こちらの部屋で毎月読んだ本を簡単に紹介していきます。ちなみにお気に入りの作家は池波正太郎、藤沢周平、宮部みゆき、浅田次郎、宮本輝、ジェフリー・アーチャー、ケン・フォレット等です。

 

2002.4

*ホビットの冒険 上・下 J・R・R トールキン 岩波文庫
さあ指輪物語を読もうと思ったら、序章部分が長い。しかもホビットについて説明しているし、どうもこのホビットのビルボを知らないことにはどうもついていけないような感じ。ということで回れ右して、まずはホビットの冒険からスタート。ホビット族のビルボの冒険が描かれているのだが、その冒険の途中でビルボが手に入れたものが重要なんだな。ホビット庄を出たことがないビルボが灰色ガンダルフとドワーフに誘われて、その気はないのにお宝奪回の旅に出るというのが面白い。しかも、本当は足手まといになるはずなのに、とあるものを手に入れたおかげで大活躍。最初の進み方はスロースターターなので調子が出るまではちょいと辛かったけど、最後はちょっと感動。

*指輪物語 1〜9 J・R・R トールキン 評論社
ふぅーーーーー、長かった。とうとう指輪物語を読み終えた。最後は読んでいるうちに涙が止まらなくなってさあ大変。もし私が主人公のフロドだったら、とてもじゃないけど耐えられないだろうなぁ。まあ、だから私が指輪の持ち主になるはずはないのだが。(笑)しかし、本当は影の主役はフロドの従僕サムワイズ君のような気がする。ところんご主人であるフロドのために尽くして尽くして尽くしぬく。彼なくしてはフロドはこの試練をくぐりぬけることは出来なかっただろうなぁ。もちろん白のガンダルフや王となった馳夫ことアラゴルンやレゴラス・ギムリも大切な仲間だったし、同じくホビット庄からついてきたピピンとメリー(7冊目くらいまではこの役立たず!と思っておったのだが)も、最後は大活躍したけど、やっぱりサムワイズ君だわ。しかし、この本読みにくい。まず地理関係がわかりにくいのと、登場人物が多いし覚えにくい名前なのに名前一覧が無いのが辛い。しかも、主人公はフロドのはずなのに丸々1冊うっちゃっておられて出てこないことあるし...この点が改善されていてばもっとさくさくっと進んで面白かったと思うんだけどな。最後にあのエンディングは泣けるなぁ。他のものがみんなハッピーエンドになっているだけに...


2002.2

*堪忍箱 宮部みゆき 新潮文庫
短編集。人間の心の隅にある黒い部分にスポットを当てて書かれていて、ちょっと考えさせられてしまいました。自分の心の中の弱いものに打ち勝たないと負けてしまうんだよね。私としては、砂村新田がその中でほっとしてまだ暖かい気持ちになれるので一番好きです。

*2つの祖国 上・中・下 山崎豊子 新潮文庫
第2次大戦中における日系一世・二世の人たちの苦難の人生を描ききった大作。人種差別の中アメリカで移民として頑張ってきたものの、真珠湾攻撃によりその迫害は決定的なものとなってしまい、強制収容所とは名ばかりの劣悪な環境の中で自分のアイデンティティに思い悩む2世達。物語の中心は天羽賢治。なまじ日本で学校教育を受けたために日・米の板ばさみになってしまう賢治。しかも彼の下の弟は日本留学中に戦争に入ったために、日本兵として出兵し、そして一番下の弟はアメリカへの忠誠心を問われ、自分の家族が少しでもよい環境になればと志願していくのであった。もうこれでもかっていうくらいに試練と苦難が賢治を襲っていくのよね。一番下の弟はアメリカ兵を救いに行くために、激戦地に赴き戦死。そしてすぐ下の弟とは語学兵として赴任したフィリピンで出会い、ちょっとした間違いから撃ってしまい、愛し合った女性は原爆のために死亡。そんな中、東京裁判のモニターとして参加した賢治はこの世界的な悲劇の戦争の一部始終を目撃していくのであった。そしてこの裁判の中で行われる駆け引きやらを目の当たりにするのであった。しかし、しかし、最後の後味の悪いこと。東京裁判の生き証人賢治には、新聞記者として復職し、その一部始終並びに第2次世界大戦中の日系一世・2世のおかれた状況を書いて欲しかったのに、自殺という幕切れと友達顔しながらずっと裏切っていたチャーリーが順風満帆ていうエンディングはかなり辛くって、ちょっと落ち込んでしまいました。

*海は涸いていた 白川道 新潮文庫
主人公の伊勢が余りにも哀しくて。不幸な人生を歩むものは最後まで不幸なのか?というくらい、暗い裏道を歩き続ける伊勢。決してそれは彼の責任ではないのに。幼少の頃に乱暴をふるう父親と離婚した母が再婚した義父がすごくいい人でやっと幸福がと思ったら、義父が亡くなり、そして母は焼身自殺。妹と共に施設に預けられ、施設の弟分をかばって傷害致死事件を起こし、その間に妹は里子に。そして今度はやっと出合った女性との別れ、そしてあることがきっかけで起こる事件の数々。しかし、それは元を正せば伊勢が発端なんだけど。とにかく巻き起こる不幸の連続、そして自分が愛する人たちを守るために、自分を犠牲にして突き進んでいく伊勢。うーーー、最後のあの終わり方は辛すぎました。でも、なんだか救いのないストーリーで読んでいてかなり辛かったです。

*漂流教室 楳図かずお
漫画だけど、かなりのカルチャーショックを受けたのでここで簡単な感想をば。まず、これが書かれたのが20年以上も前ということに驚きました。そして登場人物である小学生達がすごすぎる。リーダーシップを発揮しておびえる小学生達をまとめ、1つの社会を作っていく翔。それに引き換え、今の政治家達は...と思うと悲しいのう。まあ、この本では大人たちは変化に順応できないで、精神に異常をきたしたり、自分のことしか考えなかったりと散々な状態なんですが。しかし、何がすごいというか恐ろしいというか、出てくる未来人でも怪物でもなくって、翔の母親が凄かった。他人にどう思われようと子供のためにどこまでも突き進んでいく母親。しかし、最後のエンディングは泣けて泣けて。このような世界を作らないような社会を作ると言って戻っていった男の子。そしてこれは新しい世界を作るために僕達が選ばれたんだとあくまでもポジティブシンキングで大地をしっかり踏みしめて生きていこうとする翔たち。すごいよな。


2001.11

*風神の門 上・下 司馬遼太郎 新潮文庫
実は猿飛佐助も霧隠才蔵も名前は知っていてもあまり詳しいことは知らなかった私。この風神の門ではその霧隠才蔵が主人公。群れないで個人で働く伊賀者と団体技を使う甲賀者との対比が中々面白くって、猿飛佐助にしても霧隠才蔵にしても一流の忍者だけどその性格が相反しているのに一流ゆえに一流を知るということで手を組むことに。そしてその一流の忍者が惹かれる真田幸村。関が原の戦い以後、豊臣と徳川のどちらが世界を取るかというストーリーと並行して人間くさく生きていく才蔵の人生が描かれており面白いです。しかし、いくら優秀な策士がついていてもトップが...じゃ、ダメなんだな。そして運も実力の内ということで、その点ではやっぱり徳川家康って強運の持ち主だったんだろうなぁ。

*天狗風−霊験お初捕り物帳 宮部みゆき 講談社文庫
生まれながらに霊感を持つお初捕り物帳シリーズの第2弾。今回は神隠しにあった美少女達を追う内にその事件の背景が鮮明に。それはこの世に恨みを持ったまま亡くなった女性の怨念。そしてその怨念が宿った着物から作られた小袋を持ち、しかもその周囲にその少女達に対して負の気持ちを持つものにその怨念が吸い寄せられるというもの。誰にでもねたみや嫉みっていうものがあるから、もしこの小袋が現代にあったら恐ろしいことになるだろうなぁ。そしてそのことをつきとめたお初は1人でその怨念と対決することに。やはりお初の心の中にも羨ましいという気持ちがちらっとあり、その憧れの人の姿形になった怨念にあわやというところで右京之介から借りた彼のメガネをかけてようやくその怨念に打ち勝ち、少女達を救い出すのであった。今後の右京之介とお初にも楽しみです。

*凶刃−用心棒日月抄 藤沢周平 新潮社
主人公の青江又八郎もこの凶刃では40歳を過ぎて、子供も大きくなり藩での生活も安穏だったはずなのに、そこに江戸での「嗅足組」解散を命じる任命を受け密かに江戸へ。そして懐かしい江戸嗅足
組の頭でさる佐知との再開。幕府隠密、藩内の黒幕、そして江戸嗅足組との食うか食われるかの死闘。そして明らかになる藩の秘密。最後に現れた最強の敵は又八郎と三羽烏と称された男だった。その男を倒し、藩に戻った又八郎を待っていたのは同じく藩に戻って尼寺に入った佐知。こうやって又八郎は妻と佐知との間をうまくやっていくのか?しかし年月というのは残酷で江戸で用心棒仲間が妻をなくしアル中になっていたりしてちょっと寂しかったのう。


2001.10

*堀部安兵衛 上・下 池波正太郎 新潮文庫
はっきり言って忠臣蔵は苦手だったのでそれ関連のドラマとかは見たことがありませんでした。で、今回は赤穂47士の一員だった堀部安兵衛にスポットをあてたこの本を読んでの感想はまずなんとまあ波乱万丈の人生なんだの一言。この本では討ち入りに関しては本当にちょびっとしか書かれておりません。上巻はちとストーリーに入り込むまでに時間がかかりましたが、下巻ではもう進む、進む。しかも高田馬場の決闘のシーンからはもう涙が出てきて出てきて...(但し、私の涙腺は通常の人よりかなりゆるいです)男と男の信頼というか男が男に惚れているのがよく描かれていて感動するんだな。特に義理の叔父となった管野六郎左衛門が良くって。上巻ではなんて世間知らずなヤツと思っておった安兵衛が、最後には本当に見事なまでの武士になってというのが感想かな。

*人質カノン 宮部みゆき 文春文庫
このタイトルは短編集の最初の物語だけど、すぐには意味がわからなかった。人質はわかるけど、カノンが...私の中ではカノンったら、バッハだもんな。そしてSMAPへと連想していくんだけど...(笑)このタイトルにもなっている「人質カノン」は今の世の中を反映している作品だと思う。よく深夜のコンビニで出会う、顔だけは知っている顔見知り。そして、都会で1人暮らししている若者が犯人にでっちあげられるために犠牲者として選ばれてしまう。なんだかとても切ない、悲しい事件。そしてどのストーリーもなぜ?からスタートしているというのがポイントなんだろうな。しかし、どの短編集も本当によく練られていて、相変わらず宮部さんうまい。

*乳房 池波正太郎 文春文庫
鬼平犯科帳の番外編。このタイトルは最後まで読まないとなぜこれが付けられたのかわからないけど、読んでみればなる程と頷けます。これも短編集ですが、最初に登場する女性がうまくどの話にも絡んで進んでいくのがうまい!今だったら無理やりとかこじつけとかで鼻につくかもしれないけど、登場人物とうまくつながっていくから、彼女はどうなるんだ?と最後まで興味がつきない。しかもあの鬼平になる前のてっつあんが目をつけているんだもの。「女は男よりたくましい。それは男に無い乳房を持っているから。」ただ、ふとその逆はどうなるんだ?と思ったのであった。(笑)

*ハリーポッターとアズガバンの囚人 J.K.ローリング 静山社
やっぱり面白いハリーポッター。しかも絶対に1回は泣けるんだよな。私ってやっぱり涙腺が異常にゆるいみたいで...今回は例のあの人は直接的には登場してこないものの、その右腕と呼ばれた男があのアズガバンから脱走してハリーを狙うというもの。ハリー達も3年生になってハーマイオニーのがり勉というよりは勉強好きは拍車がかかり、なぜかしら同じ時間の教科を取っているのに、うまくこなしているのが不思議なハリーとロン?聞いてもハーマイオニーは教えてくれないわ、彼女が新たに飼い始めた猫がロンのネズミを付け狙って2人の仲は最悪に...しかもハリーはその犬を見たら命を落とすという犬を見、アズガバンの看守のデメンターによって幸せを吸い取られて気分が悪くなって倒れてしまい、大事なスニッチの試合にしょっぱな負けてしまうと苦難の連続。でも最後はやっぱりロン&ハーマイオニーと力を合わせて問題を解決するという単純明快なストーリー。その上なくなった父親の級友達との出会いなどがうまく盛り込まれて、どんどんと読める。しかし最後の大どんでんがえしが...ああいうことになるとは全然予想だにしなかった。うまいなぁ。


2001.9

*R.P.G. 宮部みゆき 集英社文庫
タイトル通りに、繰り広げられるロールプレイゲーム2つ。1つはインターネット上での擬似家族ごっこ、そしてもう1つはその擬似家族ごっこをしていた父親の殺人事件の取り調べ。犯人はなんとなく目星はついたけど、ああいう形(R.P.G)で解決するとは...この本ってすぐにでも2時間ドラマになりそうな展開。ただ殺人を犯した理由はやっぱり悲しいよな。

*青狼記 楡周平 講談社
読んでいる途中から涙が出てきて止まらなくって、電車の中で読んでいたのでヤバイ状態。猜疑心・業の深さとはげに恐ろしきかな。自分よりも忠臣が民から尊敬を集めることが我慢ならないバカ王によって度重なる試練と不幸の連続の主人公趙峻。それでもあくまでも忠を注ぎ続ける主人公。早く気がつけよと読みながら思うことしばしば。まあそれでも主人公をとりまく人達が主人公を信頼し、慈しんでくれるから救われるんだけどさ。しかし、いつの世も権力を握ったものの引き際って大事だね。かなり面白いのでお薦めです。

*ハリー・ポッター 秘密の部屋 J・K ローリング 静山社
有名なハリー・ポッターシリーズの第2弾。登場人物はほぼ一緒で、新たに加わったのは新1年生達と聞くだけで胡散臭くって怪しいギルデロイ・ロックハート。しかし、なぜにあのハーマイオーニーがあんな胡散臭い先生に憧れるのかねぇ。(笑)今回もハリー・ポッターと仲間達が学園内で起る不思議な事件を解決すべく、立ち向かっていくのであった。それは学園内にあるとされている秘密の部屋の存在。そしてそこには怪物が...しかし、この事件もやっぱりうまくあの人と繋がっているとは、うまい。一気に読めます。

*刺客-用心棒日月抄 藤沢周平 新潮文庫
青江又八郎シリーズの第3弾。やっと藩に戻ったかと思うと、今度は嗅足組とは別に影の嗅足組が作られ、江戸詰の嗅足組壊滅を狙っているのを防げと命じられ、またもや浪人として江戸に舞い戻る青江。しかも、嗅足組の頭領、すなわち佐知の父親と対面するのであった。そして江戸では佐知を助けて影の嗅足のメンバー、そしてその背後にいる人間を探るのであった。そしてその人物は隠居している現在の藩主の叔父。まあ、やっとこの悪の元凶が始末されてやれやれってな感じなんですけど、青江又八郎と結婚した由亀はできているわな。結婚してすぐに離れ離れになって、定期的に藩を脱藩する夫。今では考えられないわ。最後には又八郎は佐知と一線を越してしまうし...うーーん、次が最後の巻になるんだけど、どうなるんだろうか...


2001.7

*今夜は眠れない 宮部みゆき 中央公庫
主人公は中学校1年生の男の子。ある日突然、自分の母親が昔1度だけ助けた男から莫大な遺産を贈られることになったために家庭内騒動勃発。父親の浮気がばれ、家を出て行くわ、見知らぬ人達から監視されるような生活をしいられるわと180度生活が激変。そして世間では某女優とお金持ちのお嬢様が曰くモノの黒真珠落札バトルを繰り広げている。そしてなぜ遺産が贈られたのか、母親とその亡くなった男性との関係を調べて行く主人公とその友人の中学1年生コンビ。そしてその遺産騒動は仕組まれたことだということがわかり、そしてそれは黒真珠を出しぬくためのものであった。最後には父親も家に戻り、めでたしめでたし。なんとなくコンゲームぽいテイストがあって、楽しめました。

*夢にも思わない 宮部みゆき 中央公庫
今夜は眠れないの続編。主人公の緒方君は同じクラスのクウちゃんに恋をした。そこから物語りはスタート。彼女と偶然を装って出会うために虫聞きの会に出席したところ、そこにはクウちゃんの死体が...と思ったらよく似た彼女の従兄弟だった。ここから事件は転がっていくのであった。思春期の女の子の残酷さや男の生真面目さ正義感などがよく描かれております。しかし女の子はやっぱり男の子よりしたたかなのかもしれないなぁと思った次第です。

*ハリー・ポッターと賢者の石 J・K・ローリング 静山社
もう有名なベストセラーシリーズの第1弾。久々に読み返してみたけどやっぱり面白い。ここには大人になって忘れてしまった想像や夢の世界が溢れてるんだな。とにかく登場人物のキャラの描きわけがしっかりしているので、登場人物が少々多くってもきっと子供達は問題なくお話の世界に入っていけると思います。とにかくそれぞれの欠点を補い合うことのできるベストパーティーのハリー、ロン、ハーマイオニーの3人が魅力的。しかし、これだけ魅力的な本を書く作者もすごいけど、翻訳者もすごいと思います。この殺伐とした世の中だからこそ大人にもこの本を読んで欲しいなぁ。

*五輪の薔薇 上巻 チャールズ・パリサー 早川書房
ストーリーの発端は五輪の薔薇の意匠だった。少年ジョンは屋敷に母親と召使とで暮らしていたが、自分の出自に関しては何か隠されているのを薄々感づいていた。そしてジョンの波乱万丈の人生はスタートするのであった。うーーん、「おしん」と「ルーツ」と何かが混ざり合ったような塩梅のストーリーなんですが、分厚い。青色吐息でなんとか上巻終了。だって上巻だけで700ページ近くで、1冊4000円って...ストーリーは面白いのよ、ただ電車の中で読むのがちょっと辛いだけ。(笑)


2001.6

*江戸の暗黒街 池波正太郎

短編集。江戸の町で暮らしている小市民のはずがなぜか事件に巻き込まれていくという展開。短編集だけど起承転結がはっきりしているから、すごく読みやすい。しかもなんだかほろりとさせられるというのはやはり池波正太郎だからなのか?

*パーフェクト・ブルー 宮部みゆき 創元推理文庫

マサの事件簿がこのパーフェクト・ブルーの続編。これを読めば登場人物の関係がよくわかりますが、うーーん、読んでいてなんだかちょっと辛いものがありましたわ。ストーリーはすごく面白いんだけど、事件がおきるきっかけというのが辛くてねぇ。だって、私が関わっている業界が事件の元なんだもの。でも、宮部みゆきも守備範囲が広いです。

*新撰組地風録 司馬遼太郎 角川文庫

世間でよく知られている新撰組ですが、その新撰組局員でもそれ程世間に知られていない局員にフォーカスをあてた短編集。色んな事件と絡めて書かれているのが大変興味深いです。あの有名な池田屋事件にこういう背景があったのかとか、芹川鴨の事件なども大変面白いです。でもこの本を読めば読むほど土方歳三に興味が沸いてきました。


2001.5

*トライアル 真保裕一 文春文庫

短編集。私が数多く読んでいる真保裕一の路線(取引やホワイトアウトなど)とはかなり異なっており、どちらかといえば奇跡の人路線に近いのかしら。題名からもわかるようにギャンブルに携わっているプロの選手のストーリー。競馬、競艇、オートバイク、競輪等。読んでいて、えっ、どうなるの?もしかしてプロの世界にいられなくなるのか?誰を信じればいいのか?などと読んでいてやきもきするものの、最終的にはほろりとさせられてしまいます。最後の競馬編はなんとなく去っていた厩務員はジョッキーの父親のような気がするのは気のせいではないような...


*マサの事件簿 宮部みゆき 創元推理文庫

まずはマサっていったい誰?と思っていたら、我輩は猫ならぬ犬だったのね。それも警察犬を引退したジャーマンシェパードで現在は探偵事務所で飼われている探偵犬。話はこのマサの視点から書かれています。確かこの形態は他にもお財布が主人公のがあったと思います。推理短編集だけど、さらっと読めて中々面白いです。登場人物がみんな心が温かくて魅力的、悪いヤツにはお灸を据え、救えると思うものにはもう1度チャンスを与えるという、読んですかって出来るというのは大切だな。しかし、宮部みゆきって守備範囲広いな。

*遠きに目ありて 天藤 真 創元推理文庫

まずは本の帯の文字「有栖川有栖・笠井潔・北村薫が決める、本格ミステリ これがベスタだ!」にひかれて購入。成城署の捜査主任真名部警部と重度の脳性マヒの少年信一が主人公の推理短編集。事件自体はシンプルで犯人も結構すぐにわかるけれど、読後感がすごくいいんです。脳性マヒの正念真一は自分で動くことはできないけれど、本を読むのが好き、なんでもトライしてみようと前向きに生きていて、ふと知り合った警部から事件の話を聞くだけで、先入観にとらわれることなく、聞いた話しだけを素直に自分の中で理解することによって犯人を当てる。この本が書かれた時代はちょっと前だけど、全然古臭さを感じさせずに一気に読ませるのはやっぱり凄いです。

*孤剣 藤沢周平 新潮文庫
用心棒日月抄の続編。首尾良く、自分の藩に戻る事ができたかと思われた又八郎だが、藩主毒殺首謀を捕まえるどさくさに重要な証拠書類を持って逃げた男をまたもや追う羽目に。しかもまたもや自分からの脱藩という形を取って。そして男を追って江戸に戻り、元の長屋に戻り、用心棒稼業をしながら探索をしていくというもの。そこに藩おとり潰しを目論む公儀隠密は暗躍する中、用心棒日月抄で又八郎に襲いかかって、反対にキズを負い、又八郎に助けられた謎の女佐知がうまくからんでくるという読み応え十分の短編集。なんと佐知は同じ藩の嗅ぎ足の組長の娘という設定。そこはかとなく又八郎と佐知との間には男と女の情が流れる中、同士としての立場を取るというのはやはり嗅ぎ足という独特の世界に佐知が生きるせいなのか...一応無事証拠書類を手に入れた又八郎は藩に戻っていくのであった。このシリーズって池波正太郎の剣客シリーズにそこはかとなく似ている感じがするけれど、こちらのほうがより庶民的。


2001.4

*業火 パトリシア・コーンウェル 講談社

新刊を読んだら、いきなり恋人だったベントンが死んでいて??状態に。そこで、読んでいなかったこの本を読んでやっとベントンの死の理由がわかりました。うーーん、今回の犯人も以前登場した知能犯&マインドコントロールのうまいキャリー。このキャリーが登場する回はいずれも悲惨なのよねぇ。しかも残虐かつ精神的な戦いになるという本当に恐るべき戦い。しかし、ケイ、ルーシー、そしてマリーノと打撃を受けながらも、最終的にはキャリー一味に勝利するんだけど、やっぱりなんだか読み終わって暗くなるよな。

*ハンニバル 上・下巻 トマス・ハリス 新潮文庫

ある種のカルチャーショックを受けた「羊たちの沈黙」の続編ですが、これは絶対に映画は見られないです。それ程ストーリー的にも映像的にも恐ろしいです。でも何が恐いってそりゃハンニバル・レクター博士も恐ろしいけど、それってある種のトラウマから発生しているものだし、通常に生活をしていれば多分恐ろしいと感じないと思うんですが、脇に出てくる人間の方が余程恐ろしいですわ。しかし、ハンニバル博士の前に立ったら自分をさらけ出しそうでそういう点では恐ろしいです。ただ、あのエンディングはどうなんでしょうか?うーーん、これって続編につながる伏線なのか...


2001.3

*暗殺の年輪 藤沢周平 文春文庫

表題の他4編が収められていますが、個人的には黒い縄が好きかなぁ。でもどの話の主人公も悲しいんだよな、切ないんだよな。話の筋は読めるんだけど、それ以上に世界が広がっていっているのはやっぱり巧いんだろうなぁ。でも切ないです。

*中坊公平 私の事件簿 中坊公平 集英社新書

今まで弁護士として携わってきた節目節目となった事件を紹介されていますが、中坊公平という人となりがよくわかる本です。1つ1つの事件を通じて、現在の中坊氏があるんだなということがよくわかりました。ただ残念なのはかいつまんでの紹介なので、今度は1つの大きな事件に関して書いてくれるともっと深く掘り下げられていいのになと思います。

*破線のマリス 野沢尚 講談社
うーーん、後味が悪いことこの上なし。しかも結局あれだけ引っ張って犯人はいったい誰なのかよくわからないんですが...ニュース番組戦争の中でいかに視聴者をひきつけるために事実を歪曲してよりセンセーショナルな事件に仕上げる主人公。そのためには局内でも少々危ない目を渡る映像編集者の遠藤遥子。仕事一本やりのために離婚し、子供は父親が引き取るという背景がキーポイントになってくるわけなんだけど、でもなんだかあの展開は納得いかないですわ。どうも野沢さんの本には途中まではぐいぐいと引きつけられていくんだけど、いつも最後があれれれ?状態になってしまうんです。題材は凄くいいのに、もったいないですわ。 


2001.2

*自由の地を求めて(上・下) ケン・フォレット 新潮社版

さながらイギリスの「おしん」。(笑)ある日、家の庭を掘ってみたら奴隷にはめていた錆びた鉄の輪が出てきたところから物語はスタート。それはマラカイ・マカッシュの自由を勝ち取るための苦難の人生。ただ単に炭坑夫の息子に生まれたがために奴隷としてそのまま炭坑夫として働かなければいけないことに疑問を抱き、強欲な主人に反抗しがたがために濡れ衣的に犯罪者にされた為に屈辱的な首輪をつけられてしまい、そこから逃げても今度は労働者のストライキ首謀者として縛り首の刑。しかしなんとか流刑に刑を軽減されてアメリカに渡ってもまたもや身分は奴隷。そして一貫してマカッシュの人生には実業家のジェイミソン一家が立ちはだかるという構図。そして同時並行でマラカイとリジーの恋愛が進行していくんですが、うーーんどんな状態にあっても卑屈になることなく自分の考えの通りに行動するマカッシュってすごいですわ。それに南北アメリカの奴隷時代ということで最後にちらっとジョージ・ワシントンが登場するのがご愛嬌。でも一気に読める骨太な作品です。

*どちらかが彼女を殺した 東野圭吾

うーーん、もしかしたら私はこの作者が体質的に合わないかもしれない。最初に読んだ「白夜行」、前回の「悪意」、そして今回の「どちらかが彼女を殺した」と読み終わってすんごくもやもやとした気持ちだけが残って、なんだか嫌な読後感あるのよね。今回は三角関係のもつれから発展した偽装自殺殺人事件。そして殺された女性の唯一の肉親である兄(交通課勤務)がその犯人を復習の為に追い求めていくという設定なんですが、殺された女性が余りにも救われない気がしてねぇ。しかも兄は警察に勤務しているにもかかわらず、事件に関係のありそうなものは全て自分で隠匿するわ、偽証はするわでこんなんでええんか?と思ってしまうのよね。まあ、最後のどちらが殺したか?という点だけは頭をかなり使って面白かったけど、やっぱり後味が悪いわ。

*蒲生邸事件 宮部みゆき 文春文庫
冴えない受験に失敗したばかりの浪人生が主役。ぼろっちいビジネスホテルに予備校の試験のために宿泊していた主人公はそこで影の薄い男性を見かけ、ちょっと気になる。そして不幸なことに火事がおこり、あわや一巻の終わりかと思った時にその影の薄い中年男のおかげで命拾いをする。でも、気がついた時そこは226事件が進行中の時代、場所はホテルが立つ前にあった蒲生邸。男の影が薄いのはタイムトラベラーとして能力を持っているからなのであった。そして蒲生邸でも事件が進行中。大佐の妻らしい女性は大佐の弟と駆け落ちの相談中。そしてとうとう226事件を悲観した大佐が自殺。しかし、拳銃が見つからないことから自殺か他殺かで主人公は受身の人生から自分から行動を起して推理を進めていくのであった。しかし、受験生が226事件を知らないというのは、そりゃ落ちるよな。(笑)うーーん、意外な展開と最後はちょっとほろりとさせられる結末で楽しめました。

*ひまわりの祝祭 藤原伊織
絵画にまつわるストーリーに主人公の自殺した妻の話が同時に進行して、2つがうまくからまりあっていって、最後はそうきたかとうならされました。そうタイトルからもわかるように「ひまわり」はヴァンゴッホ(ゴッホではなくヴァンゴッホが正しいらしい)が描いたひまわりのことであり、もう1枚のひまわりを巡って虚虚実実のかけひきが行われ、それに巻き込まれるのは昔はやり手の広告デザイナー、妻が自殺でなくなった後は現在は世捨て人状態で食事は甘い菓子パンやお菓子というちょっとガキみたいな行動を取るというのが面白いです。でもこの主人公は物事の本質を見ているせいか中々頭は切れるんだな。妻の自殺の原因も突き止め、どうやらトラウマから脱出できそうだし、「ひまわり」の存在も彼が思えるベストの方法で解決して、まあすっきりできる結末でした。この作者の主人公は江戸川乱歩賞と直木賞の両方を受賞した「暗殺者のパラソル」でも人生からドロップアウトしかけているアル中の中年が主人公だったし、今回の主人公もそうですけど、男って女よりダメージに対して弱いのかもしれないというのをちょっと考えさせられました。(笑)


2001.1

*陰陽師シリーズ(陰陽師・飛天ノ巻・付喪神ノ巻) 夢枕 獏 文春文庫

時は平安時代。主人公は陰陽師の安倍晴明。陰陽師という職業は現代の職業にはないよな。持って生まれた才能とでも言えばいいのか、星や人の相を見、幻術や呪を使ったりすることもできるという、本当に摩訶不思議な職業。百鬼夜行の世界だから、おどろおどろしいのが苦手な私が読めるかなと思いましたが、姿形は恐ろしくともその根底に流れるのは人間の業。いつも安倍晴明と一緒に行動している源博雅ではないけれど、「いと哀し」の世界がそこにはあるのよね。それを救うのが安倍晴明。どの話もひき込まれるし、安倍晴明と源博雅という人物が本当に魅力的。シャーロック・ホームズにおけるワトソン、明智探偵における小林少年の役割を果たす源博雅が何ともいえない味があるのよね。そしてこの本を読んでいると高校時代に戻ったような気がしてきます。百人一首や古今和歌集などで覚えた歌がそこかしこに出てきます。古典が苦手な人もこの本を読んだら、もしかしたら歌の意味を簡単に覚えられるかも。(笑)

*用心棒日月抄 藤沢周平 新潮社

時は江戸時代。主人公はお家騒動に我知らずの内に巻き込まれ、藩を脱藩した又八郎。そして江戸で浪人として就職口入れの相模屋で紹介してもらった仕事で細々とその日暮らしをしている。そしてその相模屋で知り合い、何かと付き合いのある子たくさんの浪人に細谷。どちらも共通するところは剣の腕が立つところ。そして就職口入れで紹介された仕事に関わる事件を実直に解決していく中に、うまく赤穂浪士との話が絡み合ってなかなか趣があって好きです。最後には無事脱藩した藩に戻ってお役目も元に戻り、許婚とも結婚へというところで終わりなのかと思っていたら、どうやら続編があるということは江戸に戻ってくるのかしら?と期待をさせられるエンディングでした。細谷にしてもなんだか人間くさくてほのぼのしていて味があるんだな。

*悪意 東野圭吾 講談社

うーーん、殺人が終わってすぐに犯人がわかってしまって、どうするんだ?と思っていたら犯行に至る動機を刑事および犯人の手記という形で描かれているという異色のスタイル。しかし、あの理由で殺されたら、私だったら絶対に成仏できないね。なんだか読み終わってすごく不快感が残ってしまいました。

*天国までの100マイル 浅田次郎 朝日文庫

泣けた、泣けた、もう涙腺がぶっ壊れたんではないかと思う程泣けました。この本を貸してくれた会社の同僚が涙腺の弱い私は電車の中で読まないほうがいいよって言ってくれたんですが、ハイその通りでした。家で読んで正解!この本を読んで本当の人の優しさとか幸せとかを考えさせられてしまいました。しかしタイトルがいいよなぁ。果たして100マイルが遠いのか近いのかはよくわかりませんが、人生の浮き沈みを経験して現在ドツボ状態にある主人公とその母親の会話がもういいんだよね。人生絶好調みたな感じの時には見えなかったものが、ドツボになって気付く大切なものってあるんだよね。ああマリちゃんて本当に菩薩様のような女性だね。


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