私が見た芝居の中で一番古田新太さんはかっこよかったかもしれない。(笑)途中まではやはりちょっと憎めない小悪党(山賊)だったのに、最後のオオアマに立ち向かって行く正義の味方のマナコ。うへーー、かっこいいぞ。顔はカニメイクぽくなっていてもかっこいいぞ。それに客席巻き込んで芝居をするしね。でも、今回の舞台は結構客席巻き込みがただったような...こういう芝居なんでしょうか?そして古田さん、もし古田さんに何かあったら三軒茶屋に住む古田さん似の小学生の女の子にピカチューウインナ-届けますわ。(笑)そしてオオアマ、声がいいっすねぇーーー!で、野田さんいっちゃってます。汗をいっぱいかきながら走りまわって遊んでいます。(笑)ああ、やっぱり鍛えぬかれた体があるからこそできるのよね。で、今回一番目立っていたのがオニのエンマと赤鬼。なんだかこの2人が出てくるとすんごく空間が和むのよねぇ。それにオニキャラだけど、どうしてもオオアマについていけなくって逆らってしまって挙句に殺されてしまうけど...それにどうも竿を振っている時のセリフはアドリブぽくって、なんだかお芝居を見ているのかショートコントを見ているのかちょっとわからなくなったりして...(笑)

最後に奥行きのある空間をうまく使っているなぁと思いました。残念なのは上手の席だったので一番奥まで見えなかったんだけどね。でもちょうど横の出入り口近くだったので、役者さんが出てくる気配がわかったり、前が客席だったので野田さんや堤さんが走りまわったりして面白かったですけど...
きっとこのお芝居って進化して行って楽日の頃にはまた別の「贋作・桜の森の満開の下」になっているような気がします。

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