パワーユニット580・780を考える。

 

 一口にパワーユニットといっても、ゼンマイかバッテリーかで全くゾイド本体の大きさが異なってくる。とりあえずここでは、580円シリーズ、780円シリーズに使われた、小型のゼンマイパワーユニットについて考えてみることにする。

 オフィシャルによるとトミーにはもともとから、ゼンマイによる2足歩行のユニットがあったので、これを使って恐竜型のモノを作ろうとしたのがゾイドであるとされている。つまるところ、あの小さなパワーユニットとそれにつなぐ脚の部品の規格ができあがっていたということであろう。

 実際に発売されたゾイドで、小さなパワーユニットを使って2足歩行を実現したモノは、ガリウス、ゴドス、イグアン、プテラス、シュトルヒ、マーダである。残りのモノについては、2足歩行のユニットを4足歩行なり、他の方法に応用していったことになるので、ユーザーからすると、動きの違いが表れて、見ていても面白味のあるシリーズ展開がされたことになる。

 各種ゾイドのパワーユニットである。

 このうち2つはとても特徴的な部品がついているので、すぐにこれを搭載するゾイドがなんであるかわかる方もいるであろう。

 まず注目すべきは、ゼンマイを巻く軸である。この部分になにも付いていない物は、ゼンマイを巻く軸を使ってのギミックがないことは明らかである。だが、ゾイドでおもしろいのは、このゼンマイを巻く軸自体に部品を取り付けてギミックに用いようとしたことである。ほとんどのゼンマイおもちゃでは、そんなギミックの作り方はしていなかった。まずだいち、ゼンマイの軸にギミックがあるという事は、ゼンマイを巻いているときにそのギミックが動き出してしまうため、持ちづらくゼンマイを巻きにくいのである。つまり、遊び安さを優先させるのであれば、この軸に部品を取り付けギミックに用いることを避ける方が親切なのである。しかし、そこはゾイド、遊び安さもであるが、決定はギミック優先に持ってこられたと見るべきであろう。これだけ小さなユニットを使って、できるだけ複雑でリアルな動きをさせるために使える部分はできるだけ使おうという選択がされたのであろう。では、遊び安さという点ではどうか。そこはゾイド、アッセンブルプラスチックキットモデルであり、ユーザーは自分で組み立てるので、構造を理解しているという前提に立って遊ぶ際に気をつけるであろうと、予想されたと考えられる。

 ゾイドは、生物をモチーフにしているので、歩く、というギミックがまず第一をしめる。それを表現するのに用いられるのが、ゼンマイを巻く軸から一つとがった側に寄った穴から出ているクランク軸である。上図では真ん中列の一番上と一番したのユニットにクランク軸がのびている。ここから、歩行させるギミックにつながっていくのがごく普通のギミックである。問題はその先、単に脚だけにつながっているのか、その脚につながる部品を使って更に別の動きをさせるのか、ここが完成したゾイドの動きに違いを与えることになる。オーソドックスなのは、2足歩行であれば腕の部品に連動させる方法であり、4足歩行であれば前肢と後肢を連動させる部品につなげ、その動きを更に首の上下の動きなどに持っていく方法が採られている。ただ、前述の通りゾイドの場合は、ゼンマイを巻く軸にもギミックを持たせてあるので、単にクランク軸から脚に連動させるだけではなく、そのゼンマイ軸から足に連動しない別の動きを引き出している場合が多い。よって、結果的には歩くプラスαのゾイドらしさが生まれてくる。なお、一部のゾイドでは、クランク軸の部分に代わりにギアが付いているものもある。その場合は、上図に着いているような小さなギアではなく、ひとまわりほど大きい14枚歯のギアがついている。

 クランク軸から更にとがった側に寄ったところから、オレンジの8枚歯のギアが出ている。当初のゾイドではギア部品はオレンジが使われていた。上図では左右2つと真ん中列の真ん中の計3つである。この部分はクランク軸の部分よりも速い回転を取り出すことが可能な軸であり、往復運動が可能な動きのギミック部品にのびることはなく、更にギアを通して車輪やスクリューなど回転を表現する部品へつながっていく。

 ここまで、ゼンマイを巻く軸、クランク軸、ギア軸と順番に話しをしてきたが、この順番は、そのまま取り出される回転の速さに比例している。後に行くほど、取り出される回転は速くなっているのである。そのため、それぞれの軸から取り出された回転により表現されるギミックにも自ずと限界と決まった動きになってくる。確実に言えることは、ゾイドでは、一つのパワーユニットであっても、そのパワーユニットのどの部分から回転を取り出すかによって、またその回転の取り出し方によって、表現されるギミックに違いが持たされている事である。

 

 ゾイドのパワーユニットは、パワーユニット本体の内部に、ある部品を取り付けるか否かによって、その回転の仕方が全く変わってくる。

 上記の左二つと右二つで違いがわかるであろうか。右二つにはオレンジのギアの上に内部から白いプラスチックの部品が見えている。しかし、左二つは、内部に白いプラスチックの部品はなく、ギアが直接見えている。この部品の有無は、ゾイドの動きに大きな違いを与える。

 左二つの内部のギアが直接見えている方は、オレンジのギアから動力を取り出している。右二つの内部のギアが見えない方には、クランク軸がのびているのがわかると思う。(内部が見えなくオレンジのギアが付いている方は、ゼンマイを巻く軸がのびている方に、白いプラスチックの円盤状のクランク部品が出ています。)クランク軸が出ているという事は、そのパワーユニットは歩行するゾイドのモノであり、クランクの延びていないパワーユニットは歩行しないゾイドのモノなのである。

 この白い部品、パワーユニットの内部を見えなくしている部品は、パワーユニットを定速回転させるのに必要な部品である。歩行するゾイドが、ジーーーーーーーーーーと、一定のスピードで歩いていくのは、この部品がパワーユニットに装備されているために、パワーユニットそのものが一定のスピードで回転するように制御されているからである。もし、この部品がパワーユニットに装備されていないと、巻かれたゼンマイは一瞬にして捲き戻ってしまう。では、それで役に立つのか・・・・。上の図の通り、実際にゾイドにはこの部品を装備していないパワーユニットを持つゾイドが存在している。つまり、ゾイド本体がどのような動きを表現するかで決まってくるのである。

 前述の通り、オレンジのギアの先には何らかの回転を表現するギミックにつながっているはずである。すると、一瞬にして巻き戻るほどの速い回転は、回転を表現する部品につながるまでの間に必要に応じて減速されるはずであり、表現されるときにはちょうど良い速さになっているはずである。また、同時にそれくらいのスピードを必要とする動きを表現するようなゾイドのはずである。

 

 ゾイドのパワーユニットは、基本は同じ小さなパワーユニットではあるが、その動力の取り出す箇所によってギミックの違いが考えられ、取り出し部分に取り付ける部品(取り出し方)によってもギミックの違いが考えられている。また内部に小さな部品を装備するか否かで、回転のスピードも調整されているなど、組み合わせ方により選り抜くことのできる、万能なパワーユニットといえる。そして、このパワーユニットの万能性は、数年後にHiパワーユニットにも応用されることとなる。

 

 ゾイドは、ユーザーが組み立てるので、わざわざ分解しなくてもある程度構造を知ることができる。せっかく組み立てるのであるから、いくらこれ以上分解できないパワーユニットだとしても、組み込む前にもう少しじっくり観察して、なぜこのパワーユニットが選ばれたのか、考えながら組み立てるのも一興である。

 

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